イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
今日は尾刈斗の入学一日目。昨日の疲れは十時間の睡眠によっておおよそ回復し、希望と不安の入り交じった足取りで尾刈斗中へと向かう。正確に言うならば、希望2:不安8くらいの重たい足取りだ。
あの学校でまともな授業を受けられるわけがない。
☆☆☆
前言撤回。授業はそこそこまともだった。最初の授業ということで大体の授業は自己紹介や授業方針の説明だけで終わったが、前世の中学校で受けたものとおおよそ変わらなかった。
面白かったのは理科の先生が、
「私が教える内容を真実だと思わないものもいるだろう。しかし一般的にはこれが真実だとされていて、高校受験の際には覚えていないといけないから信じなくてもいいからちゃんと覚えて欲しい」
と言ったことだ。オカルト的な性質と授業とはある程度割り切って別物として扱っているらしい。
授業の種類も英数国理社とほとんど普通の学校と変わらない。ただ一つ他の学校にないだろうと思うのが月曜日にあるらしい心理学の授業だ。いわゆる総合の時間を使って地木流*1先生が教えてくれるんだとか。
そんでまあ知っての通り地木流先生はサッカー部の顧問でもあるわけなんだけど、サッカー部へと向かうのがほんとに怖い。だってあいつら催眠術かけるんだよ?
意外にも広く清潔感のあるサッカー部室を前に足を踏み入れることが出来ずウロウロしていると、
「お前、入部希望者か?」
紫色の髪の先輩が話しかけてきた。
「オレは
聞いたことのある名前だ。尾刈斗のFWにいたような気がする。
「僕は紫藤幻斗。サッカー部の入部希望です」
「こんな初日からサッカー部来てくれるなんてありがたいぜ。今から練習あるから見ていくか?」
「はい!」
「月村君もさっそく新人さんを見つけたのかい?」
「うわっ!」
赤い髪の毛に白く塗られた顔。いわゆるピエロの格好をした人が突然話に入ってきた。そういえば真・帝国だったかにも似たような格好の人がいたような。
「驚かせちゃってすまないねえ。私は
「
道化先輩のインパクトで隠れて気が付かなかったが、後ろには緑色の長髪の子が立っていた。名前に聞き覚えがあるから、彼もきっと原作にもいたキャラなのだろう。
部室のドアを開けると、それはもう個性的すぎる面々が僕を歓迎してくれた。
「うがー! 1年よろしくうがー!」
「よ、よろしくお願いします」
僕にできたのはただ挨拶を返すだけだった。
「それにしても月村、今日が満月じゃなくて良かったな。あと三日早かったら新入生達に引かれていたぞ」
「お前が言うな魔界。絶対お前の見た目の方が引かれてるぞ」
「俺は魔界の住人だからこれが正装なんだ」
月村先輩と
「そこの1年の君、タロットに興味はありませんか?」
部室の隅でカードを持っていた先輩が話しかけてきた。
「僕ですか?」
「君は紫藤君でしたっけ。僕は
「多呂斗先輩は占いが出来るんですか?」
「いいえ、タロットが君について教えてくれるだけですよ」
何を言ってるかはあまり分からなかったが、とりあえず多呂斗先輩が僕についてタロットカードで占ってくれるらしい。
「何について占ってくれるんですか?」
「いいことを聞きますね。タロットカードは何についてなのか詳細に決める必要があります。今回はあなたの尾刈斗での今後について占うとします」
先輩が丁寧にカードを混ぜ、僕も少しだけシャッフルした。そしてシャッフルし終わったカードの山から上から11枚目と12枚目を出して表に向けた。
「正位置の吊し人と逆位置の愚者ですね」
「これはどういう意味なんですか?」
「正位置の吊し人は自己犠牲、修行、再生を表しますね。そして逆位置の愚者も希望や再生、旅、もしくは無知を表します。
つまり君にとってこの尾刈斗は修行の場であり、何か大切なものを再生させる場所になるのでしょうね。
それから悲しいことに、君はきっと誰かの自己犠牲の姿を見て無知を嘆くことになります」
「あ、ありがとうございます」
半分くらいしか意味は分からなかったけど、再生する何か大切なものというのは「サッカーに対する熱意」とかいうものなのだろうか。占いは誰が聞いても当てはまるようなことを言ってるだけだったりすることも多いからあんまり信用するようなものでもないのかもしれないけど。
自己犠牲と無知。こっちは本当になんのことなのか分からなかった。
自己犠牲――そう言われて思い出すことは一つだけある。でも僕はそれについて無知では無いはずだ。
