自称カルデア最強マスターとぐだ子の人理修復録   作:なまゆっけ

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第51話 黄金の輝き

 ベイリン・ル・サバージュ。

 アーサー王がブリテン統一のため、並み居る諸侯たちと血で血を洗う戦争に明け暮れていたその時代。野蛮なるベイリンと謳われたかの騎士は、弟とたった二人で北ウェールズの覇を唱えたリエンス王と四十人の精鋭を打ち破った。

 戦乱の時代、王の懐刀として大いに武勇を打ち立てたベイリン。しかし、その功績とは裏腹に、蛮人という騎士にあるまじき評価を受けている。

 ペレアスはそれが王の目の前で湖の乙女のひとりを殺すという蛮行に由来するとは、必ずしも限らないことを知った。

 

「……斬る」

 

 それはまさしく、人の形をした暴風。

 息つく暇もない怒涛の剣戟が疾風の如く繰り出される。

 ベイリンにとってその二刀は獣が爪牙を振るうに等しい。鋼の剣はもはや身体の延長線上。直線曲線入り混じる剣撃は息遣いすら宿っているようにすら感じられた。

 微塵の隙間もない攻撃に対して、ペレアスは剣を突き出した。双方の剣先が激突すると、ペレアスを狙ういくつもの斬撃が明後日の方向に逸れていく。

 力の流れを操作し、四方八方より飛来する刃を一刀で捌く絶技。ベイリンの打ち込みのことごとくがペレアスにかすり傷すら与えることはなかった。

 しかし、それは一手誤れば体が真っ二つになる綱渡りの攻防。ベイリンは左手の剣で斬り払うと同時に体を回し、

 

「オオオオッ!!」

 

 咆哮とともに放たれる双剣。本来両手で扱うはずの両刃剣を片手で、しかも小枝のように振り回す。その膂力は鬼か魔か、いずれにしろ人を超越した無双の剛力であった。

 まともに受ければ刃ごと五体は四散するだろう。ペレアスは剣を逆手に持ち替え、上体を倒して二刀を刃の上で滑らせる。

 身体全体を使って受け流す。ベイリンと真正面から膂力で争うのは愚策以外の何物でもない。逆手持ちのまま殴るように斬りつけるが、赤い甲冑の表面に傷をつけるだけに留まった。

 その怪力が人外じみたものだとすれば、その反応もまた同じ。生前、姿を自由自在に隠す騎士と戦ったことのあるベイリンにとって、目に見える攻撃はそれだけで生易しいのだ。

 故に、騎士は知覚していた。

 背後から振り落とされる刃の存在を。

 ベイリンは身を翻し、飛び退く。遅れてその場を切り裂いたのは、透き通る水の剣であった。それを手繰る湖の乙女は小さく頬を膨らませた。

 

「むう、流石はベイリン卿ですわね。私の剣技では及ぶべくもありませんか。あの子……ランスロットの前に円卓最強と呼ばれた実力は伊達ではないようです」

「みたいだな。オレが前に出るからお前は後ろにいてくれ。じゃないと安心して戦えない。アレは使えるか?」

 

 湖の乙女は赤らんだ頬に手を当てて、体を左右にくねらせる。

 

「そんなに心配してくれるなんて……ええ、水辺なので元気百倍です! いつもの戦い方で行きましょう! 私とあなた様の必殺ラブラブ剣ですわっ!!」

「その名前だけは生きてる頃から認めてねえからな!?」

 

 言動とは裏腹にペレアスは笑い、剣を順手に持ち直して突撃した。

 ベイリンは兜の奥から覗かせる眼光を歪め、舌打ちする。

 

「犬も食わんな、貴様らは───!!」

 

 突貫するペレアスと待ち構えるベイリン。分かりやすい攻守交代の構図だが、しかしそんな常識は双剣の騎士には当てはまらない。

 野に生きる獣の如き神速の危機感知。これを防御ではなく攻撃に転用すれば、それは敵のありとあらゆる隙、行動の予兆を一瞬で丸裸にする知覚と化す。どのような戦況においても先手を取り続けることができるのだ。

 本来ベイリンに防御という概念はない。必要ない。常に先手を取ることができる以上、極論剣を振るい続けてさえいれば、必ず敵は死ぬ。

 全感覚、全神経がペレアスの先の先を取るために集中する。その時、冷たい水のような声が脳髄の奥に流れ込んだ。

 

「……『遥か永き湖霧城(シャトー・デ・ダーム・デュ・ラック)』」

 

 世界が、がらりと切り替わる。

 ベイリンが見たのは一面に広がる湖と、その湖上にそびえ立つ白亜の幻想城。濃い霧が揺らめき、しとりとした空気が肌を撫でていく。

 刹那、ベイリンは己の目を、耳を、五感すべてを疑った。一帯の空間そのものを丸きり別の物に入れ替えてしまったような劇的な変化。しかして、それは紛れもなく現実───この世界の表面にカタチを得た空想であった。

 ペレアスは袈裟懸けに剣を振るう。それよりも一瞬速く動いたベイリンの右腕は、振り上げる際にがくりと減速する。

 結果、先に届いたのはペレアスの剣。軋んだ金属音が響き、赤い甲冑の胴が割れて数滴の血が落ちた。

 直撃は左の聖剣によって阻まれていた。二刀を持つ手数の利は攻防に活きる。ベイリンは剣を受け止めた衝撃で後退り、確かめるように手を開閉する。

 

「精霊だけに許された世界改変現象───『空想具現化(マーブルファンタズム)』。貴様の本領発揮という訳か、湖の乙女」

「そうですわね。今の私が出せる全力はこの程度、張子の虎にすぎません。お姉様や妹に見られたら笑われてしまいますわ」

 

 湖の乙女はしゅんとする。ベイリンの五感を騙すほど巧妙かつ迅速にこの異界を展開してみせたにも関わらず、その表情は晴れなかった。

 『空想具現化(マーブルファンタズム)』。自然の触覚である精霊が有する能力のひとつ。自己の意思と世界を直結させ、因果律を操作することで己の思うままに環境を書き換える。

 突如現れた湖上の城は疑う余地もなく現実のモノ。その昔、ランスロットがアーサー王と対立した際にギネヴィア王妃を連れて籠城した『幸福の護り』という城と同質の存在だ。

 アーサー王とその軍勢でさえ落とすことができなかった霧の城。これを張子の虎と呼ぶ湖の乙女の言を疑わぬなら、相当の弱体化を経ているに違いない。

 だとしても、それはベイリンの警戒を緩める理由にはならなかった。ペレアスは剣の腹で肩を叩きながら言う。

 

「城の中に引きこもるなんてつまらない戦い方はしねえ。男らしく剣で勝負だ!」

「男らしく? 騎士らしくの間違いだろう。我らは王の騎士だったのだから。どちらにしろ私には似合わん言葉だがな」

「……アンタ、思ったよりネガティブだな」

「貴様より現実を見ているにすぎない。恋は人を盲目にするらしいが、今ようやく実感したよ」

 

 嘲り気味な言葉を受けて、湖の乙女は薄暗い笑みを浮かべた。

 

