イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。   作:ウツマ

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ということで、秋葉名戸戦。普通に戦って幻斗達が苦戦する展開が考えられなかったので、今回はほとんど秋葉名戸目線で話が進みます。

2025/11/13追記
終盤の展開をごっそりカットしました。陰鬱なとこは少ない方がいいので


正々堂々

「本日はわざわざお越しいただいてありがとうございます。今日は正々堂々とした試合をしましょう」

 

 やけにかしこまった口調で野部流は僕らを歓迎する。

 昨日のメイド喫茶での件があったから仕方ないんだろうけど。

 

「正々堂々、だってさ……」

 人形は疑わしそうに呟く。人形は僕と同じく薬を盛られたまさに被害者なのだから、皮肉の一つや二つ飛ばしたくなるのも仕方がない。

 

 それが聞こえてかどうかは分からないけど、野部流はさらに俯いて暗い顔をする。

 

 

「どうして……許した?」

「え?」

 

 それは唐突で、質問したのが普段は滅多に喋ることすらない八墓だったから僕は余計に驚いた。

 

「俺なら……許せない。俺や俺の仲間を傷つけようとしたやつは、呪う……末代まで」

 

 髪で隠れた八墓の瞳は漫画や秋葉名戸に憎しみの眼差しを向けているんじゃないかと思うと、少し恐怖してしまう。けどそれ以上に、八墓の熱く仲間思いな一面が窺い知れたようで嬉しい。

 

「でも、告発とかしちゃったら不戦勝になっちゃうじゃん」

 

 いっぱしのサッカーバカとして、それは面白くないなって思っただけ。

 

「……」

 八墓がどんな顔をしているのかは見ることができないけど、きっと呆れた顔をしているんだろうな。

 

 

「決着は正々堂々サッカーで、ってね」

 ゴールずらしまでは許容するからさ。

 

 

 

★★★

 

 

 

 尾刈斗にマネージャーがいないことに憤慨する相戸留(あいどる)仮沢(かりさわ)に、ひたすらゲームをしている芸夢(げいむ)明井戸(あけいど)達。

 そんな個性的な面々の集まる秋葉名戸控え室で、キャプテンと副キャプテンは暗い顔をしていた。

「正々堂々戦って、勝てると思うか?」

 

「強豪と呼ばれる野生にだって勝つことができたんだ。私達が勝てないとは限らないさ」

 野部流はそう口にするも、表情はやはり暗いまま。

 

「でも勝てないと思ったから昨日薬を盛ったわけだろ?」

 

「……ああ」

 

 2人とも分かっていた。正々堂々尾刈斗に勝つなんて不可能だってことは。

 

 

☆☆☆

 

 

 秋葉名戸にも、悪事に手を染める理由があった。

 

 体力も技術も足りない秋葉名戸は、FFに出場するにあたって五里霧中やゴールずらしなど、反則スレスレの技を編み出した。優勝したらアメリカ旅行に行けるかも?という淡い夢を見て、みんなでアイデアを出し合ったのだ。

 何かの思い出になるだろう、という記念受験のような心持ちも幾分かあった。それでも地区大会初戦、強豪野生中を相手に勝つためのサッカーをして、見事1-0で勝つことができた。

 

 尾刈斗の部室にて、人形はきっと野生中にも薬を盛ったのだろうと推理していたが、この勝利は(少なくともゴールずらし以上の)卑怯な手を使っていない、紛れもない勝利だった。

 

 後半開始早々のど根性バットで意表を突けたこと、素人の拙いフェイントが通じたこと、五里霧中とゴールずらしのトリックに最後まで気づかれなかったこと。野生に勝てた勝因を、このように野部流は推察していた。

 確かに身体能力は秋葉名戸の比ではなかったが、軽くジャンプしただけでつられて数m跳び上がるのは案外扱いやすかった。

 

 

 野生中に勝利した夜、みんなでいつものメイド喫茶に集まり、監督の奢りで祝杯を開いた。スポーツというのも案外悪くないな、今度スポ根もの書いてみようか、なんて言いながらお菓子を貪りゲームを囲む。

 最高に楽しい夜だった。

 

 野生中に勝ったことを後悔する日が来るだなんて、そのときは誰も思いもしなかった。

 

 

