イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
なんで?と心の中で叫んでも現実は何も変わらない。
事実として、飛鷹は3人がかりのシュートを1人で止めてみせたのだから。
「鈴目!」
そしてその驚異的なキック力で、ハーフライン近くまで上がっていた鈴目にパスを出す。
「スカイウォーク!」
空中でボールをトラップした鈴目は、そのまま着地することなく空を駆け抜ける。
飛鷹以外の選手は攻撃が本業ってわけか、やっぱりいい技を持っているね。
そして鈴目からのパスで、ヒョロ&チビのMFコンビにボールが渡ってしまう。2人が繰り出す技はもちろん、
「エアライド!」
ボールを器用に乗りこなし、霊幻の頭上を越えていく。
尾刈斗は空中戦に弱い。歪む空間が空中の相手に効きづらいというのはさっき説明したと思うけど、それよりも困るのは怨霊が届かないことだ。地面を這う怨霊は空中の敵に対してなんの脅威にもなり得ない。
秋葉名戸が何故か勝ってくれたおかげで戦わずに済んだけど、野生中と当たることになっていたら、準々決勝でかなり苦戦していたかもしれないね。
地面に降りた瞬間を着地狩りしようと僕は地上で待機していたけど、サーフボード状のボールだけを前に飛ばして(レジェンドジャパンの綱海が使っていたスパークルウェイブみたいな感じ)、ボールを地面に落とさずに前にパスを繋げられる。
乗り手のいなくなったボードボールは元の球体に戻り、空中のそれを拾いに行くのは前回と同じ唐須。
「ホークショット!」
味方の協力で空に飛んだ唐須が、再び鷹のようにシュートを放つ。
エアライドからダイレクトにシュートをされたせいで対応が間に合わず、不乱先輩のシュートブロックも入れられない。屍のタフネスブロックはそもそも高い角度のシュートには使えない。
「ロケットこぶし」
「キラーブレード」
不死先輩がなんとかセーブしてくれたけど、このペースで攻撃されるとさすがに体力っていうかTPが持たないな。
「これ、結構まずいアルネ。次はちゃんと食い止めないとアル」
「私達が苦手とする空中でのパス……弱点は分析済みと」
「スカイウォークとかエアライドとかも厄介だけど、ジャッジスルーも気をつけねえとな。あれ普通に痛いし」
暴走のドリブル技は多彩で、どれも対処が難しい。このままだとどうしても流れを暴走に握られてしまいそう。
不死先輩は前回はカウンター狙いで中盤までボールを投げたけど、飛鷹の対処法が見えない以上無闇に攻めてもまた痛い目を見るだけだと判断して、手近な屍にパスを出す。
僕と屍と不乱先輩の3人でボールを転がしながら、どう攻めようかと様子を探る。
しばらく戦況は膠着していたけど、屍がボールを持っていたタイミングで暴走FWに急に距離を詰められてプレッシャーを与えられ、ゴールの方にボールを零してしまう。
不死先輩が咄嗟に前に出て蹴り返してくれたからなんとかなったものの、今のはかなり危なかった。
不死先輩が蹴り返したボールは暴走のFWに拾われてしまうが、後ろに下がっていた人形が対応する。
「どけっ! ジャッジス――」
「ドッペルゲンガー」
自分とボールの間に肉壁になるように人形がドッペルゲンガーを発生させると、突然現れた自分そっくりな存在に驚いて相手はジャッジスルーの発動を中断した。
相手が驚いている隙に、人形本人がボールを掠めとる。この技はドッペルゲンガーを操作してボールを奪ってもらうこともできるし、ドッペルゲンガーをミスディレクションとして自分でボールを奪いに行くこともできる器用な技だ。
「このドッペルゲンガーは君と痛覚が共有されるから、蹴ってくれた方が面白かったのに」
残念だなあ、と人形は平気で嘘をつく。ドッペルゲンガーにはそんな仕様はないんだけど、この嘘を信じてしまえばドッペルゲンガーにジャッジスルーなどの技を使うことが躊躇われてしまう。
即座に淀みなく嘘をつけるのは本当に人形の才能だと思うよ。
「月村パイセン!」
人形から月村先輩にボールが託される。3人がかりのシュートすら止められたから、月村先輩1人の力でゴールを奪うことなどできそうにはないけど、今は月村先輩に頼るしかない。
「ファントムシュートV2!!」
「真空魔V2!」
6つに分裂したボールのうち本物だけが空間の裂け目に吸い込まれる。ファントムシュートの強みが何も活かせていないね。
「チッ、やっぱりダメか……」
いつまで経っても上手くいかない様子に魔界先輩も苛立ちを覚えているみたいだ。
「もう1回だ! 鈴目!」
「二度も同じことはさせませんよ」
さっきと全く同じように飛鷹は鈴目までロングパスを送るが、それを読んでいた円谷が空中でパスカット。
「魔界先輩、月村先輩に繋げてください!」
円谷は着地したあと、魔界先輩にパスを出す。月村先輩に次ぐ実力を持つ幽谷や武羅渡がいないからってのもあるけど、やっぱりこのチームのエースとして信頼されているのは月村先輩なのだ。月村先輩ならなんとか飛鷹を攻略してくれるという無根拠な期待をしてしまうのも仕方ない。
