女体化した挙げ句、転生先は存在しないクリスの妹でした。   作:わらぶく

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第十一話

 都会のコンクリートジャングルを跳び抜け、傾斜の付いた山道を駆け登る先にはフィーネが居る筈の屋敷。シンフォギアの能力を使った最短距離で向かえば、その道中に大の大人が踏み荒らしたであろう太い獣道が幾筋も残され、それら全ては今向かっている屋敷へと続いている。

 嫌な予感は的中したようだ。こちらを襲撃してきたあの男たちの仲間は、間違いなくフィーネを狙って動いている。もしかするともう屋敷は襲われているかもしれない。

 

『おい居たぞッ! ターゲットの女だッ!』

 

「もうこんな所にまでッ、わざわざオレのためにご苦労なことでッ!!」

 

『捕獲しろッ! 殺してもいいッ、体は必ず持ち帰れッ!』

 

 人を人とも思わぬような恐ろしい命令の内容に、いくら超常の鎧を纏っていようと雪花の頬に冷汗が流れる。

 横殴りの弾幕を防ぎながら飛んでくるロケットの数々を左右にいなして回避するが、休ませないとばかりに気時の間から吹きすさぶ弾丸を立ち止まってガードした。弾丸の弾かれる音、止まぬ爆発音が森に木霊する。絶えず行われる茂みの中からの波状攻撃。息を吐かせる暇も無い連携の良さは、間違いなく以前から計画を練ってきた練達者どもの集まりだ。

 だからと言って、やすやすと殺されてやるつもりなんて更々無い。装甲を頼りに敢えて敵の中へと飛び込み、すれ違うと同時に敵兵の首をもぎとる。司令中枢を失った体は幾度かの痙攣の後フッと力が抜けたことを利用して、体を盾代わりに再び敵に肉薄するのだ。この盾戦法、雪花は同じ手としてもう一度使ったが、敵にとって中々に対処が難しい。防弾チョッキはもちろん、屈強な男の肉体を易々と貫通する弾丸はそう存在しないだろう。

 

 そして何より──

 

『こういうやり方、想定してないでしょう?』

 

 シンフォギアに男たちが持つあらゆる爆発物を巻き付け、敵の密集地帯へと飛び込んだ。非常識の鎧でこそ起こせる、非常識の戦法だ。

 その火力たるや周囲一帯を木を根こそぎ吹き飛ばす大火力。それが思考を持ち目的地目がけて飛んでいき、爆破タイミングまでも全て計算してくる。さながらミサイルだ。男たちは近付けまいと銃を乱射するが、彼らが最後に見たのは雪花が浮かべる狂気的な笑み。大きな爆発を起こし、残ったのは巨大な窪みと爆心地のど真ん中で装甲を煤けさせて咳をする雪花だけだった。

 

「ケホッ、ケホッ……。シンフォギア様様、こんな攻撃シンフォギアが無かったら無理だな」

 

 一際大きな咳をした後、雪花は周囲の残骸を残し改めて屋敷に向かった。

 

 鬱蒼とした森の中を抜け、開けた場所に建つフィーネの屋敷は攻撃を受け酷く損傷していた。

 純白に染め上げられた外装は見にくく剥げ落ち、立て付けられた窓と扉は崩壊。玄関前には図々しくも武装車両がたむろしており、今も通信兵らしき装甲車の中から無線機を取り出してどこかと連絡を取っている。挨拶代わりの銃撃を車両に撃ち込めば、イチイバルの火力に耐えきれる爆発四散した。

 屋敷内は轟く銃声から、ほぼほぼ制圧下に置かれているだろう。それでもフィーネの安全確保のため、すでに割れている二階の窓から屋敷内へと飛び込んだ。着地と同時に、丁度足元に居た敵を踏みつぶしてクッション代わりとする。

 

『ッ!? おいッ、ターゲットの女が現れたぞッ! 撃てッ、絶対に逃がすなッ!』

 

「悪いけどお前らに構っている暇はないから、まとめて引き潰させてもらうぞ!」

 

 ただの兵器がシンフォギアに敵う訳も無く、男たちは足止めも出来ずに死んでいく。

 拳を振るえば人体は吹き飛び、撃てば脳漿が飛び散って瓦礫と混じる。ノイズを倒すためのシンフォギアが、人間を手にかけているこの事実、フィーネに教えたらなんて笑われるだろうか。

