BLEACH Fragments of Remnant   作:ヴァニタス

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星々に咆哮す

 夜一の教育係を務めてから、もう十五年が経つ。

 霊体の御蔭丸にとってはなんて事の無い数字だ。順当に出世する死神の席次が一つ上がる程度の、少しの成長を促す年月である。

 その年月の中で夜一も出逢った当初よりは成長した。背丈が伸び、身体に女性らしい丸みを帯び始め、可愛らしさより凛々しさの目立つ顔立ちになった。

 そして何よりも――逃げる速度(スピード)が格段に上がっていた。

 

 ――まずいな。見失いそうだ。

 瀞霊廷、白道門(はくとうもん)外、西流魂街。

 青々と生い茂る木々の合間を瞬歩で駆け抜ける御蔭丸は、頬に一筋の汗を垂らす。

 ――(はや)い瞬歩だ。本当によく御成長なさられている。

 先を行く夜一を見失わんとするも、心中では感嘆している。元々天才の類であった夜一だが、こと瞬歩に於いては既に隠密機動の精鋭、第一分隊刑軍(けいぐん)を追い抜かんばかりだ。

 ――とはいえ、ここは流魂街。

 ――治安の悪い地区に入られても困る手前、あまり感心してはいられないか。

 

「――申し訳ありませんが、全力を出させていただきます」

 

 木の葉に紛れながら前を駆ける夜一に呟いて、御蔭丸は鬼道を発動させた。

 重唱(じゅうしょう)、と呼ばれる技術がある。本来は二人以上の鬼道の使い手が同時に詠唱する事で鬼道の威力を上げる、もしくは同時展開を行う技術だ。

 それに類するものに疑似重唱がある。先の重唱を個人で行う際、霊圧を複雑に編み込む事で一度の詠唱を複数回詠唱した場合と同等の威力にする技術だ。

 そして御蔭丸には――()()()()()()()()()()

 

「縛道の六十二――『百歩(ひゃっぽ)欄干(らんかん)』」

 

 言霊を口にする男の背に、過剰な量の光の棒が出現する。それらは落雷のような速度で空に打ち上げられ、四方に散って格子状に組み立てられる。

 それらは数秒と待たず光の檻となり、逃げる夜一の行く手を阻んだ。

 

「何じゃと……!?」

 

 夜一が驚くのも無理はない。この百歩欄干は特別な技術によって生成されたものではない。ただ純粋に御蔭丸の技量が、通常の百歩欄干の何十倍もの効果を生み出しているだけだ。

 そして脚を止めた夜一に縛道の群が襲い掛かり――彼女は見事に捕まってしまった。

 

「ふう……瞬歩も大分上達なされたようですね。教育係としてとても誇らしいですよ、夜一様」

「……そう思うのならさっさと鬼道を解かんか。いつまで女子(おなご)の柔肌を縛るつもりじゃ?」

「夜一様がもう逃げないと誓っていただければ、今すぐにでも解きますよ」

「あー分かった分かった、もう逃げんからさっさと解け」

「走らないとは言っていない、なんて言ったら容赦しませんからね?」

「……チッ、そんな事するわけないじゃろう! ホレ、(はよ)うせんか!」

「畏まりました」

 

 苦い顔でそっぽを向く夜一に微笑んで御蔭丸は鬼道を解除する。逆様だった彼女は器用に着地し腕を組んで御蔭丸を睨んだ。

 

「全くおぬしと言うやつは……最近誰が(あるじ)か分かっておらんのではないか?」

「まさか、そのような事はありませんよ。僕の主人は夜一様です」

「分かっとるならもうちょっと眼を(つむ)ってくれても良いじゃろうに」

「これ以上瞑ると眼が潰れてしまいますので」

「ほう、それは良い事を聞いた。ならば否が応でも潰れてしまうような事を――」

「容赦は致しませんよ、夜一様」

「――……むう、聞く耳持たんやつめ」

 

 笑顔で鬼道の光を奔らせる御蔭丸に夜一は仕方なく下がる。大男を見上げる視線を地面に落として、小石を蹴りながらあからさまなため息をついた。

 

「溜息は幸福を逃しますよ」

「おぬしだっていつもため息ばかりじゃろうが。はあ~っ、どうして儂ばっかり小言を言われねばならんのじゃ。

 最近は何処へ行ってもおぬしが捕まえに来るし、ロクに羽を伸ばす事もできん。いい加減ストレスで死ぬぞ、儂は」

「夜一様が心労で()(まか)られるなら、僕を含めた使用人の方々は今頃墓の下ですよ。

 さ、早く帰りますよ。今日は琴の稽古がございますから」

「あ~~~~~!!! 嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃ~~~~~!!!

 儂はもっと遊びたいんじゃ!!! 琴だか何だか知らんが座って(つる)を引くような地味な事なんぞやってられるか!!!

 今日は帰らんぞ!!! 絶対に、絶対に、()~っ(たい)にじゃ!!!」

 

 手を取ろうとする御蔭丸の腕を弾いて夜一はがるると牙を剥く。本気で抵抗している時にする顔だ。こうなると梃子(てこ)でも動かない事を御蔭丸は知っているので、額に手を当てて思案する。

 ――今週連れ戻した回数はこれで二十一回。

 ――流石の夜一様も我慢の限界か。

 ――しかし、週の六日を遊びに費やす事は流石に看過できない。

 ――どうしたものか……ここは思い切って長期休暇を取らせるべきか。

 

「例えばそう、温泉で湯治する名目で休暇を満喫していただくとか……」

「温泉!? 今温泉と言ったかおぬし!!」

 

 御蔭丸がつい口にした考えに夜一が眼を剥いて食いつく。急な大声にびっくりした御蔭丸は呟いていた事に気付き、穏やかに訂正した。

 

「ああ、いえ、単なる独り言ですのでお気になさらないでください」

「お気になさるに決まっておろう! 温泉じゃぞ温泉!! なぜ儂はこれまでそれに気付かなかったのか! さっきまでの儂を殴りつけ――るのは痛そうじゃからおぬしを殴ってやりたい気分じゃ!」

「既に岩を粉砕なされる夜一様に殴られれば僕でも無事にすまないのですが」

「そんな事はどうでも良い! 温泉じゃ、温泉に行くぞ!」

 

 眼をらんらんと輝かせる夜一は御蔭丸に飛び乗ってはしゃぐ。乗られた御蔭丸は夜一が落ちないよう肩車の要領でバランスを取る。

 これは大人しく帰るという合図だ。御蔭丸は帰るためにまず森を抜けて道を目指して歩き出す。

 ――しかし、信用の表れではあるのだろうが……

 ――やはり無防備に過ぎるな、これは。

 視点の高さが面白いのか周囲に眼を向けてご満悦の夜一に、御蔭丸は思う。

 今の夜一は大人と子供の中間にいて、肉体も女性らしくなっている。着物越しとはいえ、特注の肌を覆う薄い布地を好む夜一の柔らかさは、御蔭丸の肩や首に直接伝わっているのだ。

 それに劣情を催すほど御蔭丸は馬鹿でも欲が強いわけでもないが、教育係としては非常によろしくない事だと考えている。身内の間だけならともかく、外に出てもこの態度は変わらないからだ。

