お嬢様の前世の話を聞き、何かとは上手く表現できないが、既視感は感じた。
愛らしくて仕方ない気持ちも、
お嬢様を壊してしまっても構わないから、気持ちなど伴わなくても俺のものにしたくて堪らない。
そんな歪んだ愛憎の様な何かも、俺の中に静かに息づいているのを感じる。
今は蓋をしているけれど、力ずくでお嬢様を組み敷いて憎まれても…、こちらを向かせたい、そんな激情も俺の中にあるのを感じる…。
俺自身が失っている過去とも、関係があるのだろうか。
今ならば、お嬢様との信頼関係を壊してしまうのが恐ろしくて仕方ないのに。
少なくともひよことして、そばに侍っていた間に接したお嬢様は、純粋で美しくて護りたくて、愛おしみたい。愛憎を向けうる存在ではなかった。
前世の記憶を持ち、苦しみや運命に立ち向かおうとした、彼女だからこそ仄暗い愛しさとは無縁に、彼女を慈しみたいと感じるのだろう。
記憶が戻って、
また
訳のわからない恐怖感が俺の中に去来する。
どうせ喪うのならば、力ずくで手に入れればいい。
泣き叫ぶ様に、心の中で暴れだしそうな何かを持て余していると、ふわりとした優しい温もりに包まれた。
「訳のわからない状況にいて、怖いのですね、マクシミリアンも。わたくしも訳がわからないし怖くないといえば嘘になるかもしれませんわね…」
そう言いながら、お嬢様が優しくひよこの俺を抱きしめた。
「わたくしも貴方と過ごした時間の記憶は殆ど失っているけれど…、感じるの。何故か、貴方の優しさや悲しみは…。ひよことしてそばにいてくれた間だって、わたくしを助けてくれたし、優しさをくれた…」
はらはらと美しい雫を瞳からこぼしつつ、お嬢様は続ける。
「前の世界で、貴方がこの家に来る前に家族を守ろうとして拒絶されたという過去を、わたくしも知っているのです。当時は設定として楽しんでいましたけれど、わたくしを信じると思って過去の恐怖を、一緒に乗り越えてくれませんか?」
『お嬢様……』
「悲しい時はわたくしがついてますわ!
マクシミリアンが格好いいから恥ずかしいですけれど、泣きたい時には、抱きしめていてあげます。ひよこじゃない貴方を大切に思ってますわ!」
なんだろうな……、目元が霞んで見える。
必死に思いを伝えてくれる優しいお嬢様を前に、何故だろう。望んでも手に入るはずなんてないと思い込もうとしてた、優しさが俺を包み込む。
涙を拭われて初めて気がついた…。
俺自身も泣いていた事に…。