「〝恋が盲目というのなら(If love be blind)暗い夜こそふさわしい(It best agrees with night)〟……これはシェイクスピアというお方の言葉ですが、恋に限らず濃密な感情というものは視野狭窄を引き起こします。あなたが盲目でないと誰が言い切れるので?」

「少なくとも、一寸先も見えていないような貴様に言われる筋合いはない」

「いいえ? 私の目がばっちり利いているのはペレアス様が保証してくれます。そうですわよねっ、あなた様!!?」

「……ちょっとシェイクスピアに謝ってくる」

「こんな時に!? 私も連れて行ってくださいませ!!」

 

 湖の乙女はペレアスの両肩に手を置いてがしがしと揺らした。ベイリンの表情はうかがい知れないが、良いものでないことは確かだ。ペレアスはやけに手慣れた動きで脱出すると、剣を構え直す。

 彼は苦笑いして、

 

「まあ、こういうのがオレたちのノリだ。呆れただろ。復讐心も薄れてきたんじゃねえか」

「呆れはしたが、それが戦意を希釈させる理由にはならんな。私を負かすと言ったのは貴様だ。その剣は飾りか?」

「はああん!? ペレアス様の手中に燦然と輝く剣が見えていないのですか!? その鎧を脱ぎなさい、目ん玉バールでこじ開けてやりますわ!!」

「頼むから黙っててくれェ! 今はそういう空気じゃないから! 今からは真面目にやるぞ、いいな!?」

「私は最初から真剣ですのに……」

 

 むすっとした顔になる湖の乙女を尻目に、ペレアスは駆け出した。それは攻勢に転じる意思表示。彼の行動に呼応して、周囲に満ちる霧が寄り集まり形を変える。

 霧の槍が群れを成す。空中に立ち並ぶ薄白い槍は古代ギリシアの戦闘陣形であるファランクスのように密集し、その穂先をベイリンへと差し向けた。

 ペレアスは敵の胴体目掛けて剣を薙ぐ。それに対しても先手を取るはずのベイリンの行動はまたしても一拍遅れ、刃を叩き込まれる。

 すんでのところでそれを防いだベイリンは舌打ちし、自らを制限する力の正体に至った。

 

(霧と……この環境そのものか。やはり湖の乙女、手口は妹と同じだな)

 

 体にまとわりつく霧が行動を阻害し、常ならぬ一帯の環境がベイリンの体から力を奪う。

 ここは人ならざる妖精、精霊が住まう人外の異郷。人間は異物であり、排斥されるべき障害物だ。それ故に湖の乙女と彼女の加護を受けた者以外はその存在を世界から補正される。

 ベイリンは異界の脅威を我が身を以って知っている。父親を籠絡し、母親を火にかけた魔女はノーサンバーランドを丸ごと水の庭園に作り変え、かつてのベイリンとベイランを小指一本動かすことなく撃退した。

 次々と襲い来るペレアスの連撃を紙一重で凌ぎながら、ベイリンは眼光を細める。

 

「温い。精霊が創り出す異界は、こんなものではなかった。弱いぞ、このような虚仮威しで私を止められるものか!!」

 

 ばちり、と金色の電流が聖剣の白磁のような刃の上を這う。

 体が動く。息ができる。それだけで精霊が全てを支配するあの異界とはまるで劣る。

 人生の大半を湖の乙女を殺すことに費やしてきた。精霊の脅威を誰よりも知るベイリンは、この劣勢が虚飾に塗れたものであることを知っていた。

 手はある。後は機を見るのみ。

 絶え間なく刃を交わす最中、ペレアスは気丈に口角を吊り上げる。

 

「オレたちはサーヴァントだ。無念や後悔を抱いて死んでいった名も無き人々と違って、やり直す機会を与えられてる。そんなズルをやってんだ、何もかもが生きてた頃と同じって訳にはいかねえだろ!」

 

 いつの間にか、霧の槍はペレアスとベイリンを覆うように展開されていた。それらは一斉に発射され、無慈悲に二人の上に降り注いだ。

 ベイリンは瞠目する。

 自らの伴侶をも貫く愚行。

 やはり精霊は人間を食い物としか思っていない────だが、槍の穂先がペレアスに当たることはなかった。

 己の目が届かぬ頭上や背後の刺突を、手に取るように感知して躱す。槍の雨の隙間を補うように斬撃を織り交ぜ、息もつかせぬ攻撃の波濤がベイリンを圧していく。

 以心伝心とはまさにこのこと。合図を介さずとも互いの意思を狂いなく把握できる二人だからこそ、この連携は実現する。

 それを見て、ベイリンはただ思った。

 懐かしい、と。

 ペレアスは剣を切り上げ、交差した双剣をこじ開ける。その間隙を縫って、白き槍の穂先がベイリンの肩口を貫いた。

 

「それに、アンタは弟と、オレは嫁と一緒に戦ってきたから分かるはずだ」

 

 剣柄を両手で掴み、横に振りかぶる。

 大振りなその一撃はたとえ動きを阻害されていようと、優に防ぐことができるだろう。

 けれど。

 眼前に現れるは刀身を包み込むように形成された霧の大剣。防御ごと叩き潰す巨大な刃であった。

 

「───互いの足りないところを補い合うのが醍醐味だってなァ!!」

 

 一直線に剣を振り抜く。

 みしりとベイリンの体がくの字に折れ曲がり、弾丸のような勢いで吹き飛ばされる。木々を薙ぎ倒してようやく止まり、立ち込める土煙の中へ点々と血液の道が続いていた。

 手応えはあった。並大抵の敵なら決着がつくほどの一撃。だが、相手は無類の強者が跳梁跋扈するブリテンの戦乱期において、数多くの敵を討ち果たした双剣の騎士だ。

 何よりも、この程度で終わる円卓の騎士は誰ひとりとして存在しない。湖の乙女はペレアスの半歩後ろで、土煙を見透かすように眉根を寄せる。

 

「私とペレアス様の必殺ラブラブ剣……決まりましたが、まだまだ元気のようですわね。あの赤い鎧が発する嫌な匂いがさらに強くなりましたわ」

「オレにはさっぱり分からないが、あの鎧に何かあんのか?」

「はい。ベイリン卿が如何に弟君を手にかけたか、ご存知ですわよね?」

「ああ、確か……」

 

 ベイリンは最も大切な者を殺すという聖剣の呪いによって、弟の命を奪った。

 数々の罪を犯したことで王宮に戻ることを諦めたベイリンは独り放浪の旅を続ける途中、通りがかった城にて歓待を受ける。

 その城にはひとつの悪習があった。

 それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という内容だった。

 その掟に従ったベイリンは城に用意された武具を手に取り、赤い甲冑を着た騎士と戦った。互いが七つの致命傷を刻まれながらも戦う死闘───二人は同時に倒れ、そして知る。

 赤い甲冑の騎士とは他ならぬベイリンの弟、ベイランだった。二人はそれぞれが肉親であることを知らずに殺し合ったのだ。

 弟の死を看取った後、ベイリンは決闘の傷が原因で息を引き取った。これこそが双剣の騎士の最期である。

 そこで、ペレアスははたと気付く。

 

