〜プロローグ〜
イースターの近づいたある日の事。
シュタット侯爵家のメイドであるジョアンナは、怪しげな魔法陣とも見えなくはない模様が描かれた卵を見つけた。
この屋敷の令嬢ビアンカ様を楽しませるために隠された卵とも思えない禍々しい文様が…。
「なんですかね、この奇天烈な模様は…。万が一、コレが危険物だったら…。あの愛らしいお嬢様に何かあっても困りますし……早急にこのヤバそうな卵は廃棄して…」
などと、独りごちていると卵がパリパリと音立てつつ、殻が少しずつではあるが砕けていく。
「なっ!」
ジョアンナが何やら危険を感じて、卵から手を離すと最後の一撃!とばかりに卵の殻を蹴り破り飛び出てきたのは1羽の黒いひよこらしきモノ。
ひよこと言えば愛らしいイメージを思い浮かべるものだが。
そのひよこは何やら態度がデカイ。
「はっ」と鼻で笑っている様な態度と、小さな体で庇護欲を一切感じさせずに卵を蹴破り、ジョアンナの前に立っている。
何やら黒や白、灰色がかった毛並みがまるで執事の服を纏っていますが何か?とでも言いたげな色合いになっており、とても毛色の変わったひよこだ。
不思議な柄のひよこ。
パッと見ると執事服でも着ているように見えるソレは、とても気が強そうにジョアンナを睨んでいる。
「何なんですかね、コレは……。面妖な…」
黒の執事服を纏った様なひよこは、なぜかジョアンナを見るとチッ!と舌打ちした。
「ひよこが舌打ち?! なんだかこのひよこはおかしくないですかね!?」
ジョアンナは思いの丈を叫んだが、黒いひよこは気にもとめずに、どこかへ短い足を懸命に動かしつつも、歩き去っていった。
黒いひよこは何かを探すように歩きまわる。
『何なんださっきの女は! 突然、奇天烈とか廃棄とか…言いやがって! あれを親になんて選びたくない。断じて断る! なぜかわからないが生理的に…ありえない!』
黒いひよこはイライラとしながら、短いあんよをいそいそと前へ前と動かし、先へと進む。
『自然が多くて綺麗な場所だな…』
黒いひよこがそんな事を考えつつ、周りの様子を眺めていると、何か銀色に輝く美しい光を見つけた…。
そちらの方へと自然に足が向かう。
眩い光そう感じたのは、美しい少女が陽光を浴び、その長く美しい銀髪が光り輝いているものだった。
「あら?」
湖面を映したような青い瞳が、黒いひよこに気がついた様で、銀髪の少女は一瞬目を驚いたように見開いたあと、溢れる様な笑みを黒いひよこへと向けてくる。
『く…、なんて美しいんだ…。俺はこの天使のような人の側にいたい…』
ふるふると感動に身を震わせながら、黒いひよこは心に決めたのだ。この美しい人の傍から離れないと。
「迷子かしら…? ひよこさんは不思議な色をしてるのね?執事服みたいで格好いいわね。お父様に相談してみるから、わたくしと一緒に住む? でも、すぐに鶏さんになるのかしら??」
涼やかで、愛らしい声でそう言われ、俺の胸は高鳴る。
これが
そして、その日から銀髪の天使の傍らには、いつも執事服のひよこが侍るようになるのだった。
マクシミリアンの誕生日記念から始まった二次小説です。