自称カルデア最強マスターとぐだ子の人理修復録   作:なまゆっけ

50 / 117
第45話 嘆きの雨に虹はかかる

 サーヴァントは夢を見ない。

 人が眠るのは脳を休めるとともに、その日得た記憶や知識の整理をするためだ。けれど、サーヴァントはとうに死んだ人間。英霊の座より引き出された写し身にすぎない。

 だから、この現世にいるということが彼らにとっては夢なのだ。虚ろな座に存在する本体が見る、邯鄲の夢。泡沫の記憶。

 

〝…………進む道を変えてはならない。誰にも名を明かしてはならない。如何なる挑戦にも応えねばならない、か〟

 

 ならば、この血濡れた光景は一体何だ。

 鮮血の海に沈む子ども。

 心臓の一点を穿たれ、瞳に影が落ちる。

 それは紛れもなく己の手によるもので。紅き魔槍を滴る血液が真実と告げていた。

 師匠より授けられた槍の秘技。必中必殺の奥義───ゲイ・ボルク。今にも死に絶えようとしている子は、その技を使わなければ勝てないほどに強かったのだ。

 

〝くそったれ───…………!!!〟

 

 子の体を抱えて走った。

 総身の傷も思考の彼方、足が折れ、肺が裂けようとも走った。

 もう彼は助からない。魔槍の一刺しを受けて生き延びた者などいなかった。なぜならこれはそういう技で、自身の誇りでもあったからだ。

 それでも走ったのは。

 子への慈しみか。

 師への憤りか。

 自分への怒りか。

 はたまた───運命への憎しみか。

 

「……チッ。らしくもねえ」

 

 脳裏にこびりつく記憶を、クー・フーリンは切って捨てた。

 この身はもはや走狗ではない。

 人の命を数と身分と金で判断して効率的に操る、狂った王だ。

 故に忘れろ。

 自分がただの戦士であった頃の記憶など。

 己の欲望のままに他人を使い潰す。そんな傲慢で愚かな罪深き所業を続けるために。

 そうすればきっと、理解できるのだろう。

 あの日、あの時、師が仕組んだ決闘の真意を。

 ───こじ開けるように両の目蓋を上げる。

 内界への潜航を終え、意識は皮膚の隅々にまで行き渡る。サンドクリークの戦いで失い、修復した腕もいつもと変わらぬ反応を示した。

 己が信ずる至上の戦士。悪辣を地で行く女王は初めて恋を知った乙女のように、ほのかに頬を染めて微笑む。

 

「……あら、いつになく殺気立ってるわね。犬食べた夢でも見た?」

「軽口叩く暇があるってことは準備は終わったんだろうな」

「ええ、もちろん。奥の手もいけるわ」

「不意を討つ。前線がかち合った時に使え」

 

 ホワイトハウス。眼下に広がる自軍と敵軍を睥睨し、彼らは短く言葉を交わした。

 この館の上に滞空する虹蛇が言葉を発することはない。エジソンに貶められた神性を豊穣の雨にて回復した彼女は、虹の蛇神の姿を取り戻している。

 漆黒の雷雲に蓋をされた天。

 冷たい雨が降り、奇怪な雷鳴が轟く。

 それは、怨敵を前にした虹蛇の咆哮。もしくはこの土地に渦巻く無念と憎悪、悲痛の叫び。天にまで降り積もる恨みを背負い、彼女はいま哭いているのだ。

 アメリカによる先住民狩りが激化するのはまだ先のこと。独立戦争の時代に現れた虹蛇は、無数の悲しみを生む未来を否定するためにここにいる。

 故に、この暗雲が指し示す未来がどちらのものかなんて、女王には分かりきっていた。

 

(世界が滅ぶ? 正しい歴史が消える? そんなの、取り立てて言うことじゃない)

 

 世界を、歴史を守ったところでこの想いは満たされない。

 自分ひとりが苦労して、他の全員が笑い合えるような世界があったとしても、何も意味がない。見ず知らずの他人のことを考える時間があるなら、自分を幸せにするために生きるのがメイヴという人間だ。

 生前、どれほど焦がれても手に入れられなかった戦士。聖杯を用いてさえ、心を意のままに操れない男。彼女の意識は暫時、愛しき勇士にだけ向けられて。

 誰にも聞こえないような声で、小さく呟いた。

 

「────私は、絶対に勝つわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホワイトハウスの前に厚く広げられたケルト兵の横陣。アメリカ軍は数百メートルの空白地帯を挟んで、その対面に陣を敷いていた。ずらりと並んだ機械化歩兵の中に、世紀末的なモヒカンの一団とアメリカが擁するサーヴァントとマスターたちが紛れ込んでいる。

 その一角だけでは降りしきる雨の音をかき消すようなラッパ音がけたたましく鳴り響いていた。暴走族がよくバイクに取り付けているミュージックホーンと呼ばれる警笛の一種だ。

 スカサハは眉根を寄せながら苛立たしげに言う。

 

「……おい、この音を止めさせろ。気が散る」

 

 彼女はノアの右足を咎めるように蹴りつける。無論本気ではないが、衝撃を確実に伝える蹴り方だ。振り子みたいに揺れるノアは平坦な声で言い返した。

 

「そんな野暮なことを俺にさせるつもりか? これはモヒカンにとって重要な儀式なんだよ。例えるなら武士の戦名乗りみたいなもんだ」

「どこがだ! 自らのアホさ加減を露呈しているだけだろうが!」

「自分がアホなんてことは暴走族なら誰でも知ってるんすよ。その上で社会や自分への不満を解消するためにやってるんす、スカサハの姉貴」

「黙れモヒカン! 私がいつ貴様に発言を許可した!?」

 

 どこか煤けた顔のモヒカンの額に槍の穂先が突き刺さる。

 顔面を流れ落ちる血で真っ赤に染めるモヒカン。立香は彼にタオルを手渡して、ノアに振り返った。

 

「そういえば、モヒカン軍団の指揮は誰が執るんですか? リーダーなんて突撃の指示しかできなさそうです」

「見くびるなよ藤丸。俺が出す指示は特攻命令だけだ。奴らのバイクにはダ・ヴィンチお手製の自爆装置が取り付けてあるからな」

「『やっぱり機動兵器に欠かせないのは自爆だよね! 自爆さえあれば話的にも絵面的にも、いい感じに盛り上がるし!』」

「え、私たちって世界を救う側ですよね!? やってることが悪役そのものなんですけど!!」

フォウフォウ(今更じゃね?)