 屈強とは言えただの人間、これまでの無力な姿を想起しながら警戒度を一段引き下げ、屋敷内を走り回ってフィーネの姿を探した。

 

「フィーネッ! どこにいるんですかフィーネッ!!」

 

 声さえも掻き消されそうな銃声の中、捜索を続け研究室前へと辿り着けば突然扉が開かれ、中からは男たちの体が飛んでくる。思わず拳を振るい、男たちの体を地面へと叩きつけるように処理すれば、中から黄金の輝きを放つネフシュタンの鎧を纏ったフィーネの姿があった。

 彼女の背景になった無数のディスプレイは、多くが弾痕と共にひび割れその意味を失いバチバチと火花を散らすばかり。

 

「……あら雪花。無事でよかったわ、帰ってきていたの?」

 

「立花響を待ち伏せていた公園で襲撃を受けまして。人気のある場所では暴れづらいですし、フィーネやフィーネが集めたデータに何かあったら困るので」

 

「私のことを心配してくれるなんて健気なのね。でも心配いらないわ。私はもちろん、サーバー内に蓄えていたデータは既にバックアップ済み。今はサーバーをすべて初期化、この屋敷を放棄する準備中よ」

 

「なら良いです。初期化が終わるまでオレが守ります」

 

「それよりも──」

 

 フィーネに肩を掴まれた雪花は、無事だったイスに無理やり座らされた。

 突然の事に目をパチパチとさせる雪花は、近付いてくるフィーネの顔を見ているしかなかった。

 

「シンフォギアを解除して怪我を見せなさい」

 

「何を言って」

 

「監視カメラが壊される寸前、あなた右腕を撃たれていたでしょう? ごまかさなくて結構。シンフォギアシステムが止血処置をしたからと言って、それは変身している時だけ。今は興奮による脳内麻薬で痛みが軽減されているけれど、それが終われば痛みで動けなくなるわよ」

 

「……はい」

 

 こうもしっかりとした言葉で諭されてしまえば、雪花は大人しく座らざるを得ない。

 事実、一息吐いてシンフォギアを解除しそれまで張り詰めていた緊張の糸がプツンと切れた時、右腕を燃えるような痛みが遅い血液が溢れ出した。乱れる呼吸を歯噛みして無理やりにでも落ち着かせながら、手で弾痕を力強く押さえるも指と指の隙間から血液が溢れていく。

 

「っづぅ……!!」

 

「ほら見なさい。いくらシンフォギアを纏って戦えるようになったからと言っても、あなたはただの人間。伸びしろはあれど、限界の天井はまだまだ低い。見誤れば、お姉さんを守れずに死ぬわよ?」

 

「それは、フィーネなりの助言ですか」

 

「ええ。私の助言は聞いておくものよ♪」

 

 この時ばかりは、いつもの軽い口調のフィーネが頼もしく感じた。

 部屋の外から感じる足音や気配はすっかりと消え去り、一端の襲撃は何とか防いだようだ。戦闘員はあらかた始末し撤退を選んでくれたことは何とも幸運。いくら完全に適合しているイチイバルと言えど、ずっと装着し続けていれば体にどんなバックファイアがやって来るかもわからない。目的をまだまだ果たせていない以上、ここで踏み止まっているわけにもいかないのだ。

 だが、今回の事で妨害勢力の姿がハッキリと見えた。これまでフィーネに協力していた背後の米国勢力が、一転してこちら側の敵となり銃を向けてくる。これからの目的の進捗は亀の歩みのように遅くなるだろうことは雪花にとっても想像は容易だ。ままならぬ目的への一本道であるなのに、まるで世界がそうさせるかとでも言うように、遠回りをさせられている。

 

「オレたちはこれからどうなるのでしょうか?」

 

「さぁ、未来なんて誰にも分からない。とりあえず新しい研究場所を見つけて住処造り。その次は大詰めになった研修の完了。そして目的達成して私は満足、貴女も姉を助けられて満足。大雑把な筋書きとしてはこんな感じかしらね」

 

「何ともふわふわとした筋書きで。姉さんの安全さえ保証してくれるなら、オレはもう何も言いませんが。フィーネは襲撃で不意を撃たれなかったので?」

 

「残念、何の気なしに私の体は蜂の巣にされたわ。肺や内蔵を重点的に、苦しませるように撃たれたわね。幸い、貴女から返してもらったネフシュタンに助けてもらったのよ。

 一つだけ面白いものを見せてあげる」

 

