お嬢様の元に一通の招待状が届いた。
『ん……?』
差出人の名を確認したの手はこころなしかフルフルと震えているように見える。
「エイデン・カーウェル様……? どうしてわたくしにこんなものが……? 名前見て思い出したけど……、ヤンデレな彼だよね…? なんで?どうして……?ゲーム始まる前から断罪……?えっ?えっ?」
俺はお嬢様の肩に乗せてもらっていたので、意味はわからなくとも彼女が小声でつぶやいた言葉は拾えた。
『エイデン? ヤンデレ? 断罪?』
俺のお嬢様を苦しめるやつなのだろうか?
震える手で招待状の封を開き、文字を読み進めるに連れお嬢様の顔色は悪くなっていくのだ…。
『エイデン……か、なんだか引っかかる名前だが、なんて書いてあるのか……』
読めるはずはないと思いつつ、手紙を見つめていると不思議と読める。
〜はじめまして、ビアンカ・シュラット嬢。君と二人きりで話したい事がある。
ぜひ我が家の庭でお茶でもしていただけないでしょうか?〜といった内容だ。
『家格が上なのだ。逆らえる訳ないこと位わかるだろうに。気に入らない…。どうしたら妨害出来るだろうか…』
少しの時間考えあぐねていたが、アルフォンス様を呼ぶ事にした。
『お嬢様が困ってます。力を貸してほしい……』そんな言葉を風魔法に乗せてアルフォンス様の所に送りつける。
あまり時間が経つこともなく、軽やかな足音ともに少しの口論が聞こえる。
「アルフォンス様、走ってこられるなど、どうなされたのですか!?あ、ノックくらいして下さい…!」
メイドの言葉を遮る様に「入るよ!」と珍しくノックもなく、焦った様子でドアを開けるアルフォンス様。
お嬢様も何事かとドアの方に顔を向けていたが、その顔色の悪さは戻っていない。「お、兄様……」そう口にするだけでいっぱいいっぱいの様子だ。
お嬢様の顔を見て彼女のそばに近づく。
「僕の可愛いビアンカ……。何かあったの?体調でも悪いのかい?」
アルフォンス様は、お嬢様の様子に動揺しながらも優しく声をかけている。
『それで僕を呼んだのかな?』とでも言いたげに俺を一瞬見た。
あの時の魔法も俺のモノだって、流石にバレただろうが仕方ないな。俺は頷き、お嬢様の手元を見る。
これで伝わるだろうか。
アルフォンス様は手元にある招待状に視線を移し、内容を目にしたようだ。
「お、お兄様はどうしてこちらに? 何かあったのですの?」と、お嬢様は震え声ながらも口にする。
「虫の知らせかな? ビアンカが困ってるような気がしてね。しかし、カーウェル公爵家のご子息は面白い事をしてくれるね。ふふふ…っ。ビアンカを泣かせるなんて、どうしてくれようか……」
アルフォンス様は黒い笑みを浮かべながら、お嬢様を撫でている。公爵家のエイデンとやらは、敵に回してはいけない人を敵にしたな……、まぁ俺が呼んだのだが。
アルフォンス様が、領地にお戻りになる前で本当に良かった。俺もお嬢様を慰めるべく、首元によりスリスリと甘えてみる。
「あー!マクシミリアンはいつだって
アルフォンス様はこんな軽口を叩きながらも、当主を通さずに送られた招待状だ。
仮にも王子の
この辺りから、おそらくこの約束や今後の交流を、完膚なきまでに叩き潰してくれるだろう。
『本当に彼が敵じゃなくて良かった』
俺もそう密かに思わずにいられない。