 ――この無防備さはどうにか直して欲しいんだが……

 ――いっその事、自然体での警戒や隙を無くす方法を教えるべきかもな。

 ――そちらの方が夜一様にも合っているだろう。

 

「……――おい、おい! 聞いておるのかおぬし!」

「え? ああ、申し訳ございません。少々物思いに(ふけ)っておりました」

 

 考え事に没頭していた御蔭丸はぺちぺちと頭を叩かれて現実に戻る。そんな男に夜一は腕を組み「全くおぬしは」と鼻を鳴らした。

 

「いいか、もう一度言うぞ? 儂は明日から温泉へ行く! じゃからおぬしはその間、儂がきっちり稽古しておると屋敷の連中をごまかすのじゃ!」

「そんな無茶を罷り通せるならそもそも夜一様を逃がしたりしませんよ。妙な事を仰らず、きちんと手順を踏めば良いでしょう」

「そのような面倒事は知らん! おぬしが適当にやっておけ!」

「それは構いませんが……せめて一言、御館様にお伝えください。夜一様の事ですから日帰りではなく外泊でしょうし、そうなれば僕の一存で決められる事ではございませんから」

「そのくらいならお安い御用じゃ! いや~、楽しみじゃの~!」

 

 よほど楽しみなのか、夜一は鼻歌を歌う。御蔭丸は愛らしいそれを聞きながら、四楓院邸への帰路を歩いて行った。

 

 

 

   φ

 

 

 

「ついに来たぞ、温泉じゃ!」

「そうですね、夜一様」

「温泉卵に温泉まんじゅう、湯どうふ、蒸し物なんでもござれじゃ! 今日は食い倒れるまで食うぞ!」

「止めても無駄だと思いますので何も言いませんが、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「何じゃ?」

「なぜ僕はここに呼ばれたのでしょう。記憶が正しければ、本日は休暇を与えられている筈ですが」

「うむ、確かにおぬしは休みじゃった。それはつまり暇と言う事、じゃから儂があらかじめ呼ぶように言っておいたのじゃよ。

 旅行には付き人が必要じゃからのう!」

 

 にんまりと口角を曲げる夜一に御蔭丸は「そうですか」と諦め気味に苦笑する。夜一との接触を控えるために休みを貰ったのに、これでは意味がないと考えながら。

 ――今日は距離を取っておきたかったんだがな。

 ――今のところ夜一様は、俺を便利屋以上に思ってないからいいものの。

 ――最近は親愛の情も見え隠れしている。

 ――あまりよくない兆候だ。

 もう十五年の付き合いだ。夜一が御蔭丸を信頼するには十分な歳月が過ぎている。だから多少距離を置きたいが、夜一の方からぐいぐい迫ってきてしまい、御蔭丸にはどうしようもなかった。

 ――それに……

 夜一から隣に視線をずらす。御蔭丸と同様、付き人として連れてこられた使用人は他にもいる。その中に夜一と同じ待遇を受けている、卯ノ花烈の姿があった。

 

「夜一さんからお誘いがありまして、せっかくですからお付き合いさせていただきました」

 

 理由を聞きたげな御蔭丸に先んじて卯ノ花は答える。どこか面白がるように微笑む彼女は死覇装ではなく余所行きの恰好だ。

 桜の柄が美しい仕立ての良い羽織を着こなし、控えめな装飾の施された帯に竜胆の帯留めを差している。

 長い黒髪は胸元で質の良い髪留めで一纏めにされていた。普段と違う卯ノ花の姿は御蔭丸の眼に煌びやかに映り、「ああ、成程」と彼は頷き、卯ノ花の装いを褒める。

 ほんのりと頬を染めてはにかむ卯ノ花に満足そうに微笑んでいると、御蔭丸の脚に衝撃が走る。視線を下げると仁王立ちで口をへの字に曲げる夜一が睨み上げていた。

 

「仲が良いのはいいんじゃがな、儂には一言もないのか?」

「ああ、申し訳ございません。(よう)(ちょう)(しゅく)(じょ)の夜一様の事ですから、言葉にせずとも僕の心は伝わっているものだと思っておりました」

「相変わらず達者な口じゃのう。あいにく儂はただの美女ではないのでな、褒め言葉はいくら聞いても足りんくらいじゃ。

 じゃからホレ、好きに言うて構わんぞ?」

「ではお言葉に甘えてさせていただきます。

 

 まずお召しになっている浴衣(ゆかた)がよくお似合いですよ。白地に描かれた青の渦巻き模様と紅色の羽織が夜一様の美しさを引き立てています。

 見目麗しい御髪(おぐし)を整えられている三日月の(かんざし)も素晴らしいです。精巧な造りもさることながら、三日月の光は夜一様の眼の色に似てとても綺麗だと僕は思いますよ。

 今日と言う日を心待ちにしていたためかいつもより肌にハリがあるように見えますし、凛々しい笑顔が普段の数倍まぶしく見えます。

 立場上厳しい事ばかり言う僕ですが、夜一様は本当に素敵な御方だと思っていますよ。夜一様の自由奔放な性格は掛け値なしに僕を惹きつけて止まないのですから」

 

「お、おう……何もそこまで褒めろとは誰も言っとらんぞ……」

 

 ペラペラと淀みなく言い切った御蔭丸にドン引きした様子で夜一は一歩下がる。「おぬし、そういう目で儂を見ておったのか……?」と自分を抱きしめて言う始末だ。

 夜一は御蔭丸を信頼しているとはいえ、男としては見ていない。幼い頃から付き合いのある従兄弟(いとこ)のような感覚で、そんな奴から急に褒められれば照れより怖気を感じるものだ。

 それを見越して御蔭丸は好き放題言ったので、内心満足しつつ外面は苦笑を貼りつける。ただ卯ノ花がやや怖い笑顔でじっと見ていたので咳払いをして話を戻した。

 

「と、ともかく、僕が同行した所で本日お勤めになっている方々以上の働きは出来ませんし、何より高級温泉区画(ここ)()(さい)を知りませんので――」

「あらあら、嘘はいけませんよ、御蔭丸。普段から先を読んで行動する貴方が、これを予期して事前に調べていない筈がないでしょう」

「ほう、そうなのか?」

「……卯ノ花隊長。確かにそうですが、今回ばかりはそこまで都合良く用意しておりませんよ」

「それなら、手荷物の中を(あらた)めても構いませんね? 大丈夫、貴方の言葉が真実なら、夜通し作成した資料なんて入っている筈がないのですから」

「…………どうぞ、ご自由にご覧ください」

 

 諦め顔で御蔭丸は手荷物を渡す。笑顔で受け取った卯ノ花が検分すれば、各温泉の効能からおすすめの飲食店まで分かりやすく纏められた資料が何束も入っていた。

 「ここの温泉は良さそうですね」とか「ほほう、食べ放題とは挑戦的な店じゃな」とか資料を見ながら話す二人を見ながら、御蔭丸は静かに諦める。

 本日の休暇はもう覆されたも同然だ。だからせめて、彼女らを満足させる案内役を(つかまつ)ろう。願いの面影となる男は、ただ静かに微笑んだ。

 

 

 

「おお、広いのう! さすが温泉じゃ!」

「そうですね、夜一様」

「これだけ広いのは泳げと言う旅館からの粋な(はか)らいじゃろう! それを無下にするわけにもいかん、儂は泳ぐぞ!」

「止めても無駄だと思いますので何も言いませんが、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「何じゃ?」

「ここは男湯の筈ですが」

「うむ、確かにここは男湯じゃ。今日は儂らの貸し切りゆえ、たった今から混浴になったがな!」

「…………部屋に戻らせていただきます」

 

 隣で仁王立ちする夜一を努めて見ないようにしながら、御蔭丸は俊敏に出口へ向かう。

 ――夜一様の奔放さには驚かされる事も多いが……

 ――……流石にこれは無いだろう!

