お嬢様は覚悟を決めたように俺を見据える。
そんなに話し辛い話なのだろうか……。
「わたくし前世の記憶があるみたいなの…。 泉に落ちてどなたかから…助けてもらって…、前世の記憶を思い出しましたわ……。 物語だけど声や素敵な絵のついたお芝居のようなある作品を見るのがとても大好きでしたの…」
お嬢様の話を要約すると、前世で大好きだったお話の世界に、フィリップ王子やノエル…や俺がいたという事らしい。他の存在に関しては、南国から留学してくる双子…と学園で出逢うらしい…。
その物語ではシュミナ・パピヨンというヒロインがいて、その女に恋をした俺たちはシュミナという女を虐めたビアンカを断罪して、国外追放か若しくは死に追いやってしまうらしい…。
現在の時点でフィリップ王子も、お嬢様の事をとても愛しているように思う。本当にそんなことが起こりうるのか……?
けれど確かに、気軽に口にしたくないはずだと思った。
自身の幼馴染や従者に嫌われ追放されたり命の危険を伴う未来を知っているのなら尚更……。
「前世というと……、元の貴女はどうなったのですか?」
「多分だけど海で死んだのかしら……? その辺りはあまり良く覚えていないの…」
「そう…ですか…。ずっと幼少の時期から、お一人でそんな重荷を抱えていらしたと……? 気づけず申し訳ありませんでした…」
また小さな俺の体で、お嬢様の背中を撫でる。
気持ちよさそうに目を細める様子が、まるで高級な猫のようだ。
「マクシミリアンは、どうしてこんな事になったのかは記憶がないの?」
魔法陣の描かれた卵の殻から出たらしい事しか、わからない。俺自身ひよこになってからの記憶しかないけれど、ごくたまに記憶を揺さぶるような衝動や感情に飲み込まれそうになる。
お嬢様に出逢った時とアルフォンス様と話していた時だろうか…。
今の姿になる前は? 俺はどこで何をしていた?
かなり厄介な状況ではある気はする……。
お嬢様に対する既視感も…気…になる。
もし何らかの要因で、今の状況になったのであれば
この呪いのような状況を解除すれば終わるのか?
「そういえば以前招待状を送ってきた…エイデン・カーウェル様にすごく怯えていましたが、それも物語とやらに関係がありますか?」
ビクリと体を揺らした。
「ヒロインが成績が悪い時に出てくる隠し攻略対象なの…。だから私はこんな時期にあの人と出会う訳はないのに……、それに王位を巡ってフィリップ王子とも仲が良くないはずだから、わざわざ手紙を出してきたのか、わたくしにはわからなくて取り乱してしまいましたわ…」
会った事はないが……もし出会う時があれば、注意せねばか…。