イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
「フットボールフロンティア! フットボール! フロンティア!」
フから始まる言葉しか話せない呪いをかけられたかのように、その言葉を連呼する円堂。呪いをかけられたにしてはめちゃめちゃ楽しそうだったので、別に助ける必要はないと判断した。
「最近ずっとこの調子なんだ」
呆れた様子の風丸に大変だねと相槌を打つ。
だってフットボールでフロンティアなんだぞ!と円堂は主張するがやっぱり何言ってんのか分からない。
「それで、フットボールフロンティアの予選の組み合わせが決まるのはいつなんだっけ」
「それは……知らない!」
「今日の夜。冬海監督が抽選に行ってくれるそうだ」
円堂の代わりに答えるのは、やっぱり頼れる副部長の風丸だ。名目上部長は円堂となっているが、先生や生徒会とのやりとりなどの仕事は風丸が担当しているらしい。
それにしても冬海監督か……影山に買収されてなきゃいいけど。豪炎寺がいるわけでもないし、雷門がそんなに帝国からマークされてるはずがない。よね?
「それでだな、対戦相手はまだ決まっていないが、フットボールフロンティアに向けて作戦会議をしていきたい」
「尾刈斗戦で、俺たちの問題点が分かった。それでこんなフォーメーションを考えたんだ。じいちゃんのメモがベースなんだけどさ」
僕が見ているというのも気にせずに、円堂はホワイトボードに書かれた新しいフォーメーションを説明する。流石部長、サッカーへの熱意じゃ誰にも負けていない。
染岡のワントップ、今までとそんなに変わったわけじゃないみたいだ。風丸が中盤まで上がって全体的に攻撃的になったようだけど、守りは円堂任せでも十分だと判断したのか。
ただ少し気になることがあるというか……部外者だけど構わず口を出してみよう。部外者だからこそ言えることだってあると思う。
「ていうか皆、この11人のままフットボールフロンティアに挑むつもり?」
「え?」
「控えもいないから誰か怪我したら10人でプレーしなきゃだよ?試合にフルで出場できる体力があるのか疑問の残る人もいるし……」
主に目金とか目金とか。
「もう少し部員を集めてみたほうがいいんじゃないの?」
「それはだな……できないんだ。円堂が頑張って勧誘してくれてたんだが、頑張りすぎてだな、ほかの全ての部活の部室と活動場所で俺達は出禁を食らった。あと教室や廊下での勧誘も迷惑だから止めろと先生から注意を受けてる」
「残ってる場所はトイレくらいしかないんだけど、もしボク達がトイレ立入禁止なんてことになったら大変だから勧誘は一旦諦めてる。一応ポスターとかは貼っつけてあるんだけど」
「雷門もいろいろ大変なんだね。えーっと、うん、頑張って」
サッカー部の現状が八方塞がりっぽいので無責任に応援をしたけど、どうなるんだろうこれ。目金がずっとスタメンってのは不安しかない。
「そうだ! 紫藤がチームに入ってくれないか?」
「いやルール上無理だろ。紫藤は尾刈斗生だし、自分のチームがあるし」
円堂の錯乱した発言に、ツッコミ係(だと僕が勝手に思っている)半田がちゃんとツッコんでくれた。
「ていうかそもそも、その尾刈斗生の紫藤が、なんで雷門のミーティングに参加してるんだ?」
厳しい顔の染岡に問い詰められるけど、「別にいーじゃん」と軽く答える。昔はこれが怖かったんだけど、慣れたらもう全然萎縮もしないもんだね。
イナビカリ修練所の特訓の後に雷門のメンツに混じって駄弁るというのが習慣化していたんだけど、あまりにも僕が雷門に馴染みすぎていたのか、何故か僕を追い出さずにミーティングを始めたんだ。
僕に敵情視察の機会を与えた円堂達が悪い。
「フットボールフロンティアの雷門戦に備えるため、ここで聞いた作戦の内容は全部尾刈斗に持ち帰らせてもらうつもりだよ」
「対策されたとしても負ける気は無いぞ!」
「僕も円堂達に負ける気はさらさらないからね」
円堂と見つめあって笑い合う。何だかライバルみたいだ。
「そのためにもまずは予選を勝ち抜かないとな。木戸川の対策から考えようぜ」
「「え??」」
円堂と一緒に素っ頓狂な声をあげる。
「え?」
僕達が驚いたことに驚いて、半田も声をあげる。
「円堂も紫藤も知らないのか? 雷門と尾刈斗は別の地区だぞ」
「「えーー?!」」
「円堂はともかく紫藤も知らなかったってのは意外だな。普通それくらい調べるだろ」
風丸が呆れたような目で僕達を見る。いつもの円堂を見るときの目線を僕にも向けるのはやめてよ。
「ほんとに雷門と尾刈斗と別地区なの?」
「隣町だから同じ地区だと思ってしまうのも無理はないだろうが、ちょうど稲妻町と尾刈斗町の境が東京Bと東京Aの境界になるんだ。
実際過去にも一度だけ雷門はFFに参加したことがあるが、その時も東京B地区で出場していたらしいしな」
原作では雷門は帝国や尾刈斗と同じ地区で出場していたから、それについて全く疑いがなかったのだけれど、雷門が東京Aで出場していたことの方がイレギュラーなことだったのかもしれない。
御影専農など自分の配下が多い東京A地区で出場させることで、雷門の動きを制御しやすくする。おおかたそんな狙いで影山は雷門の出場地区を操作したのだろう。
「そっか、そうだったのか。なるほど。東京B地区ってことは雷門は修也率いる木戸川に勝たないとなのか。大変だね」
「紫藤もそんなこと言ってる余裕はあるのか?俺達と戦うってことはあの帝国に勝たないと行けないんだぞ」
「それは分かってるよ。帝国には本気で勝つつもりでいるからね。僕達が帝国に勝てるってことはこっくりさんが証明してくれているよ」
「紫藤さんって尾刈斗ッスね」
「そうでやんすね」
なんでだか変人だと思われてる気がする。おかしい。僕は尾刈斗の中では常識人のはずだもん!