 そうにこやかに話したフィーネは振り上げた右腕を、雪花の肩に伸ばしていた左腕に振り下ろす。どうなるかは明白。断絶された左腕からは血が吹き出し地面に大きな血溜まりを作り上げていく。

 思ってもいなかったことに雪花は絶句するが、その次の瞬間には身体に残った腕の一部から直ぐ様新しい手が生えてきた。断面からニョキニョキと、元の姿に戻った。その光景を見て痛みに呻くでもなく、淡々とまるで当たり前かのように行うフィーネの姿は雪花の目に狂気的に映る。

 

「腕が……?」

 

「ネフシュタンと融合を果たしたの。肉体の即時再生、痛覚の鈍化、人並外れた身体能力と攻撃力。貴女のお陰よ、雪花。融合症例として目を付けていた立花響のデータを取る手伝いをしてくれたのだもの」

 

「人を、辞めたのですか」

 

「目的のためなら化け物になっても構わないわ。貴女が自分で言っていたこと、覚えてる?」

 

 ──目的のためになら、何だってしてやる。

 

 いつか言った言葉が耳の中に甦る。

 この戦闘を終え屋敷を放棄したとしても、米国の部隊からの追撃、そして二課からの──姉からの追手は絶えず、これからも無垢の人間をも巻き込んで人殺しをするのだろう。幾度と言い訳をして、結局は姉のためと言い聞かせて何度も手を赤に染める。

 

「……オレが聞き返すのもおかしな話ですね」

 

「良いのよ。人間だれしも自分で言ったことを忘れることなんて当たり前のように起きる。だから、気にすることでもないの」

 

 背中に腕を回され、雪花の体はフィーネによってギュッと抱き締められる。

 黄金の鎧の上に顔をつけているのにも関わらず、不思議と硬くなく痛みは無い。見上げて覗くフィーネの顔は、今までに見たことないほど穏やかだった。

 

「フィーネ?」

 

「今は抱かせて。米国の人間が組織を再編して襲ってくるまでには、まだ時間がある」

 

「はぁ……ですけど、早めにここを出た方がいいですよ。これほどまでの大騒動、山の中とはいえ誰かに見られているかもしれませんからね」

 

「分かってるわ。でもそれより、雪花、口を」

 

「っ、んぅ……」

 

 半ば瓦礫の山と化した研究室の中、抱き寄せられた雪花の唇はフィーネの物と重なった。

 先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返った研究室に響くのは、唾液同士が絡まるキスの音。疲れ切っているはずの雪花の体は、これまでの調教によってあろうことかフィーネの行為を受け入れるために緊張が解れつつあった。強張っていた肩肘はだらりと垂れ下がり、吊り上がっていた眉は垂れ下がる。真珠の如く白い肌には朱が差し込まれ、ベージュの瞳には熱が孕まされていく。

 ここはもう安全ではない。そう頭の中では理解しているにも拘らず、雪花の体は受け入れるための女へと変貌していた。戦闘の疲れもあって汗ばむ肌は、フィーネには珠のような輝きに見えたことだろう。

 

「満足しました?」

 

「もう少し続けさせて」

 

 二人だけの甘い時間が、夕焼けの廃墟の中で緩やかに続いた。

 長い口付けの後、雪花は白衣姿に戻ったフィーネと共に屋敷を離れ山中を歩いていた。戦闘が起こった北ではなく、青々とした自然が残された南側へ歩を進める。後ろ楯だった米国からの支援は消え、これまでのセーフルームは泣く子も黙るトラップハウスと化し、これから行うのは最早目的地の無い彷徨。

 フィーネは櫻井了子としての皮を被り、二課の庇護を受けながら細々を研究を続けていくことが出来るだろう。だが、今回の件で活動拠点として身を休めるための場所が消えた。

 

「この辺りまで来たなら、一先ず安全でしょうか。それで、これからどうするんです?」

 

「今はこの辺りで休憩しましょう。あなたも歩き続けて疲れたでしょう?」

 

 白衣のポケットから差し出されたスナック菓子を、雪花は受けとってから呼吸を整えた。

 

「どうも」

 

 人目に付かぬよう鬱蒼とした森の中を歩き続けて早数時間、舗装もされていない道を歩き続ければ足を痛めようもの。疲労は確実に蓄積され、額から流れる汗が綺麗なカーブを描く顎から滴り地面に小さなシミを作る。

 

「……雨、降ってきましたね」

 

「……そうね」

 