「……そういえば、どうしてあの人が弟の鎧を着てるんだ?」

「それこそが城の因習の要だったのでしょう。あの甲冑は殺された者から殺した者へ、より強い戦士を求めて持ち主を変え、『島を守る騎士』にする。鎧は先に亡くなったベイラン卿からベイリン卿に乗り移ったのです」

「なんだ、その質の悪い呪物は。弟と相討ちになってなけりゃ悪習はずっと続いてたってことか? というか、思い出した。その風習他にも聞き覚えがあるぞ」

「ええ、ラモラック卿の話とほとんど同じですわ」

 

 ラモラックの盾は最初から超常的な能力を持っていたのではない。彼の赤い盾は魔女が侍らせる配下全員を倒し、魔女によって造り変えられた呪物だ。

 その魔女が住む城にはとある因習があった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ラモラックがベイリンと異なったのは、その城の騎士を全員倒してしまったこと。彼にもパーシヴァルという兄弟はいたが、殺し合うことにもならなかった。

 否、むしろ重要なのはその城の主。ラモラックと道ならぬ恋に落ちた城主の名は、キャメロットの人間なら誰もが知る名前だ。

 

「……()()()()。あの鎧はモルガンが造ったのか! だったら、まともな武具なはずがねえな───!!」

「はい! ここからが本番です!」

 

 その直後、黄金の雷撃が墜落した。

 呪われた聖剣が発する光輝に辺りが照らされ、白んだ世界に真紅の霧が噴き上がる。

 土を踏み締める音。ベイリンが身に纏う赤き武装は刺々しく禍々しく様相を変え、その輪郭を歪めていく。全身から立ち昇る紅の霧はベイリンの鮮血が蒸発している証だ。

 異形と化したソレはもはや騎士でなく、とうに人間でなく、まるで魔人。

 

「今の貴様ならば、槍を使うまでもない」

 

 ヒトの領域を一歩踏み越えた狂戦士への変貌を遂げたベイリンは、目も眩む輝きを放つ聖剣を天高く掲げた。

 

「『雷光耀う勝利の剣(エクスカリバー・コールブランド)』!!」

 

 空を焦がす灼熱の雷電が解き放たれる。

 その一閃は霧を消し飛ばし、森を焼き、地を砕く。しかし、辺りに撒き散らしているだけで狙いは曖昧。一瞬速く、ペレアスは湖の乙女を抱えて電撃から逃れる。

 それを見るやいなや、ベイリンは回転する独楽のように体を捻り、第二撃を繰り出した。

 

「『雷光耀う勝利の剣(エクスカリバー・コールブランド)』!!!」

 

 それは雷の渦と形容すべき威容。

 湖の乙女は自身を抱えるペレアスに妙にべっとりとくっつきながら、冷や汗をかいた。

 

「ペレアス様、あの人の狙いは私たちではありません! ここ一帯を荒らして異界から力を奪うつもりですわ! 今の私は水辺でないと力が出せないので、あなた様のお嫁さんという属性以外何もなくなってしまいます!!」

「焦ってるのか呑気なのかどっちかにしてくれるか!? とりあえず降ろすぞ、宝具の連打を止める!」

 

 ペレアスは湖の乙女を降ろすと、その足でベイリンへと駆ける。都合五度の電撃が迎え撃つが、彼はそのいずれをも潜り抜けて剣を振りかざす。

 

「オレの前で聖剣を見せびらかしてんじゃねえ!!」

 

 ベイリンが乱雑に右の剣を振るう。ペレアスの一撃は遥かに速く飛来した刃によって叩き落とされる。今までにも増して強く速い斬撃。弾かれた刀身を衝撃が伝って、腕をびりびりと痺れさせる。

 返す純白の聖剣が閃き、剣線に沿って電光が散った。

 それを半身になって躱したペレアスに、ベイリンはさらなる追撃を加えながら告げる。

 

「聖剣などというモノに憧れるのはやめておけ。人の身には余る力だ。分不相応の力を手に入れた者が辿る道は破滅しかない」

「もしかして、王様のことを言ってんのか!? それともアンタのことか!? 確かにオレの周りで良い結末を迎えた聖剣使いはいねえけどな!」

「それが道理だ。人の領分を超えた力に頼る国に未来はない。たとえどれほど偉大な王であろうとも、ブリテンの滅びは避けられなかっただろう」

 

 人間の領分で治められぬ国はその時点で終わる。なぜなら、国とは人が治めるものだからだ。事実、アーサー王はモルガンの手によって聖剣の鞘を失い、破滅へと転がり落ちていく。

 

「結局、私たちがしていたことはブリテンを救うという大義名分の名の下に、罪を重ね続けていただけだ。分かるだろう。誰かから与えられた力で、誰かを虐げて良いはずがないと!!」

 

 ならば、

 

「湖の乙女は……私たちは間違えた。本当に何かを救いたいのなら、特別な武装に頼らずに自分の力だけで成し遂げるべきだったのだ───!!」

 

 だとしても、気付いた時には遅くて。

 そうしなくては、あまりにも多くの人が苦しんだ。

 ベイリンは知っているのだ。弟を殺した悲劇の始まりは聖剣にかけられた呪いなどではなくて、自分の心だったことを。

 

(そこまで理解してても、もうアンタは戦わずにはいられないんだな)

 

 言葉を吐き出す度にベイリンの剣は強くなる。捨て去ることのできぬ後悔と憎悪を乗せて、その刃は一層猛々しく煌めいた。

 二刀の猛攻がペレアスの体を掠める。けれど、その傷がもたらす痛みは微塵もない。ベイリンの剣が斬ろうとしているモノが本当は自分でも伴侶でもないことを理解したから。

 

「どんな王だろうと滅亡は避けられなかったってところには賛成だ。だけどな、王様のことでひとつ重大なことを忘れてるぜ」

 

 一度の瞬きが命取りになる攻防。十字に放たれた斬撃を受け止め、ペレアスは言った。

 

「王様はカムランの戦いの後に聖剣を還した。本当は自分のモノじゃないって思ってたんだ。だから、あの人は選定の剣を抜いた時から分かってたんだよ! 誰かから貰った力で誰かを虐げることの罪をな!!」

 

 ベイリンが一瞬揺らぐ。ペレアスはその隙を突いて相手の剣を押し除け、返す刀を振るう。

 

「それに、オレが憧れたのは剣を振るう王様の────黄金の輝きだ!!」

 

 ベイリンの聖剣とペレアスの剣が激突する。

 その一合に偶然が入り込む余地はなく、剣技に差はなかった。

 ぱきん、と呆気ない音を立ててペレアスの剣が半ばから砕ける。

 それは二人の膂力の差がもたらした結果か、それとも衝突するタイミングの違いか。

 否、そこにあるのは残酷なまでの、武器の差であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し時間を戻し、一方その頃。ノアは立香を背負って、ただひたすらに走っていた。相変わらず代わり映えのしない景色が続く中、彼は神妙な面持ちで述べる。

 

「…………折り鶴だ、藤丸」

「…………」

「おい聞いてんのか。折り鶴だぞ」

「……リーダー、ダメです」

 

