自称カルデア最強マスターとぐだ子の人理修復録   作:なまゆっけ

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今更ながら月姫リメイクをプレイしました。しばらくの間物語を摂取できなくなるくらい面白い危険なゲームでした。
ギル様に会う前にオリジナル特異点を挟みます。次回から一章だけお付き合い頂けると幸いです。


第57.5話 灼熱のサーヴァントパラダイス〜忘れもしませぬ、あれは拙僧が海の家で裏バイトをしていた頃〜

 サマーシーズン到来!!

 夏。それは色とりどりの思い出が紡がれる季節。気になるあの子と祭りに出掛けたり、キャンプに繰り出したり、流れるプールで周囲にバレないように尿意を満たしたり、フライパンと化した道路の上で大量に死滅しているミミズたちの姿に震えたりと、夏の記憶は浮かべども沈むことはない。

 しかしその反面、大いなる闇を抱えてもいるのが夏である。異常気象、上がり続ける平均気温、なぜか最高気温をアイデンティティにする熊谷市など、照りつける太陽は同時に影も生み出してしまうのだ。

 とある常夏の島。からりと渇いた熱気を刺々しい陽光が彩る。砂浜と水平線を一望できるベンチに、水着一丁のEチームリーダーはもたれかかっていた。その隣には先程まで着ていたであろうシャツやジャケット、デニムパンツが打ちやられていた。

 いつものセミのようなやかましさはどこへやら、ノアは棒アイスを咥えて呻き声ともつかない声を出して項垂れていた。白い髪の隙間から、殺気に満ちた瞳がぎらぎらと輝く太陽を睨みつける。

 

「あっちぃなクソが……太陽(あいつ)ぶっ壊れてんじゃねえか? そろそろあのポンコツも換え時だろ。相も変わらず温めるだけが能とかナメてんのか? 履歴書の特技欄になんて書くつもりだ? 学生時代最も力を入れたことが地球温めることとか人生の意義を疑うだろ。今時の電子レンジでも機能増やしてってんだろうが。少しは向上心を持てアホ太陽。エアコン先輩のフィルターの埃を煎じて飲んどけ。使用年数四十七億年とか中古品どころの話じゃねえんだよ、そりゃ不具合のひとつやふたつはあって当然だろうが。人間なんか四十七歳でも不具合しかねえからな。救いようのないジャンク品だからな。ただただ壊れていくだけのリビングデッドだからな。さっさと現役辞めて後進に道を譲れよ年増天体が」

 

 太陽相手に愚痴を吐き散らかすアホがそこにいた。この世界は絵本のように無機物が喋るメルヘンな場所ではない。ノアを嘲笑うかのように、陽射しは燦々と照りつけていた。

 デンマークは高緯度に位置するが、冬は比較的温暖で夏は大体20℃程度の過ごしやすい気候である。そんな国で幼少期を過ごした彼にとって、常夏の島というロケーションは灼熱地獄に等しかった。人一倍我慢ができない性格というのも多分にあるが。

 目の冴えるような日光とは裏腹に、ベンチの周辺はブラックホールの如き底無しの闇が漂っている。通りがかった通行人は皆一様にそそくさと離れていく。

 

「…………つーか」

 

 バキリ、と上下の犬歯がアイスの棒を噛み砕く。ノアは額に青筋を浮かべて、島中に響くような大声で叫んだ。

 

「何がサマーシーズン到来だァァァ!! 頭茹だってんのか!! 微妙に季節感外してんの気付いてねえのか!? ネタ切れが丸見えなんだよ!! あ゛ぁ〜、それにしても暑い! おいロマン、俺はもう帰るぞ! こんなところにいられるか!!」

 

 熱を持ったベンチの上で転げまわる成人男性。その姿は痛々しいを通り越して、一種の哀れみを感じさせた。人通りは完全に消え失せ、遠巻きから怖いもの見たさの見物人が携帯端末のカメラを向けている。

 数秒間を置いて、名ばかりのカルデア指揮官が立体映像で投射される。彼は異次元の居心地悪さに普段の三分の一は小さく見えるほど縮こまっていた。

 

「『い、いやでも、そこ一応微小特異点だし……なんとか原因を探ってきてもらわないと、放っておいて良いのかどうかも分からな───』」

「おいおいおい、ここに来て新しい設定出してきてんじゃねえ。普段の特異点が特大のクソだとしたら、ここは道端に転がる犬のクソ程度だろ。無視しときゃ良いだろうが」

「『例えが汚い!! というか犬のうんこでもまともな飼い主なら捨てるくらいはするだろう!? ここもそういうことだよ!』」

「問題は飼い主が俺たちじゃないってことだ。誰が好き好んでどこの犬のクソとも知れないうんこを回収すんだよ。ボランティアじゃねえんだぞ」

「『人理修復はある意味ボランティアの極みだけど!?』」

 

