『こんなに愛らしいマクシミリアンを珍妙って言うなんて! あ……、だけど、肩にひよこを乗せた侯爵家令嬢って、もしかして駄目な子かしら…? でも、でもマクシミリアン頬にすり寄ってきてくれるのが、とても可愛いし……』
そんな内面をひた隠しながらも、私はムッと頬を膨らませながら『怒ってますのよ!』というお顔を作った。
なぜか頬を薄っすらと桃色に染めたフィリップ様は、「悪気はなかったのだが…」と謝ってくれたのだけど、わたくしの右頬に手をそえて…、ん?美しいお顔がどんどん近づいてきた?なぜなのかしら?
近すぎません事??
『はわわわ……』わたくしは突然の出来事に、パニックで固まってしまった。
次の瞬間、小さな黒い何かが凄まじい勢いで、目の前を通り過ぎたと思ったら、フィリップ様が目の前から横へと吹き飛んだ。
「ふぇ?」
呆然と視線をそちらに移すと、危なげない着地をしたマクシミリアンが、なぜか黒いオーラをだしつつ仁王立ちな状態になっている。
その側には倒れたフィリップ様が…。
心配しながら助け起こしつつ謝罪をすると、フィリップ様の頬にクッキリと残ったマクシミリアンの可愛らしい足の跡……。
彫刻のように整ったお顔をしているフィリップ様の左頬には、彼には全くマッチしない跡が……。
これ絶対痣でしばらく残るのでは?
でも、わたくしからは言えません……。
マクシミリアンが罰せられても嫌ですし、私だってゲームの世界のマクシミリアン……、推しにそんな事指摘されたら、間違いなく心が死ぬもの……。
護衛のみなさんが知らせてくださるわよね……?
そう思っていたら、急にフィリップ様や護衛さんのいらっしゃる所だけ、凄まじく風が吹き荒れた。
わたくしといえば、すごく少しドレスの裾がひらひらと、風にあおられるくらい。
ティーセットも影響を受けていないのがとても不思議。
わたわたと、フィリップ様を「この強風は危険そうですし帰りましょう!」と馬車へと引っ張っていく護衛さんたちお疲れ様です…。
気のせいかしら……、あの強風が彼らについていってる気がするのは……。
マクシミリアンを手のひらに乗せ、わたくしは謎を抱えたまま部屋へと戻ったのでした。
〜その後、頬の足跡についてフィリップ王子は誰にも知らされる事はなかった。
幸か不幸か、ノエルに大笑いされ知らされ、知らされるのであった。足跡事件はフィリップ王子の黒歴史となり同情した周りにひっそりと箝口令がしかれたとかなんとか。
それ故かビアンカやマクシミリアンには沙汰はないままにおわった。
一週間程痣が消えず、フィリップ王子が室内からしばらく出れなかった事も・・・。一部の人の記憶と共に闇の中へ隠蔽された〜