 

 カルデアの二大マッドサイエンティスト、ダ・ヴィンチとノアの言い草に立香(りつか)は戦慄した。いつの間にか会話に割り込んでいたフォウくんの神出鬼没さも恐ろしいことこの上ない。

 今までの一部始終を遠い目で眺めていたペレアスは自信ありげに提案する。

 

「じゃあ、オレがやるよ。これでも軍を率いて戦うのが仕事だったしな。ブリテンの国境警備と防衛はオレの担当だったんだぜ? なんたって円卓の騎士だからな!」

 

 そう言って、ペレアスは鼻を高くした。

 国境の防衛を任されていたと言えば聞こえはいいが、僻地の駐留は見方によってはほぼ左遷を意味する。

 そこには円卓内において湖の乙女の影響と、ランスロット側の勢力が増すことを危惧したアグラヴェインの思惑があったが、ペレアスは見栄を張るためにその経緯を伏せていたのであった。

 しかし、そこは他人の急所を執拗に突くことに定評があるEチーム。ペレアスの後ろめたい感情を察知すると、一斉に攻撃を開始する。

 

「でも、番外位ですよね。モードレッドさんに記録を消されたとかも言ってましたし」

「ええ、番外位ですから。円卓の騎士になったのも湖の乙女のコネだったのでは?」

「番外位のくせに見栄張らないでくれる? エリートのガウェインと落ちこぼれのペレアスっていう私の妄そ……創作の邪魔にしかなりませんから」

「オレはちゃんと王様主催の聖霊降臨祭の馬上槍試合で優勝して円卓の騎士になりましたァ! 王城に取り立てられる前も領地はそれなりに広かったからな!?」

 

 過去の栄光を押し付けてくるペレアスを、ノアは鼻で笑った。

 

「そもそも番外位ってなんだよ。どう見ても苦し紛れの設定だろうが」

「うるせえ! 数字がない位階ってのもそれはそれでカッコいいだろ! オレが気に入ってるから良いんだよ!」

 

 そう反論するペレアスの背中はどこか暗い影を背負っていた。嘆きの騎士である彼の後ろ暗い部分は死後もなお堆積しているということだろう。

 マシュは現在進行形で汚点を増やしていくペレアスに冷たい目線を突きつけ、

 

「これ以上ペレアスさんに割いている尺もありません。早めにエジソンさんに始めてもらいましょう」

「虹蛇を誘い出す必要があるものね。ダンテの威勢が本物か、この目で見れないのが残念だけど」

「と言う割にはエジソンらの姿が見えぬぞ? 虹蛇をどうにかしなくてはならぬのは確かだが、余が風邪を引いたらどうするつもりだ」

「いや、サーヴァントだから大丈夫でしょうよ」

 

 ネロの妄言にロビンがツッコんだその時、両軍が挟む空白地帯に雷が落ちた。

 虹蛇が操る雷雲によるものではない。

 それは真実、ヒトが手にした神の威光。

 雷霆という神秘を人類に手渡した星の開拓者、ニコラ・テスラによるモノだった。

 虹蛇を除いた戦場の全員が上空に目を向ける。そこには雷撃の担い手であるテスラと、金属製の十字架に括り付けられたエリザベートとエジソンが電磁浮遊していた。エジソンは若干雷撃に巻き込まれたのか、ところどころが黒く焦げている。

 テスラは高笑いをあげて、虹蛇を指差す。

 

「喜べ、虹蛇! 天才ニコラ・テスラが貴様の仇を連れてきてやったぞ! しかも前菜には世にも珍しいトカゲ娘アイドルだ、存分に召し上がると良い!!」

「ちょっとォォ!! 私が前菜ってどういうこと!? こんな美少女サーヴァント、メインディッシュ以外の何物でもないでしょうが! ライオンの丸焼きなんて食べたら胸焼けするわよ!!」

「文句を言うところはそこではないだろう!虹蛇を誘き出すとは言ったがこれはどういうことだテスラァァァ!!」

 

 エジソンは獲物を目の前にした獅子の形相で吠える。その声よりも万倍響き渡る怒声で、虹蛇は憤怒を露わにした。

 

「来たかエジソン!! この国のすべての罪業を体現する咎人───その中に在る薄汚い魂ごと貴様を喰らってやる!!!」

 

 大気が痺れ、大地が震える。

 彼女の怒りと憎しみ───否、アメリカに土地と文化を奪われ、生きていた証拠すらも消し去られてしまったすべての犠牲者の嘆き。その想いが、この世界を揺らしていた。

 豪雨は雷雨へ。

 雨の如く降り注ぐ雷はいまや、自らのものであったはずの土地をも焼き尽くそうとしている。虹蛇はその命を失わない限り、この国に暴虐を撒き散らし続けるだろう。

 偽りなき純粋な殺意と憎悪を受け止め、エジソンは虹蛇を真っ向から見据える。

 

「…………貴女の意見は道理だ。大統王を名乗る者として、私にはそれを受け止める義務がある」

「ならば────」

「───だが」

 

 合衆国を背負う男は力強く言い切った。

 

「貴女がふりまく殺戮を止めるのもまた、大統王たる私の義務だ! 貴女は貴女の意のままに私を殺しに来るが良い!!」

 

 虹蛇の怒声がこの世界を揺らすものだとすれば。

 エジソンの宣言は、この場すべての人間に届いた。

 

「望み通りにしてやる───!!」

 

 時を止め、不動の世界を駆け抜ける。

 彼女の目にはもう、他の何も写っていなかった。

 冷たい地の底に追いやられた人々の望みを叶えるために。

 死した人間の復讐を成し遂げるために。

 固有時を何倍にも加速させる。自らの肉体の崩壊をも厭わぬ疾走。割れた表皮から溢れる血の雫は空中でぴたりと止まり、紅蓮の軌跡を描き出す。

 自壊を伴う奔走は一秒にも満たない時間停止であっても、虹蛇をテスラたちの目の前に運ぶことに成功した。

 彼女が峰のような毒牙を突き刺そうとしたその時、時空を断つ裂け目が口腔を逆袈裟に引き千切る。

 時間が動き出す。

 テスラは不敵な笑みを貼り付けていた。

 

「『人類神話・雷電降臨(システム・ケラウノス)』」

 

 虹蛇の口腔から噴き出す血の滝。しかして、テスラがそれに染まることはなかった。身にまとう電流が触れたそばから血液を蒸発させていたからだ。

 

「我が宝具は時空に断層を創り出す。三次元空間と一次元時間で構成されるこの世界を停止させたとて、断層の発生を食い止めることはできまい」

 

 ばちり、とひと際大きく雷電が弾ける。

 それとともにエリザベートとエジソンの周囲にバネ状に渦巻く電流が展開される。次に何が起こるかを予測できたのはエジソンのみ。待ち受ける未来を想像し、彼は顔色を真っ青に染めた。

 

「テスラ、待っ」

「エジソン。貴様がこの国にかける想いを見せてやれ」

 

 真摯な声音が胸を打つ。

 電流戦争で相争った仇敵の言葉は、誰のそれよりもエジソンの肚にすとんと落ちた。

 テスラは十字架の二人に手をかざし、高らかに声を張り上げる。

 

「───()()()()()()()だっ!! 第一宇宙速度で飛翔するこの二人に見事追いついてみせろ、虹蛇!!」

「え、何!? 何が起こるの!? 第一宇宙速度とか意味分からないんだけど! ハンガリー語で説明して!」

 

