イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。   作:ウツマ

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信頼とか、夢とか

 試合はテンマーズのボールで始まったが、すぐにアルファによって奪われる。

 そのボールをアルファはフェイのデュプリ達に暴力的にぶつけていく。試合に勝つことでなく、潰すことを目的としているプレーだった。

 

「こんなのサッカーじゃない!」

「ちゃんとシュート打ってこいよ!」

 

 天馬と円堂が叫んだ。プロトコルオメガのやり方に憤りを覚えていたのは僕だけではなかったようだ。円堂の叫びを聞いたアルファはデュプリ達をいじめるのをやめ、標的を円堂に移す。ボールを他覚蹴り上げ、シュートの体勢に入る。

 

シュートコマンド01

 

 アルファの必殺シュートがテンマーズのゴールに迫る。だけど見くびったなアルファ。その程度じゃ円堂から点は奪えないぞ。

 

ゴッドハンド!」

 

 イナズマイレブンの象徴とも言えるその金色の手は、アルファの必殺技をしっかりと受け止めた。

 

「やったね! 円堂!」

 

「あれが円堂さんの伝説のゴッドハンド……」

 

 「時空の共鳴現象」などではなく、円堂は既にゴッドハンドを習得している。僕の知るゴッドハンドのイメージを正確に円堂に伝えたら、何故か完成してしまったのだ。

 円堂が受け止めたボールはデュプリのストロウ、チビットを渡り天馬へと繋がる。

 

「円堂さんから貰ったこのボール、決めてみせます!真マッハウィンド!」

 

キーパーコマンド03

 

 天馬はザノウの必殺技も容易く打ち破り、テンマーズは先制点をもぎとった。

 円堂のセーブから流れるように繫がった。やはり円堂には流れを作るパワーがある。

 

 試合はプロトコル・オメガのボールで再開する。さすがのアルファも、まさかの失点にこのままでは厳しいと悟ったようだった。

 

天空の支配者ホウオウ、アームド!」

 

 化身を身に纏う。化身すらよく分からない僕にはどういうわけだかさっぱりだが、今までとは段違いな力を持つことはすぐに理解出来た。

 さっきよりも速いスピードでスライディングを躱しながらこちらへやってくる。

 

「ファントムミ……」

 

 僕も必殺技を使ってアルファを止めようとすると、目の前からアルファの姿が消えた。

 

「上か?」

 

 見ると、身に纏った化身を翼のようにして僕の頭上でシュートを放っていた。必殺技を使ってないにも関わらず威力もスピードもさっきとはまるで違う。僕では全く太刀打ちできない、アルファの強力な化身アーム度。でもきっと円堂はそれを止めてくれる。そんな確信があった。

 

 それはいわゆる信頼なのか、ただの原作知識なのか。ただ一つ言えることはその確信は間違っていなくて、やっぱり円堂はすげえやつだったってことだ。

 

「サッカーが滅んで、たまるか!

 魔神グレイトグレイト・ザ・バンド!」

 

 化身とかいう訳分からんものを背中から出して、円堂は見事シュートを止めてみせた。

 

「円堂さんが、化身を?」

「ズバリ、時空の共鳴現象だな!」

 

「円堂! いつの間にそんな技を覚えたの?」

「俺もよく分かんないんだけど、絶対止めてやる!って思ったら出来たんだ!」

「分からないけどできたって……やっぱ円堂はすごいよ」

 

 天馬達が騒がしい様子なので、僕だけ黙っているわけにもいかず、驚いたようなフリをして適当に円堂と話す。こうやって知らないフリをしているとなんだか申し訳ないような気持ちになる。

 ボールが外に出ているわけでもないのに長時間試合を止めるのはさすがによろしくないので、円堂からボールを貰って再び反撃に移る。

 

 しかし先程の反撃を見てか、プロトコル・オメガは天馬達FW陣のマークを強めている。デブーンにボールを渡しながら、攻撃の目を探る。

 デブーンに向かってエイナムが近づいていった。もう一度僕のところにボールを戻すようジェスチャーしたが無視され、代わりに前線のフェイに向かってロングパスが放たれた。

 

「甘いねえ、そのパスは」

 

 しかしそのロングパスはクオースの素早いクリアによって阻まれてしまった。

 

 

(僕はフェイから信頼されていないのかな?)

 

(デュプリの操作による体力の消耗を減らすための数合わせとしてテンマーズに入れてもらったけど、戦力になるって思われてないに決まってる。

円堂は化身までして大活躍しているけど、僕なんかいてもいなくても変わらないんだ)

 

 そんな後ろ向きな思考は観客席を駆け下りる足音によって中断された。

 

「おーい!