 空を覆う枝木の隙間を縫うように雨粒が降り込み始める。

 封を開けたスナック菓子を口にしながら、見通しが悪い周囲を見回し休息をとる。雨水が木々の葉に当たって鳴らされる音だけが、二人の間に漂う。

 不意に、フィーネが口を開いた。

 

「雪花、ありがとう」

 

「……何ですかいきなり、気持ち悪い。お礼は全部終わってからにしてください」

 

「いいえ、ここで言わせて。あなたのおかげで本来の予定をかなり前倒しして計画を進めることが出来た。本当なら、もう少し遅かったのよ、ここまで来るのに」

 

 まるで未来でも見通したかのように言葉を進めるフィーネに、思わず眉をひそめる。

 

「あなたよりもいろんなものを見て培った私の知識は、誰かに劣るとは思っていない。人も、自然も、社会も、聖遺物も、そして神も、私はいくつもの事象をこの目に焼き付け、知識をこの血に残してきた。あなたも、その一人であったら良かったのに」

 

「……? すみません、言っている意味が──」

 

 ──ドスッ。

 慈愛のような笑みを浮かべるフィーネを差し置いて聞こえてきた不快な音。加えて腹部に襲い来る激しい熱と痛みは背中にまで達した。内臓をやられたか喉の奥から熱い物が込み上げてきて、我慢する間もなく胃液交じりの鮮血を吐き出した。白衣の袖から飛び出した脈動するように明滅する紫色の水晶が連なって出来たムチが、今だけは鋭利な刃物となって肉を裂き背中まで貫いている。

 頭が痛みと現状にこんがらがり、考えがまとまらない。雪花の体は慈愛に満ちた笑みを浮かべたフィーネに抱きしめられていた。その表情が、熱くなる腹部の裂傷も含めて雪花に悪寒を走らせる。そして雪花は気付いた。いつもの食事を恵みまるで愛玩動物かのように雪花を可愛がるフィーネでも、加虐思考を前面に映し出し罰ゲームにムチや磔を行う冷酷なフィーネでもない。そこにいたのは、一人の女だ。精一杯笑みを浮かべながらも、これから起こる最悪の事態に不安を隠せないながら覚悟を決めた、精神の不安定な女。喜ぼうにも喜べず、泣こうにも泣けない女の姿だ。

 

「か、へっ……? フィー、ネ……?」

 

「何かしら、雪花」

 

「オレの、お、なか、ささっ、て……」

 

 フィーネは何にも答えない。フィーネは何にも返さない。

 ただ、雪花を見つめる金色の瞳は潤み震えていた。

 

「もう、雪花が居なくても研究は終わっているの。集めたいデータも、聖遺物の研究も、カ・ディンギルの建設も間もなく終わる。後は時が来るのを待つだけ。私が思い知らされた筋書きが書き換わっていることを祈るばかり。その先へ、貴女も連れていきたかったわ」

 

「ふぃ……ね……」

 

「でも、もう貴女は連れてはいけない。米国に目をつけられ捕まれば最後、私よりも酷い薬物の注入で人格が壊され実験材料として使われることでしょう。匿ってあげる場所も、あなたのギアを主立って調節できる設備ももう無い」

 

 血を吐き出しながら、フィーネの穏やかな笑みを雪花は見遣る。

 

「……げふっ……裏切ったの、ですか……?」

 

「そうなるわね。言い訳なんてしないわ。全ては先を見通したつもりになって驕っていた私の落ち度。こうなったのは私の油断が招いた事よ」

 

「……そう、ですか」

 

 裏切られた。裏切ら、れた。裏切られた……。

 痛みと熱が渦巻く意識の中で、その五文字だけが何度も繰り返されていた。フィーネにとってただの駒であることは、雪花自身も分かりきっていたことだ。目的のために人を殺しても、姉の安全が保証されるからと全てを飲み込んでこの手を汚してきた。

 だというのに、全部なかったことになるのか? クリスさえも殺すのか? あれだけ殺してきたのに? あなたの油断一つだけで?