 当惑するエリザベートをよそに、テスラはマスドライバーを発動させた。

 高音と同時に空気が破裂する。

 直後、エリザベートとエジソンは目にも留まらぬ速度で空の彼方へと射出された。

 マスドライバー。磁気の反発力によって物体を高速で撃ち出す架空の装置である。本来は発射する物体を次々にコイルに通していく必要があるが、テスラは電磁気を操作する能力でその問題を突破した。当然、生身の人間をこんな方法で放り投げれば跡形もなく四散するだろうが、サーヴァントならば死ぬことはないという判断であろう。

 ソニックブームを引き連れて飛ぶ二人は瞬く間に視界から消える。その前に虹蛇は眼前のテスラをも忘れて、彼らを追いすがった。

 流れ星と化したエリザベートとエジソンが辿り着くのは、ホワイトハウスから遠く離れた平原。彼らの体は空中で待ち受けていたカルナの両腕に押し留められる。

 それはマスドライバーの弾丸を直撃するに等しい行為だったが、その黄金の鎧には一筋のヒビも入ることがない。カルナは平然と頷いた。

 

「どんな方法でやってくるかと思えば、かなり乱暴だったな。腕が痺れたぞ」

 

 激突の瞬間を地上から目の当たりにしていたダンテは口元をひくつかせる。

 

「今ので腕が痺れるだけで済むんですか……流石はインド戦士ですね」

「いえ、アレをやれるのは私の国でもそうはいません。決して勘違いしないように」

「多からずいるというだけでも空恐ろしいですねえ」

 

 会話を交わすダンテとアルジュナのもとにカルナが降りてくる。彼が両脇に抱えるエリザベートとエジソンは白目を剥いて口から泡を吹いていた。

 高速飛行による加圧により、二人は失神したのだった。全身は小刻みに震えており、テスラのマスドライバーがいかに過酷だったかを物語っている。彼の私怨に巻き込まれたエリザベートにはとばっちりでしかない。

 ナイチンゲールはそれを見ると、カルナの腕からひったくるように二人を確保する。

 

「特に外傷は見られませんね。サーヴァントのカルテは少ないので正確な診断は下せませんが、しばらく安静にしていれば意識を取り戻すでしょう」

「では、この二人はナイチンゲールさんに任せるとしましょう。素人が触っても変なことになりそうですからね」

「ええ、私たちは虹蛇の相手です」

「ダンテには秘策があるのだろう。まずはそれに任せるぞ」

 

 そうして、カルナとアルジュナ、ダンテは並び立つ。

 彼らの視線の先、西の空が急速に黒く染め上げられていく。

 それは虹蛇が到来する予兆。ほのかに見える虹の輝きが揺るがぬ事実を語る証拠だ。ダンテは言いづらそうに切り出す。

 

「あの、なんとなく横並びになりましたけど、私だけ場違いじゃありません?強さ的に」

「怖気付いたか?」

「まさか。私には虹蛇を打倒してノアさんたちを見返すという崇高かつ偉大な目的があるのです! 怖気付いてなんていられませんよ!!」

「動機が不純すぎる……」

 

 一帯の空が完全に雷雲に覆われる。

 弾丸のような雨が降り、どこからともなく虹蛇が現れる。時間が止まった世界は彼女以外の誰にも知覚することはできない。カルナとアルジュナは突如の出現に驚くこともなく、各々の得物を構えた。

 対して、ダンテは懐から隙間なく文章が書き連ねられた紙束を取り出す。

 それこそは彼に与えられた唯一の武器。

 己が魂の照覧。かつて到達した世界を現世に喚び出す、無比の結界宝具。詩人が持つ攻撃手段はこのただひとつのみだ。

 

「まずは、謝っておきましょう。異教の救いをあなたに押し付けてしまったことを」

「それが貴様らの本質だ。神の救いの名のもとに他の神を否定し、悪魔へと貶める。この世界に神がただひとりと宣う傲慢故の悪逆だ!」

「確かにモーセの十戒では〝主を唯一の神とする〟という文言がありますが、それはあくまでイスラエルの民とのみ交わされた契約───言わば旧約です」

 

 旧約聖書と新約聖書には七つの契約の場面が描かれている。その内四つは神とイスラエルの間に交わされたものであり、キリスト教の前身であるユダヤ教にとっての契約という側面が強い。

 それは人類への大愛の神となる前の唯一神によるもの。嫉妬する神が交わした契約であって、その内容も人間に行動を要請する形が多い。しかも、契約破りへの裁きは死のみであり、他の判決はない。なぜなら、嫉妬する神は人類への無償の愛を持っていないからだ。

 

「しかし、救世主は十字架に掛けられた際に人類の原罪を浄化するとともに、新たな契約を交わしました。それは救世主の行いのもとに、全人類の救済を約束するというものです。この教えが後世悪用されたことは間違いありませんが、救世主の願いはきっと、優しいものだったに違いありません」

 

 がぎり、と虹蛇は牙を軋ませる。

 ダンテの言葉は残酷な真実を秘めていたから。

 

「そして、キリスト教が異教の神々を悪魔としたのは神や救世主が言ったのではなく、ローマ帝国の教父アウグスティヌスの影響です。彼の悪魔に関する解釈が半ば公式化したことで、謂れのない誤解が────」

「ならばそれは、貴様らの罪だ。正しかったはずの教えを悪用し、誤解し、異なる人々を排斥する……生まれついての侵略者だ」

 

 ダンテは目を伏せ、そして開ける。

 

「…………ええ、そうかもしれません。私も今からあなたを殺します。けれど、これだけは覚えておきなさい」

 

 静かに、そしてはっきりと断言した。

 

「醜いのは人であり、神ではない」

 

 ───故に、その醜さをもってこの戦いを終わらせよう。

 紙束を介して、冷たく硬質な魔力が発露する。

 その瞬間に、虹蛇は駆け出していた。幾度となく死を経験した彼女でさえも、五感すべてが警告を発するほどの危機感。脳が発する警鐘のままに時間を止めようとしたその時、蒼炎の矢が全身を穿った。

 

「今は私が彼の盾だ。通させはしない」

「くっ…!」

 

 体の矢傷を即座に修復し、停止した世界の中で彼らの背後に回り込む。

 再び世界が動き出したと同時、カルナの総身から噴き出した炎が虹蛇を灼いた。

 

「オレを忘れてもらっては困る。……勝負だ、虹蛇」

 

 そして、無数の詩篇が荒天に舞い上がった。

 

「〝我を過ぐれば憂ひの都あり。我を過ぐれば永遠の苦患あり。我を過ぐれば滅亡の民あり〟」

 

 空に揺蕩うのは純白の詩文。

 しかし、ダンテが呪われた右手を掲げた瞬間にそれらは色を変えていく。

 

「〝義は尊き我が造り主を動かし、聖なる威力、比類なき智慧、第一の愛、我を造れり〟」

 

 その色は黒。

 暗雲よりもなお暗き漆黒。

 遍く光を吸い込み、幽閉する結界がここに織り成されようとしていた。

 

「〝永遠の物のほか、物として我より先に造られしはなし〟」

 

 言の葉が紡がれていく度に虹蛇の焦燥は募り、血液を送り出す心臓の鼓動は早くなっていく。

 天より雷撃を降らせ、空間を歪め、命を賭した突貫をかけようとも尽く詩人には届かない。蒼き炎の弓手と黄金の戦士が峻厳なる壁として立ちはだかっていたからだ。

 