 ノアとロマンの口論は泥沼に陥っていた。泥沼というか肥溜めだが。泥中の蓮とはよく言うが、彼らのような肥溜めのラフレシアはただ汚いだけである。

 ロマンの考えとしては、人理修復中のささやかな休暇としてノアを向かわせたつもりだったのだが、現実はそうではなかった。

 不毛な口論でノアに勝てる人類はいない。しかし、対抗できる人材はいる。その到来を待ち望んでいると、肥溜めの中に赤い影が滑り込んだ。

 

「良い大人が二人して何やってるんですか。周りの人たち引いてますよ」

 

 汎用アホ型決戦兵器、藤丸立香のエントリーだった。彼女は紅白のアロハシャツに換装し、常夏の島らしくトロピカルな装いに変貌を遂げている。

 ロマンは状況を打開する存在をその目に捉え、

 

「『よく来てくれた立香ちゃん! ノアくんはボクの手に負えそうにないから後はキミに任せた!』」

「おい! まだ話は終わってねえぞ! さっさと俺をカルデアに帰せ!!」

「『……それじゃあこの特異点の調査は頼んだぞ! 頑張ってくれ、人類最後のマスターたちよ!』」

「おまえには恥という感情がねえのか!?」

「リーダー、それブーメランです」

 

 正確には立香も同類なのだが、彼女はそれに気付いてはいなかった。人は自分を省みることができない生き物なのである。

 ロマンを形作っていたホログラムが空気に溶けて消えていく。クー・フーリンの槍の如く全身を突き刺してくるノアの視線を他所に、彼は立香に向かって微笑みかけた。

 ノアは深いため息とともにうなだれる。どうやら大声を出す気力もないらしい。相当猛暑に堪えているのか、虚ろな声音で喋り出す。

 

「……おまえこそ何やってんだ、アロハシャツなんて着やがって。今の俺におまえみたいな特濃のアホを相手する余裕なんかねえぞ」

「こういうところに来たらアロハシャツを着るのが礼儀じゃないですか! むしろこれが正装です! リーダーも着ます? 向こうにある露店で売ってましたよ」

「観光地の店なんざ十割ボッタクリだろ。そもそもこんな暑いのに服なんか着てられるか。ただでさえ股間と水着が汗で融合してんだぞ。ムカデ人間みたいになってんだぞ」

「普通にセクハラ発言するのやめてくれません?」

 

 すっかり大人しくなったノアの頭頂から爪先を流し見る。

 本人の言動と性格を抜きにすれば、確かにどこに出しても恥ずかしくない体つきをしている。頑健な骨格の上にまとわりついた筋肉。自分の体の実用性を極限まで突き詰めたような、ある意味魔術師らしい体躯だ。

 立香はその横に腰を落ち着ける。とくりと調子を早めた心臓の鼓動を気取られぬように。

 

「それで、どこから見て回ります? この島の地図があったんで持ってきました」

「見せてみろ」

 

 折り畳まれたパンフレットを開く。そこにはこの島の地形と施設が掲載されていた。ノアが上半身を傾けてそれを覗き込むと、二人の肩が僅かに触れ合った。

 立香は跳ね上がりそうになる体を根性で押さえつける。元々一般人とはいえ、もう数々の修羅場を潜り抜けてきたマスターだ。これしきでうろたえはしない。

 無論、そんな心の動きをノアが知るはずもなく。

 彼は地図のある一点に目をつける。

 

「よし、決めた。俺は今から『アヴィケブロンのゴーレムカフェ』で涼んでくる。後は任せたぞ藤丸隊員」

「ひとりでサボろうとしないでください! どんだけ暑いの苦手なんですか!?」

「暑さだけなら魔術でどうにもなるがな、今の俺はやる気というやる気が消え失せてんだよ。魔術回路を起動することすら面倒くせえ」

「終わりだこの人……いつにもましてダメ人間度が増している……!!」

 

 そもそも『アヴィケブロンのゴーレムカフェ』とは一体何なのか。そこにツッコむ余裕すらなかった。

 アヴィケブロンには女性型のゴーレムに身の回りの世話をさせていたという伝説がある。パンフレットをめくってみると、その紹介欄には見目麗しいゴーレムたちの写真が掲載されていた。受け取る人によってはいかがわしい店と勘違いされなくもない画像である。

 むっ、と立香は眉をしかめる。魔術オタクのノアのことだ。こんな精巧なゴーレムを前にして、調べないという選択肢はないだろう。その際にどんな暴挙に出るか分かったものではない。

 それは良心と乙女心が許さなかった。二つの感情が配合されている割合は後者に偏ってはいたが。

 彼女はパンフレットを破りかねない勢いで、人差し指を紙上に突き立てる。

 

「ほ、ほら! ここなんてライブ会場がありますよ! 『人類史有数のアーティストたちによる一日限りの共演』ですって。一緒に行きましょうよ!」

「…………俺以外にもキリエライトと放火魔女がいるだろ。そいつらと行ってこい」

「んぐっ、ああ言えばこう言いますね……!」

 

