俺は人としての姿でお嬢様に触れたせいだろうか。あまりの懐かしさと愛おしさにベッドに座るお嬢様の腰に抱きついていた。
不自然な魔力の流れはまだ起こらず、ひよこに戻るにはまだ猶予がありそうだ。
「ビアンカお嬢様…、またいつ貴女にこうして触れられるかわからない身……、貴女に触れたいです…」
そう言いつつ俺は、この身を伸ばしお嬢様の白く艷やかな肌に触れる。つい柔かそうな唇に呼ばれるようにして、やわやわと彼女のそれをなぞる様にに撫でる。
「やぁんっ…! なにか…マクシミリアンが……えっち……」
恥ずかしがってはいる様子だが嫌がってはいない…?
少し気をよくした俺はベッドに片膝をつき、彼女の口角にほど近い場所の頬をぺろりと舐める。
「!? しばらく…ま…待ってって…、わたくしお願いしたのに…」
涙目で訴えかけるお嬢様が愛らしくて仕方ないのに、もっと困らせてみたくなる。
「そんなに隙だらけだと…すぐに奪えてしまえそうですね…」
手袋越しに唇を撫でながらそう言うと、「ん…」と小さく声をあげるお嬢様。
そっと俺の腕を掴み俺をにらみつけるお嬢様…。
「マクシミリアンばかっ! 本当に大切な人がこれから現れるかもしれないのに……、そんな事してはいけないと思うわ!」
貴女以上に大切な存在が…?
俺は苛烈な貴女を憎みながら焦がれてやまなかったというのに…。俺になかったはずの記憶が蘇ったか気持ちにとても苦々しい気持ちになる。
私は以前から、ビアンカ様の側にいたのだろうか?
だからこの愛しい気持ちは、このひよこの身体と決別できた時には、それらの記憶俺に戻るのだろうか…。
今更だが気になっていた事がある。
お嬢様はなぜ俺の名前を知っていたのか…。
ひよことして出逢ったのなら、この姿を何故知っていたのだろう。
アルフォンス様は、俺の事を懐かしいと言っていたが、俺についての記憶も無いようだった。
「お嬢様…一つお聞きしても宜しいですか?」
「わたくし怒ってるのよ! でも今聞くってことは大切な事なのよね…。 何かしら?」
「お嬢様は…なぜこの姿をご存知なのですか? 先程姿が変わったのが、私はこの姿でお会いした事はないように記憶しています」
「話してもいいけれど…、すごく荒唐無稽なお話だと思うの…。信じてもらえるかどうか…わからないわ…」
それでも話してもらえるのだろうか…。
「お嬢様に負担がなければ、教えて頂けると私は嬉しいですよ。けれど、お辛いなら気になっただけですので、今は諦めます。いつか貴女が話してもいいと思ってくれるまで待ちます…」
俺は彼女に秘密など持ってほしくはない。
けれど、お嬢様の沈んだ表情をみて話して欲しいと言えなくなった。