 この試合、俺も入れてくれないかな?」

 

「剣城! 来てくれたんだ!」

 

「いや、俺は君の知る剣城京介ではない。京介の兄、剣城優一だ」

 

「優一さん、もうサッカーができるようになったんですか?」

 

 天馬は困惑しているのだろうが、原作通り優一さんはテンマーズの一員として僕達と戦うことになった。きっと試合はこのまま原作通りに勝つのだろう。

 

「優一さんと戦えるなんて、夢みたいです!」

 

「俺もあの円堂さんと戦えるなんて夢のようさ。

 それから、そんな顔は似合いませんよ、紫藤さん。一緒にプロトコル・オメガを倒しましょう」

 

 優一さんになんだか僕のことを知ったような口で話しかけられる。もしかしたら10年後の僕の交友関係は思いの外広いのかもしれない。

 

「紫藤さんはすごい人だって信じてますから」

 

 

 そんなことを優一さんに言われたけど、僕には化身もなければ主人公補正とやらもない。その言葉に自分自身が一番納得出来ないまま、優一さんを迎えて試合が再開する。

 

 

 クオースのクリアで試合は中断したため、ボールはテンマーズからだ。新しく参戦した優一さんを基軸に攻め上がる。

 

 優一さんの足元にボールが届くやいなや、華麗な足さばきとスピードでプロトコル・オメガのディフェンス陣をゴボウ抜きする。

 

 これが未来世代の力か、なんて感服している暇もなく、

 

魔戦士ペンドラゴン! アームド!!」

 

 優一さんは未来世代の力の象徴を見せつけてくる。

 

「天馬くん、君も出来るはずだ!」

 

「うおぉぉ! 魔人ペガサスアーク! アームド!」

「で、出来ました!優一さん!」

 

 なんて言っているうちにまた別の未来世代さんが化身アームドを習得していた。

 

 

(化身とは、サッカーが好きだって気持ちが形になったもの、だったっけ? 円堂が化身を出せて、僕が化身を出せないのは気持ちが足りないから。なのかな?)

 

(そりゃ、そうだよね。一度諦めた僕と一度も諦めなかった円堂。どっちが本当にサッカーが好きなのかなんて分かりきってる)

 

 

 勝利の女神は諦めないやつが好き

 

 

 誰が言ったのだったかその言葉は、僕に勝利の女神など微笑まないということを伝えているように感じた。

 

 

☆☆☆

 

 

 

「なんだそれ?すっげえな!」

 

 化身アームドという知らなかった新しいサッカーの姿を見て、根っからのサッカー馬鹿である円堂はその興奮を友人にも届けようとした。

 

「紫藤! 見たかあれ?」

 

 返事はない。

 

「あれ? どうしたんだ? 大丈夫か?」

 

 その友人はうつろな表情で、ゴールでも円堂でもないどこかを見つめていた。

 

 

「この試合、棄権させてもらう」

 アルファがそう宣言した。

 

「それじゃあ、雷門サッカー部は守られたんですね!」

 アルファの棄権、すなわち雷門の勝利に喜ぶ天馬達。

 

「作戦変更だ。紫藤幻斗、お前のインタラプト修正を行う」

 

 アルファは紫藤に近づき、スフィアデバイスを取り出した。そして橙色のボタンを押す。アルファの目的は、紫籐幻斗の心の破壊だった。

 

 ストライクモード

 

「紫藤幻斗、サッカーを嫌いになれ」

 

「僕は紫藤さんはサッカーが大好きだということを知っていますから」

「そうだ! 紫藤がサッカーを嫌いになるなんてありえないぞ!」

 

 優一と円堂の反論は無視して、アルファは紫藤に向かって全力でボールを蹴りこんだ。

 

 

 ボールは紫藤に直撃し、辺りに土埃が上がった。

 

「紫藤! 大丈夫か?」

 

 円堂が心配して声をかけるが、

 

「大丈夫だよ!」

 

 土埃から出てきたのはピンピンした紫藤の姿だった。

 

 

☆☆☆

 

 

「俺は紫藤さんはサッカーが大好きだということを知っていますから」

「そうだ! 紫藤がサッカーを嫌いになるなんてありえないぞ!」

 

(どうしてみんな僕のことをそんなに信じてくれるのだろうか)

 

(こんな辛い気持ちになるくらいなら、わざとアルファに負けてサッカーを嫌いになろうだなんて考えた僕が馬鹿みたいじゃないか)

 

(そうだよ。みんなその通りだよ。僕はサッカーが大好きなんだ)

 

残像……」

 

 全力で僕に向かってボールを蹴りこむアルファを見ながら、僕は小さくそう呟いた。

 

 

「紫藤! 大丈夫か?」

 

「大丈夫だよ!」

 

 僕にサッカーが大好きだということを思い出させてくれた感謝をこめて、出来る限りの元気な声で僕はそう返した。

 

 

☆☆☆

 

 

 結局、アルファ達はそのまま帰っていった。

 

 天馬もフェイもワンダバも優一さんもいつの間にか帰ってしまい、スタジアムには僕と円堂と秋の3人だけになっていた。

 

 

「なあ、今のって夢だったりするのか?」

「夢じゃないよ、多分。僕達、歴史を守ったんだよ」

 

 夢を疑う円堂に僕はそう答えた。

 

「もう日も暮れたし、家に帰りましょう」

 

 秋にそう言われて、僕達は家に帰った。

 

 

☆☆☆

 

 

「プロトコル・オメガ? なんのことだ?」

 

 不思議なことに、家に帰ってから電話で円堂にその話をするとすっかり全てを忘れていた。

 

(もしかして、本当に夢だったりしたのかな?)

 

 もし本当にあれがスタジアムで昼寝をして見た夢だったのだとしたら、今こんなに疲れて眠たいわけがない。

 そう思って僕は眠りについた。




〈原作との相違点〉
円堂が既にゴッドハンドを使える。

ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?

  • 正直誰も分からない
  • 主要な数人は顔が分かる
  • アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
  • ベンチメンバーまで全部完璧に分かる
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