わたくしは夢を見ていた。
大好きな推しのマクシミリアンがベッド脇に立っていて私わたくしにこう言うのだ。
『お嬢様……。こんな俺でもずっとそばに置いてくれますか?』
優しくわたくしの頬にキスしてくれる。
相変わらず低音なのに甘く響く、素敵なお声。
なんて幸せな夢なんでしょう!
悪役令嬢なわたくしが大好きなマクシミリアンに愛を囁いてもらえるなんて。
夢だとわかっているけれど、すごく幸せな気持ちでいっぱいで素直な気持ちがこぼれ落ちてしまう。
「マクシミリアン……。大好きなの。ずっとそばにいてね」
夢だから良いよね?そうわたくし自身に言い聞かせるように、彼の頬へとキスを落とした。
『まだ目覚めたくないな…。
マクシミリアン、わたくしの記憶の中だと私って言ってたのに、普段は俺っていうんだ…。すごく自然な彼の言葉も聞けるなんて幸せ過ぎるわね……』
そう思い寝ぼけた視界に入ったベットにがいないのに焦る。いつも大人しく寝ているはずの
まだ夢を見てるのかしらと思いつつも、室内を見回すと『ドレッサーにお人形!? わたくしの想像通りなら……!』
寝起きのネグリジェのまま近づくと紛れもなく……! ふあぁ〜!
「マクシミリアンのお人形!? この世界にこんなレアグッズが!!」
すごい出来! 格好いい! 可愛い! どうしてくれようこの気持ち! 思いのまま頬にキスをしたり、ギュウギュウ抱きしめてしまう。尊い!尊い!
「お嬢様!流石にこれは恥ずかしいです! 人形でもないので勘弁してください」
そんな声が聞こえて、マクシミリアン人形を見ると、困った様に眉を下げて真っ赤なお顔をしている。
困惑のあまり呆然としつつも、わたくし推しの頬にキスしてしまったの!?
夢ではないの?
「ふえぇ……!?マクシミリアンのお声? お人形さんじゃなくて? そういえばどことなく温かい?? この世界には推しはいないはずなのに」
夢じゃなければどういうことかしら、気分を落ち着ける為に
すごく言いづらそうにお人形サイズの推しは「黒い色合いのひよこは俺…いや私ですね」
誰か夢だと言ってください。
わたくしセクハラにもなりかねない事、たくさんしましたよね!?
セクハラ? 断罪? とつぶやいていると、マクシミリアンが、「俺が嫌われる事はあっても、お嬢様は悪くない」と言ってくれる。
その上、わたくしが倒れて怪我しないように、移動しましょうと促してくれる。
推しが優しくてつらい……。
大好きだからずっと一緒にいたいの。でもいつかヒロインに惹かれて、わたくしのそばにはいてくれなくなるのを、わたくしは知っているの。涙が零れそう。
『泣かないで。 大切な貴女を俺が守りますから』
そんな言葉がわたくしの心に降ってきた気がした、その刹那お人形な彼からわたくしの頬に優しいキスが送られた。
お人形だったはずのマクシミリアンは黒いひよこに戻っていた。
何か原因で、こんな不可解な出来事が起こってるのかは、わからないけれど…、『やれやれ』と言いたげな