 悪戯顔で腰布を掴みとらんとする夜一の手を必死で避けながら御蔭丸は戸に手をかける。そのまま勢いよく横に滑らせ――目の前に現れた卯ノ花を見て固まってしまった。

 

「う、卯ノ花、隊、長……」

「あらまあ、どうしたのですか、御蔭丸。湯にも浸からず部屋へ戻ろうだなんて、作法がなっていませんよ。

 私も一緒に入りますから、お戻りなさい」

「これは本当にまずいですから! どうか道を開けてください!」

「お戻りなさい、御蔭丸」

「…………はい、分かりました…………」

 

 なけなしの気概を一瞬で叩き折られた御蔭丸は、腰布を掴む夜一との攻防を繰り広げながら湯殿に戻る。何とか腰布を取られなかった彼は、無性に天を仰ぎたい気持ちでいっぱいだった。

 ――やはり、今日は休暇を押し通すべきだった。

 ――そうすればこんな事にはならなかっただろうに。

 出来もしない事を思いながらため息をつく。「ため息は幸せを逃すだとか言っておらんかったか~?」とからかい混じりに聞いてくる夜一はなぜか全裸だ。奔放以前に羞恥心がないのだろうか、この娘には。

 卯ノ花は卯ノ花で湯上がり用の大きい手拭いを纏っているものの、妙に丈が短い。肉付きの良い太ももを惜しげもなくさらされては視線を投げる事も叶わない。

 そんな二人に挟まれる御蔭丸は、ただただ気苦労しか感じていなかった。だからとりあえず深呼吸をする。

 

「スー、ハー……状況は受け入れました。とりあえず身体を洗ってから湯殿に入りましょう。僕は向こう側で洗ってきますので、少々失礼させていただきます」

「何を言うておる。おぬしがいなくなったら誰が儂の背中を流すのじゃ」

「……卯ノ花隊長、こう言っては心苦しいのですが……」

「ええ、分かっていますよ。私の背中も流してくださるのでしょう? 私は貴方を信頼していますよ」

「…………もう、お好きになさって下さい…………」

 

 肩を落とす御蔭丸を余所に夜一は楽しげに、卯ノ花は手拭いを取って湯椅子に腰掛ける。御蔭丸から見れば湯煙の中、二人の一糸まとわぬ背中が見える格好だ。

 少女と大人の中間地点にいる夜一はまだまだ幼さの目立つ容姿をしている。しかし胸は平均より膨らんでいるし、腰回りにも程よく肉が付き始めている。褐色の肌を玉のように滑る水滴が若さを感じさせて何とも眩しい。

 卯ノ花は白百合のように美しい肌をしている。キメ細やかでシミのない白は人を惹きつけて止まない色だ。彼女の綺麗な黒髪が間に挟まる豊かな双丘は普段の姿から考えられないくらい大きい。

 ざっと見た御蔭丸の感想はこんなものだ。付け加えるなら「夜一様は順調に成長なさられている」だとか、「卯ノ花隊長は着痩(きや)せする人だったのか」だとかだ。

 しかしそれ以上は無い。二人を前にいつものように微笑む御蔭丸は、何て事の無い調子で問いかける。

 

「それでは夜一様の背中から流させていただきますが、よろしいですか? 御髪を先に洗われるのでしたらそう致しますが」

「髪からで良いが……他に何か言う事はないのか? おぬし、男子(おのこ)じゃろう? これ程の美女二人の裸を前にして反応なしとは、本当についておるのか?」

「……一体どこからそのような知識を覚えてくるのか、今度問いただす必要がありそうですね。

 それはそれとして、お忘れですか? 僕は元四番隊、仕事上女性の裸体を見る事は多々ありました。医療に携わる者が裸体を見る度に怯んでは仕事になりませんからね、僕もそうなのでございます」

「何じゃそら、つまらん上に面倒くさい理由じゃのう。じゃあ何か? おぬしは女を見ても欲情せんのか。何とも寂しい人生じゃな」

「愛する方であれば別ですし、取り(つくろ)えない程疲れていたら反応しますよ。さっ、お話はこれくらいにして、御髪を濡らしますから眼を閉じてください」

「ん、分かった」

 

 御蔭丸は話しながら桶に溜めておいたお湯を、眼を閉じた夜一の頭へゆっくりとかける。湯気を立てて流れるお湯が夜一の頭から全身を通っていき、夜一は「んんっ」と見た目に似合わない色っぽい声を上げた。

 熱かっただろうか、もっと別のやり方があったか、と御蔭丸は思ったが、あいにく彼は女性の身体の洗い方までは知らない。だから自己流で壊れ物を扱うように洗う事を心がける。

 爪を立てないようにしたり、泡を揉みこむように洗ったり、髪の手入れは中々大変だ。御蔭丸がなけなしの知識を総動員して洗い終え、お湯で一気に流してやると夜一はぷるぷると身体を震わせて、「次は背中じゃ!」と元気良く言った。

 御蔭丸は安心しつつ、夜一の背中を洗い始める。褐色の肌が見えなくなるくらい、泡をたっぷり泡立たせて洗っていると――背後の御蔭丸に首を回す夜一が、急に不穏な笑みを浮かべた。

 

「……うむ、心地良いのう。じゃが、そろそろ良いぞ、御蔭丸」

「よろしいのですか? ではお流ししますね」

「違う違う、良いと言ったのは流して良いと言う意味ではない。前を洗っても良いぞ・と言う意味じゃ」

「……お(たわむ)れが過ぎますよ、夜一様」

 

 夜一の笑みに気付いた御蔭丸は苦笑してお湯をかけようとする。しかし先に夜一が勢いよく回転し、自身の裸体を見せつけるように胸を張った。

 両足を開いて湯椅子に座り、両手を腰に当てて何も隠さない夜一に、御蔭丸は一瞬仮面が剥がれそうになり、顔を押さえて深いため息をついた。ついで首を何度も横に振り、切れ長の紅い眼光に冷やかさを混じらせる。

 

「縛道の一、『(さい)』」

「おうっ!?」

 

 指を弾くような気軽さで御蔭丸が鬼道を発動し、夜一の自由が奪われる。腰に手を当てた姿勢のまま硬直した夜一はわたわたと焦りながら御蔭丸に怒鳴った。

 

「な、何をするんじゃ!?」

「夜一様。僕は貴女に教育係の命を(おお)せつかりました。そうである以上、必要な時は苦汁(くじゅう)を飲んで厳しい事も行う所存です。

 いいですか、夜一様。許嫁(いいなずけ)でもない男性にこうも気軽に肌を晒すなど言語道断です。今の貴女の行いは到底看過できるものではございません。

 ですから罰として、その縛道は解除いたしません。僕は卯ノ花隊長の背中を流しに行きますから、あとはどうぞご自由に、如何(いか)(よう)にでもしてください」

「ま、待て、待つのじゃ! 動きを封じられてどうやって身体を洗えと言うんじゃ!?

