大爆発が起こりステージが煙で覆われる。
爆発自体は爆豪の個性によるもの、しかしどれだけの威力の爆発であろうと個性である限り【個性無効】のヨコヅナには通じない。
煙が薄れて、観戦している者達が目にした立っているシルエットは一つ。
シルエットだけとは言えその大きさから、とても爆豪とは思えなかった。
大激突にて勝利したのはヨコヅナ。と思いかけたが、
『なんだ!?』
実況のビックマウスの言葉は観戦している全員の代弁と言えた。
薄っすらと見えるシルエットは、人のとしては歪だった。異形型の個性でなければあり得ないシルエット。
完全に姿が見え、異形なシルエットの答えがわかる。それと何故爆豪が効かないと分かっている大爆破を起こしたのかも、
『井ノ中が爆豪を背負っている!?』
『正確には、爆豪が井ノ中の背中にしがみ付いている、だ』
爆豪は自分の突撃の勢いを爆破の反動で止め、ブチかましを回避しつつヨコヅナの背中に上からしがみ付いたのだ。
当然しがみ付いているだけではない。
『首元を見ろ』
『あれは、チョークスリーパー!?何と爆豪!背中にしがみ付きながらチョークスリーパーで井ノ中の首を絞めている!!』
「相撲じゃあ首締めは、…喉輪って言うんだったか?」
字面だけで適当に言う爆豪。
「…全然、違う、だよ」
途切れ途切れでながら否定するヨコヅナ。
聞いときながらも爆豪も大して興味はない。興味があるのはヨコヅナに首締めが効いているかどうかだ。
頑丈なヨコヅナでも首を締める技は効果がある、完璧に極まっていれば喋る事も出来ないだろう。途切れ途切れでも喋れているのは、片手の、それも指三本だけだが首との間に挟めて抵抗出来ているからだ。
「…これを、狙ってた、だべな」
シャツを破いて頭に巻いたのも、「頭から突撃し合う」や「相撲でテメェを倒してやる」という言葉も…
「ああ、全てこの状態に持って行く為のブラフだ」
爆豪がブラフを使っていたのは試合開始時からだ、「個性を使わず倒す」と言って殴り続け、息切れの演技で油断を誘っていた。
ここまでくると間違えて控え室に入って来たところから、ブラフの下準備ではないかとすら思えてくるヨコヅナ。
「それが、あんたの目指す、№1ヒーローの、戦い方だべか?」
「…普通科のてめぇには分からねぇか。こんなもんはヒーローの前提条件だ」
『爆豪は教えてなくても分かっているようだな』
『あん?どういう意味だイレイザー?』
『何か会話をして爆豪が頭にシャツを巻いただろ、その後井ノ中が相撲の構えを取ったのを見るに、爆豪が体当たりでの勝負を誘ったんだろうな。にも拘らず個性で回避して背中に組み付いてのチョークスリーパー』
『…そう聞くとあれだな、なんか卑怯だな』
『だがルール違反はしていない。勝つ為に戦術を駆使しているだけだ。そしてヒーローも
『あぁ、一人の
『それで犠牲者が零になるなら、迷わずそうすべきだ。法に反しない限りではあるが、ヒーローは…』
「ヒーローの前提条件は、何が何でも勝つ事なんだよ!」
爆豪の言い方では乱暴に聞こえるが、間違ってはいない。
ヨコヅナを
寧ろ、間違っているのはヨコヅナ。
「倒れた相手に攻撃しねぇとか言ってるテメェは、ヒーロー志望としてすら失格だ」
爆豪はヨコヅナをヒーロー志望の普通科生徒だと勘違いしているが、
「……ヒーロー、志望じゃ、ないべ」
ヨコヅナはヒーローを目指していないから失格なのも当然だ。
ヨコヅナは挟んでいる手とは逆の手で、背にしがみ付いている爆豪の頭を掴む。
『井ノ中が爆豪の頭を掴んだ!力ずくで引き剥がせるか!?』
『…いや、眼だ。親指が眼にあてられている』
ヨコヅナは掴んだ爆豪の頭の眼に親指をあて強く押す。
「うっ……」
「眼に指を、突っ込まれたくな…」
ヨコヅナの言葉が終わる前に、
「やれよ」
「ぐっ……」
爆豪は首を絞める腕に全力をそそぐ。
「言っただろうが何が何でも勝つと、たとえ眼を潰されてもな!」
「……そう、だべか」
ヨコヅナはあっさり爆豪の頭から手を放す。本気で眼に指を突っ込む気はなかった、相撲では眼への攻撃は禁じ手である。それでも脅すような真似をしたのはブラフで仕返しをしたかっただけだ。
「終わり、する、だよ」
その言葉を聞いて「奥の手でもあるのか?」と首を絞めながらも警戒する爆豪。
「「「「「!?」」」」」
次にヨコヅナがとった行動に観戦している全員が驚く。
「……井ノ中君…場外」
小説投稿サイト『カクヨム』にて、
ヨコヅナが主人公のオリジナル小説、
『なんでオラ、こんなとこにいるだ?』を投稿しております。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054922126022
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