イナズマイレブン 二回目は好きな物から逃げずに。 作:ウツマ
「俺たちの引退試合、楽しんで終わりたいネ」
堀田先輩のその言葉に僕はびっくりした。
「先輩は次の試合負けると思ってるんですか?」
3年生の先輩達はこのFFを最後に引退する。でも次の試合は決勝でもなんでもなく、まだ2回戦だ。きっと先輩は帝国に勝てるはずがないと思って引退試合だと言ったのだろう。
「そんなの、勝てるわけないヨ」
「でもそんなの、戦って見るまで分からないじゃないですか」
先輩のその勝つことを諦めた姿は、見ていたくない。
「でも紫藤だって帝国の強さくらいは分かっているだろ?」
道化先輩が会話に混ざってくる。どうやら道化先輩も勝てるとは思っていないらしい。
「でも、小学校の頃クラブで鬼道のいるチームから点を取ったことがあります」
勝てたわけではなかったけど、全く何もできないわけじゃない。僕の経験がそれを示している。
「こんなこと言うのは癪だけど、オレ達のシュートじゃ帝国ゴールをぶち抜けねぇ。満月の日のオレのファントムシュートでも必殺技を使わせられるかなってぐらいだ」
確かに月村先輩の言う通りかもしれない。あのときはキーパーが源田じゃなかった。どう頑張っても点が入らなければ勝てるはずがない。
「堀田のポルターガイストも月村達のファントムシュートも動きが不規則だったり本物を見分けにくかったりするだけさ。威力は対してないからどれも帝国キーパーの使うパワーシールドを貫くことができないんだよ。
それに今年は1年が帝国の正キーパーらしいね。1年だけど過去のどのキーパーよりも強いって噂さ」
道化先輩が尾刈斗は帝国に勝てない理由を丁寧に解説してくれる。
「それでも、絶対なんてことはありません。帝国の調子が悪かったりしたら僕たちにも勝機はあるんじゃないでしょうか」
「まあ、それもそうだネ」
帝国が本調子なら尾刈斗に勝ち目がない。それを否定できなかったことがどうしても悔しかった。
ちなみに、多呂斗先輩の占いによると正位置の死神と逆位置の塔で「窮地に陥って終わり」だそうだ。
もうちょっとみんなのモチベーションを下げないような言い方はないのだろうか。
☆☆☆
帝国学園との試合が始まる。僕は今回もベンチからのスタートだ。僕なら鬼道を止められると地木流監督にアピールしたが、少しは他のチームメイトを信用しろと断られた。
帝国陣地を見渡すと鬼道や源田や寺門、五条の姿が見える。キャプテンマークをつけているのは鬼道だ。
神成FCで共に戦ったチームメイトはどこにも見当たらない。
帝国ボールで試合が始まった。
「もらうヨ、怨霊」
キックオフの直後、堀田先輩が必殺技で帝国のFWからボールを奪う。幸先のいいスタートだ。
帝国のDF陣のスライディングを避け、1人でゴール前まで突き進む。どう考えても帝国は本気を出していない。それくらい先輩も分かっているんだろうけど。
「侮ったことを後悔しナ、ポルターガイスト」
ゴールに向かって蹴りこんだボールはなんの力が働いてか不規則に方向を変え、ゴールの左上を狙う。
「フッ!」
しかし帝国のキーパー源田はそれを必殺技すら使わずに止めてしまった。
源田の手から投げられたボールは素早いパス回しであっという間にフィールドの中央にいる鬼道のもとへと行ってしまった。
「さあ、反撃開始だ」
「止めるうがー!」
「甘いな、イリュージョンボール」
不乱先輩が鬼道の前に立ち塞がるが、鬼道はボールを3つに分裂させ必殺技を使う隙すら与えずに抜き去っていく。
(ぼくならあれを止められたかもしれないのに……)
「デスゾーン開始」
寺門達FW3人がボールを中心に回転しながら浮かんでいく。
不死先輩はゆがむ空間を使おうと手を怪しく動かすが、すぐに無意味だと気づき別の必殺技の構えに入った。デスゾーンを使う3人は全くゴールの方を見ていない。おそらく彼らはゆがむ空間のからくりを知っていて、催眠術への対策としてゴールを一切見ずに必殺技を放とうとしているのだろう。
「デスゾーン!」
堀田先輩や月村先輩の必殺シュートよりはるかに威力の高いシュート技が尾刈斗ゴールを襲う。
「ザ・タワー!」
「ザ・ゲート・オブ・ヘル!」
「ロケットこぶし」