 お、おい、行くな! せめて背中を流していけ!! 泡が冷える上に(したた)って気持ち悪いぞ!! おい、御蔭丸!? 御蔭丸――――っ!?」

 

 縛道がかかったままの夜一の肩を押して半回転させ、さっきと同じ状況に御蔭丸は降り戻す。そして言葉通り夜一の背中を離れ、隣で笑いを堪えていた卯ノ花の後ろに陣取った。

 

「お待たせしました。それでは早速洗わせていただきますが、よろしいですか?」

「フッ、フフッ……ええ、構いませんよ。髪はもう(きよ)めましたから、背中をお願いします」

「畏まりました」

 

 口元を押さえて頷く卯ノ花に微笑んで、御蔭丸は手拭いを使って泡を泡立てる。「御蔭丸――――!!!」と隣で夜一が喚いているが、二人は完全に無視していた。御蔭丸はともかく、卯ノ花も思う所があったようだ。

 

「では、始めますよ」

「ええ、どうぞ。……――んっ」

 

 御蔭丸が手に乗せた泡を塗りつけると、卯ノ花は身体を震わせて(なま)めかしい声を上げる。彼の白く大きな手が声に反応して一瞬止まるが、頬を染めて流し目でこちらを見る卯ノ花の意図を察して、そのまま続けた。

 御蔭丸の手に比べれば小さな背中を泡立たせるたび、卯ノ花は甘い反応を返してくる。熱い吐息の籠もった声で、肌を震わせる可憐な仕草で、御蔭丸の心に指を入れるような錯覚を与える。

 それでも笑顔を崩さない男からしてみれば、二人の関係を超えてくるような感覚だ。きっとそれが卯ノ花隊長の狙いなのだろうと思いながら、彼は背中を洗い終わり、最後にゆっくりとお湯をかける。

 

「終わりましたよ、卯ノ花隊長」

「ん、んんっ……――ありがとう、御蔭丸。とても、気持ち良かったです」

 

 唇の端にかかる一筋の髪をそのままに、赤く濡れた顔で卯ノ花はお礼を口にした。御蔭丸は無言のまま静かに頭を下げる。しばし二人の間に流れた繋がるような静寂は、自力で縛道を解き放った夜一の声で掻き消された。

 その後、こめかみに血管を浮かべて笑みをひくつかせる夜一に背中を流してやるといわれ、御蔭丸は存分に爪を立てられた。それを回道で治したら怒りの限界を超えた夜一が完全に御蔭丸を無視した。

 それでも三人で湯殿に入り、日々の疲れをゆっくり溶かせば激情なんてどこかに飛んでいく。雲のかかる月を眺めながら、三人は仲良く湯煙の中に思い出を刻んだ。

 

 

 

「今日は外泊じゃ! 最高級の一室を取ったぞ!」

「そうですね、夜一様」

「せっかくの温泉旅行、このまま寝てしまうなんぞもったいない! まくら投げに札遊び、恋話(コイバナ)などなど、まだまだ夜は終わらんぞ!」

「僕としては健やかな生活を送っていただきたいのですが、どうせ言っても無駄でしょう。ところで一つ、お尋ねしてもいいですか」

「何じゃ?」

「なぜ僕と夜一様が二人部屋なのでしょうか。ああいえ、お答えなさらずとも一人部屋を取って参りますので、ご了承ください」

「使用人と卯ノ花殿の部屋以外はぜーんぶ儂らの部屋じゃ! おぬしがどこに行こうがついていくからの!」

「……夜一様はなぜ、こんな時だけ高い行動力を発揮するのでしょう。その十分の一でも勉学に向けてくだされば、僕も苦労は致しませんのに」

「そんな馬鹿な事するはずがないじゃろう! それならもっと馬鹿をやるぞ!」

「普段の御自身が愚かである事は自覚しているのですね……」

 

 湯上がりで血色の良い夜一は夜中になっても元気そうだ。こんな時間まで夜一と一緒にいた事がほとんどない御蔭丸は、横に並べられた二枚の布団を見て思わず眼を閉じる。

 

「……どうして布団が二枚敷かれているのでしょう」

「おぬしと儂の二人分じゃ!」

「…………夜一様、僕はあくまで教育係です。このような事は許嫁にやる事ですよ」

「そんな事は知らん! 儂は儂のやりたいようにやると、おぬしには常々言っておろうに! それに此度(こたび)は理由あっての事じゃ!」

「……一応お聞きしますが、どのような理由でしょう」

「ふん! 御蔭丸よ、おぬし――儂を避けておるじゃろ」

「――――」

 

 急に――金の瞳を切り取って、鋭い光を夜一は放つ。御蔭丸は笑みを崩さないまま、遠雷のような霊圧を纏う少女を見下ろした。

 

「いつから、気付いておられました?」

「最初からじゃ、と言いたいが――気付いたのはほんの数か月前よ。儂が四楓院家の宴会におぬしを誘ったおり、理由をつけて断られた時じゃった。

 その日は単に残念じゃと思った。しかし思い返して考えてみれば、泊りがけで儂に関わるような催し物におぬしが参加した事はなかった。

 儂がおぬしを教育係に任命して十五年の間、ずっとじゃ。一度や二度あってよい事が無いのは、実に不自然じゃろう」

「成程、それで僕が貴女を避けていると思ったのですね」

「ああ。それで、御蔭丸よ。おぬしはなぜ儂を避けておるのじゃ? 儂の悪い所は考え切れんくらい考えられるが、それがおぬしの避ける理由になるとは思えん。

 ならば考えるよりも直接、聞き出した方が早かろう」

「ふむ……」

 

 胡乱気な少女の視線に御蔭丸は顎に手を添えて黙考する。しばらくして顎から手を放した彼は――空の歯車が回る笑みを、夜一に向けた。

 

「夜一様。実はこの後、僕には用事があるのです。ですからこの話はまた後日、改めてお聞かせください」

「……何を言うておるんじゃ? そんなつまらん嘘を信じるとで、も……――」

 

 目元を歪める夜一の言葉は、それ以上続かなかった。御蔭丸が眼に映らない速度で少女の目の前に掌を向け、一瞬で意識を奪ったからだ。

 

「……申し訳ありません、夜一様。続きはまた、改めてお聞きいたしますので」

 

 倒れる夜一を抱き上げて丁寧な所作で布団に寝かせる。苦い表情で眠る少女を一瞥して、御蔭丸は無表情に部屋を出た。

 向かった先は、つい一刻程前に入った温泉だ。浴衣を脱ぎ、腰布一枚の姿になった御蔭丸は湯煙の濃い湯殿に立ち入る。

 

「――よォ。待ってたぜ、“征宗”」

 