 立香(りつか)はぎゅっと唇を噛み、沈痛な声音で答えた。

 

「るから始まる日本語はもうこの世に存在しません……っ!!」

「いや、あるだろ! もっと気合い入れて探せ! これからどうやって暇潰すんだ俺たちは!?」

「そんなことは言われてもないものはないですよ! デンマーク人の癖になんで私と渡り合えるくらいしりとりできるんですか!?」

「そんなに褒めるな。それもこれも俺が天才たる所以だろうが。言っておくが、俺は世界のありとあらゆる罵倒語を網羅した男だぞ」

「自慢になってないんですけど。どれだけ汚いコミュニケーション取ってきたんですか」

 

 彼らは暇潰しの最終手段であるしりとりに興じていた。しりとりというのは日本語と外国語では大分形式を異にするのだが、憎たらしいことにノアはそれにも対応できていたらしい。

 彼はどことなく馬鹿にしたため息をつくと、口をとがらせて言いつける。

 

「というか、腕に力が入り過ぎてんぞ。俺を絞め落とす気か?」

「……っ!」

 

 指摘され、立香は慌ててノアの首に回していた両腕を解いた。行き場を失った両手は彼の肩に軟着陸する。そうして、立香は口をつぐんで黙りこくってしまった。

 ノアは小さく鼻を鳴らした。立香のこんな様子は今に始まったことではない。しりとりを始める前もしている間も、心ここにあらずという状態だった。彼女はそれに逆戻りしている。

 

「おいおい、さっきから口数が少ねえな。いつもの発情期の犬みたいなやかましさはどこに行った? 腹でも痛めたか?」

「……別に、そういうのじゃないですけど」

 

 二人の間に沈黙が降りかけたその時、ノアの懐の通信機が電子音を奏でた。

 

「『もしもし、ノアくん。こっちはようやく落ち着いたよ。状況はどんな感じかな』」

 

 ロマンの声には隠し切れない疲れの色が滲んでいた。各地点に散らばった集団の面倒を見たのだから、当然と言えば当然だが。

 そこで、彼はモニターを介してノアが立香を背負いながら爆走する現地の映像を見た。予想だにしなかった光景に、ロマンは面食らうとまごついた口調で呟く。

 

「『あの……お邪魔しました』」

「おい待て、勝手に切るな。ったく、どいつもこいつも余計なことばっか考えやがって。状況は見ての通りだ、必死こいて合流地点に向かってる」

「『うん、それは何よりだ。立香ちゃんの方はどうかな?』」

「私も見ての通りおぶられてるだけですから。むしろこの揺れのせいで眠くなってるくらいです」

「絶対に寝るなよ。置いてくぞ」

 

 ノアは立香を右に左に揺さぶる。前方に空気の衝突を防ぐ障壁があるとはいえ、高速で走る車上に身ひとつでへばりついているのとそう変わりはない。

 そんな時に眠気を催すふてぶてしさ。しかし元気のないよりはマシだろうと判断して、ロマンは話を切り出した。

 

「『二人ともいつも通りで安心したよ。二つばかり伝えることがあって連絡したんだけど……』」

「どうせろくなことじゃねえだろ。おまえの報告は波乱の幕開けとほぼ変わらないからな」

「『そ、そう言われてもそれ以外に話を進める方法がないんだから仕方ないじゃないか! ボクは悪くない!』」

「見事に開き直りましたね。それで、次の厄介事は何なんですか?」

 

 ロマンは卓上の紅茶で唇を湿らせ、ぬるい息を吐いた。そしてカップを置くと、直前に吐いた息同様ぬるい声で伝える。

 

「『キミたちの進路上にサーヴァント反応がある。どうやら長時間そこを動いてないみたいだ』」

「そういうことは早く言え! 呑気に紅茶キメてんじゃねえ!!」

「『それは大丈夫だと思うよ? 反応もかなり弱いし、ラーマさんの時みたいに怪我をしてるのかもしれない』」

「あ、本当に誰か倒れてますよ。血は出てないみたいです」

 

 人差し指を立てた立香の右手がノアの肩の後ろから伸びる。彼女が指差す方向を見ると、確かにそこには人間が倒れていた。

 ノアは足を横にして急ブレーキをかける。土を削り、ちょうどその行き倒れの傍で停止する。ノアと立香は

 半ば水着のような袈裟をまとった女僧侶。傍らには遊行僧が持つ錫杖が落ちており、両手で腹部を抱えるようにしている。彼女は眉根を寄せて、苦悶の声を捻り出した。

 

「く、うう……」

「大丈夫ですか、お腹痛いんですか?」

 

 立香が心配したその瞬間、ぎゅるるるると行き倒れ女の腹の虫が大きく長く鳴いた。ノアと立香は顔を見合わせた。彼女は掠れた声で呟く。

 

「どうしてここには無限にお米を出せる弟子がいないのかしら……」

「いや、そんな人どこにもいないと思いますけど!?」

 

 そんな訳で。

 行き倒れていた女性はノアと立香が隠し持っていたお菓子を托鉢されることで、腹の虫を満足させることに成功した。いつの間に食べ物を隠していたのか、全く気付かなかったロマンは密かに戦慄した。

 明るい雰囲気を纏う尼僧は施しを胃袋の中に収めると、勢い良く手のひらを合わせた。流石は僧侶と言ったところか、その様はなかなか堂に入っている。

 彼女は気の良い快活な笑顔を浮かべた。

 

「ごちそうさまでした。いやあ、危うく入滅するところだったわ! 助けてくれてありがとう。あたしは三蔵法師の玄奘、よろしくね!」

 

 ノアたち三人は目を見開く。

 三蔵法師といえば釈尊の教えをまとめた経蔵・律蔵・論蔵を修めた僧のことを意味するが、今となってはその三つを含む経典を求めて天竺を目指した唐の玄奘を指すことのほうが多いだろう。

 日本では中国の長編白話小説、西遊記に登場する人物として親しまれている。三蔵法師が三人の弟子とともに辿った旅路は実に三万キロ。しかも、その間に数多くの妖怪に襲われるという珍道中であった。

 現代では玄奘は男性として伝えられているが、目の前にいるのはどこからどう見ても女性。自分を三蔵法師だと思い込んでいる一般サーヴァントでもない限り、歴史書が書き換えられる事態だ。

 ノアはじとりとした目つきになる。

 

「また男だと思ってたやつが女だったパターンか。これ何回目だ? 正直ドレイクの時点で食傷気味だったからな」

「え、私は三蔵法師って女の人だと思ってました。ドラマでも女優さんが演じてましたし……深夜の飯テロ番組の人が孫悟空役のやつなんですけど」

「『う〜ん、立香ちゃんの知識が古い……まあ日本だと三蔵法師は女優の人が演じることが多いから、そういう勘違いもあるかもね』」

「……で、どうしてこんなところで倒れてた。腹ペコ聖女と言い、徳の高い女は行き倒れる癖でもあんのか?」

 

