女体化した挙げ句、転生先は存在しないクリスの妹でした。 作:わらぶく
続きを書くのかは不明。プロローグで終わるかもしれない!
プロローグ
既に暗い闇に沈んだ東京の街。
気温二十四度、湿度半ば、心地の良い夜だ。
良い子ならば既に寝静まっている時間。
だが、街の一角では静寂に似つかわしくない銃声と打ち鳴らされる金属音が轟いていた。それに加えて鳴り響くけたたましいサイレン。それらが相まって既に周辺住民はこの場にはいない。
──たった二人を除いて。
「何でだッ! どうしてだよ
「オレにも退けないものの一つや二つ、胸の中に持ってるってことだよ『クリス姉さん』ッ!!」
両手に銃身が三つ連なった三連装のガトリングガンをフル回転させクリスと呼ばれた少女は、前方を飛び回る白銀の鎧を纏った『妹』へと銃口を向け続けていた。赤い装甲と白の装束を身に纏い、黒が基調になったギアインナー、それらをまとめて名前をシンフォギアと呼ぶ。クリスの歌によって力を発揮するそれは、聖遺物という特殊な物体が力を発揮していることもあって、攻撃力がそこら一般の兵器よりも遥かに高い。
事実、周りから見ればトチ狂っていると称されても仕方ない行動と、それによって引き起こされる破壊。撃ち放され妹に回避された銃弾は周囲の木々や家の壁に命中、そして崩壊させていく。
それでもクリスは止まれない、止められない。
目の前に居るのは数年前に日本にやってきた時、突然行方不明になってしまった妹──
そして数年かけてようやく見つけられた妹。
それを今諦めるなんてことは出来なかった。
「くぅっ、ちょこまかとぉッ!」
「アッハッハッ!! 狙いが甘くなったんじゃないかな、姉さんッ! これもおまけしてプレゼントだッ!」
雪花がその手に持つ聖遺物、ソロモンの杖が掲げられ緑の光線が地面を這う。その後には特異災害として認定されている色とりどりのノイズが溢れていた。
クリスは歯噛みする。
ここら一帯は既に避難が済んでいると言っても、足を遠くへと伸ばせばまだまだ民間人はたくさん居る。これだけのノイズが拡散してしまえば、どれだけの被害が出るかも分からない。
だから狙いを変えノイズの殲滅を最優先に行動した。
雪花はその間にも、建造物の屋上をピョンピョンと軽やかに飛びクリスからの距離を放していく。
「じゃあなクリス姉さんッ!
オレはまだまだやることがあるから捕まれないんだッ!」
「~~ッ、クソォッ!! 絶対にッ!!
絶対に連れ帰ってやるからなッ! 雪花ァッ!!」
クリスの咆哮虚しく、雪花はその場から離れていった。
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「あ~~つらぁ……」
山中にある館まで逃げ仰せた雪花は、鎧を脱ぎ黒と白の縦縞セーターと紺のジーパンの私服姿に戻った。その手にはしっかりとソロモンの杖が握られていて、玄関で待ち構える木製の大きな扉を押し開ける。
中からは足元を照らす最低限の淡い光が雪花の体を歓迎し、屋敷の奥からは金髪全裸の美女が出迎える。
「遅かったのね」
「姉さんがしつこくてさ。ていうか、頼むから服着てくれよフィーネ。目のやり場に困るんだってば」
手を上げてふざけるように雪花は首を横に振る。
一見気丈そうに振る舞っている雪花だったが、フィーネは胸中をしっかりと見透かしつまらなそうに眉を潜めて溜め息を吐く。
「手加減しているでしょう」
「……何だ見てたのかよ」
「ええ、この街の監視カメラは私の目と同義よ。あなたの行動と言動は全てお見通し……クリスお姉ちゃんを殺されたくはないのでしょう?」
脅すように、釘を刺すように鋭い目で刺すフィーネは、雪花の元まで歩くと大きく手を振り上げて頬を叩いた。パチンと小気味良い快音が鳴り響き、雪花の頬に真っ赤な紅葉が縫い付けられる。雪花は痛みに呻いたもののそれ以上は何も言わず、ただ濁ったベージュの瞳でフィーネを見つめる。
麗しいカーブを描く雪花の顎を親指と人差し指で挟んだフィーネは、顎を引き上げその目を見つめ返す。
そして、口を耳に近付けてゆっくりと囁いた。
「あなたはこの世界を一つに繋げる為の道具よ。反抗なんて考えてみなさい。あなたの大好きな姉を惨たらしく殺してあげる。目の前で、最初に爪を、次に目をくり貫いて、何も見えなくなってからゆっくりと殺す。それが嫌なら、分かっているでしょう?」
その耳から二度と離れないように、フィーネの言霊を雪花に染み込ませていく。実際にフィーネにそれだけの実力があることを理解している雪花は頷き、肯定した。
「……分かってるよ」
「よろしい。バラルの呪詛を解き放ち、私たちはバラバラになったこの世界を一つにするの。そうすれば、あなたのお姉ちゃんは見逃してあげる。
せいぜい励みなさい、前世持ちの転生者。あなたの知識、私に注ぎなさい」
忠告を終えたフィーネは雪花から手を離し、背を向けてこの場を去っていく。残された雪花は赤くなった頬に手を添えながら、用意された自身の部屋に帰っていった。
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