 やや色のついた濁り湯には、既に先客がいた。長い箸の様なものをくわえた――(くちばし)型の鋭い前髪(リーゼント)が特徴的な男だ。

 

「おっとォ、“眞二狼”、の方が良かったか? 俺ァ名前が似てるこっちの方が好きだがよお、どっちで呼びゃあいいんだ、オゥ?」

「……“御蔭丸”、でお願い致します。どちらの名も口にしていいのは、この世界でたった一人だけですので。

 それで一体、どのようなご用件でしょうか――――()(りん)()(てん)()(ろう)様」

 

 御蔭丸はただ慈母のように微笑んで、頭を下げて訂正を促した。湯殿に浮かべた盆の盃に酒を注ぐ男は、「応」と答えて盃を(あお)る。

 彼の名は、麒麟寺天示郎。

 言わずと知れた王族特務・零番隊の一官だ。

 

 

 

   φ

 

 

 

 隠密機動は基本的に秘密部隊である。

 対象の拘束や暗殺に始まり、瀞霊廷の(けい)()、罪人の(かん)()、情報の伝達など、その役割は様々だ。

 そのため隠密機動は尸魂界の機密に関わる重要な任務を任されることが多い。闇から闇へ、影から影へ秘密裏に動く事体の運び手――それが隠密機動だ。

 その一方、鬼道衆や護廷十三隊と連携を取る事も少なくない。だから平時より彼らとの連携を深めるため、合同演習が行われる事もある。

 今回は斬術に優れた相手を想定した演習――つまりは刳屋敷剣八率いる、十一番隊との合同演習が行われていた。

 

「ぐああっ!」

「次ぃ! 次はどいつだ! いねえのか!?」

「行かせていただきます!」

「オッ、骨があるじゃアねえか。オラ来いよ、お前の『果て』を見せてみろ!」

「うおおおおおおおっ!!!」

 

 黒装束の一人が真正面から突っ込む――と見せかけて瞬歩で死角に回り込み急所を的確に狙う。しかしそれは獰猛に喰らうような一撃であえなく失敗に終わった。

 獣のようなざんばら頭を振り回し凶笑を浮かべる刳屋敷剣八。周囲の隠密機動は及び腰になっているものの、彼らの眼に逃亡の二文字は無い。持てるあらゆる手段を使い、全力で無力化を試みている。

 そうやって一人、また一人と吹っ飛ばされていく様子を――観覧席の夜一は興味深そうに眺めていた。

 

「ほー、流石は“剣八”じゃのう。四楓院家の誇る隠密機動の精鋭たちがまるで赤子扱いじゃ」

「刳屋敷隊長は多対一の戦闘が最も得意でいらっしゃいますからね」

「そうなのか?」

「ええ。戦場にあって血風すら食い尽くすと称される位です。御本人は『果たし合い』を好まれるようですが」

「『果たし合い』のう。隠密機動には無縁の言葉じゃな」

「確かに、そうですね」

 

 巨大な日傘を差して立つ御蔭丸は、夜一の言葉にゆったりと頷く。日傘の影で熱心に演習を眺めながら、夜一はふと思い出したように声を上げた。

 

「そういえばおぬし、その刳屋敷剣八と戦って引き分けたんじゃったか?」

「ああ……そんな事もありましたね」

「何じゃそのスカした反応は。男子ならもっと誇らしげに言うもんじゃぞ」

「申し訳ありません」

 

 いつもの微笑みで頭を下げる御蔭丸に夜一は憮然と鼻を鳴らす。腕を組み、演習の観察に戻った彼女は、良い事を思いついたと言わんばかりに口元を歪めた。

 

「そうじゃ! 御蔭丸よ、おぬしもアレに参加してこい!」

「……まあ、夜一様のご命令とあらば、参加いたしますが。一応理由をお伺いしてもよろしいですか?」

「おぬしの正確な実力を知っておきたい。昔は毎日のように勝負しておったが、今はそこまで時間を取れんからの。

 儂は未だおぬしに負け越しておるからなぁ。しかし勝つ事を諦めてはおらん、じゃからここらで一つ力試しをしてほしいのじゃ。

 儂の“目標”がどれ程の高みにあるか、知りたいのでな」

「そういう事でしたら、お受けしないわけにはいきませんね。分かりました、参加させていただきます」

「そうか! では早速頼むぞ!」

 

 パアッと笑顔を咲かせる夜一は近くの隠密機動に命令し、刳屋敷を呼び出す。戦いの途中だった刳屋敷は不機嫌そうだったが、御蔭丸が参加すると知るや否や獰猛な笑みで霊圧を吹き荒らさせた。

 

「お前と()るのも久しぶりだな! いつもは誘っても断るくせによ、どういう風の吹き回しだ?」

「夜一様からの御命令ですので、仕方なくですよ」

「ハッ、そうかよ。まあそんな(こた)ぁどうでもいい! お前との『果たし合い』は何時だって楽しみだぜ!」

「ただの演習なんですがねえ。しかし加減をするのは貴方に失礼です。ご満足いただけるよう、努めさせていただきます」

「おうよ! そいじゃあ早速始めるか!!」

 

 木刀を担いで霊圧を吹き荒らす刳屋敷に、御蔭丸は扁桃の髪留めを取り払って静謐な霊圧を解放する。無貌から発せられる重くのしかかるその場にいた誰もが息を飲んだ。

 この演習で御蔭丸は隠密機動として参加されられているが、当然それを気に食わないと思う者は多い。普段夜一を相手にしている事を知っていても、所詮は元罪人の教育係だと侮蔑する者もいる。

 しかしそれらは、この戦いで覆される事になった。

 

「なっ――馬鹿な!? 何故奴が隠密歩法を!?」

「いや、それよりも“吊柿”や“滝鯉”をあれ程の速さ・あれ程の精度で出来るのか!?」

「何だあの鬼道の技術は!?」

「ありえん……軍団長閣下に及ばずとも、それに近いレベルの白打など……!」

 

 口々に上がる驚愕の声を余所に、刳屋敷と御蔭丸はお互いしか見ていなかった。

 獲物は木刀、舞台は演習場であるため、二人とも全力ではない。双方霊圧が隊長格であるために、ぶつかり合いの余波だけで昏倒する者が居てもおかしくないからだ。

 しかしその制約下で出来る限り力を放っている。

 御蔭丸は斬拳走鬼どれをとっても不足はなかった。詠唱破棄で家一軒を呑む程の赤火砲を撃ち、瞬歩は数多の残影を残し、白打で“剣八”の剣をいなし、隙を見て斬術を叩き込む。

 刳屋敷の斬術は二人と並ぶ者がない程圧倒的だった。木刀で先の赤火砲を両断し、残影ごと御蔭丸を切り抜き、いなされても巻き起こる剣圧だけで暴風が吹き荒れる。

 斬術においては刳屋敷が上、それ以外においては御蔭丸が上。その状態で行われる彼らの戦いは、もはや演習の領域を超えかかった時点でお互いに察し、終了する。

 

「たはーっ、こんだけやり合って一発二発しか斬れねえとはな。やっぱりお前は戦ってて愉しいぜ、御蔭丸」

「あと一発喰らえば僕の意識は吹き飛んでいましたよ。流石は“剣八”です、刳屋敷隊長」

「次はガチで果たし合おうぜ」

「それはご勘弁ください」

「ちっ、そうかよ。まあいい、また戦ってくれりゃあ文句はねえよ」

 