巨大な塔と恐ろしい装飾の施された門が地面からせりあがって現れる。多呂斗先輩と冥門先輩のシュートブロックでデスゾーンの勢いは大きく削がれ、不死先輩の必殺技でなんとかボールを弾き返す。
しかし帝国はそう甘くはない。
「貰ったぜ!百烈ショット」
弾いたボールをついさっきデスゾーンをうっていたはずの寺門に拾われ、百発(は多分誇張だけど)の蹴りを込めてシュートされる。
「キラーブレード」
不死先輩は咄嗟に青い刃を出してシュートを止めようとするが、ロケットこぶしを使用した直後で体勢も整っていなくて押し切られてしまう。
「さすが帝国。生半可なディフェンスでは押し込まれてしまいますね」
「監督、やっぱり僕を出してください。僕がいたら少なくとも鬼道の動きを抑制させることができます」
「いいえ、君は出しません。君にはまだ何も見えていません」
冷静に点を決められた理由を分析している監督にもう一度試合に出してくれるように頼み込んだが、なんだかよく分からない理由で断られる。
原作でも久遠監督が似たようなこと言ってたような気もするけど、何が見えていないのか教えてほしい。
「さあ、気を取り直して行くぜ」
月村先輩がボールを持って駆け上がろうとするが、やはりさっきは手加減されていたようで帝国お得意のキラースライドでボールを取られてしまう。ボールはまたもやゲームメーカー鬼道のもとに渡り、鬼道はイリュージョンボールで百谷先輩を抜き去る。1点目と同じ流れだ。
「同じ展開になるとは思うなよ」
尾刈斗は寺門らFW3人を強くマークすることでデスゾーンを封じる。しかし3人にマークをつけるということはDFを3人減らすことと同義。
当然あいつだってシュート技の一つや二つ持っている。
「ツインブースト」
名前も知らない帝国MFと連携して放たれたシュート。きっとフィールドにいる全員と目を瞑ってでもできるように練習しているのだろう。
「くそっ、間に合わねぇ」
「ロケットこぶし」
FWのマークについていたせいでシュートブロックも間に合わず、不死先輩の飛ばしたその拳は帝国のシュートを止めるには力が足りなかった。
また失点だ。
「監督、アレは使えないんですか? タネは割れて対策はされているでしょうが、少なくとも相手の視覚や聴覚を制限できるはずです」
このままだと失点を重ねて負けるのが目に見えている。成功すると限らなくても、何か手を打つべきだと監督に提案する。
「いいや、無意味です。少なくとも初めのうちは聴覚を封じることができるにはできますが、次第にそれも出来なくなります」
「どうしてですか?」
「慣れるからです。ゴーストロックは不可思議な動きと強迫的な言葉が合わさって初めて効果が現れます。逆にどちらか片方だけだと目と耳が慣れて『この動きや音になんの異常もない』と勝手に脳が判断します。
そうなると結局こちら側はフィールドプレーヤー3人に奇妙な踊りをさせているだけになってしまいます。
君達1年生は知らないでしょうが、去年のFFでの帝国戦で同様の事態が起きました。一体どうして帝国が途中からゴーストロックを無効化できたのか、分かったのは試合が終わった後でした」
少なくとも心理学とかそういった方面において、地木流監督は誰よりも信用できる。今言ったことは間違いのないことなのだろう。
それはつまり、尾刈斗に打開の策はないということだ。
絶対的な敗北。それがはっきりと輪郭を帯びる。
僕を試合に出してくれたら、まだ何かできるかもしれないのに。
ところで、尾刈斗に対してどの程度知識がありますか?
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正直誰も分からない
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主要な数人は顔が分かる
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アニメに登場した範囲で顔と名前は一致する
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ベンチメンバーまで全部完璧に分かる