 咎めるような視線を受けて、玄奘三蔵はこくりと頷いて語り始めた。

 始まりは二ヶ月ほど前、この地に呼び寄せられた彼女は当て所なく彷徨い、辿り着いた聖都にて賓客として招かれた。が、ちょうどEチームが特異点を訪れた頃に彼女はこの特異点の全貌を知るため、砂漠を目指して聖都を後にしたのだと言う。

 砂漠の探索を終えた後、この荒野で盛大に迷子になり、行き倒れたのだとか。天竺まで大冒険をした三蔵法師とは思えない体たらくである。

 しかし、ノアたちにとってはこれ以上ない僥倖であった。

 彼らが次に目指すのはエジプトの王との謁見と、砂漠にあると言われるアトラス院。砂漠の探索をしてきた三蔵との出会いはまさに千載一遇だ。

 

「恩を押し付けるみたいで申し訳ないですけど、私たちと一緒に来てくれませんか? 無限お米製造機はない代わりに、カルデアから物資は送れますから」

「モチのロンでオッケーよ! 施しを受けておいてお礼もなしじゃあ、御仏的にも人間的にも駄目だしね!」

 

 そこまで語り終えると、彼女は腕を組みながら頬を膨らませた。

 

「それにしても、砂漠では酷い目に遭ったわ! 湖で休もうとしたら獅子頭の魔獣には襲われるし、赤い鎧の騎士には人違いで斬りかかられるし! ほんと悟ってほしいわね……!!」

「要求が難しすぎるだろ。免許取るくらいの感覚で悟り開けるか?」

「でも、私たちも赤い鎧の騎士には襲われましたよ。私たちの仲間の奥さんを狙ってるらしいです」

「うわあ、そんなの三日三晩ノンストップ説法コースじゃない! 次にまた会ったら緊箍児はめてお仕置きしないと!」

「『それもまた無理難題な気がしますね。その話で思い出したんだけど、もうひとつ伝えることがあったんだ』」

 

 三人の目がロマンに向く。彼がノアと立香に通信をしてきたのは二つ連絡事項があったからだ。三蔵との遭遇で後回しにされていたが、元々はこちらが本命である。

 

「『ノアくんの魔術でいくつかの集団に分かれたんだけど、その中にペレアスさんの姿がなかったんだ。広大な砂漠では探知にも限界があって、彼の居場所が掴めていない』」

「それはちょっと妙かもしれませんね。最低ランクの幸運のダンテさんならともかく、ペレアスさんが迷子になるところは想像できないです」

「……カルデアの通信機とは別にダ・ヴィンチが俺たちに持たせた発信器があったはずだ。藤丸」

 

 そう言われて、立香は手のひらほどのモニターを取り出す。ダ・ヴィンチ製の発信器の信号を受信して位置を映し出すレーダーだ。

 彼らはその画面を覗き込む。最大まで距離を広げると、ひとつだけはぐれた光点が右上辺りに点灯していた。

 おそらくはその点がペレアスだろう。ノアは顎に手を当てて考え込む仕草を取りながら、ロマンに命令する。

 

「カルデアで観測した地図と照らし合わせろ。それであいつがいる座標が把握できる。迎えに行く手間がひとつ増えたな」

「『みたいだね。今やるよ、時間は取らせない』」

「よく分からないけれど、未来の技術ってすごいのね。こんなものがあったら経典集めももっと楽だったのに」

「それどころか飛行機でインドまでひとっ飛びですよ! 経典もUSBっていう親指くらいのものにまとめられちゃいます!」

「嘘でしょう!? それはそれでご利益というか有り難みがなくなるような……でも、教えが変わることも良しとした御仏的にはオールオッケーなのかしら……!?」

 

 三蔵はひとり禅問答に入りかける。そもそも、覚者とは全ての執着から解き放たれた者である。教えの形が変わったとしても、人の世の輪廻として受け容れてしまうだろう。

 彼らが画面とにらめっこしていると、不意にペレアスと思われる光点が点滅し、直後に消える。

 脳裏に浮かぶのは最悪の想像。立香は顔色を青くして、面を上げた。

 

「あれ、消えちゃいましたよ!? もしかして、やられちゃったんじゃ……」

「それはない。あいつとのパスはまだ繋がってる。やられたのは発信器の方だ」

「そういえば、電子機器だから電気に弱いんでしたっけ。でも、電気なんてどこに───」

 

 言いかけて、立香は気付く。彼女と同じ結論に至ったのはノアも同じ。遅れて、カルデアの観測結果と光点の照合を終えたロマンが言う。

 

「『───前に交戦した赤い鎧の騎士かもしれない。反応が消えた地点にちょうど緑地が確認できた。きっと砂漠のオアシスだ』」

「あいつは雷を発する剣を持ってた。それに湖の乙女の手紙ではオアシスにいるんだったな。あいつの狙いからしても、邪推に近いが繋がりはするか」

 

 ノアが推理を述べ、場に緊張感が走る。

 特異点を訪れて初めて交戦した双剣の騎士。Eチームのサーヴァントと百貌のハサンが協力しても仕留められなかったことを鑑みても、その実力は疑う余地がない。

 その騎士とペレアスが戦っているとしたら。そこまで考えて、立香は提案する。

 

「令呪で呼び戻しますか? ピンチだったとしても助けられます」

「もしそこに湖の乙女がいたとしたら、ひとり置き去りにすることになる。それは最終手段だな。ここからペレアスを援護する」

「『位置は分かるけど、そんなことできるのかい? 対魔力があるなら魔術による攻撃は無効化されてしまう』」

「言っただろ、援護だ。攻撃する気は毛頭ねえ」

 

 そう言って、ノアは立ち上がる。ぼそりと詠唱を呟くと、彼は自身の鳩尾に右手を突き刺した。

 引き抜いた手が掴んでいたのは、ひと振りの刀剣。ソレは柄頭から切っ先まで神殺しのヤドリギに包まれている。

 ヤドリギが宿す神代の神秘の奥から、濃密な凶兆が溢れ出す。その剣は刃を見せていないというのに、触れれば指が落ちてしまいそうな剣気を秘めていた。

 三蔵はごくりと喉を鳴らして問う。

 

「な、なに? その剣は。牛魔王より嫌な空気がするわ」

「元はペレアスのアホがエクスカリバーMk-2とかいうふざけた名前をつけてた剣だ。ジャバウォックを斃したヴォーパルソード……つっても分からねえか」

「リーダーが持ってたんですか!? 村から逃げる前にペレアスさんが何か喚いてましたよね!?」

「全員を集める前に回収した。あの時用があると言ったのはこれのことだ」

「『置いてきてなかったんだね……渡してあげれば良かったのに』」

 

 ロマンがこぼした感想に、ノアは首を横に振った。

 

「これはまだ試し切りを済ませてない未完成品だ。性能が判明してからあいつに渡すつもりだった。今はそうも言ってられねえがな」

「『モノ自体は出来上がってるのかい?』」

「ああ、俺の無属性魔術と原初のルーンとヤドリギをふんだんに詰め込んだ自信作だ。素材がヴォーパルソードってのも良い。名前以外一切が不明の剣だから、弄るのにもってこいだった。この剣の製作秘話と伝承を語ってやってもいいが……」

「そんな時間ないですよ! 薀蓄披露は後にしてください!」

 