そもそも僕はこの世界において無知とは対極の存在だし。知りたくないこともたくさん知っている。多呂斗先輩には申し訳ないけどやっぱりタロット占いに特に意味なんてないと考えることにしよう。
「みんな賑やかにやってるね。もう新入生が2人も来てくれてるんですか」
入学式で挨拶したときと同じ、優しいモードの顔で地木流先生が部室に入ってきた。
「はい、1年3組の紫藤幻斗です」
「1年2組の三途渡です」
まだちゃんと挨拶をしていなかったのを思い出し、僕と三途は監督に挨拶をする。
「みんな癖の強い子達だからちょっと怖いかもしれませんが、根はいい子達ばかりだから安心してください。
今からグラウンドで練習をするので見学しておいてくださいね。入りたいって思ってくれたら明日から体操服持ってここに来てくれたらいいので」
☆☆☆
練習を見学している間、同学年である三途と少し話をすることになった。僕も三途も緊張していて、2人ともしばらく何も話せずにいたけど、三途から話かけてくれた。
「キミはもう入るか決めたの?」
「うん。だってそりゃサッカーが好きだから」
昨日の一件で、僕はやっぱりサッカーが好きなんだって分かった。それにイナズマイレブンの世界に転生したのにサッカーと関わらずに生きるってのも変な話だし。
「僕も同じかな」
三途も原作でそうであったようにサッカー部に入ることに決めたらしい。
「そういえばキミってさ、死んだことある?」
「……ないよ。そんなの」
三途の突然の質問に少し固まったけど、嘘をついて答える。
「僕はあるんだ。昔川で溺れて病院に運ばれたけど、そのまま死んじゃったんだ」
どうやらただ話し始めるためのきっかけとしての質問だったらしい。それにしても尾刈斗だからかやっぱり変なことを言う。
「こうして生きてるのに何言ってるの? って思ってるでしょ。
でも僕ははっきり覚えてるんだ。僕が、僕の体から出ていく瞬間。ああ僕って死んだんだって分かった。でも結局、僕はこうして生き返った」
「それは……よかったね」
普通に考えたら荒唐無稽な話なんだろうけど、少なくとも転生とかいうわけわからん体験をした僕はそれを否定できる立場にはない。
そもそもこんな超次元な世界で何が起きててもおかしくないし。
「それでもときどき分からなくなるんだ。もしかしたら僕はもう死んでいて、ここにいるのは幽霊に動かされた死体かもしれないってね」
「僕には、ちゃんと生きてるように見えるけど」
ちょっと不思議ではあるけど、尾刈斗においては多分平均的な不思議さだろう。少なくとも不死先輩とかに比べたらだいぶ人間味がある。
「僕はサッカーをしているときが一番生きてるってことを実感できるんだ。サッカーの興奮で心臓が高鳴るとき、僕はちゃんとここに生きてるんだって自信を持てるんだ」
三途のその霊体験は特殊だけど、サッカーに対する気持ちは僕にも分かるかもしれない。
今はこうしてサッカーができているけど、一度辞めていたときの僕は「魂が抜けていたよう」だったらしいし。
☆☆☆
月村先輩の提案でちょっとだけ先輩方と一緒にボールを触りながら、見学が終わる頃にはもう明日が楽しみになっていた。
朝に抱いていた不安なんてとっくに消え去っていた。
〈原作考察〉
イナズマイレブンGOで神童が信長に言った言葉から逆算すると、イナズマイレブンの舞台は2002年。つまり、入学したのはその1年前の2001年。
当時のカレンダーとにらめっこしながら色々東京の私立とか調べた結果、4月10日が入学式の日じゃないかと推測した。
2001年4月8日が満月なので、この話は満月から3日後ということになる。
尾刈斗中のキャラ考えるのが一番大変でした。その次はタロット調べることですね。
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
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正直誰も分からない
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主要な数人は顔が分かる
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アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
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ベンチメンバーまで全部完璧に分かる