 この男はこうなったら難攻不落だ。いくら言葉を投げかけても、それは城壁に体当たりするようなもの。あっけなく一蹴されるだろう。

 ───だが、藤丸立香という少女はその程度で諦めるほど潔くはない。

 ノアとの付き合い方はこれまでに痛いほど身に沁みている。何かを命令することは不可能だが、貸し借りに厳しい性格を利用するのだ。

 ちょうど、オジマンディアスの城でやったように。

 そう決めて切り出すと、

 

「私は、リーダーと一緒じゃないと嫌です」

 

 するりと口をついて出たのは、わがままじみた願望だった。

 

(あれ)

 

 こんなことを言うつもりではなかった。

 感情ではなく理屈で訴えかける。そのはずだったのに。

 心臓が早鐘を打つ。ひた隠しにしていた感情が露わになってしまったのではないかと、甘ったるい電流が胸の内で迸る。

 この顔の熱さは、陽射しのせいではない。

 ノアはニタリと口角を吊り上げる。その顔面には隠す気もない嗜虐心が浮かんでいた。

 

「…………なるほど。だったら仕方ねえ、付き合ってやるよ」

 

 返ってきたのは、予想だにしない言葉だった。その意図も理解できないままに、立香は表情を晴らす。

 

「い、いいんですか?」

「ああ。いや、考えてみれば当然だったな。微小とはいえ特異点、おまえがひとりで解決するには手に余る」

「……ん?」

「だからこそ、おまえは俺の力を頼ったって訳だ。なんてったって俺はカルデア最強マスターだからな。ようやく俺の部下としての自覚が出てきたじゃねえか。良い兆候だ」

(この人がアホで良かった〜!!!)

 

 したり顔で的はずれな考察を語る姿には苛立ちを覚えるが、とりあえず致命傷は免れたようだ。思えば、この男に乙女心を理解しろと言う方が難しい。

 部下の言動に気を良くしたのか、ノアはもそもそと着替え始めた。

 普段の礼装を纏っていない彼の姿はどこか新鮮だった。いつもは帽子のせいで見えないことがある表情も、今ははっきりと見て取れる。

 ぼんやりと着替えを眺める。いつの間にかノアは着衣を終え、ベンチから立ち上がった。

 

「行くぞ。まずはライブ会場から調べる」

「はい! Eチームマスター調査隊発足です!」

 

 湖の乙女リースは言った。恋愛の極意は攻めて攻めて攻めまくることだと。彼女の攻め方がR指定に足を踏み込んでいることに目をつむれば、アドバイス自体はそう悪い内容ではない。

 ロマンの去り際のあの顔。ダメ人間度で言えばカルデアでもかなりの男だが、ヤツも大人だ。ある程度の察しはついているのだろう。

 このチャンスを無駄にするのは愚の骨頂。

 故に今日、立香は攻めるのだ。

 前を行くノアの左手を自分の右手で掴む。

 

「……何やってんだ?」

「リーダーって目を離したらすぐ奇行に走るじゃないですか。だから、こうして捕まえておかないと危ないです」

「実はおまえが一番危ないことを忘れるなよ。俺が本気出したらおまえの腕なんてガンプラみたいにもぎ取れるからな」

「その時は私のゴッドフィンガーで握り潰すんで大丈夫です」

 

 じくりと、苦しくも心地よい熱が右手の血管を伝って心臓に流れ込み、じんわりと融かしていく。横目で見上げるノアの目は、また、ここではないどこかを見ているような気がした。

 …………そんなこんなで。二人は島を移動し、ライブ会場のほど近くに到着する。島の地図上では、東側の端に当たる場所だ。

 パンフレットの情報で分かったことだが、この島では英霊たちがそれぞれ店を開いたり、イベントを運営しているらしい。『人類史有数のアーティストたちによる一日限りの共演』という誇大広告著しい謳い文句も、過去の英霊がいるとなれば決して誇張表現ではない。

 歌が呪術的な意味を持っていた古代の歌手から、近現代のミュージシャンが音楽を披露する。いつも血みどろの英霊たちを見ている立香からすると、これ以上平和的なサーヴァントの活用方法はないように思われた。ダンテだって然るべき場所に置けば、素晴らしい作品を生み出せるのだ。

 立香とて人並みに音楽を嗜む。流行りの曲から少しマニアックな洋楽まで、守備範囲はそれなりに広い。隣にノアがいることを差し引いても、その心は浮足立っていた。

 しかし。

 淡い期待というものは、どんな時も打ち砕かれるためにあるのだ。

 

 

 

 

 

 

「ハァーイ♡ 元気してたかしら私のペットたちぃ〜? 今日も今日とて冴えない窓際社員みたいなおいたわしい人生送ってる貴方たちに、一時の安らぎを届けてあげるわ! それじゃあまずは声出しから行くわよ! ん、んんっ…………ボエ〜〜♪♪」

 

 

 

 

 

 

 阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

 ステージに舞い降りたのは美少女としか形容しようがないドラゴン娘。黒を基調とした衣装に着替えた竜人型音響兵器は、遺憾なくその性能を発揮する。

 海底神殿に住まう魚人の鳴き声もかくやとばかりのおぞましい歌声。熱気に包まれていたであろう会場が絶対零度にまで冷え込み、哀れな観客たちは雪崩を打って倒れていく。

 名状しがたき狂気の怪音波もさることながら、ステージの奥にはおどろおどろしいオブジェが屹立していた。

 この世全ての悪に汚染されていそうなゆるキャラ風のナニカ。それが魔神柱のように青空を突き刺している。大きく開け放たれた口からは得体の知れない汚泥が滝の如く流れ落ち、舞台を染め上げている。

 邪教の信徒も裸足で逃げ出す光景だった。ミュージシャンのライブでは興奮のあまり気絶するファンもいるが、こちらはその真逆。どんなに偉大なアーティストでも、観客全員を気絶させることは不可能だろう。

 思わず意識を飛ばしかけた立香に対して、ノアの行動は素早かった。

 

「『無限を象る黄金(ドラウプニル)』からの『炎星の首飾り(ブリーシンガメン)』!!!」

 

 六十三個の彗星がステージ上に墜落する。

 世界が白く染まるほどの爆発が巻き起こり、膨大な熱と炎が奇怪なオブジェごとドラゴン娘を呑み込んだ。

 

「ほんぎゃあーっ!!?」

 

 間抜けな断末魔が響き渡る。

 光が途絶え、熱風が過ぎ去った後、そこにはうつ伏せになった女性版ジャイアンしか残っていなかった。黒の衣装はさらに黒く、ぷすぷすと全身から煙をあげている。

 明らかに過剰な火力だったが、それに文句を言う人間はどこにもいなかった。というか言える人間はいなかった。

 オブジェは砂の城のように崩壊し、手のひらに載せられるサイズになって地面に落ちる。それはころころと転がり、自称アイドルの頭に当たって止まる。

 それで意識を取り戻したのか、彼女は勢い良く起き上がった。

 

「ちょっと! 私の大事なライブで何してるのよ! こんなの台本になかったわ! ワンチャンインターネットで大炎上からの賠償請求謝罪引退コースよ!? 昨今の民衆は厳しいんだから!!」

 

 などと、妙に現実味のある悲しい反論をする怪音波発生器。アイドルにとっては、物理的な大炎上よりもネットで大炎上する方が怖いのだ。

 ノアは負けじと大声を張り上げる。

 

「アレのどこがライブだァァ!! ただの名状しがたい冒涜的な儀式だろうが! とうとう五回目の登場を果たしやがって、今日という今日は準レギュラーの座から追放してやる!!」

「くっ、なんて酷い弾圧なの!? ローマ兵に追いかけ回された救世主の気持ちが分かったわ……!!」

「エリザベートさんはとりあえずその人に謝ってください! 何回も出てきてる癖に音痴に磨きがかかってるのはどういう了見ですか!?」

「エリザベート───? ふっ、そんな古い名前はもう捨てたわ!」

 

 もはやエリザベートですらなくなった少女は足先から手先まであざとさで構成されたステップを踏み、ばちこーん☆と、マグナムのようなウィンクをぶっ放した。

 

「今の私はエリザベートを超えたエリザベート───悪魔(ドラクル)を超えた悪魔(ドラクル)! そう、ダークエリザと呼んでちょうだい!!」

「ところで、エリザベートさんはどうして急なキャラ変更を?」

「ダーク! エリザ!! よ!!!」

「黒くなっただけでキャラの差別化ができると思うなよ。どっかの騎士王と聖女と違って、おまえがオルタビジネスで儲けられるわけねえだろ」

「はああ!? その発言、私と私のファンの逆鱗に触れたわよ! SNSのアカウントを荒らされる覚悟の準備をしておきなさい!!」

 

 急なキャラ変更はアイドルの特権だが、それにしてもあんまりな出来栄えだった。下手なキャラ付けとは敬遠されるだけの産業廃棄物。並み居るクソ映画やクソゲーのように、ワゴンに押し込まれることすら許されていないのだ。

 立香は単純な疑問を抱き、首を傾げる。

 

「さっきから大分インターネットの炎上を気にしてますけど、何かあったんですか?」

「べっ、別に!? 『アイアンメイデンの中に入ってみた』とか『ハンガリー国歌を自由の女神の前で全力で歌ってみた』をやってたら燃えたとかそういうわけじゃないから!」

 

 意外とコツコツした積み重ねで燃えていた。彼女の炎上はもはや避けようがない状態だったに違いない。

 

「で、本音は?」

「───絶対バズると思ったのに!! どうしてこの世の中は私に厳しいのかしら……こうなったらダーク化、いえ、オルタ化もやむなしよね……!!」

 