 そう、ここに剣があったとしても、ペレアスが使えなければ意味がない。どうにかして彼に実物を送り届ける必要がある。

 ノアはカルデアから送られた座標を確認しながら、剣に向けていくつかのルーンを刻んだ。

 彼は振り向き、空を見上げる。そうして、手に持った剣を三蔵に渡した。ノアは空の一点を指差して告げる。

 

「あの方向に向かって全力で投げろ。それで届く」

「え、適当すぎませ───」

「承ったわ、御仏パワー全開!!」

 

 止める間もなく、三蔵は宙に放った剣を錫杖をフルスイングした。背後に螺髪頭で福耳の人が見えた気がするが、きっとそれは気のせいであろう。

 ともかく、超常的な力を借りた彼女の錫杖は剣を空の彼方に打ち飛ばした。野球なら文句なしのホームランだ。

 自らの渾身作を雑に扱われたノアは青筋を浮かべてがなり立てる。

 

「投げろっつっただろーが!! ホームランダービーでもやってるつもりか! ヒビでも入ってたらどうすんだ!?」

「これでもあたしキャスターだから非力なのよね。だからああするしかなかったって言うか……」

「とりあえず非力という言葉を辞書で調べて赤線引いてきてください! あんな腰の入ったスイングなかなかできませんから!」

「『すごい雑な飛ばし方だったけど、本当にペレアスさんのところに届くのかな?』」

 

 もっともな疑問を口走るロマン。ノアは眉間を揉みほぐしながら答えた。

 

「村から逃げる時に使った飛行のルーンをアレンジして加えてある。ミサイルのセンサーみたいに勝手に角度と方向を補整してくれるはずだ。それに、忘れたか?」

 

 彼はニタリと口角を上げる。

 

「───あいつの幸運は湖の乙女お墨付きだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 バーサーカー、ベイリン。

 その狂化のランクは最高峰のA。

 それなのにベイリンは人語を、機微を理解し、技巧を操ることができる。有り余る力を振るうだけなら獣と変わらない。ベイリンが騎士であり魔神たる所以は彼が培った技術があるからだ。

 狂化を受けてなお、なぜ理知的に振る舞えるのか。それはベイリンの異常な精神性にあった。

 本能と理性の融合、思考と反射の一体化。

 考えながら動く、ということを極限まで突き詰めた結果、ベイリンは狂ったまま冷静に振る舞えるようになったのだ。

 全ては人智を超えた精霊を殺すため。

 力を求め続けたベイリンはその鍛錬と才覚によって、思考する反射を身に着けた。

 ───折れた刀身の半分が宙を舞う。

 その断面は赤熱していた。雷を纏う聖剣の電熱によって、刀身が焼き切られたのだ。

 ベイリンは右腕を振り上げる。

 一瞬にも満たない時間、双剣の騎士は己の殺意の陰りを覚えた。

 両腕を斬り落とす。自分の目的にペレアスを殺すことは含まれていない。何かを振り払うように、ベイリンは剣柄に力を加えた。

 

「───幕だ!!」

 

 半減した刃長ではこの一刀は防げない。

 だが、その手は寸前で止まる。眼前に迫る半分に折れた剣。ペレアスは間合いを不利と見て、即座に剣を投げつけたのだ。

 頭を横に振り、それを回避する。直後、ペレアスの放った後ろ回し蹴りがベイリンの五体を空中に弾き飛ばした。

 距離が開き、ペレアスは冷や汗の伝う頬を吊り上げる。

 

「大層な剣使ってるアンタらは知らねえだろうが、剣ってのは折れるしヘタれるもんなんだよ! ひとつ勉強になって良かったな!!」

「そんなことは知っている。私の弟もよく刃を取り換えていたからな」

 

 殺意が薄まった理由が分かった。

 この男は、弟によく似ている。

 窮地で笑うところも、口調も、戦い方も。

 何もかもが、懐かしい。

 予想もしない言葉が、するりと口をついて出た。

 

「どうしてお前は、獅子王に刃を向ける」

 

 その問いは、理由を聞くためでなく。

 彼の忠誠の在り方を詳らかにするための。

 

「王様が王様でなくなったからだ。あの人はとことん正しかった。全を救うために一を切り捨てるやり方がそうだ」

 

 だけど。

 

「魂を選別して、合格した人間だけが救われるなんてのはその真逆だろ。獅子王は一を救うためにそれ以外の全てを切り捨ててる。そんなの王様と言えるか?」

 

 湖の乙女はマーリンの言っていたことを思い出す。

 ペレアスが円卓に名を連ねた直後の初仕事で、マーリンは彼の忠誠の在り方をこう表現した。

 

〝……くくっ。似てる、似てるなあ。キミは王への忠誠の形という点において、番外位前任者と全く同じだ。性格は全く違うのに、不思議だよ〟

〝ある存在をこういうモノだと規定し、滅私の奉公を捧げる。そのカタチはまるで─────神への信仰心だ〟 

 

 故に、ベイリンの反応も決まりきっていた。くすり、と小さな笑い声が響く。

 

「ああ───私もそう思うよ」

 

 その時。

 その瞬間。

 ペレアスとベイリンの間に、上空より飛来した一本の剣が突き刺さった。

 金色の神気を発するヤドリギに包まれた剣。鞘たるヤドリギは蕾が花開くように割れて、刀身を顕にする。

 透き通る緋色の刃に、樋は煌めく金。刀身の片面それぞれに九つの原初のルーンが刻まれ、柄と鍔は金枝が絡みつくように構成されていた。

 しかし、目を見張るべくは剣気。世界を切り裂くことでそこに存在しているかのような、神域の凶気だ。

 騎士たちは弾かれたように動き出す。

 ペレアスはその剣へ走り出し。

 ベイリンはただちに宝具を解き放つ。

 

「『雷光耀う勝利の剣(エクスカリバー・コールブランド)』……!!!」

 

 天を突く金雷の大剣。

 ペレアスとその後ろにいる湖の乙女までをも切り捨て、焼き尽くす聖剣の全力解放。

 たかがひと振りの剣、と侮る余裕などどこにもない。

 ベイリンの本能が告げていた。

 この剣は、何よりも危険であると。

 けれど、ペレアスは全くの逆。どこからか墜落した剣が、誰からの贈り物であるか確信していた。

 

(どうせお前だろ───ノア!)

 

 それはある種の呆れにも似ていて。

 だがしかし、根底にあるのは間違いなく信頼であった。

 なぜなら。

 

(こんなものを造れるやつは、お前しかいねえ!!)