ただ魔界先輩は円谷と違って月村先輩に頼りきるつもりはないなようで、無闇に攻めても無意味だと思っているのか、しばらく様子を見るためにボールを保持する。
前半終了も近い。膠着した状況を打破しようと鈴目が魔界先輩に近づいてくる。
「魔界の住人の俺様を舐めんじゃねぇ! 呪い!」
後ろを振り返ることなく鈴目を必殺技で身動きを取れなくして、そのまま魔界先輩は飛鷹に突撃していく。
「おい魔界、1人で攻めんな!」
月村先輩の忠告も無視して、魔界先輩は飛鷹を抜き去ろうとする。
「キラースライド!」
しかし、真空魔以外も使えるらしい飛鷹によってやはり阻まれる。
「クソっ!」
「魔界、何してんだよ」
「お前に渡したって、どうせまた点は決められなかっただろ」
月村先輩と魔界先輩の間に険悪な雰囲気が流れる。
確かに月村先輩のファントムシュートでも飛鷹の真空魔は対処できそうになかったけど、守備よりのMFである魔界先輩のほうがなおさら不可能だ。いつもの魔界先輩ならそんなことちゃんと分かってたんだろうけど、焦って冷静じゃなくなっているんだ。
先輩達がいがみ合っている隙に、ボールは飛鷹から鈴目へと移される。
「もういっちょ! スカイウォーク!」
何度目か分からないカウンターを食らう。僕達がなかなか対処できない空中のルートを使ってボールは再び前線まで運ばれる。
「ドッペルゲンガー。君が気絶してもいいなら好きに蹴りな」
パスコースを制限するように人形が再びFWのドッペルゲンガーを発生させる。人形はカウンターを警戒して、僕達DFのいる位置まで下がってきてくれていたんだ。
痛覚が共有されるという嘘を信じている相手は、乱暴なプレーをするわけにもいかずに何も出来ずにいる。
「しょーもない嘘に騙されてんじゃねーぞ! 死ねっ!!」
そこに唐須がやってきて、なんと、ドッペルゲンガーを直接蹴り飛ばした。
「あ? なんか文句あるか? この気色悪い偽モンは必殺技の一部なんだろ。蹴り飛ばしてもファウルにもなるわけねーじゃん」
「唐須、こいつは俺と痛覚が共有されるって」
もし本当だったら俺死んでたぞ!と唐須に怒るチームメイト。
「そーゆーとこが馬鹿なんすよセンパイ。もしほんとに痛覚が共有されるんなら、自分からその偽モンを殴るとか、いくらでも他にすることあったに決まってるっしょ」
意外に冷静に推理を述べる唐須。しっかりと論理的に人形の嘘を見抜いていたわけだ。
「ま、もし本当に痛みが共有されたって俺が困るわけじゃねーし」
そう自己中心的なことを言いながら、唐須は攻め上がる。
「クイックドロウ!」
「どけっ! ジャッジスルー!」
便利なクイックドロウで唐須からボールを奪おうとするも、ジャッジスルーの直撃を食らってしまう。
かなり吹っ飛ばされた。痛い。
唐須が使うのは再び右サイド。最初の攻撃と同じように屍が唐須の前に立ちはだかる。
「何回やっても同じだっつーの! ジャッジスルー!!」
来たる衝撃に備えようと目をつぶる屍。しかし屍の予想していた衝撃は訪れない。
「騙されてやがんの」
唐須は必殺技の名前は叫んだが、実際にはジャッジスルーは使わなかった。ライアーショットのようにただ屍の頭上にボールを通して、屍を抜き去った。
少し卑怯にも思えなくもないけど、これくらいの卑怯さは僕達も使ってきた。トリックイリュージョンボールとかね。冷たい言い方だけど、騙された屍が悪い、と思う。
屍が抜かれたことで残る砦は不死先輩だけ。
「ホークショット!!」
3度目のシュートが不死先輩に襲いかかる。
「キラーブレード」
青い刃1つだけでは、唐須のシュートを止めるには足りなかった。
前半終了を目前にして、尾刈斗は1点の失点を許した。
☆☆☆
ハーフタイム。飛鷹の真空魔を崩す術がない以上、1点の失点はかなり重たい。
あからさまに口にする人はいないものの、ベンチには絶望に似た雰囲気が漂っている。
久遠監督がメンバーを集めて作戦を告げる。
「後半に向けての作戦を言う。まず、不死を鉈と交代する」
必殺技を多く使わされて、不死先輩は限界に近い。納得の交代。不甲斐ない結果だが、多分不死先輩本人もこう言われることを分かっていただろう。
「それから、屍と魔界にも下がってもらう。2人はこの試合に勝つために必要ない。2人の代わりに――」
「監督」
久遠監督が選手交代を告げている最中だけど、僕は口を挟む。確かに、屍と魔界先輩は現状このチームのウィークポイントとなってしまっている。その2人を下げようとする監督の意図は分かる。
「僕は2人を下げることに反対です」
でも、僕はその判断が正しいとは思わない。
「久遠監督は監督として選手をよく見ているのだと思います。でも、僕はキャプテンで、監督よりチームのことを知っている自負があります。
屍と魔界先輩はこの試合に必要です。2人と話をする時間をください」
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
-
正直誰も分からない
-
主要な数人は顔が分かる
-
アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
-
ベンチメンバーまで全部完璧に分かる