イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
準決勝の相手は暴走学園。不良が学校を支配してるとか、近づいたらカツアゲされるとか、ろくでもない噂が絶えない治安の悪い学校だ。
あまり積極的に練習試合などを申し込んで関わりを持ちたい学校ではなかったから、一度も試合をしたことはないんだけど、キラースライドとかジャッジスルーなどの暴力的な必殺技を好んで使っているらしい。うん、解釈一致。
風丸に脅しをかけられていたこともあって、暴走学園の奴らが殴り込みに来るんじゃないかと少しビクビクしていたが、特に何事もなく試合当日を迎えることができた。
今回は普通にサッカーができるのかな?って気を緩めちゃってたから、対戦相手の姿を見たときに心の中でこう叫んでしまったのも悪くないと思う。
(なんでもうサッカーを始めてるんだよ、蹴りのトビー!)
原作では世界編で仲間になるはずの男、飛鷹征矢がそこにいた。しかも、なんか暴走学園のキャプテンらしい。
☆☆☆
「暴走学園が使う必殺技は帝国学園のそれと重なる部分が多い。次の帝国戦の練習だと思って挑め」
久遠監督が普通に普通なことを言っている。必殺技禁止みたいな奇を衒った戦術は、ありがたいことにあれ以来ない。
「今回、敵は高性能のカメラを用意しているようです。僕も持っていますが、紫外線や赤外線などさまざまな波長の光を探知できる優れものです」
UFOの捜索のため毎晩夜空を観察してるという円谷が、観客席に設置されたカメラを指さして解説する。ここでいう“敵”とは、暴走学園ではなく帝国のことだ。
「つまり、御影専農戦で行ったようにモヤでフィールドを隠すという手法は、無意味である可能性が高いということです。この試合、秘策は使わずに勝つ必要があります」
円谷の尤もな意見に耳を傾けながらも、僕の頭の中は飛鷹がサッカーをしている謎でいっぱいだった。
「さっきから紫藤も様子がおかしいけど、暴走学園の選手に知り合いでもいた?」
心の中の混乱を顔に出さないように努めていたはずなのに、三途にはほとんどお見通しだ。本当に察しが良すぎやしない?
「知り合いっていうか、僕が一方的に知っているだけなんだけど」
「凄く驚いていたように見えたから、その人がサッカーやってるって知らなかったってこと?」
「うん、まあ、そんな感じ」
適当に誤魔化して答えながら、もう一度暴走学園のベンチを見ると、飛鷹以外にも知っている顔がちらほら。オレンジのリーゼントが特徴的な背の低い選手は
(いやほんと、なんで君らサッカーしてんの? サッカーのこと玉遊びって見下してたんじゃないの?)
頭の中はずっとハテナだらけだけど、僕の混乱をおいてけぼりにして試合は始まる。
☆☆☆
尾刈斗中学
ー円谷ー月村ー人形ー
ーー八墓ーー魔界ーー
ー霊幻ーーーー木乃伊
ーーーー紫藤ーーーー
ーー不乱ーーー屍ーー
ーーーー不死ーーーー
暴走学園
ー佐野ー唐須ー窪谷ー
ー浦飯ー三橋ー荒北ー
ーー小山ーー細川ーー
ーーーー鈴目ーーーー
ーーーー飛鷹ーーーー
ーーーー太田ーーーー
尾刈斗のフォーメーションはいつもの5-4-1ではなく、3-4-3のやや攻撃的な布陣。ジャッジスルーなどの技にも対抗できるようにDFは頑丈な不乱先輩と屍、ついでに僕といった感じだ。GKが不死先輩なのは久しぶりだね。
フィジカルの弱い三途や柳田の選出は避け、帝国戦に備えてくれぐれも怪我をすることがないようにという久遠監督の思惑が見える。逆にレギュラーメンバー以外は怪我をしても仕方がないという、久遠監督のやや冷酷な一面が現れたとも言える。
対して暴走学園はかなり尖っている。守備は飛鷹に任せ、FWが大量。1-3-6という馬鹿みたいなフォーメーションだ。
ただ舐めてかかってはいけない。トーナメント表を見た限り、比較的強豪の少ないグループに属してはいたが、それでもここまで2戦勝ち上がってきたのは事実だ。
原作での飛鷹の活躍を知っているから、守備は飛鷹1人で十分なのだと言われても納得してしまう。もし既に真空魔を習得しているのなら、僕達の放つシュートはほとんど止められてしまうだろう。
暴走学園ボールで試合は始まる。
開始早々、単身で攻め上がる唐須。想定していたより遥かに速い。でもサッカーは1人で――
「サッカーは1人でするもんじゃないんだぜ。怨霊」
言いたいことを魔界先輩に言われてしまった。そしていつもの怨霊で唐須の足止めを図る。
しかし怨霊の発動を見た唐須は、チッと軽く舌打ちしながら、蠢く手が足に届くより早くバックパスしてボールを奪わせない。
「猪突猛進タイプに見せかけて冷静な判断もできんのかよ」
なかなか手強い相手かもしれないと、警戒レベルをさらに一段階上げる。
ボールは1度後ろに下げられたあと、再び唐須に戻される。そして唐須は一直線で魔界先輩に向かって走り出す。
ドリブルとはディフェンスを避けようとするのが普通であり、それを目掛けてダッシュだなんて普通じゃない。突然の唐須の行動に怨霊の発動も間に合わず、魔界先輩はジャッジスルーの餌食になる。
「死ねっ! ジャッジスルー!」