「〝しかして、我、永遠に立つ〟」

 

 闇の光が像を結ぶ。

 

「───〝汝この門をくぐる者、一切の望みを棄てよ〟!!」

 

 それはとこしえの苦しみが待つ場所。

 

 

 

 

 

「『無間氷獄(コキュートス)永劫凍結する第九魔圏(リンフェルノ・デル・ルチーフェロ)』」

 

 

 

 

 

 ───すなわち、あり得ざる地獄の再演であった。

 その時、虹蛇と詩人の体は空中に放り出される。

 

「な…ッ!?」

 

 星ひとつない夜空。そこにはカルナやアルジュナの姿はなく、彼ら二人だけがその世界に囚われていた。

 咄嗟に地上に目を向けると、そこには大地の奥深くまで漏斗状の孔が広がっていた。地平線の向こうまで続くその孔は、かろうじて真円をなしていることが上空から見て取れる。

 問題はその深さ。漏斗状に切り抜かれた孔の中心は微かな光もない暗闇。原始的な恐怖が虹蛇の心に滲んだのを見透かすように、ダンテは告げた。

 

「もう一度この場所を訪れることになるとは悪夢でしかありませんが、あなたにも付き合ってもらいますよ。地獄への潜行に」

「落ちるのは貴様だけだ。天空の虹たる私が地を這ってたまるか!」

「いいえ、墜ちるのですよ。あなたも私も、最深部まで一直線にねえ!」

 

 空の虹を体現する神格である虹蛇はこれまでも見せたように、自由自在に飛翔することができる。空に留まる手段を持たないダンテのみが落ちるのは道理だろう。

 だが、この場所は道理や条理とはかけ離れた世界。そこでは余人の推測など何ら意味をなさない。

 ずしり、と虹蛇の体躯に重力がかかる。

 鉛のように重いという表現は適切ではない。いくら脳が命令を下そうとも体が微動だにせず、その加重は遥かに増していく。

 まるで山脈や大陸を載せられているような、圧倒的な重圧。時間を止めてそれを振り切ろうとしても、一切行動できずに僅かな停止時間が過ぎてしまう。

 

「私は現代の科学に明るくはありませんが、時間と空間を超えられる力は重力のみだそうです。私がここで殺されていないことを鑑みるに、それは正しいようですね」

 

 墜落が始まる。

 天より地の底へ、真っ直ぐに降りていく失墜。虹蛇はそれに抗うことすらできずに、光跡を残して地獄の穴へと吸い込まれていく。

 そこで彼らは地獄を見た。

 永遠の責め苦を受け続ける罪人。

 第七圏を守護する牛頭の番人。

 見るもおぞましき血の川。

 失墜の最中、ダンテは虹蛇に問う。

 

「あなたはこれを見てどんな感想を抱きますか。ここは人の業が裁かれる場所。つまり、現世のありとあらゆる人間の醜さが集まる世界です」

 

 彼女は、あらん限りの憎しみを込めて答えた。

 

「───何も、何も変わりはしない。西洋人が我らの大陸に作り出した光景と同じだ」

「……そうですか。私がいくら詩をもって地獄の恐ろしさを伝えようとも、それを省みて行いを改める者は少ないでしょう」

 

 彼らの肌を冷ややかな空気が撫でる。

 視界に広がるのは一面の氷原。透き通った地面の下には、無数の人間が氷漬けにされていた。

 

「ただ、私も今回は感傷に浸るつもりはない」

 

 彼らの墜落はそこで終わり。

 明けることのない夜闇に閉ざされた最後の領域。

 虹蛇とダンテは毛穴を突き刺すような寒気をまといながら、相対した。そこに行き着いた途端、ダンテは寒気に似合わぬほどにガタガタと震え始める。

 

「あぁああぁああ〜……恐ろしい! まさか死んでからもここに来ることになるなんて思いもしませんでしたよ!! こんなことならカルナさんとアルジュナさんも連れてくるんでした!!」

「……は?」

 

 男の急な豹変に、虹蛇は呆然とした。

 自らが展開した宝具の中にありながら、ダンテは本気で恐れおののいている。その表情に嘘はなく、演技をしている訳ではなさそうだった。虹蛇は歯を食いしばって我を取り戻す。

 相変わらず体は動かない。加重は止まったが、それはむしろ最高潮に達したということ。重力の楔は未だ彼女を強く繋ぎ止めている。

 ダンテは震えた声で喋り出した。

 

「こ、ここは地球の重力が集まる地獄の最下層。たとえあなたでも逃れることはできません。アハッ、アハハッ、アハハハハハハ!!!」

「狂人め……!!」

「狂いでもしなきゃやってられませんよ! あなたもすぐに思い知ります、悪魔の王の恐ろしさをねえ!!」

 

 狂った笑い声をあげるダンテの背後で、二つの眼光が閃く。

 物理的な圧力すら与える眼差し。双眸の他は濃密な闇に包まれており、その輪郭さえもうかがい知ることはできない。

 ソレは悪意も殺意も彼らに向けてはいない。だというのに、ただそこに存在するだけで逃れ得ぬ死の予感を五感すべてに突きつけてくる。

 虹蛇が身震いをしたその時に、既に攻撃は終わっていた。

 

「…………────!!」

 

 凍る。

 凍る凍る。

 凍る凍る凍る。

 肉が、骨が、血が、魂が。

 何もかもが余さず凍っていく。

 地獄に君臨する魔王の冷気。

 唯一神ですらその力を恐れ、地の底に磔にした堕天使の威圧。

 条理も不条理も超えた異次元の力が、不死の虹蛇を氷像へと変えた。

 かくして、魔王の双眸は消え失せる。

 残るのは魂魄までをも氷漬けにされた虹蛇と、立ち竦むダンテのみ。宝具は徐々に効力を失い始め、その像が紐解かれようとしていた。

 

「……さて、まだ立ち上がれるのでしょう?」

 

 答える声はない。

 けれど確実に、彼はその復活を見抜いていた。

 ───当たり前だ。

 たとえ肉体と魂を凍結されようと、民から捧げられる嘆きの念は途切れることはない。

 果てなき憤怒と憎悪。それらだけが、彼女を突き動かす原動力なのだから。

 凍りついた肉体を破り、虹蛇は新生する。

 宝具の力が薄れたいま、虹蛇は重力の軛を強引に打ち破り、霧が覆う地獄の中空に浮かび上がった。

 

「今なら貴様は無防備だ! ここで殺す!」

「そのようですね。それでは、後は任せます────」

 

 言い切る前に、虹蛇は突撃する。

 この身にかかる重力はまだ残っている。一度の時間停止では致命傷を与えるまでには至らないが、防御手段を持たないダンテにはそれで十分。接近するだけで仕留められるだろう。

 彼の目の前に現れ、噛み潰す。

 間断なく詩人の命は奪われる。

 

 

 

 

「───『解体聖母(マリア・ザ・リッパー)』」

 

 

 