★★★
夜、少年サッカー協会本部。まさに敵の本拠地とも言える場所に私は乗り込んでいた。
たかが抽選ごときでどうしてこれだけ派手に盛り上げようとするのか私はにはさっぱり分からないが、カラフルにライトアップされなぜかヘリまで飛んでいる。彼の手下として働いていた頃から常々思っていたが影山は金の使い方が下手だ。出処不明の金を使って装飾にこだわった施設ばかり作っている。
ウサギの被り物をしたバニーガール――これはもはやバニーガールと言えるのかは分からないが――が、抽選を執り行う。全くセンスが悪い。尾刈斗の個性的な生徒達を見習って欲しいものだ。
バラエティ番組で見たことがあるようなエアー抽選機の中を各チームの監督の似顔絵が書かれたボールがふわふわ漂っている。もちろんその中には私、地木流灰人の似顔絵が描かれたボールもあるのだろう。最初にFFに参加した年、似顔絵を描かせてくださいと言われて本当に驚いたのを覚えている。どうしてこんな分かりづらい方法を採用するのだろうか。
バニーガールがボタンを押すとボールのひとつが抽選機から出てきて、バニーガールの持っているシルクハットに入る。
「くだらないな……」
思わず呟いてしまったが、周りの監督方の耳には入らなかったようで安堵する。
今どきどんなに下手な手品師でもやらないような雑な手口だ。シルクハットの中に予めボールを入れ、入ってきたボールとすりかえる。そうすることで予選の組み合わせを自由に操作することができるという仕組みだ。
左のバニーガールが取り出したボールには、御影専農の監督、富山新一郎の似顔絵。そして右のバニーガールが取り出したのは私の似顔絵。
尾刈斗の初戦の相手は御影専農に決定した。
影山の計画通りの対戦相手なのだろう。今からシルクハットの中身を暴けば不正を告発することもできるのかもしれないが、尾刈斗の皆が御影専農に負けるとは思っていない。このままで構わない。
御影専農と言えば最近影山と手を組み始めた学校で、帝国の所有する大量のデータを元に試合を組み立てる徹底的なデータサッカーが特徴的だ。
プレーを分析され、着実に攻撃の芽を摘まれるというのは選手にとってなかなかストレスが溜まるものである。その上御影専農は分析した選手をトレースしたりもするそうだから、対戦したチームはいつもの調子でプレーできなくなることだろう。場合によっては、試合が終わったあとも不調が続くかもしれない。
以前帝国に催眠術をかけた意趣返しのつもりで私達と対戦させたのだろうか。もっとも、私の教え子達はその程度で調子を崩すほどヤワではないが。
御影専農との初戦は明々後日。
それまでに、私の最後の仕事を終わらせなければならないな。
作戦の決行は、明日だ。
<原作考察>
原作では、雷門と帝国は同じ地区予選で戦う。しかし、これは40年前に雷門と帝国が全国大会の決勝で戦ったことに矛盾する(どちらも前年度優勝校ではないため)
40年の間にルールが変わった可能性もあるが、ここでは「本来雷門は帝国とは別グループだった」として解釈した。
(原作で地区予選のことを「関東大会」と呼んでいたことは都合よく無視します。その規模で地区予選が行われていたにしては、全国大会の出場校が多すぎるので)
そろそろFFが始まるかと思うと感慨深いですが、気持ちよくサッカーをするためにはまだ抱えている問題が多すぎます。ということでFF開幕はあと数話お待ちください。
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
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正直誰も分からない
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主要な数人は顔が分かる
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アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
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ベンチメンバーまで全部完璧に分かる