 剣八の方は多少不満があるものの、二人はお互いを称え合う。それを見ていた十一番隊と隠密機動の面々は己の心に火をつける。

 十一番隊は刳屋敷剣八の強さに近づかんとして。隠密機動はたかが教育係の余所者に負けてなるものかと心を燃やす。

 熱が入り二人の戦いも前より激しさを増す演習を眺めながら、御蔭丸は夜一の元へ戻ろうとする。その前に刳屋敷に呼び止められ、二人は何かを話していた。

 それを見ていた夜一は、難しい顔で戻ってきた御蔭丸に尋ねる。

 

「御蔭丸、あやつと何を話しておったんじゃ?」

「いえ……ただの野暮用にございます。夜一様が気になされる事ではないですよ」

「そんな気にしてくださいと言わんばかりの顔で言われてものう……まあ良い、それより次は儂と戦わんか? 久々におぬしと勝負事をしたい」

「構いませんよ。内容は如何なされますか?」

「それはもちろん、鬼事じゃ!」

「最近一番僕が負けそうな事を選んできましたね……いいでしょう、お付き合いいたしますよ」

「うむ!」

 

 満面の笑みで頷いて、次の瞬間消える夜一を御蔭丸は追う。この後、唐突に消えた二人のために演習が一時中断され、家令の雷が二人に落ちる事となった。

 

 

 

   φ

 

 

 

 瀞霊廷、白道門外、西流魂街。

 特に治安が悪いとされている地区を、御蔭丸は苦い顔で駆けている。

 ――ここ最近、夜一様が西流魂街へ逃亡される回数が多すぎる。

 ――それも頻繁に治安が悪い地区へ足を運ばれている。

 ――非常によろしくない事だ。

 ――とにかく、早く夜一様を補足せねば。

 霊圧知覚を最大限に広げて御蔭丸は夜一を探している。今回は御蔭丸がいない時に逃亡したため西流魂街へ逃げたという情報しかなく、あとは御蔭丸の脚で探すしかなかった。

 

「……――見つけた」

 

 しかし御蔭丸は元滅却師。霊圧知覚は元柳斎と肩を並べる程広く精度も高い。男は全力の瞬歩を踏み出し、白い狼のような速さで夜一の元に向かう。

 瞬歩の霊波で夜一がこちらに気付いたような霊圧を発するが、まだ御蔭丸の方が速い。逃げても捕まえられると踏んでいたが――夜一は予想に反し、全力で御蔭丸の方へ走ってきた。

 ――何だ?

 ――何か焦っているような霊圧の揺れだ。

 疑問に思う御蔭丸が夜一の姿を見つけると、彼女はひどく慌てた様子で御蔭丸の腕を掴んだ。

 

「どうされました、夜一様――」

「説明はあとじゃ! いいからついて来い!」

 

 言うや否や瞬歩を使う夜一に御蔭丸は慌てて合わせる。森の中を影も残さず走る二人の瞬歩は相当に速かったが、夜一の息は上がっていた。瞬歩の間隔が彼女のペースを大幅に超えているせいだ。

 見かねた御蔭丸は必死に先を急ぐ夜一を諭そうと声をかける。

 

「夜一様、そんなに急がれては潰れてしまいます。もっとペースを抑えてください」

「そんな事できるか! こうしている間もあやつは苦しんでおるのじゃ、医者のお前がそんなんでどうする!」

「……誰か病人がいらっしゃるのですか?」

「そうじゃ! 分かったらもっと速度を上げんか!」

「――分かりました、失礼させていただきます」

「おわっ!?」

 

 息も絶え絶えに怒鳴る夜一を抱き上げて、御蔭丸は瞬歩の速度を最大限引き上げる。

 

「僕がお運びします、夜一様は道案内をお願いします!」

「お、おう! あっちじゃ、あっちに進め!」

 

 夜一の指示に従い、御蔭丸は走る。やがて森が切れ、粗末なあばら家が見えてきたところで――入口付近に倒れる、年若い青少年の姿が二人の眼に写った。

 

「御蔭丸!」

「分かっております!」

 

 夜一の呼びかけに御蔭丸はすぐさま行動を開始する。浄気結界を張り急いで触診を行って――紅色の眼を見開いた。

 

「こ、これは……!」

「ど、どうした!? ()(すけ)は、喜助は助かるのか!?」

「…………ただの食当たりです」

「……は?」

 

 先程までの緊迫感はどこへやら、きょとんと可愛らしい反応をする夜一を放って、食べた物を吐き切っているか確認する。それで応急処置は自分でやったようだと判断した御蔭丸は、その場で経口補水液と整腸剤を調合した。

 

 

 

「いや~、心配かけてスイマセン。おかげですっかり良くなりました」

「全く! 普段から食をおろそかにするからこういう事になるのじゃ! しかもその辺に生えていたキノコを食ったらならともかく、自分の服に生えていた物を食うなぞドン引きじゃぞ!」

「そんな怒らないでくださいよォ、夜一サン。次から気を付けますんで」

 

 背後に猛る雷神の幻覚を従える夜一に、年若い青少年は正座でヘラヘラと頭を下げる。御蔭丸は溜まりに溜まったあばら家の家事を一通りやり終えたところだった。

 

「夜一様。お説教もよろしいですが、そろそろそちらの方を紹介してはいただけませんか?」

「……まあ良かろう。こやつが阿呆なのは今に始まった事ではない。ホレ、喜助! 挨拶せんか!」

「分かりましたからそんなに怒鳴らないでください。

 ――っと、改めましてコンニチハ。ボクの名前は浦原(うらはら)()(すけ)、しがない流魂街の住人っス」

「どうも初めまして、僕は大神御蔭丸と申します。僭越ながら夜一様の教育係を務めさせていただいております」

「教育係? じゃあアナタが夜一サンの言っていた、便利屋で髪留めの趣味が悪くて融通が利かなくて笑顔の気持ち悪い不能の人っスか?」

「…………夜一様?」

 

 首を傾げて問いかける青少年――浦原の言葉に、御蔭丸は慈母のような微笑みを浦原から夜一にスライドさせる。夜一は微妙に吹けていない口笛をそっぽを向いて鳴らしていた。

 御蔭丸はため息をつき、浦原に向き直る。

 

「……まあいいでしょう。僕の評判ならば、別段落ちても構いません。

 それより浦原様は夜一様のご友人、と言う事でよろしいのでしょうか?」

「喜助でいいっスよ、お堅い人だなあ。それと夜一サンとはお友達っス! 付け加えるならちょっと影のあるハンサムエロ友達っスよ!」

「なーにがちょっと影のあるハンサムじゃ。おぬしなんぞせいぜい髭もそらん頭もボサボサ阿呆で不真面目でちょっと臭いダメ男で充分じゃろ」

「ヒドイ!? そこまで言わなくてもいいじゃないっスか!」

 

 ギャーギャー喚く二人を微笑ましく見守りながら、御蔭丸は別の事を考えている。ずばりそれは浦原の言った『エロ友達』という言葉についてだ。

 

「……浦原様。少々よろしいでしょうか?」

「いたたたたた!? よっ、夜一サン! 大神サン呼んでますんで引っかかないで!