 この時点で、フィーネさえも信頼出来ない確固たる敵となった。

 

「なら……あんたはもう敵なんだな……!!」

 

「……そうね」

 

「ッ!!」

 

──Killter Ichaival tron(貴女一人を想って)──

 

 敵意を抱き、聖詠を歌い上げるまで早かった。

 腹部を貫かれながらもシンフォギアを纏っていの一番、腰部ユニットから掻き鳴らされる電子ギターに乗せて雪花は歌を紡ぐ。絶唱寸前まで高められたフォニックゲインを右手のガントレットに集中させ、連なる水晶の繋ぎ目を狙って放った。パキンと音を立て、断たれ腹部に突き刺さったままのムチを背中から抜き取る。欠片(シンフォギア)が行った完全聖遺物(ネフシュタンの鎧)の局部的な反撃は成功した。

 だが、それでもフィーネは憐憫の笑みを消すことはない。どこまでも見通しているような瞳と態度がどこまでも気に入らない。

 

「……私に勝てると思っているのか、雪花」

 

 フィーネの空気が鋭く、冷たくなる。

 冷酷な、罰ゲームを楽しむときのフィーネの姿。それまで白衣姿だった彼女は眩い光に包まれた後、黄金の鎧を身に纏いムチを宙に揺蕩わせ、その切っ先をこちらへと向けている。

 

「オレの名前を呼ぶな……! 勝てなかったとしても、こんな所で死んでたまるか……!」

 

「クリスを守ってやると言っても?」

 

「裏切ったやつの言葉なんて信じられるかッ!!」

 

 犬歯を剥き出しに物凄い剣幕で睨みつけようと、フィーネの表情は一定以上の変化を見せようとしない。

 勝ち目はない。そんな事は雪花が一番良く分かっているが、ここで早々に背を向ければあのムチに左胸を貫かれ間違いなく殺される。逃げの一手を打とうにも今の状況ではあまりにも無謀だ。

 加えて──

 

「貴様が覚醒させたソロモンの杖だ。能力は知っているだろう?」

 

 左手に握られたソロモンの杖が放つ緑色の光が雪花の周囲へ照射されると、この場から飽和せんばかりのノイズが溢れ出す。

 

「クソ……ッ!」

 

 幾人も雪花の指示によって屠ってきたノイズが、今は雪花を狙っている。

 いくらシンフォギアを纏っているとは言え、この数を相手にするのは絶望的だ。

 

「……ならッ!!」

 

 全力で地面を殴りつけ地面の表層を土煙に、ガントレットから放った弾丸でノイズを引き裂き炭素の塵を舞わせると脚部装甲から迫り出した銃身から煙幕弾を放つ。周囲は濁った煙幕によって視界は最悪。バックステップで煙幕を更にばら撒きながら、一定の距離を稼いでその場から脱兎の如く逃げ出す。

 ノイズの数体がこちらを追っていてもそれだけ、フィーネからの追跡は無い。

 

「クソッ、クソッ……これからどうすれば……」

 

 先行きが見えず味方も何もかもを失った現状に、雪花は泣きそうな声で呟く他無かった。




Date:『雪音雪花』 記載者:フィーネ

 政情不安定の軍事国家バルベルデより、姉雪音クリスと共に帰ってきた音楽家の次女。姉に対する異常なまでの執着心を持ち、姉の為ならば人殺しさえも厭わない少女。聖遺物『イチイバル』とリンクし、適合者としてシンフォギアを纏う。

 以前の実験により、雪音雪花の脳内にはこれから先の未来の記憶が深層意識に刻み込まれていることが判明している。未来の記憶、雪音雪花の口から出た戦記絶唱シンフォギアという名のアニメについて記載せねばならない。
 脳内麻薬、強心剤等々の薬品を使用し昏迷状態にまで意識レベルを強制的に引き下げ、深層意識下に存在する記憶の引き出し実験を行った。これまでに十度の実験を行い判明したことは三つ。

⒈我々の生き死には全て人の手によって作られたこと。
⒉我々の目的・行動は人の手によって定められたこと。
⒊全ての未来は既に決められていたこと。

 今記載している私もこれらの事実を未だ信じ切れておらず、夢ではないかと疑っているがコーヒーのカフェインがそれを拒んだ。しかし、本来の歴史には存在しない雪音雪花というイレギュラーが存在することも事実。本来の歴史にどの様な歪みをもたらすのか興味深いところである。
 雪音雪花は、聖遺物開発と同じく重要度が大きいアーティファクトとして、これからの未来、どれほど見通せるのか調べるため更なる研究を続けていく。研究結果は、また別の項で記載する予定だ。
 なお、雪音雪花の身柄が何らかの目的で狙われた場合、彼女はその場で速やかに処分としノイズによって炭素に変える予定だ。

本筋が終わった時、しないフォギア的な日常パートは必要ですか? それとも不必要ですか?

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