 

 ……そのはずだった。

 虹蛇の巨大な体躯が輪切りにされ、ばらばらと地面に落ちる。

 茫洋たる霧に見える少女の影に、ダンテはゆっくりと十字を切った。

 

「…………ありがとうございます。ジャックさん」

 

 地獄を顕現するこの宝具は本来、キャスターのクラスのダンテには使用できないはずだった。それを可能としたのは、右手に宿るジャック・ザ・リッパーの呪い。人を呪う文字を持たないダンテが呪詛を得たことで、この宝具は封印を解かれたのだ。

 名も無き少女はくすりと微笑む。

 

「あなたの旅路の果てを、見せてくれるんでしょ? 無茶したらダメだよ。弱いんだから」

「ぐふぅ! ですが、ええ、きっとあなたに私たちの行き着く先を見せるつもりです。神に誓って」

「うん。また呼んでね」

 

 その声音は、優しかった。

 地獄の環境を借りて、顕現を成し遂げた少女。彼らの再会にはどのようにでも理屈をつけることはできるだろう。が、ダンテはあえて理屈や理論を飛び越えた名前をつける。

 

「地獄でも、奇跡は起きる。あなたは確かに、人類の希望を体現していましたよ」

 

 結界が解け、現世の光景が映し出される。既に虹蛇は再生を始めており、天候は雨から日照りへと移り変わっていた。

 輪切りにされた体が寄り集まり、再生を成す。

 カルナとアルジュナは虹の輝きを見上げた。

 

「オレが前衛だ。後ろに下がっていろ」

「……背中に気を付けるといい。場合によってはお前ごと貫いてやる」

 

 中天に輝く太陽が強い光を発する。

 完全なる復活を遂げた虹蛇は声にならない咆哮をあげ、カルナとアルジュナに突進した。

 

「『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』」

 

 焦熱の眼光。たった一撃でケルト軍を退けた熱線はしかし、急速に規模を失い、虹蛇に到達する寸前で消えてしまう。

 それは地上の生物から魔力、生命力を簒奪する魔の陽光。魔力を使った攻撃は無効化され、虹蛇の糧となってしまう。その対象は当然カルナとアルジュナ以外も含まれ、ダンテは身悶えした。

 

「ヒィィィ! 消える消える! 私みたいな雑魚サーヴァントなんて秒で昇天させられるんですが!?」

「静かにしなさいッ! せっかく二人が安らかな表情で寝ているというのに、起きてしまったらどうするのですか!」

 

 ナイチンゲールは焦り散らかすダンテを注意するが、地面に伏せるエリザベートとエジソンがうっすらと透けてきていることには気付いていなかった。ダンテは即座に二人に駆け寄る。

 

「見てくださいナイチンゲールさん、二人の体が消えかかってます! 安穏とした死を迎えつつあります! パトラッシュです!」

「そういえば、何だか体が重い気がしますね」

「気付いてなかったんですか!?」

 

 ナイチンゲールは天に召されつつある二人から視線を切る。その目が向かうところは空中。カルナとアルジュナ、虹蛇が争う晴天だった。

 この陽射しはサーヴァントにとっての毒だ。魔力を奪うということは攻撃の威力が減衰するだけではなく、現界を維持する力さえも失っていく。

 さらには、失われた魔力がそのまま虹蛇に吸収される理不尽。乾きを与える太陽の光こそは、自然を象徴する虹蛇の悪性と攻撃性を表していると言えよう。

 だからこそ。

 その陽射しは、ナイチンゲールが否定すべきものであった。

 

「『我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)』」

 

 白衣の女神が降臨する。

 荘厳なる碧の光は陽光とはまさしく対極。

 現代に通底する医療の概念を生み出した看護師、ナイチンゲールへの崇敬と彼女の精神が形をなした女神。医の神性は両の手に持つ長剣を高く掲げた。

 しかして、それは誰かを傷つけるための刃ではなく。

 すべての毒あるもの、害あるものを絶つ救済の一刀───!!

 

「『梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)』!!」

「『炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)』!!」

 

 熱線と流星。

 二人が同時に放った一撃は陰ることなく虹蛇へ飛んでいく。

 

「凶れ!!」

 

 視線を介した空間操作で攻撃を捻じ曲げようとするも、それらは彼女の巨躯を無残に削り取る。

 ナイチンゲールの宝具はあらゆる毒性、攻撃性を無効化し、味方の傷を癒やす。自軍に対する絶対安全圏の構築こそが真価であり、虹蛇の陽射しはその力を失った。

 これを一瞬にして察知したカルナとアルジュナはただちに宝具を解放した。卓越した戦士の感覚が、その対応を可能としたのだ。

 つまり、それは彼らの実力が虹蛇を超えていることを示している。

 躍る火矢が肉を撃ち抜き、神槍が骨を断つ。

 時を止めて逃れようとも、二人はその動きを見越したように先手を打たれてしまう。

 かつて殺し合ったからこそ、彼らの連携に隙はない。相手より一手先を取るために思考は加速し、積み重なる戦術は虹蛇を置き去りにする。

 虹の光が陰っていく。雨と創造を司る蛇神は奥の手である陽光さえも奪われ、今度こそ這い上がることのできない死の淵へと追いやられていた。

 意識を回復したエジソンが見たのは、血肉を振り乱して空を舞う虹蛇。

 

「起きましたか、エジソンさん。お体の具合はいかがですか?」

「うむ……あれが、虹蛇の最期か」

 

 エジソンは表情に影を落とす。

 虹蛇に如何な理由があろうとも、彼女を倒さなくては特異点は修復されない。魔術王によって滅ぼされた世界を救うためには、虹蛇の死は絶対条件だ。

 ナイチンゲールは芯の通った声音で言う。

 

「ですが、彼女の最期を彩る権利は貴方にある」

 

 咎めるのではなく、諭すように。

 

「私にも救えない命はたくさんありました。医療の歴史とは病に対する敗北の歴史です。無数の死者を糧に、未来の病人を救う───私たちは永遠にそれを繰り返す運命にあるのでしょう」

 

 人類は二本の脚で歩いたその時から、病という名の敵と戦い続けてきた。

 その中で誤った治療法や術式が広まり、助かるはずの人々を失った事例は絶えない。それでも、彼らの根底にあったのは苦しむ人々を救いたいという願いだったに違いない。

 

「死への対抗薬はありません。もし貴方が絶望のままに死を迎える虹蛇を憐れむなら、それを救う方法はたったひとつ。無償の献身です」

 

 カルナの槍が虹蛇を横から断ち割り、蒼の矢が頭を吹き飛ばす。

 失墜。ばらけた体が次々と光の粒子へと還り、残った心臓───霊核の位置から、褐色の女性が浮かび上がる。

 全身を血に染めた彼女は弱々しく地面を這いずっていた。

 

「まだだ……まだ、まだ私は負けられない……!!」

 

 繰り返されるうわ言。瞳に宿る光は未だに強く、煌々たる殺意に溢れている。

 もはや手を下さずとも消滅する。この場の誰も、とどめを刺そうとはしなかった。

 ナイチンゲールはエジソンの背中を勢い良く押し出す。

 