 いてて……スイマセン、お待たせしました。それで、何の御用ですか?」

「実は先日、訳合って夜一様の部屋を精査させていただいたのですが、その折にこのような本が出てきまして。見覚え、ありませんか?」

「おいっ!? 儂の部屋を調べたとはどういう事じゃ!? 女のぷらいべーとに踏み込む事がどれ程の罪であるか分かっとらんのか!?」

「はい、夜一様は少しばかりお鎮まり下さい。縛道の四、『這縄(はいなわ)』」

「おうっ!?」

「うわあー……」

 

 御蔭丸が微笑むと同時に縄状の霊子が夜一を拘束する。笑顔で主人に鬼道を放つ御蔭丸に浦原は半分引いた顔をしていた。

 

「それではお話の続きですが」

「いや、夜一サンすげーうるさいっスけどいいんスか? あれ本気で怒ってる時の顔っスよ」

「後でいくらでも怒られますから問題ありませんよ。それよりも、質問に答えてくれませんか?」

「あー、そりゃボクのエロ本っスね」

「貴方が渡したんですか?」

「あー……いえ、たぶん夜一サンが勝手に持って行ったんスよ。最近ミョーに数が減ってると思ったら、夜一サンてばもー」

「何を言うか喜助! おぬしが『ソレに興味あるんスか? いくらでも見たり持っていったり使ってくれてもいいんスよグヘヘ』と鼻の下を伸ばしてスケベのように言ったんじゃろが!」

「ちょっ、夜一サン!? バラさないでくださいよ!」

「成程、やはり貴方が渡したんですね」

 

 夜一の突込みに慌てた浦原がまた喧嘩を始めようとしたが、御蔭丸の妙に冷えた声色に二人とも硬直する。錆びついた歯車のように首を向ければ、慈母のような微笑みを深くする紅い眼光の男がそこには居た。

 

「最近の夜一様は妙な情操観念をお持ちになっていて、教育係として頭を悩ませておりました。

 僕の入っている男湯を混浴に変えて全裸で入ってきたり、泊り掛けの際、僕と二人部屋になって一緒に寝ようとしたり、頭痛の種がたくさんあったのです」

「えっ。チョット待ってください。全裸? 泊り掛け? まだ子供の夜一サンとそんな事した人にこれから怒られるんスか?」

「ですから一体どこからそのような知識を仕入れてくるのか、ずっと探していたのですよ」

「話聞いてます?」

「少々、お静かにしてもらってもよろしいでしょうか」

「……はい、すいませんっス」

 

 どこぞの四番隊隊長を幻視する笑顔に浦原は轟沈する。心なしか夜一も青い顔になるが気にせず、御蔭丸は笑顔で話を続ける。

 

「このまま夜一様に良くない知識を与えられてしまうと、これからの教育にも支障が出ます。

 ですから浦原様、貴方には夜一様にこういった物事を教えないようにしてほしいのです」

「……仮にですけど、断った場合はどうなるんスか?」

「そうですね……隠密機動に首を()ねられるか、貴族による処刑の見世物になるか、僕が貴方を永遠に鬼道の結界に封じ込めるか……僕の考えではその辺りが妥当かと思われます」

「普通に怖い発想なんスけど……分かりました。ボクも夜一サンの奔放さにはちょっと困ってたので、その話、お受けしますよ」

「ありがとうございます、浦原様」

「おい、なぜ当事者の儂抜きで話が終わるんじゃ! おぬしら二人で勝手に決めた事でも儂は認めんからな!」

「認めないとおっしゃるなら、夜一様のみに反応する鬼道を屋敷中にかける事になりますよ。御館様の許可も取っております」

「……う~~~~~っ!!!」

 

 御蔭丸がやると言ったらやる男だとこの十五年で理解している夜一は、涙目になって顔を真っ赤にする。すわ泣くかと思われたので御蔭丸は慌てて夜一を縛る鬼道を解除した。

 すると夜一は泣くのではなく――怒りの形相で二人に襲い掛かった。

 

「何じゃ何じゃ、よってたかって儂をいじめおって!! 儂がやられっぱなしで大人しくしとると考えとるなら大間違いじゃからな!!!」

「よ、夜一様!? 貴女の鬱憤を受け止めるのは(やぶさ)かではありませんが、なぜ僕の下腹部に手を伸ばすんですか!?」

「おぬしの一物を引っこ抜いてやる!!! 喜助ェ!!! おぬしのもじゃーっ!!!」

「ちょっ、ボク関係ないでしょ! 巻き込まないでくださいよ!」

「うるさい!!! おぬしら二人とも、儂を怒らせたらどうなるかその身体に直接刻み込んでやるわーっ!!!」

 

 猛虎のように飛びかかってくる夜一に御蔭丸は慌てて、浦原は逃げる。あばら家を壊さんばかりの大混乱は日が暮れるまで続いたそうだ。

 

 

 

   φ

 

 

 

 月を射抜く吐息のように、白い雲が細く棚引いている。

 ひどく明るい満月の夜だった。多少雲がかかっているからだろうか、普段より隠されている分、目に見える箇所の光が目映(まばゆ)(くら)んでいる。

 良くない光だ、と御蔭丸は縁側で空を見上げる。四楓院邸の離れ、使用人に(あて)がわれた一室の前で、白い大男は静かに微笑んでいた。

 そんな男に近づく小さな人影が、月の光を浴びて褐色の肌を露わにする。

 

「……眠れないのですか、夜一様」

「いや、別にそうではない。夜中に出歩きたくなっただけじゃ」

 

 寝間着(ねまき)一枚の夜一はぺたぺたと御蔭丸に近づき、側に腰掛ける。そして同じように月を見上げて、しばし無言で時間が過ぎる。

 だが御蔭丸は、月を見てはいなかった。彼が見ているのは細く流れる雲、空を覆う雨の気配である。空気が湿るのを感じながら、ふと隣の夜一に紅色の眼を向ける。

 少女は何かを憂うような、言葉に出来ない戸惑いを抱えた顔をしていた。ただ眉根を下げて、あとは無表情で瞳に金色の光を反射している。それは不意に、御蔭丸に向き――少しだけ口を(つぐ)むって、意を決したように言葉を紡いだ。

 

「のう、御蔭丸。おぬしは此処からいなくなるのか?」

「……出だしから妙な事を(おっしゃ)いますね。答えるなら、教育係を務めている内は夜一様に仕えますよ」

「務めが終われば、いなくなるのか?」

「そうなるでしょうね。此処に居るのは夜一様との縁あっての事、それが途切れれば望む望まざるに関わらず四楓院家に仕える事は叶わないでしょう」

「ならば、儂が教育係を終えたおぬしを再び雇えばいいのか? それならばこれからも、おぬしは此処に居てくれるか?」

「……どうなされました? 先程から様子がおかしいですよ」

「…………夢を、見たのじゃ」

 

 御蔭丸から視線を外し、夜一は遠くを見つめる。少女に似つかわしくない寂しさの溢れる横顔は、御蔭丸の知らない顔だ。

 