 

 ペレアスの手が剣を掴む。

 刹那、彼はその剣の記憶を見た。

 

 

 

 

 

 

 ────ホテルスという英雄がいた。

 スウェーデンの王の子として生を受け、王の死後、彼はノルウェーの王に養子として引き取られ養育された。

 ホテルスは幼い頃より武勇に優れ、聴く者を魅了する竪琴の腕前を持ち合わせていた。彼はノルウェー王のもとで美青年へと成長し、ある時、スウェーデン王の娘ナンナはホテルスに恋をする。

 だが、半神半人のバルデルスがそれを許さなかった。彼もまたナンナに恋をし、恋敵であるホテルスとの戦いが幕を開けるのだ。

 バルデルスは半神故に不死身であり、如何なる武器も彼を傷つけることがない。どれほど武勇に優れたホテルスでも、彼を殺す術はなかった。

 そこで、ホテルスはノルウェー王に導かれ、遠く離れた雪の山野を訪れた。その地に住まう森の神ミミングスが持つ二つの神器を求めて。

 ひとつは神をも殺す必勝の剣。

 ひとつは無限の富をもたらす腕輪。

 ホテルスは自らの腕のみで森の神を捕らえ、二つの神器を奪った。

 そうして、ホテルスはバルデルスとの決戦に挑むこととなる。

 バルデルスが率いるのは神々の軍勢。彼の父であるオティヌスや雷神トールさえ名を連ね、ホテルスの軍勢とは言わずと知れた絶望的なまでの戦力差があった。

 しかし、必勝の剣を携えたホテルスは神々の軍勢に立ち向かい、雷神にして英雄神トールの鎚であるミョルニルを真っ二つに断ち切ってしまう。

 神々の軍勢を敗走させ、彼はナンナと結婚してスウェーデンの王となる。ワルキューレに魔法の帯を授かったホテルスはついにバルデルスのもとに辿り着き、不死身の半神半人を斬ったのだ。

 必勝の剣が与えた傷はあらゆる手を尽しても癒えることなく、不死身のバルデルスは三日後に呆気なく息を引き取る。

 こうして、ホテルスは人の身にして神を打ち破ったのである。

 この話は北欧神話をベースにしている。絢爛なる光を放つ美神、絶対無敵にして不死不朽なるバルドルを盲目のヘズがヤドリギにて撃ち抜いた神殺しの神話。

 バルドルとはバルデルスであり。

 ヘズとはホテルスであり。

 必勝の剣とは、神殺しのヤドリギなのだ。

 

〝───まあ、めでたしめでたしとはいかないんだけどね。僕はこの後、オティヌスのもうひとりの息子と決闘して相討ちになるんだ〟

 

 どこか気弱な声。けれどその芯には一本の鋼が通っており、高貴な響きを伴っていた。

 

〝でも、それは仕方がない。誰かから奪った力で戦い続けた罪過の結集だ。そのツケを払ったんだよ。ナンナとの幸せな未来という代金でね〟

 

 ここまで言われればその声が誰であるかなんてはっきりしている。

 神殺しの英雄ホテルス。剣に宿りし彼の意思が話しかけてきているのだ。

 

〝けれど、君は違う。幸せな結末を迎えた君が受け取ったその剣は仲間との信頼と友情の結晶だ。僕たちのようなクソッタレな運命なんて絶ち切ってしまえ。君たちの剣ならそれができる〟

 

 ペレアスはにっと笑い、

 

〝この剣なら───ビームも出せるか?〟

〝さあ、それは使ってみてのお楽しみだ。ただ、その剣は少しばかり荒々しいよ〟

 

 ホテルスは手を差し伸べて、言った。

 

〝…………ついてこれるかい?〟

 

 

 

 

 

 

 意識は現実へと引き戻される。

 視界を埋め尽くす雷撃の一刀。人の力など及ぶべくもないそれに対し、ペレアスはただ横殴りに剣を振るう。

 

「ついてこれるかじゃねえ、お前の方こそついてきやがれ!!」

 

 いま、ここに。

 神を殺し、神具を斬った究極の一撃が、現世にカタチを得る。

 

 

 

 

「『運命絶す神滅の魔剣(ミストルティン・ミミングス)』!!」

 

 

 

 

 とうに斬るべきモノは決まっていた。

 ベイリンが囚われている全て。

 妄執。

 後悔。

 復讐。

 呪詛。

 運命。

 ────そして、聖剣。

 剣の軌道に合わせて世界の位相がズレる。

 空を覆わんほどの雷光は見る影もなく切り刻まれ、ベイリンは驚愕した。

 全力の攻撃が無に帰したことにではない。

 自らが手繰る聖剣が甲高い音を立てて折れた、そのことに。

 ペレアスが放った剣閃は彼がかつて見た光と同じ───黄金の輝きだった。

 間合いを詰める瞬間、ペレアスは叫ぶ。

 

「出ねえじゃねえか、ビーム───!!」

 

 ベイリンは聖剣を捨て、右の剣を両手で構えた。刹那、無数に交わされる剣戟。生まれ持った膂力が、積み重ねた技巧が、今のペレアスには通じない。

 

「だが、気に入った!!!」

 

 かぁん、と澄み切った金属音が響き渡る。ベイリンの剣が空中に弾かれ、くるくると飛んでいた。

 ペレアスは振りかざした剣をベイリンの首の横で止める。

 

「オレたちの勝ちだ」

「……貴様が言ったことだぞ、剣は折れるモノだとな!」

 

 ベイリンは五指を槍のように揃え、ペレアスの首を撃ち抜く。

 確実に当たった。その予感は五指が空を切った実感によって否定される。貫いたはずの手は、ペレアスの首を霞のように通り抜けていた。

 湖の乙女は両手を組んで目を伏せ、

 

「『死に逝く騎士に、湖光の愛を(ル・アムール・ド・ダーム・デュ・ラック)』」

 

 ペレアスの宝具は伴侶より捧げられる愛であり、死の運命を逃れることを希う乙女の願い。なればこそ、その本質はペレアスが要請するモノでなく、湖の乙女から与えられるモノに違いなかった。

 ベイリンの剣が地面に突き立つ。

 得物を失い、悪あがきも通じなかった。

 しかもペレアスは、自身が呪われた結末へと堕ちた元凶をも叩き斬ってみせた。

 ベイリンの全身から力が抜け、膝をつく。

 騎士はただ一言、

 

「……私の負けだ、ペレアス」

 

 呪いから解き放たれたその言葉は、湖水のように純粋だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二日後。カルデア一行は合流地点に集結すると、ペレアスたちを迎えに行った。その間、三蔵が集まったサーヴァントたち全員を弟子にしようする事件が勃発したが、些細な出来事であろう。

 それよりも危険だったのはペレアスの隣に赤い鎧の騎士、ベイリンがいたことだった。一触即発の空気になったところを、ベイリンに助けられた難民たちが止めることで事無きを得たのだった。

 エジプトの王に謁見するまでには日を要する。ベイリンの聖剣によって荒らされはしたが、数少ないオアシスということで、一行はそこをキャンプ地にした。

 夜空に銀色の月が昇る。

 パチパチと火花を散らす焚き火、その上で煮えるカレー。それを取り囲むのはEチームの連中と湖の乙女とベイリン、べディヴィエールだった。

 彼らの眼差しが集まるのはカレーの煮え具合ではなく、新たに得た剣を赤子のように抱えて頬擦りするペレアスの姿。

 

「ふふふ……名前はどうする? エクスカリバーMk-3か? それとも真エクスカリバーか? ネオエクスカリバーなんてのもいいな……」

「ペレアスさんはリチャード獅子心王と気が合いそうですねえ。彼も自分の剣にエクスカリバーと名付けていたらしいですし」

「もうひとつくらい聖剣を確保しておけば良かったですわね。そんな剣なんかよりずっと私の方がペレアス様のためになりますのに……」

「ん? そんなの当然だろ?」

「───! ペレアス様ーっ!!♡♡」

 