「彼女の心を治療してみせなさい、大統王エジソン!!」

 

 その勢いのままにエジソンは虹蛇へと歩を進め、彼女の前に座り込んだ。

 エジソンは絞り出すように声をかける。

 

「死にゆく貴女に、私ができることはあるだろうか」

 

 返答は、これ以上なく簡潔に。

 

「死ね……! 自らの手でその心臓を抉り取ってみせろ!!」

「───わかった」

 

 血の雨が虹蛇に降り注ぐ。

 唖然とする彼女の眼前に蠕動を繰り返す心臓が落とされた。

 息を呑み、目を見開く。自らの民を裏切り続けた合衆国を目の当たりにしていた虹蛇にとって、それは予想だにしない展開で。真っ白に漂白された思考にエジソンの言葉が突き刺さる。

 

「すまない……それしか言う言葉が見つからない。許してくれずとも良い。私は、私の殺意で貴女を殺したのだから」

 

 それが、彼の献身だった。

 時を置かずに死ぬ状況。

 最も憎んだ者が自身を殺す異常。

 目的が無くなり、意識を取りこぼしかけた虹蛇に天よりの託宣が下る。

 

〝───貴女の憎悪はそんなことで絆されるのか、虹蛇〟

 

 彼女以外の誰にも聞こえないその声は、永遠の領域に坐す知恵の女神ソフィア。語調は重たく、暗い感情が煮凝っていた。

 

〝ここで死ねばすべてが奴らの思い通りになるぞ。合衆国はまたしても正義と自由を謳うだろう……暴虐の蛇神を斃した英雄エジソンに栄光あれ、とな〟

 

 その感情の正体は、今の虹蛇になら分かる気がした。

 

〝人間の愚かしさは螺旋を描いて止まることはない。無数の敗者が抱いた哀しみを忘れ、英雄譚だけを尊ぶような連中に貴女が負けることなどあってはならない〟

 

 なぜなら、彼女もまた同じだった。

 山のように積み上げられた憎しみ。

 忘れられたすべての敗者に寄り添う女神。

 ソフィアもまた、勝者が紡ぐ歴史を何よりも疎ましく思っていたのだ。

 

〝殺せ!!! 貴女にはその権利がある!!〟

 

 一瞬、虹蛇の腕に力が篭り、

 

「…………ッ!!」

 

 脳裏に響いたのは、輝かしき知恵の女神による神託ではなかった。

 それは、かつて彼女が愛した民の最期の言葉。

 

〝虹蛇……お前のやり方では、敵を増やすだけだ〟

 

 ───ジェロニモという男がいた。

 古くより北米大陸に定住していたアパッチ族のシャーマンであり、白人への抵抗を繰り返した戦士。彼はアメリカ軍とメキシコ軍との戦いを演じ、多数の戦果を打ち立てる。

 ジェロニモの戦いの始まりは母親と妻、そして三人の子どもをメキシコ軍に惨殺されたことから始まる。彼は復讐のままに部族を率いて敵を打ち破り、時にはナイフ一本でメキシコ兵に立ち向かった。

 しかし、相手の物量は圧倒的。数人の被害を数百人にも膨れ上がらせて民衆に伝える白人の情報戦も相まって、先住民族への憎悪はいや増し、彼は次第に追い詰められていく。

 1886年、アメリカに投降したジェロニモは生涯見世物として扱われた。彼は故郷に帰るという望みも果たされずに人生を終える。

 それがどれほどの屈辱であったか、想像に難くない。

 

〝お前の気持ちは私には痛いほどに分かる。私たちへのあの行いは、糾弾されて然るべきものだ〟

 

 血まみれの体で。

 死にかけの声で。

 ジェロニモは確かに虹蛇に告げたのだ。

 

〝憎しみだけでは、怒りだけでは、どうにもならない。分かり合うことはできない。愚かな復讐に身を捧げた私だからこそ、お前の行為は間違いだと断言することができる〟

 

 きっと、彼はあんなところで死ぬ男ではなかった。

 この北米大陸をケルト軍の魔の手から救うため、戦っていたはずなのだ。

 それを、その役目を奪ってしまったのは。

 紛れもなく、虹蛇本人だった。

 

「ああ、そうか……私は、私の手で愛する民を殺したのか」

 

 白く濁った瞳が晴れる。

 蟠った復讐心が昇華する。

 彼女にはもう、ソフィアの声は届いていなかった。

 

「…………エジソン」

 

 五体が金色の粒子へと変換されていく。

 消滅の間際、エジソンと虹蛇は手を取り合って、

 

「私の方こそ、すまなかった────」

 

 復讐に囚われた心は、とうに救われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間を遡って、マスドライバーで撃ち出されたエジソンとエリザベートを虹蛇が追った直後のこと。

 アメリカの軍勢とケルトの軍勢の狭間で浮遊するテスラは、朗々と自軍に促す。

 

「さあ、開戦の号令を告げろ! ケルトの狂王の首を獲るぞ!!」

 

 意気揚々と喋るテスラ。地上のノアとサーヴァントたちは泡を食って、お互いの顔を見合った。

 

「とうとう来てしまいましたか、マシュ・キリエライトがかに星雲のように輝く時が」

「超新星爆発の残骸じゃない! ここで終わってどうするつもりよ!?」

フォフォフォウ(ついに出番が来たな)……」

「おまえな訳ねえだろ! すっこんでろ自己主張謎生物が!! こいつにやらせるくらいならペレアスの方がマシだ!」

「おい、妥協でオレを選ぶんじゃねえ! こういうのは王様がなんだかんだやってくれる場面だから経験が少ねえんだよ!」

「くっ! こんなアホ集団と肩を並べることになるとは……シータに見限られてしまう!!」

 

 混乱するアメリカ軍の前に、白装束に身を包んだネロが飛び出す。

 彼女は愛用のマイクを口元まで持っていくと、戦場全体に響き渡るような大声で言った。

 

「最終決戦の始まりを告げる役目を担えるのは、皇帝である余を置いて他にいない!! 華麗に、そして美しく、ローマ万歳と叫びながら突撃するぞ! 良いな!?」

 

 ネロは満面の笑みで振り向く。

 だが、返ってくるのは南極点なみに冷え込んだ沈黙だけだった。

 思った反応が返ってこなかったことに取り乱した皇帝は涙目になって、

 

「で、ではここから爆笑皇帝ジョーク十連発を───」

「こっから冷めた雰囲気を挽回できるとでも思ってんですかねえ!? さっさと退け、変人皇帝!!」

「ぬうううう嫌だ、余はもっと目立ちたいいいい!!」

 

 ずるずるとロビンに引っ張られていくネロ。エレナは共感性羞恥に悶え、顔を両手で隠した。

 

「もう可哀想で見ていられないわ! 誰か早く開戦の合図を出してちょうだい!」

 

 彼女の悲痛な叫びに応じるように、軍の先頭でスカサハは槍を掲げる。

 

「総員、私の背中を追ってこい。それで十分だ、それだけで勝たせてやる! 命を賭して前に走れ!!」

 