「死んだ御母様の夢でな。言葉もたどたどしい頃に亡くなってしもうた、少ししか覚えておらん御母様じゃ。

 じゃが、優しいお人じゃった。御母様の腕の温もりを、儂は今でも覚えておる。……御母様が亡くなられる前日の、何処かへ飛んでいってしまいそうな白く儚い顔もな」

 

 滔々と語る夜一の言葉は重い。きっとそれは本来、御蔭丸が聞いてはいけない過去なのだろう。身分でも、関係でも、面影の御蔭丸としても。

 これは人の心を背負うような、(しょう)(たん)のように儚い話だ。

 

「おぬしは御母様と、同じ顔をしておった。触れれば消えてしまいそうな、遠い顔をしておった。

 ……何かあったと思ったんじゃ。おぬしがいなくなるような何かが、儂の(あずか)り知らぬところで。

 そう思うと、妙に寂しくなってのう」

「夜一様……」

 

 小さく空笑いをする少女に、御蔭丸は何も返す事が出来ない。返すべき言葉は、彼の踏み込める領分を超えていた。

 そんな男の内心を知ってか知らずか、夜一は視線を御蔭丸に戻す。儚く笑う褐色の少女は、ハネの可愛らしい黒髪を寂しげに揺らす。

 

「温泉旅行に行った時にな、儂はおぬしに尋ねた事があるじゃろう。儂を避けておるのではないか、とな。

 あの時は、単に儂は怒っていた。今までの鬱憤をぶつけてやろうと思っていた。

 でも今は……とてもそうは思えん。おぬしがいなくなったら、儂は寂しい」

「…………」

「のう、御蔭丸。おぬしさえよければ、教育係を終えた後も儂に仕えてほしい。正直気に入らんところも多くあるし、おぬしの笑顔はあまり好かん。

 それでも、一緒にいると楽しいのじゃ。じゃからのう、これからも儂に仕える事を考えてほしいと、儂は願う。

 なに、答えは急がん。まだまだ教育係の任は解かんでな、お主が答えられる時に言っとくれ」

「……畏まりました。よく熟考して、お答えさせていただきます」

「うむ。それではな、儂は戻る。もう戻らんと、またジイにどやされるからのう。

 ではさらばじゃ。……おやすみ、御蔭丸」

「お休みなさい、夜一様」

 

 最後に年相応の笑顔を見せて、夜一は母屋に帰っていった。それを見送って、御蔭丸は再び夜空の雲を見上げる。月を隠し雨の気配を強くするその光景をゆっくりと閉じ、御蔭丸は瞼の裏に彼岸の記憶を思い描く。

 思い出すのは、二つの記憶。湯殿で交わした天示郎との会話と、刳屋敷との短い会話。

 

 

 

『単刀直入に言うぜ。お()ェ、零番隊に入りな』

『……何故でしょう? 僕にそこまでの価値があるとは思えないのですが』

『眠てえ事言うなァ、おォ? て()ェのやった事、理解してねえわけじゃねえんだろ』

『…………』

『俺たち零番隊はお前ェが虚圏でやって来た事を全部知ってる。ハリベルとかいう最上級の事も、お前ェとアルヴァニクスの確執も――完全に融合した虚を分離させた事もだ。

 ソイツがどういう意味を持ってんのか、分かんねえわけじゃねえよな?』

『……多少なりは、理解しております』

『多少? そんなユルいアタマしてねえだろ。お前ェは()()()()()()()()()()()んだぜ?

 霊子同士の完全な融合は、絶対(ぜって)ェ解けねえ。混ざった水を混ざり合う前に戻そうなんざ、神サマだって考えやしねェ。

 ソイツをお前ェはやっちまったんだ。混ざった物を混ざり合う前に戻しちまった。絶対ェ出来ねえ事を、考える事もしちゃいけねェ事をやっちまった。

 今のお前ェはどんな物だって好きなように分離出来るし――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ソイツは、尸魂界(ソウルソサエティ)の歴史そのものだ』

『…………』

()ってもお前ェの強さは零番隊には及ばねェ。だからコイツは正式な要請じゃねェ。あくまでお前ェの意志を尊重した、勧誘ってやつだ。

 ……俺ァ、入るべきだと思うぜ。て前ェの性格は、尸魂界(した)で生きてりゃいつか潰れるからな』

『…………考えさせて、くださいませんか。このような大事、すぐには答えを出せません』

『いいぜ、元からそのつもりだしな。

 返事をするときゃ、俺たちの方からまた書状を送る。ソン時までに肚ァ決めときな』

『畏まりました。手間を掛けていただき、どうもありがとうございます』

『応』

 

 

 

『御蔭丸よお、お前、十一番隊に入らねえか』

『ご冗談を、それを僕に言いますか』

『冗談なんかじゃねえ。俺ァ本気で言ってるぜ。今日の太刀筋を見てるうちに、お前の本性って奴が見えたからな』

『……本性、ですか?』

『あァ。上手く取り繕っちゃあいるが、お前の本性はへなへな笑って治療する事じゃねェ――――戦いを愉しむ、一匹の獣だ』

『…………』

『お前がなんでそれを隠してるのかは知らねえ。それだけの力があって、上を目指さねえ理由も分からねえ。

 けどよ。お前はいつか必ず、その本性を面に出すぜ。こいつは予測じゃねえ、確信だ。

 お前がどんだけ押し隠しても、お前の本性は今でも牙を研いでンだよ』

『……だから、十一番隊に入れとおっしゃるのですか』

『そうだ。どうせいつかそうなるなら、早ェうちにいるべき場所にいといた方がいいだろ?

 お前は十一番隊で戦うべきだと、俺は思うぜ』

『…………お返事は良く考えてから返させていただきます。夜一様が待っていますので、これにて失礼仕ります』

『おう。待ってるぜ、御蔭丸』

 

 

 

「……本当に、面倒な事になったもんだ」

 

 月を完全に隠しきった雲を見上げて、御蔭丸は呟く。紅い扁桃の花を取り払った彼は、荒んだ顔で暗い夜を見つめる。

 ――まさか、こんな事になるなんてな。

 ――虚圏での行動は、悪い方向にばかり働くと思っていたのに。

 ――いや。俺にとっては悪い方向なのに、違いはないが。

 面影を宿す事でしか生きられない男は、心中で考える。自らの進むべき道、選び取るべき願いの面影を。

 全てを叶える事は出来ない。神ならぬその身が歩めるのは、常に一つの道だけだ。

 

 寄る辺を持たぬ狼は、夜の草原で星を探す。見えぬ未来を照らすような幾千幾万の輝きは、今は雨雲に隠されている。

 それを臨んで、満足そうに。狼は吼え、先へ進む。見えぬ未来の闇の中へ。彼が今までそう生きたように。

 消え入りそうに笑う御蔭丸の遥か上で、雨が静かに降り始めた。

 




原作より六五〇年前の出来事。

下ネタ系のギャグ調ばっかり書いてるような気がする筆者です。
もっとこう、原作のセンスに近づきたいですね。
推敲してないのでそのうち手直しします。なんか描写が足りないような、キャラのイメージと違うような感じががが。
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