何やら声が聞こえた気がした。
取り敢えず、俺を取り囲み捉えているモノを破壊して、現状把握してやる!周りを取り囲んでいる物を嘴でつつくともろくも崩れていく。
キテレツ、ハイジョ?よくわからないが耳に入る言葉が気に食わない。相手は誰かわからないが、一撃食らわしてやるかと、飛び蹴りを決めた瞬間、俺は卵の殻らしき物を突き破って外に出た。
ふと横を見ると、胸もとに肉を蓄えた女が俺の方をぽかんと見ていた。
「チッ」俺は鳥のようだが、この女を親として追いかけ回すのはなぜだか嫌だったので、舌打ちしてその場から立ち去る。
その後、美しい庭園らしき場所を歩いていたのだが、違和感がすごい。
何故これだけ足を踏み出してるのに、一向に前に進まない!?
孵ったばかりのひよこなのだから、仕方ないはずなのに、俺はどうにももどかしく感じてしまう…。
『なんなんだ!この違和感は!』訳もわからず、俺は焦燥感に駆られるように足を進めた。
気がつくと出会ったばかりの天使の様な少女に、妙に慣れ親しんだ気のする『マクシミリアン』という名をつけられ、やけに豪華な屋敷の部屋へと、手のひらに乗せて運ばれた。
『お嬢様に運ばせてしまった!』という謎の思いもあり、俺の焦燥感は更に深まる。
俺が親と決めた少女はビアンカというらしい。見た目どおり心も美しく、彼女に惹かれてやまない…。
月の妖精化身と言われても信じられる気がする。
うっとりと、彼女に見惚れていると何かを蹴破り、最初に視界に入ってきた女が、俺をつかんでこの場をさろうとする。
「ジョアンナ?」
ビアンカ様はそれを見て不思議そうに、こてんと首を傾げた。その仕草はひよこの俺が見ても愛らしい!
「この黒い柄はよごれてるのかもしれませんし、お側に置くなら綺麗に洗わないとですよね〜」
…となんだか黒い顔で俺を見ている。
ジョアンナといったか。
こいつ、わかっててわざと言っているだろう?
足をバタつかせて抵抗を試みたが、徒労に終わった…。
結局、洗濯物の様にワシワシ洗われても、俺の羽根の模様が変わるわけが無い。
その後、お嬢様が「ふわふわになりましたわね〜!かわい〜、尊い〜」と俺をたくさん抱きしめたり、撫でたりしてくれたから気分はいいのだ。
牛女の事は今回は見逃すことにしよう。
お嬢様は優しくて俺を愛してくれる。
俺は潰されないように回避をしながらだが、同じベッドで寝かせてくれる。
俺のことをお風呂で洗ってくれる。
ここは天国か…、そんなことを考えながらも、お嬢様と話せないのが悲しい。いつか、俺と彼女が会話できる方法を、見つけ出してみせると心に誓った。
黒ひよこ洗濯物のように洗われる!