 ダークエリザことエリザベートは鼻息荒く立香とノアを睨みつける。その眼差しには遣る瀬無い感情が籠っていた。自業自得この上ないのだが。

 すると、彼女の足元に転がるオブジェが包丁を吐き出す。ふらふらと刃物を手に取るエリザベートに、ソレは妙に可愛らしい声で囁く。

 

「『うふふ、思い通りにならないなら……ひと思いに殺っちゃえばいいんだよ』」

「ふ、ふふ……そうよね。この世で唯一ワガママを許される職業がアイドルだもの……」

 

 自称アイドルの瞳はハイライトを失い、渦巻き模様を描いていた。その顔は紅潮し、生暖かい吐息が漏れる。うっとりと刃紋を眺めていた目は、徐々に立香たちへと向いた。

 そんな視線を受けて、立香はぞくりと震えた。彼女は目にも留まらぬ速さでノアの背中に回り込む。

 

「リーダー! なんかあの変な置物がエリザベートさんを誘惑してます! 完全に特級呪物ですよねアレ!?」

「落ち着け藤丸。こういう時やることはひとつだろう───がっ!!」

 

 蹴撃一閃。ノアの右足が包丁の刃を粉々に打ち砕く。サンダルを履いているにしては威力が高すぎる気がするが、立香は深追いしないことにした。

 エリザベートの目から狂気の色が消え失せる。元々狂気じみた少女ではあるものの、やはり直前の言動はあのオブジェによるものだったらしい。

 彼女は青褪めた肌から冷や汗を流す。

 

「……ハッ! 私は今まで一体何を!? クソ動画を乱発したせいで炎上したり、黒化ビジネスに手を染めたあの記憶は夢だった……ってコト!?」

「いいえ、それは紛れもなく現実です」

「おい。アイドル気取りトカゲ娘、この特級呪物はどこで手に入れた。詳しく話せ」

「確かあれは炎上の対応に追われてた時のことなんだけど……」

 

 ある日、エリザベートは広大なネット世界に燃え広がる火の手を止められずにいた。何しろ、その火は消火器や消防車の放水で消せはしない。英霊とはいえ少女ひとりの手に負えるものではなかった。

 そんな彼女が取った最終手段はほとぼりが冷めるまで眠りにつくこと。株やFXで言う気絶投資法のメソッドである。

 その折、床についたエリザベートの夢枕に、神妙不可思議にして胡散臭い男が立っていた。

 

〝お聞きなさいエリザベート・バートリー。拙僧……ンンッ! 私は貴女の味方をしにやって参りました。貴女の心を苦しめる炎上を解決する方法を授けましょう〟

〝なんですって!? どうすればいいの!?〟

〝それはこの『なんちゃって聖杯くん』がご教授召されるでしょう。貴女に幸あれ!!〟

 

 そうして目が覚めた時、枕元には特級呪物ことなんちゃって聖杯くんが置かれていたのだと言う。

 第六特異点の激闘の裏でそんなことが行われているとは夢にも思わなかった立香は、苦笑と言うにはあまりにも苦々しい顔になる。

 

「それで、まんまと聖杯くんに洗脳されてああなったってことですね」

「ええ。しかもあの泥に触れたら黒くなるし、後でシャワー浴びないと……」

「リーダー、もしかしたらこの特異点と関係があるんじゃないですか? 聖杯くんにしても夢に出てきた胡散臭い人にしても、明らかに怪しいです」

「ああ、早くも核心に迫った訳だ。とりあえずそいつの居場所を炙り出すぞ」

「どうやってよ?」

 

 エリザベートの疑問に答えるように、ノアは聖杯くんを掴み上げた。

 

「聖杯くんはつまるところ呪いの塊だ。そして、おまえの夢に出てきた奴はこれをおまえに渡した。その時点で呪いは成立してる。つまり、呪詛返しの出番だ!!」

 

 ノアは聖杯くんにルーンを刻んだ。オーディンが得た原初のルーン。その内のひとつ、第六のルーンは掛けられた呪いをより強力にして術者に返す能力を持つ。

 呪いは術者と被術者の繋がりを辿る。それの恐ろしいところは、相応の繋がりさえあれば地球の裏側からでも対象を呪えることにある。だが、呪詛返しの場合はそれがそっくりそのままメリットに転じるのだ。

 久々にスカサハも納得するルーンの使い方だった。聖杯くんから飛蝗の群れのように泥が立ち昇り、鉄クズの塊になったステージ裏に殺到した。

 

「ちょっ、現代の魔術師が原初のルーン使えるとか聞いてな────ウギャアアアアア!!!」

 

 夏の青空に絶叫が轟く。

 考えるまでもなく黒幕だろう。立香たちはすかさずステージ裏に駆け寄った。

 そこでは、ノアを凌ぐほどの長身の男が地面に横たわっていた。呪詛返しの効果は凄まじく、聖杯くんの泥が彼の全身をぎちぎちと締め付けている。

 鼻と口までをも覆われているせいで、まともな呼吸ができていない。男は涙目で声にならない声をあげた。

 