 比較的まともな檄が飛び、アメリカ兵たちはなんとなくそれに乗ることにした。彼らとて戦闘のプロ、自分を奮い立たせる術を心得ているのだ。

 スカサハの踵が土を蹴る。彼女に続いて、全軍が前に飛び出した。

 数秒後、マシュが鬼気迫った声を飛ばす。その後ろでは灰色になった立香が目を見開いたまま、人形のように硬直している。

 

「り、リーダー! 先輩が立ったまま気絶してます!」

「虹蛇見たせいか!? 蛇嫌いにも程があんだろ! 引きずってでも連れてこい!」

「……変人マスターは放っておいて、モヒカンどもはオレに従え。最初のかち合いは騎馬なら適当にやり過ごしたら何とかなる。気張るなよ!」

「騎馬っつーかバイクっすけどね」

 

 最初に切り込んだのはスカサハ。槍の一振りでケルト兵が木っ端微塵に散らされる。全方位から迫る敵も彼女の間合いに入った途端に打たれ、骸に変えられていく。

 女王にとって、戦場は舞台。湧き出る端役を華々しく蹴散らしていくだけの独壇場。返り血を一滴も浴びずに敵を屠る姿は、怒号と罵声轟く戦場にあって異質だった。

 しかしながら、ここに揃った英霊は彼女のみならず。迸る閃電や飛行円盤の光線が敵陣を散々に打ちのめしていく。地味な攻撃手段しか持たないペレアスは淡々と敵を斬っていくだけだったが。

 戦況はアメリカの圧倒的優勢。サンドクリークの戦いでサーヴァントを失ったケルト軍は、対抗する戦力を有していなかった。

 しばらくして、立香は正気に戻る。頭を振って周囲を確認すると、みるみるうちに青ざめた。

 

「あれ、いつの間に戦いが始まったんですか?」

「先輩の記憶が飛んでる……!?」

「ケルト軍をぶっ飛ばしてホワイトハウスに乗り込もうって場面よ。ま、この分なら楽勝そうね」

 

 と、ジャンヌが言ったその時。

 

「───『二十八人の戦士(クラン・カラティン)』」

 

 メイヴの詠唱が響き、魔神柱が召喚される。

 ホワイトハウスの前方。一柱の魔神が空間を裂いて現れ、立て続けに二十七度の召喚が行われる。出揃ったのは合計二十八の魔神柱だった。

 かつて、クー・フーリンを苦しめた怪物クラン・カラティンは、女王メイヴが二十八人の兄弟をひとつの怪物にするという狂気の末に産み落とされた戦士だ。

 これはクラン・カラティンの枠に魔神柱の召喚式を押し込めることで、多重召喚を成し遂げたメイヴの魔術。

 ノアは術式を紐解きながら、咎めるように言った。

 

「……誰が楽勝つった?」

 

 辺りの視線が一挙に集まる。ジャンヌは顔を背けて、

 

「ま、まだ余裕よ余裕! 私が本気出せばあんなグロ大根の詰め合わせなんて一発で炭に変えてやりますから! アンタこそビビってんじゃないの!?」

「おいおい図星か放火魔女? 毎度毎度ワンパターンな見た目の量産型如きを恐れる道理がどこにある。おっと、そういやおまえは腹ペコ聖女の2Pカラーだったなぁ!」

「こぉんの……今日という今日は絶対に燃やすわ!!」

「こら、喧嘩はやめなさい! このエレナ・ブラヴァツキーが最高の作戦を思いついたからそれで行くわよ!」

 

 エレナは取っ組み合いになるノアとジャンヌを押し退けると、頭上に飛行円盤を移動させる。

 

「これに乗って上空からホワイトハウスに突入するの。魔神柱を相手取る必要もないわ。名付けてアブダクション・アタック!」

「流石はエレナ女史。一分の隙もない完璧な作戦だな。天才ニコラ・テスラが言うのだから間違いない」

「まあ俺も今提案しようとしてたところだけどな。やっぱ天才が見る景色は同じってことか」

「リーダーのお墨付きとか不安でしかないんですけど!? むしろアブダクションされるのはこっちですし! ロビンさんだって震えてますよ!」

 

 立香が指し示した方向では、ロビンが血の気の引いた顔で立ち竦んでいた。

 何しろ彼は先日、ノアとエレナにマインドコントロールされた挙句、宇宙人と銀河一周の旅をしたトラウマがある。未確認飛行物体はもうこりごりなのだ。

 とはいえ、エレナの作戦が成功すれば魔神柱との戦闘を省略して、クー・フーリンとメイヴを討つことができる。二の足を踏む理由はない。

 

「そんなデケえ的を俺がみすみす見逃すかよ───『抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)』」

 

 ホワイトハウスのバルコニーから一条の紅槍が放たれる。

 空間そのものを抉り裂くかのような投槍は飛行円盤を障子紙のように破り、撃墜した。

 立香は黒煙を噴き上げて墜落する円盤を虚ろな瞳で眺めて、一言呟く。

 

「かくして宇宙人との戦争は終わった……」

「勝手に終わらせてんじゃねえ。俺たちの戦いはこれからだ!」

「それはそれで終わってんじゃねえか!」

「そうだぞ、余の舞台はまだまだこれからだというのに!」

「カルデアには変人しかいないのか!?」

 

 ラーマは思わず嘆いた。変人たちに囲まれたこの状況は常識人であるラーマには非常に辛い。カルキ抜きをしていない水に金魚を放り投げるようなものである。

 二十八柱の魔神柱が一斉に瞳を発光させる。それは今までに幾度となく見た、攻撃の予兆であった。

 マシュはすかさず前に出ると、魔神柱から視線を外さずに叫ぶ。

 

「わたしの宝具で防御します! みなさんは後ろに!」

 

 目も眩むような閃光。攻撃が到達するより早く、マシュは宝具を展開していた。

 

「『疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』!!」

 

 それはさながら流星の集中砲火。

 白の円盾を光線が絶え間なく打ち据え、護りを突き崩そうとする。

 息が詰まるような攻撃の波濤を受け、マシュは思った。

 

「───生温い、です!」

 

 二十八の魔神柱による一斉砲火。それは確かに、単純な威力だけで言えば一、二を争うかもしれない。

 だがしかし、威力が高いだけだ。

 アーサー王の聖剣ほど恐ろしくもなければ、ヘクトールの投槍ほど鋭くもない。

 彼らの一撃には理屈ではない重さがあった。

 ただそれのみを突き詰めた者だけが到れる境地。その位置にない、火力に物を言わせただけの一撃に、マシュが敗北することはない。

 彼女は獰猛に笑う。

 人生で一度もしたことがないような顔色。表情筋が引きつる感覚を覚えながらも、湧き上がる衝動に身を任せる。

 

「わたしたちを絶望させたいなら、あと十倍は揃えてこいっ、バカヤロー!!」

 

 柄でもない咆哮とともに、腕を押し出す。

 その瞬間、盾は光線を照り返す鏡面のように魔神柱の攻撃を反射した。

 熱線は複雑に跳ね返り、魔神柱に激突する。もうもうと立ち込める煙の中で、マシュは頬を赤らめて振り向く。

 

