場所は雄英高校の仮眠室。
ヒーロー科の1年A組緑谷出久は、
「痛、い痛、痛い、オールマイト、これ以上は無理です」
「最初は痛いだろうが、我慢するんだ、緑谷少年…」
オールマイトに、
「でもこれ以上は、さ、裂ける」
無理やり、
「怪我しない為には、柔軟な身体が大切なんんだ」
股割りからの体前屈をさせられていた。
「緑谷少年の体は硬いとまでは言わないが、柔かいとも言えないな……少しづつでも柔軟にしていこう」
「オールマイト、怪我しない為にも柔軟さが大切というのは分かりましたが、……意外と言うか、何故今突然と言うか…」
「……トレーニングにも、向き不向きがあるからね。緑谷少年に合うやり方を考えているのさ」
「僕の為に……ありがとうございます、オールマイト!」
「では次は体幹トレーニングだ」
「はい、オールマイト!」
身体の柔軟と体幹トレーニング。
この二つはオールマイトがヨコヅナから相撲の稽古内容を聞き、緑谷に教えようと考えたトレーニングだ。
格闘技では柔軟が大切とよく言われるが、中でも相撲では必須とされ、
「新弟子力士はプチプチと本当に肉が裂ける音がするほど、股割りを強引にさせられていたらしいですだよ」
とのこと、
ヨコヅナも股割りは180度開き、そのまま地面に体をぺったりとつけ、形で表すと【土】の態勢になれる。
それほどまでに柔軟な体だからこそ、全体重を乗せた速いブチかましをしても、反動を緩和し怪我をしないのだ。
大きすぎる力の反動でいつも怪我している緑谷にも、必須だとオールマイトは考えたのである。
そして、体幹トレーニング、
「あ、わっ、これ難しい…」
今緑谷がやっているは、小さい積み木の上に片足で乗りバランスをとる体幹トレーニング。
「足だけに意識を集中したら駄目だ緑谷少年。全身の筋肉を意識するんだ」
これも相撲の事を教えてもらった時ヨコヅナが、
「四股は足を鍛える稽古と思われがちだべが、体の様々な筋肉を鍛えれますだ。……まぁ、それは相撲の稽古全てに言える事ですだが…」
と、言っていた。
そしてこの考えは、緑谷に足りていないものだ。
対象を拳で殴る行為一つにしても、腕だけでなく様々な筋肉を使う。逆に腕の力だけで殴れば怪我の原因となる。
緑谷の怪我の原因は、個性の力の扱いに慣れていないからではあるが、格闘的な筋肉の扱いが下手なのも理由と考えた。
ただこれは、聞いたところですぐ出来るモノではない。
なので、第一段階的な意味でも、体幹トレーニングで全身の筋肉を意識する感覚を掴ませるのだ。
「……あのオールマイト…柔軟や体幹トレーニンが、大切なのは、分かるんですが…」
緑谷は積み木の上で、片足立ちでバランスを取りながら、疑問に思っていることを聞く。
「体育祭が、間近ですけどこれは効果、あるんでしょうか?」
「はっはっはっ-、ほとんど無いに決まってるじゃないか!」
「えぇ!?、あっ…」
驚き積み木から落ちる緑谷。
「会話してるぐらいで、落ちたら駄目だぞ緑谷少年」
「はい、すみません。いや、ですけど……体育祭に向けてのトレーニングをした方が…1位目指してるのに…」
体育祭はもうすぐだ、それに1位を狙うように言ったのはオールマイト。
「君に体育祭で1位を目指すように私は言った。だが勘違いしないように、体育祭は通過点に過ぎないだろ」
「それは……確かに…」
「今教えているのはもっと先を見据えたトレーニングだ、だから体育祭が終わっても毎日続けるように」
「…わかりました」
「そもそも私は雄英の教師だからね。一人の生徒に体育祭に向けての特別なトレーニングなんてすれば不正行為と言われてしまうよ、はっはっは」
「あ、そっか」
今の時点でも他の生徒が聞いたら不公平とは言われそうだが、個性を引き継いだ関係もあるので仕方ない。
「それに君の事だ。過去の体育祭の動画とか見て、色々分析してるんだろ」
「一応…分析と言える程でもないですが…」
「体育祭では今君が出来ることで、試行錯誤しつつ頑張りなさい」
「…分かりました!、オールマイト」
オールマイトは緑谷が体育祭で1位を取れるように応援しつつ、もう一人の気にかけている生徒、ヨコヅナの事を思い浮かべる。
(もし井ノ中少年と格闘戦のような勝負方式で当たれば、今の緑谷少年に勝ち目はないだろう。だが井ノ中少年は基礎能力も個性も格闘戦に特化し過ぎている、序盤で脱落もありえる……本当に体育祭が楽しみだ)
小説投稿サイト『カクヨム』にて、
ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、
『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922126022
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