「ンンンン! ンンンン! ンンンンンンンン!!」

「この目元、モノクロの髪の毛、全身から発するこの上ない胡散臭さ、間違いないわこいつよ!」

「黒幕の姿ですか? これが……」

「とりあえずそいつを縛り直すぞ。窒息されても困るからな」

 

 というわけで、彼らは泥をモップで拭き取って男を荒縄で拘束した。まるで時代劇の罪人である。彼の頭の上に聖杯くんを乗せると、ノアは冷たい声音で問う。

 

「おまえの名前は?」

「………………あ、安倍晴明です」

「今の絶対に嘘ついてる間ですよね。あ、のところで言い直しましたよね」

「嘘ついたら痛い目見るわよ。写真と一緒にあることないこと書き連ねてネットの海に放流してやるわ」

「嘘です! 本当は蘆屋道満と申します!!」

 

 蘆屋道満。どうやら彼でも炎上は怖かったらしい。その真名を聞いて、三人は顔を見合わせる。

 

「蘆屋道満って確か……」

「安倍晴明のライバル兼当て馬だな。アンパンマンに対するバイキンマンと言い換えても良い」

「え、じゃあライバルの名前を騙って評判を落とそうとしたの!? とんだ卑怯者じゃない!!」

「ゴフゥッ!!」

 

 エリザベートの鋭い言の葉に切り裂かれ、道満は盛大に吐血した。

 一応彼のフォローをすると、大抵の説話で晴明に負かされる道満だが、裏を返せば晴明に対抗できるほどの陰陽師は道満しかいなかったということでもあるだろう。

 また、彼は藤原道長に呪いをかけたことを晴明に見抜かれて都を追放される。江戸時代の歌舞伎や浄瑠璃などで悪人のキャラ付けをされるのはそれに由来する部分が大きいが、民間伝承では持ち前の知識と術で民草を救っていたりもする。一概にバイキンマン扱いされるような人物ではないことは確かだ。

 しかし、今この場ではそんなことは関係なかった。

 

「蘆屋道満。正直、俺はおまえのことは嫌いじゃねえ。安倍晴明との呪術対決はよく知ってるからな。おまえの知識を全部俺に教えたら許してやる。ついでにそこのトカゲ娘を呪った目的も話せ」

「なんで私のことはついで扱い!?」

「そうですよリーダー! エリザベートさんのことはついでとしても、この特異点に来た理由を訊かないと駄目じゃないですか!」

「アレ? もしかして私無視されてる? 五回も出演したからって出番減らされてる?」

 

 Eチームマスターコンビの邪悪さに惑わされるエリザベート。彼女をよそに、道満は暗い闇のような微笑みを浮かべる。

 

「フフッ……こうなったら語る他ありませぬ。そう、聖杯くんをそこな竜人娘に授けたのはまさしく拙僧! この安穏とした特異点を恐怖の坩堝に陥れることが目的でありますれば!!」

「よし、じゃあおまえを倒せば万事解決だな。藤丸、あの放火魔女呼んでこい。こいつを薪にしてキャンプファイヤーするぞ」

「はい。えーっと、ジャンヌの連絡先は……」

「お、おやめなされ!! それはもはやヒューマンファイヤー、否、オシシ仮面なれば! まだ話は終わっておりませぬぞ! 拙僧がバラまいた聖杯くんがひとつだけなどと、何時申しましたかなァ!?」

 

 立香の端末を弄る手が止まる。差し当たっての窮地を脱した道満はすぐさま笑みを形作った。表情筋にジャイロでも仕込んでいるかのような速さだ。

 エリザベートは道満の胸倉を掴んで、がくがくと揺らす。

 

「なんですって!? 私みたいな被害者を増やそうなんて許せないわ! 今すぐ吐きなさい!!」

「ンンンンン! その絶望、実に甘露! 故に、貴方がたを更なる絶望に叩き落とすためお教え致しましょう! この島に仕込んだ聖杯くんは五つ! 晴明桔梗の陣の頂点に当たる位置にそれはあるのです!!」

 

 晴明桔梗、別名五芒星。魔術や呪術に用いられる紋様で、真っ先にこれを思い浮かべる者は多いのではないだろうか。

 つまり、道満はこの常夏の島に巨大な五芒星の陣を刻み、その起点となる五つの頂点に聖杯くんを置いたのだ。ライバルである晴明の印を悪用していることからも、彼への鬱屈した感情がうかがえる。

 その衝撃はノアや立香にも等しく伝播した。二人はあからさまにうつむき、強く拳を握り締めた。

 

「そ、そんなっ……だったら私たちはこれから島中を巡って────」

「────残り四つの聖杯くんを回収しなきゃならねえのか……くそっ!!」

「さらにもうひとつ! 聖杯くんは言わば時限爆弾……日没までに全てを集めなければ、それぞれが街ひとつを滅ぼすに余りある呪詛を振り撒くのです! さて、この蘆屋道満の計画を止め切れますかなァ!?」