「さあ、道は開けました! 突撃です!」

 

 立香はぱくぱくと口を動かして、

 

「ま、マシュが不良になっちゃった……一体誰の影響でこんなことに!!」

「……私はツッコまないわよ」

「ふっ──やっぱりあの宝具を任されただけあるな。オレは鼻が高いぜ」

「ペレアス、おまえ今なんて言った?」

 

 ノアの疑問がペレアスの背中にぐさりと刺さる。

 ペレアスはだらだらと冷や汗を流して、取り繕うように剣を掲げた。

 

「よ、よぉし! 絶好の機会だ! 魔神柱はまだ生きてるだろうから、ここから先はマスターとサーヴァントだけで行くぞ! モヒカン軍団は主力と合流して、いつでも退路を確保できるようにしておけ!!」

「ペレアスは完全に何かを隠しておるな。余には分かるぞ」

「いや、むしろ分かりやすすぎるであろう、アレは」

「と、とにかくペレアスの言う通りよ! 走りましょう!」

 

 エレナの号令に続いて、後方に離脱したモヒカン軍団を除いた全員が戦場を走り抜ける。

 マシュが敵の攻撃を反射したことで、邪魔立てするようなケルト兵は消えていた。彼らは時を置かずにホワイトハウスの正面に辿り着く。

 茫漠たる煙が晴れ、魔神柱の姿が現れる。

 傷付いてはいるものの、その全てが健在。山岳の如く立ちはだかる魔神の群体を前に、ネロはステップを踏むように躍り出た。

 

「二十八体の魔神か───余の舞踏に付き合う相手としては悪くない! 誰ぞ余のバックダンサーを務める者はおらぬか!?」

「ふむ、それならば私がお相手を務めさせていただこう。私は悪鬼エジソンとは違って紳士だからな」

「私も混ぜてもらうわよ! ソロモン王の魔神と私のマハトマ、どちらが上か競う良い機会だわ!」

「これは放っておけぬな……仕方ない、余もここに残ろう。狂王を討つ役目は任せたぞ」

 

 相手は二十八体の魔神柱。仮に勝てたとしても、消耗した状態で勝てるほどクー・フーリンとメイヴは甘くないだろう。

 故に、彼らは潰れ役を買って出た。この戦いの目的はクー・フーリンとメイヴを打倒し、聖杯を手に入れること。それさえ達成できれば良い。

 ロビン・フッドは口角を吊り上げた。

 

「ここはオレたちに任せて先に行け、ってやつだ!」

 

 スカサハは眉根を寄せて問う。

 

「……死ぬ気か?」

「いいや、死ぬ気はねえよ! アンタら生粋の戦士と違って、オレたちは生きるのが仕事だ!」

 

 ペレアスはロビンの言い分に同意する。

 

「それを言うってことは安心だな。虹蛇組の奴らが来るまで持ち堪えれば勝ちだ」

「ああ、行くぞ。おまえも来い」

 

 ノアはスカサハの淡い迷いを断ち切るかのように言った。

 スカサハを加えたEチームはホワイトハウスへとひた走る。その背中を遮るようにネロは剣を振り落とし、

 

「『招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)』───野外ステージバージョン!!」

 

 皇帝ネロ・クラウディウスは自身の公演を民衆に見せるため、劇場の出入り口を全て封鎖するという強硬手段を取った。

 これはその逸話が昇華した宝具。世界という土台の上に、自分だけの戦場を構築する大魔術。仲間とともに魔神柱を迎え撃つための場所を創り出したのだ。

 華美な装飾に彩られた広大な円形闘技場。花吹雪を舞い上げ、皇帝は紅顔を愉悦の色に染めた。

 

「余はこの戦いが終わったら結婚するのだ……まだ見ぬ運命の相手と!」

「「「「ここに来て死亡フラグ───!?」」」」

 

 …………ホワイトハウスの前。重厚な扉を目にして、ノアたちはカルデア管制室のロマンと通信を繋げていた。本来、ケルトの領地であるこの場所では通信は繋がらないが、アメリカ軍と占有権を争っていることで、一種の浮き島と化している。

 ロマンは手元のコンソールを指先で叩きながら、

 

「『……うん。敵はホワイトハウス一階と四階にいる。サンドクリークの戦いのデータと反応を照らし合わせるに、一階がメイヴで四階がクー・フーリンで間違いなさそうだ』」

 

 その情報を聞いて、立香は首を傾げた。

 

「あれ、てっきり二人で組んでくるかと思ってました。これなら各個撃破すれば良くないですか?」

「どうだろうな。メイヴ相手には男のオレとノアは無力だ。オレらが二手に分かれないようなら、クー・フーリンは床なんてぶち破って来ればいい」

「それじゃあ、アホ白髪とペレアスだけ四階に行って、私たちでメイヴを速攻で倒すのはどう?」

「わたしは賛成ですが……リーダーはどうです?」

 

 ノアは気の抜けたような表情で言う。

 

「概ね賛成だ。ただし、スカサハは俺たちと一緒にクー・フーリンの相手をしてもらう。理由は二つ……ひとつはあいつの技を知ってるからだ。互角ならペレアスがいる数の差で勝てる。十中八九奥の手はあるだろうがな」

「……もうひとつは?」

 

 決まりきったことを訊くようなペレアスの口調に、ノアもまた決まりきったように返す。

 

「弟子の間違いは正してやるのが師匠ってもんだろ。いつもみたいにぶっ飛ばして説教でもしてやれ」

 

 スカサハは咄嗟に反論する。

 

「……そんな理由でか?」

「その言葉、バットで丸ごと打ち返してやる。俺が目指すのは完璧な勝利だ。ただ倒すだけで満足できるか。縛りプレイを達成してこそのEチームなんだよ」

「私それ初めて聞いたんですけど」

「リーダーの職権乱用には断固反対です」

 

 立香とマシュに言葉の刃を突き刺され、ノアは沈黙した。彼の代わりにペレアスが口を開く。

 

「これは死んでも勝てば済む戦いじゃない。世界を救うための戦いだろ。それをやろうとしてる奴らが師匠と弟子の問題くらい解決してやれないでどうする? ……ってことだと思うぞ、たぶん」

「あら、これからはアホ白髪の代わりにペレアスが喋れば良いんじゃない?」

「それは嫌だ! オレのイメージが悪くなる!」

「『悪くなる以前に知られてませんけどね……』」

 

 そんなやり取りを聞いて、スカサハはため息をついた。

 

「…………良いだろう。お前たちの策に乗ってやる」

「───よし、作戦開始だ」

 

 ノアとペレアス、スカサハの体術なら外壁を伝って四階に移動することができる。戦いはほぼ同時に始まるだろう。

 立香は壁に飛び移ったノアに向けて言った。

 

「気を付けてください、リーダー」

「……ああ、おまえも怪我はするなよ。治すのが面倒だ」

 

 言葉と視線を交わす。

 それだけで想いは伝わる。

 互いの想いを胸に、最後の戦いが始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。