俺はお嬢様を親に決めてからずっと片時も離れずにあの方のそばにいる。
どうしてだろう。
愛しくて愛しくて、彼女の側から離れたくなどない。
ジョアンナと呼ばれたあの女は気に食わない部分は多い。だがあの女に洗われた後、目一杯お嬢様からのスキンシップをもらえたし、その後俺を入浴(?)させたのを羨ましがったお嬢様の湯浴みに、俺も連れていって貰えるようになったのだ!
お嬢様の手で、毎日優しく洗って貰えるようになった。水を怖がるふりをすれば、「私もいてあげるから怖くないわ。一緒に湯船に入る?」と、抱きしめてくれたまま、優しくタオルにくるんで胸元で湯船に浸からせてくれるのだ。何という至福。断じて不埒な気持ちなどない。
断じて…。
枕元に簡易のベッドを置いてくれているので、お休みまで一緒だ。あの女もたまにはいい仕事をするじゃないか!
だが、お嬢様を喜ばせたい一心で、可憐な花を探しに庭へと向かおうとしていたら、アルフォンス様と遭遇した。
なんだかこの方は、とても温和そうに見えるのだが、本能が逆らってはいけないと叫んでいる…様な気がした。
だが、何故か彼のことは嫌いではない信用ができるとも思う。この手の既視感が何なのかをわからないなりに、信じてもいいとこれまでの短い体験で思ってもいる。
アルフォンス様もビアンカ様を愛している。血の繋がっている兄妹で…、アルフォンス様が俺に立ちはだかる存在にならなくて良かったとつくづく思う。
「僕の代わりにビアンカを守ってね」と、とても苦しそうにアルフォンス様が口にするから、つい俺は風のアレンジ魔法を使って俺の思いを伝えてしまった。
まずったか?そう思いつつも、不思議と伝えずにはにはいられなかった。
アルフォンス様は、きょとんと目を丸めてから「なんだか懐かしい声が聞こえた気がするな…」とふわりと笑った。
何日か経ったある日、金髪金眼のなんだか気に入らないガキが来た。ひよこの俺がガキと言うのもアレだが…。
明らかにお嬢様を狙っている、そしてお嬢様は困っている様子だ。友達としては好きだが…、という感じなんだろうが…。
俺を悪く言ってお嬢様の怒りを買ったようだ。
『なっ……!?』
お嬢様の頬にキスしようとするだと…!?
怒りのまま全力を込めて、金色頭の頬に飛び蹴りを食らわせた。風魔法で加速をつけたのは、お嬢様には秘密だ。
「フィリップ王子、大丈夫ですか?普段こんなことする子ではないのですが…」と俺を護ろうと弁護してくれるお嬢様。
愛しています。誰にも渡したくないです。
そう強く思うと何やら身体に異変が起こりそうな予感がした。
それから気持ちを誤魔化すように、風を強めに操って金髪頭を追い払った。
俺はこのままお側にいて愛でられたいのか?
一緒に寝たりお風呂で洗ってもらえる…のは、とんでもなく嬉しい…。だが、おそらく俺はペットとして愛されているのだろう。ずっとこのままでいいのだろうか?あの方の横が誰かに奪われても?
心が軋しむ…。
彼女に魔法で声をかけ、語り合いたいがこの風の魔法で奏でる声は成人男性のそれに近い……。必ず「マクシミリアンのお声、成人男性みたい…!」と恥ずかしがったお嬢様はそれらの行動をやめるだろうと思う…。
触れ合いたい、睦み合いたい…、でも今の居場所も無くしたくはない。
俺には近いうちに決断が必要なんだろう。
そんな時だった、カーウェル公爵家のエイデンという男からお嬢様に招待状が届いたのは。
黒いひよこルートは8から
エイデンルートは?
男の子は複雑です。
マクシミリアンの声に関しては、原作者の夕日様イメージ内で諏訪部順一 様との事なので、諏訪部さんボイスでご想像ください。
因みにビアンカ嬢の声は内田真礼 様イメージとのことです。