魔界先輩の体は大きく吹き飛ばされるが、上手く受身は取れたみたいだ。それにしても、そんなストレートな暴言はダメだと思うよ。帝国学園の咲山もそうだったけど、ジャッジスルーを使うときは暴言を吐かなければならないルールでもあるのだろうか。
木乃伊がボールを奪いに行くが、上がってきた細身のMFに寸前でパスされてしまう。
MFがここまで上がってきているということがおかしい。元から最前線に6人ものFWがいる超攻撃的フォーメーションだったのに、さらにMFの選手も加わり尾刈斗のコートに暴走の選手が集結しているという異常事態だ。
カウンターは全く考慮していないのか、それとも……
細身のMFは隣に立つ小柄なMFにパスを送るが、その際に何故かボールが平べったいサーフボードのような形に変形する。世界最高峰のチームも使うドリブル技だ。
「エアライド!」
そういえばこいつら原作ではスケボー乗りこなしてたんだっけとか感心しているうちに、小柄なMFは八墓と霊幻を飛び越えて、僕のいるディフェンスラインまで切り込んでくる。
「貰うよ、クイックドロウ」
「キラースライド」
咄嗟のクイックドロウでボールを奪うが、直後に飛び込んできた必殺スライディングで奪われてしまう。飛び込んで必殺技を使う一連の動作になんの躊躇いもないのが恐ろしいところ。
「唐須やっちまえ!」
右サイドにいた唐須の元に再びボールが渡る。右サイドバックの屍が対応するが、唐須はニヤリと嫌な笑みを浮かべたまま、やはり避けようとはせず屍に突っ込んでいく。
再びジャッジスルーされてしまうのかと屍が臆したその隙に、唐須はボールを空中に蹴りあげる。そして追走していたもう1人のFWにグルグルと回転の勢いで投げ飛ばしてもらい、唐須は空中でボールに追いつく。
「行くぜ! ホークショット!」
不乱先輩のシュートブロックも入れられない右サイドからの必殺シュート。多分意図したわけではないんだろうけど、空中からのシュートということで歪む空間が通用しないのも厳しい。
「ロケットこぶし」
「キラーブレード」
ロケットこぶしで勢いを殺した後、青い刃で切断する。不死先輩のこの二段構えは鉈とは違った安心感があるけど、必殺技を2つ使う分消耗も倍だから気をつけないと。
不死先輩得意の遠投でハーフライン近くに立つ八墓までパスが渡る。相手のディフェンスは鈴目と飛鷹の2人だけ。
「俺が止めます! キラースライド!」
「カマイタチ」
鈴目の必殺技も難なくきりもみ回転の必殺技で突破し、残すは飛鷹のみ。
飛鷹はボールを奪いに行くわけでもなくゴール前でキーパーかのように佇んで、さあどこからでも打ってこい、とシュートを待ち構える。
FWを自由にさせるということは、こちらはいくらでも準備ができるということ。すなわち、絶好のシュートチェインチャンスなのだ。
飛鷹がゴール前にいるおかげでオフサイドにもならないしね。
「彗星シュート!」
「からのファントムシュート!」
「トドメだ! ファントムシュートV2!!」
円谷、人形、月村先輩が順にシュートを重ねる。実戦ではなかなか決まることのない連続チェインだ。
飛鷹はもちろんあの十八番の必殺技でシュートを迎え撃つ。
シュートブロック狙いは実際のところあまり強い戦術ではない。シュートの軌道上でしっかり待つ必要があるし、タイミングを合わせるのも難しい。そして必殺シュートは大抵キーパー技でなければ止めることが難しいため、成功してもせいぜいパワーダウンさせるだけに終わったりもするからだ。
「真空魔V2!!」
――ただしDFの実力が圧倒的である場合はその限りでない。
3人のFWのパワーが乗せられたシュートは、飛鷹が作り出した空間の亀裂に吸い込まれ、その勢いを完全に失った。
「マジかよ……」
たった1人のDFにシュートを完全に止められたという予想外の事態に、月村先輩も絶句する。
月村先輩だけじゃなく、尾刈斗の全員が驚いて固まってしまっている。僕だってそうだ。世界レベルの才能の持ち主だということは分かっていたけど、まさかもう既にここまでの強さを持っているとは思わなかった。
(マジでなんでもうそんな強くなってんだよ、蹴りのトビー!)
原作に登場した飛鷹の舎弟達(一度は唐須の元についたけど、最終的に鈴目と一緒に唐須を追い払ってくれた奴ら)に名前は調べたところなかったので、それぞれの体型から太田、小山、細川と名前をつけました。他の暴走の選手は有名なヤンキーキャラから。
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
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正直誰も分からない
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主要な数人は顔が分かる
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アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
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ベンチメンバーまで全部完璧に分かる