 

 その時、マスターたちは小さく呟いた。

 

「「……めんどくさっ」」

「……………………ン?」

 

 道満は両目をしぱしぱと開閉する。

 この二人、今何かとんでもないことを口走らなかったか。最高潮にまで達していたテンションが停止し、思考がまっさらに漂白された。

 

「な、何と仰られました?」

「だから面倒くせえっつってんだろーが!! 残り四つもクソ暑い島中駆け回ってられるか! どう考えても尺が収まらねえんだよ!! せめて合計三つにしとけアホ陰陽師!!」

「そうですよ! こんな閑話でまともに計画立てるとか正気を疑います! せっかくり、リーダーと遊べると思ったのに、これじゃいつもと変わらないじゃないですか!!」

「この二人本当にカルデアのマスター!?」

 

 道満にはひとつの誤算があった。それはノアと立香が想像を絶するアホだということである。

 かの平安時代、京の都で好き勝手暴れた挙句、後始末を晴明に押し付けていた道満は他人に振り回される経験が少なかった。ロクデナシは得てして同族に弱いのだ。心理的には晴明が道満を振り回していたのだとしても。

 しかし、それはそれ。気が進まないとしても、聖杯くんは回収しなくてはならない。宿儺の指がひとところに集まっているようなものである。

 ノアは道満の縛めを解く代わりに、犬の散歩に使うような首輪を取り付けた。ドS七つ道具のひとつだ。

 四つん這いになった道満のリードを引っ張り、ノアは哮り立つ。

 

「とっとと呪物を集めて帰って寝るぞ! おら、次の場所に案内しろ!!」

「やめなされ! こんな変態プレイはやめなされ! 新しい扉を開いてしまいまする!!」

「私も行くわ! まだギャラも払ってもらってないんだから!」

「このアイドル……出番に貪欲すぎる!」

 

 ということで、一行は次なる目的地を目指して出発した。無論、道中で奇異の眼差しを向けられたことは言うまでもない。

 稀代のアホマスター二人に平安のバイキンマン、炎上系トカゲアイドルと、属性の大渋滞を起こしたパーティは島の北側に辿り着く。

 びゅう、と冷たい風が肌を撫でる。

 雲ひとつない晴天とは打って変わって灰色の空はしめやかに純白の雪を降らせ、吐く息もまた、白く色付いていた。

 眼前に広がるのは雪と氷で構成された街。家屋までもが透き通る氷で造られており、常夏の島の風情は跡形もなく消滅している。

 立香はガタガタと震える体を両腕で抱え、虚ろな目で呟いた。

 

「…………私たち、いつからさっぽろ雪まつりに来たんですっけ」

 

 道満は謎のしたり顔で答える。

 

「ここが第二の聖杯くんが眠る土地───『氷の皇女アナスタシアの極寒! ラーメン横丁』ですが?」

「いや常夏の島は!? あの眩しい太陽は!? サマーシーズンはどこに行ったんですか!?」

「休暇取って沖縄でサーフィンでもしてるのでしょう」

「返答がテキトーすぎるんですけど!!」

 

 頭に血を昇らせる立香の横で、エリザベートはただただ固まっていた。変温動物の悲しい性である。ノアは首輪の締め付けを強くしながら、

 

「いいから早く聖杯くんのところに連れてけ。時間食ってる場合じゃねえんだよ」

「急いては事を仕損じる。目的地はすぐ目の前です」

 

 一行は促されるままに視線を上げた。

 すると、そこにはまたもや氷で造られた巨大な館……もといラーメン屋があった。自重という概念を無視しているのか、マンモスを人型にしたような巨人の氷像が屋根の上に立っている。

 その巨人はこれまた大きな看板を掲げている。それにはデカデカと『らぁめん あなすたしあ』と何故かひらがなで書かれていた。

 もはやツッコむ気すらない。というか、もたもたしていたら凍死する。一行は店内に駆け込んだ。

 

「あら、いらっしゃい! 四名様でいいかしら」

「いえ、三人と一匹です」

「この変態プレイ中の陰陽師のことね?」

「人間とトカゲのハイブリッドの貴女のことでは?」

 

 雪の皇女の謂れに一切劣らぬ白髪の美人が、中華鍋を豪快に振り回してチャーハンを炒めていた。店内に立ち込める肉と胡椒の匂いが実に食欲をそそる。タオルを頭に巻き、エプロンを着用したその姿は中々堂に入っていた。

 見た目に反して店内は暖かかった。四人はいそいそとカウンター席に座る。立香はチャーハンに目を奪われつつ、アナスタシアに身を乗り出す。

 

「あの、ここに聖杯くんがあるって聞いたんですが」

「聖杯くん……ああ、あの無限包丁製造機のことね。もちろんあるわ。ただし、大食いチャレンジの景品としてだけれど!」

 