 野部流と漫画の2人が影山から接触を受けたのは、その翌日。

 尾刈斗が準決勝に進まれると困るから、次の試合は勝ってほしいという話だった。何か策はあるのかと尋ねられ、ゴールずらしについて白状したが、『そんな子供騙しが通じる相手ではない』と一蹴された。

 『試合までに絶対に勝てる方法を考えろ。さもなければ後悔することになる』とも脅しをかけられた。

 

 最初は2人とも影山の脅しをあまり真面目に受け取っていなかった。

 しかし次第に周囲で異変が生じ始め、その言葉の意味を理解し始める。

 

 秋葉名戸が取り壊されるかもしれないという噂が流れ始め、RAI@CAFEは教育に悪いという名目で近々休業させられることが決まった。

 

 そして、いつも仕事でお世話になっている編集者から、新作の件ですが……と野部流に電話が来た。

『大変申し上げにくいのですが、今書いていただいている新しいライトノベルの出版は取りやめることになりそうです』

 

『そんな……一体どうしてですか?』

 

 野部流と漫画の代表作であるシルキーナナが有害図書に分類されることが決まったということ、それに伴って新作を出版すべきか社内で会議があり、上からの圧力で出版は取りやめる方向性で話がまとまったということ。急な決定に罪悪感があったからか、編集者は丁寧に事情を説明してくれた。

『上から出版について口出しされるなんてなかなか異例です。野部流君、出版界の大物を敵に回したりしてませんよね?』

 

 出版界の大物ではないが、野部流が思い浮かべたのは当然影山の姿だった。

 秋葉名戸の取り壊し、RAI@CAFEの営業停止、新作ライトノベルの出版停止、全て偶然同時に起きたとは到底考えられなかった。

 

 そしてその翌日、影山は再び野部流の前に現れた。『死ぬことは無いから安心して使え』と謎の薬の入った瓶を渡し、再度野部流に脅しをかけた。

『それから、警察に言っても無駄だ。警察には私の協力者がいてな。君が万が一通報なんてした場合には、私のもとに連絡が来ることになっている』

 

 

(尾刈斗に飲ませろ、ということだろうか……)

 瓶を眺めながら影山の意図について野部流が考え込んでいると、ある人物から話しかけられた。

 

 影山に脅されていた人物は、野部流と漫画の他にもう1人いた。最も直接的に影山の被害に遭う人物、RAI@CAFE店長で監督の真二屋才人(まにや さいと)だ。

 

 

『やるしかありませんね』

『ボクも生活がかかってるから仕方ないんだヨ〜』

 真二屋はいつも通りのふざけた口調だが、それはこれから行う犯罪への緊張の裏返しだと野部流は分かっていた。

 

 漫画には何も告げないまま、野部流と真二屋はメイド喫茶での作戦を実行に移した。

 

 そして、失敗した。

 

 

☆☆☆

 

 

 秋葉名戸は、0-7で尾刈斗に大敗を喫した。

 

 彼らの持つ奇策の全ては、紫籐によってたやすく攻略された。薬入りのカレーを回避されたときといい、実は未来でも見えているんじゃないかと野部流は紫籐に怯えていた。

 

 

「あの薬、結局使わなかったのか」

 漫画が野部流に問う。

 

 影山からもらった、怪しい薬。自分達が勝つためには、これを尾刈斗のスポーツドリンクに混ぜてやるしかない。試合が始まる前に、2人はそう話していた。

 幸いなことに尾刈斗ベンチにマネージャーはいなかったから、混入させる隙は確かに存在した。

 

「私は確かに彼らのスポーツドリンクに薬を入れようとした。だけど、できなかったんだ。

 私の中のシルキーナナが、そんなことを許してくれなかったから」

 野部流は答える。

 

「ああ、そうか。きっとそれが正解さ」

 

 2人にとって、シルキーナナは宝物だった。その宝物を汚すような間違いを選ばなかったことに、漫画は少し安堵していた。

 沈黙が2人を包む。

 

 

「ねえ、その薬について、僕に詳しく教えてくれないかな?」

 沈黙を壊したのは、野部流が今もっとも怯えている相手、紫籐だった。

ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?

  • 正直誰も分からない
  • 主要な数人は顔が分かる
  • アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
  • ベンチメンバーまで全部完璧に分かる
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