今までのペットとしての生き方は幸せ過ぎて、手放したくないがこのまま続けていると、アルフォンス様を敵に回しかねない危機感も出てきたので潮時なのだろう。
ビアンカお嬢様のベッドの枕もとに作られた、俺用の簡易ベッド。俺はそこから抜け出しお嬢様の寝顔を見つめる。
この美しくも愛らしい寝顔を、もう間近で見られなくなるのかもしれないと思うと、ツキンと胸が何故か痛む。
さて、俺が本当に人間ならばどうすれば、人の姿に戻れるのか色々試さねば。
『お嬢様…。こんな俺でもずっとそばに置いてくれますか?』
お嬢様の頬に嘴をそっと寄せると、細心の注意をはらい愛しくて堪らない彼女の頬に嘴を擦りつける。
「マクシミリアン…。大好きなの。ずっとそばにいてね……」
お嬢様から返事が返ってきて、話しかけていた自分に気がつく。
身を固くしているとお嬢様はまだ寝ぼけていたようだ。夢うつつに返事をした彼女は、俺を小さな両手で抱き寄せ、俺の頬にキスを落とした。
…何故だろうか、体に何か妙な力が巡りだした。このままここにいるのはまずい気がする…。
俺は愛おしいその手から抜け出し、床へと飛び降りた…。
「ん…?」いつもと感じが違う。
お嬢様のいるベッドを見ると何故だろう最近の視点より位置が高い。
何が起こった? 俺の体はどうなっているのか。とりあえずドレッサーにでも登って見てみればいいか。ドレッサーに備え付けてある椅子に登ろうとすると.軽くジャンプしただけで飛び乗れる。
「何なんだ…」
舌打ちしたくなる気分で鏡の前に行くと、俺は女の子が好んで遊ぶぬいぐるみ? それとも人形なのか?
そんなお嬢様の膝丈サイズに褐色の肌、漆黒の髪と瞳を持つ執事服の男の姿になっていた。
まるでコンパクトなサイズの玩具のようだ。
なぜ突然こんな事になった?何が原因だ?
「推しが!! 推しが!!尊い〜!」
俺が困惑していると、ベッドの方からそんな言葉が飛んできて、俺の体はビクリと跳ねる。声のした方に視線を向けるとお嬢様の視線は俺に向いている。
許してもらえるかはわからないが、真実を話すしかない…。そう覚悟を決めようと唇をかみしめる。
つかつかとお嬢様はネグリジェ姿のまま、心なしか頬を赤く染めながら俺の方へと歩み寄ってくる。
裁きの時を待つかのように俺は目を瞑る。
「マクシミリアンのお人形!? この世界にこんなレアグッズが!!」
…などと言い、俺の頬にキスを落とした後に、微かな膨らみが感じられる胸元でギュウギュウと抱きしめる。
し……至福……、じゃない!
「お嬢様!流石にこれは恥ずかしいです!人形でもないので勘弁してください」
思わず言い放った俺。
呆然と真っ赤になって硬直するお嬢様。
俺は一生この時に見たお嬢様の愛らしい顔を、忘れることはないだろうと思う。