 湖の乙女はペレアスの背中に飛びつく。犬も食わない光景を見て、ジャンヌとマシュはげっそりとした顔つきになる。

 

「…………なんか食欲がなくなってきたわ」

「奇遇ですね、わたしもです。甘ったるいクリームを全身の毛穴から注がれてる気分になります」

「これから先このイチャつきを見せられると思うと憂鬱だよね」

 

 湖の乙女は立香たちに顔だけを向けて言った。

 

「安心してくださいませ。今の私はペレアス様の付属品のようなものですから。スキルのひとつみたいな扱いですわね。なので、生前の十分の一の力も出せません。変な幽霊がいると思ってお気になさらず!」

「そんなに自己主張が激しい幽霊なんていないわよ! どうしたって目につくわっ!」

「まさしくペレアスさんと一心同体ということですか。なぜ召喚された時からついてこなかったんです?」

 

 ダンテは首を傾げる。二人で一体のサーヴァントは今までにもいた。メアリー・リードとアン・ボニーのような形式なら、冬木で召喚された際に湖の乙女がいたはずである。

 

「ほら、冬木の街は炎上していたので……湖の乙女的に乾燥したところは苦手なのです」

「じゃあ、第三特異点はどうだったんですか? 海だから水がいっぱいありましたよ?」

「海水より淡水の方が……」

「金魚かな?」

 

 立香は訝しんだ。無論、生前の湖の乙女ならばそんな制約はなかったのだろうが、今の彼女は縁日で手に入れた金魚くらい儚い存在である。湖の乙女の生前の力を知るべディヴィエールとベイリンはつらつらと語り出した。

 

「私はランスロット卿との戦争の際に、湖の乙女の居城を攻めたのですが……あれほどの地獄はありませんでした。一軍が丸ごと凍りついたのはトラウマですね」

「末妹の異界も地獄だったぞ。水がまとわりついてくる上にそこらじゅうから魔獣が飛び出してくるからな。貴様も苦労したようだな」

「いえ、ベイリン卿の方こそ……」

 

 二人の語り口にはどこかヤケクソな雰囲気がにじみ出ていた。心なしかその背中も煤けている。

 ノアはダンテの方を向いて、

 

「ダンテ、地獄ソムリエのおまえとしてはどうだ?」

「なんですかその不名誉な資格は!? ま、まあ地獄の一階層として存在していても全くおかしくはありませんが……その点霧の城は良いですねえ。景観も美しいですし」

「いや、アレもアレで酷いぞ。霧の中で息しただけで肺の中で水になって溺死するからな」

「エグすぎませんか!? 地上で溺死なんて悪夢以外の何物でもないですよ!」

 

 ダンテは戦慄した。経験した地獄のバリエーションなら世界でもダントツな彼だが、湖の乙女の異界は辞書になかったのである。

 完全に煮え切ったカレーを盛り付けながら、立香はベイリンに訊いた。

 

「その赤い鎧は脱がないんですか? カレー食べられます?」

「脱ぐことはできるが、これは弟を手にかけた戒めとして着ている。私はこのままでいい。カレーとやらは貰おう」

「どうやって食べるのよ……!?」

「わたしは盾を馬鹿にされた恨みは忘れていませんよ。必ずやその素顔を暴いてみせます」

 

 戦意の篭った眼差しを受けて、ベイリンはカレーを手に挑発する。

 

「いつからそれを盾だと錯覚していた? 王に仕えた者ならば誰もが失笑を───」

「あー!! こう気分が良いと昔の話でもしたくなってきたな! 何の話が聞きたい!? パロミデスがラモラックにボコボコにされたやつとかオススメだぞ!!」

 

 続く言葉を遮るように、ペレアスは大声を出した。彼の顔面にはだらだらと冷や汗が流れ、目の焦点も定まっていない。

 明らかに様子がおかしいことはよそにして、立香は何の気なしに言った。

 

「ペレアスさんの馴れ初めとか興味あります! 現代では詳細が分かってない話なので!」

「こいつらの恋バナなんざ犬も食わねえぞ。おまえがそんなのに興味あるクチか?」

「リーダーは黙っててください。わ、私だって、恋くらい……」

 

 立香はもごもごと口ごもった。彼女の本意を見抜いたのは、心を読めるダンテと湖の乙女。ダンテは思わず顔を背け、湖の乙女は艷やかな笑みを形取る。

 

「あらあら……では、語って聞かせましょう。立香様のお勉強にもなるかもしれませんので」

 

 湖の乙女はくるりと振り返ってカメラ目線になると、爛漫とした笑顔で宣言した。

 

「次回、私とペレアス様の一大スペクタクルノンフィクション恋愛ショーですわっ! 是非お楽しみあれ!!」

「誰に向かって言ってんだ!!?」




『遥か永き湖霧城』
 シャトー・デ・ダーム・デュ・ラック。湖の乙女(次女)が『空想具現化』で創り出す本領。湖の乙女が住まうと言われる幻の湖上の城を顕現させる。ペレアスに付随するおまけのような形で召喚されたため、大幅に弱体化している上に水辺でないと発動することができない。アーサー王の時代にはこの城がフランスに実在していた。
 この城は魔力を帯びた水滴(霧)によって構成されており、並大抵の城壁より遥かに堅牢かつ固体のように触れることができる。形状も自由自在に変化させられ、周囲の水分を使って体積を増やすこともできるため、防衛力においては他の追随を許さない。そして、水分があるところならたとえ打ち破られても即座に、無限に再生できる。ついでに言えば武装も霧で賄えるので、これと相対した軍は常に攻撃に晒されながら、絶え間なく変化する堅固な城壁を突破しなくてはならない理不尽を強いられる。
 アーサー王と事を構えることになったランスロットはギネヴィアと自身の軍とともに『幸福の護り』という城に籠城し、王はこれをついぞ落とすことができなかった。それもそのはず、『幸福の護り』とはすなわち、湖の乙女三姉妹がそれぞれの持つ異界を組み合わせて作り上げた要塞だった────という設定。
 湖の乙女(長女)は雪が降る氷の塔を。
 湖の乙女(末妹)は暗雲立ち込める水の庭園を。
 これら二つと霧の城を合わせて『幸福の護り』と成した。こんなものを作る必要がどこにあったのか。もしかしたらアーサー王の時代が始まる以前に湖の乙女が戦っていた相手がいたのかもしれない。ただしひとつ言えるのは、気に入った人間にはとことん甘いのが湖の乙女なのである。
 湖の乙女にとって水の操作は前日の朝飯前だが、特に長女は固体の操作に、次女は気体の操作に、末妹は液体の操作に長けている。霧は正確には液体? …………。
 〝『ペレアス様と私の風雲ラブラブ城』に改名しておけばよかった〟と思っているとかいないとか。

 次回、一話だけペレアスの過去話にお付き合いください。この章の前半と後半の分かれ目となります。
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