 そう言って、アナスタシアは一枚のチラシを差し出した。道満を除く三人はその紙面に目を走らせる。

 チラシにはA4の幅を埋め尽くすかのような特盛りのラーメンが印刷されていた。

 

「〝『イヴァン雷帝のペタ盛りラーメン』を完食したお客様に豪華景品をプレゼント〟…………ですって。ちなみに複数人でひとつのラーメンを食べることはできないらしいです」

「ふざけてんのか。豚の餌に等しいぞこんなもん」

「というか、ペタ盛りって何よ? 平たく盛ってるみたいでもないし」

 

 エリザベートは首を傾げた。待っていたとばかりにアナスタシアは胸を張る。

 

「ペタとは国際単位系における接頭辞のひとつで、基礎となる単位の千兆倍の量であることを示す────要するに、めちゃくちゃ多いという意味よ!」

 

 ふんす、と氷の皇女は誇らしげに語る。立香は感嘆して両手を打ち鳴らす。

 

「おお、まるでウィキペディアで調べたみたいな解説……!!」

「感心してる場合か。とりあえずこの陰陽師に食わせるぞ」

「おおっと、それはいけませぬ。拙僧が試練を乗り越えたところで、聖杯くんは貴方たちのモノにはなりませぬので。それでは元の木阿弥ですぞ?」

「こんなくだらねえことにどこまで理屈付けてんだ! 意外と真面目か!?」

「リーダー、どうどう」

 

 立香は文句を垂らすノアを諌める。彼女とて大食いチャレンジに挑戦したくはないが、そんな泣き言を言っている場合ではない。

 気乗りしないマスターコンビに反して、やる気を見せたのは意外にもエリザベートだった。

 

「大食い系は数字を稼げると聞いたことがあるわ! このラーメンをみんなで完食したところをアップして、今度こそバズってみせるのよ!」

「天丼になりますけど、本音は?」

「───これで炎上を上書きしたいぃぃぃ!!」

「駄目だこのアイドル。早くなんとかしないと」

 

 エリザベートに冷たい視線を向ける立香。炎上とはかくも人の心に傷を残すのだ。ノアは彼女の肩に手を置いて、首を左右に振る。

 

「藤丸、人の意気込みを邪魔してやるな。三人で完食、良い響きじゃねえか。俺が一番好きな言葉、友情努力勝利を体現してる。ここで戦うのも悪くない」

「……そうですね。私が間違ってました。エリザベートさん、誰かひとりでも攻略できればいいんです。みんなで頑張りましょう!」

「ふ、二人とも……!! これが友情という概念なのね、今なら何杯でも食べられる気がしてきたわ!!」

「ふふふ、闘志は十分ね。さあ、このアナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァが注文をうかがいましょう!」

 

 彼らの目に迷いはなかった。

 たとえ他の仲間がラーメンの前に膝をつこうとも完食してみせる。その気概に満ちた勇者たちを止めるものは何もない。

 いざゆかん、決戦へと────!!

 

「私はこの『イヴァン雷帝のペタ盛りラーメン』に挑戦するわ! 二人は!?」

「「チャーハンで」」

「なんで!!?!?」

 

 立香とノアは平坦な口調で述べる。

 

「「だってチャーハンおいしそうだったから……」」

「せめてラーメン頼みなさいよ! 最初から私を人柱にするつもりだったのね!?」

「ペタ盛り一丁にチャーハン二丁ね。ヴィイ、お願い!」

「ま、待っ」

 

 エリザベートの静止も虚しく、ロマノフ王朝の使い魔・ヴィイが厨房に飛び込む。それから数秒経たずして注文の品をカウンターに並べた。

 二連チャーハンからの超大盛りラーメン。それは圧倒的な威容をもってエリザベートの前に立ちはだかった。視界を埋めるモヤシの山は大陸の峻厳な雪山を想起させ、その下に胎動する太麺とチャーシューはマントルの蠢動に等しい。

 対して、少女に与えられた道具は一対の箸とレンゲのみ。無酸素かつ普段着でロシアのコーカサス山脈最高峰エルブルス山を踏破せよと言っているようなものだ。

 だが、エリザベートはそれをやる。

 今更後に引けぬヤケクソじみた想い。

 先の見えない炎上から脱する希望。

 そして、全てのラーメンを愛する人のために。

 数十分後。

 山はもう、消えていた。

 エリザベートは粛々と立ち上がる。

 

「トイレ、どこ」

「つ、突き当たりを右よ」

 

 彼女は何も言わずにすたすたと歩いていく。

 その背中はまるで、歴戦の英雄だった。

 トイレの扉が強く閉められる。その直後、

 

 

 

 

「おぼおろろろろろろろ!!!」

 

 

 

 

 ────第二号聖杯くん、回収。

 後日、エリザベートがSNSにこのことをアップしたところ、多大な反響を呼び、炎上は終結。彼女は大食い系アイドルとしての第一歩を踏み出すことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって、島内中心部。

 近代的な街並みの中に、いくつもの露店が軒を連ねている。わたあめや射的といった定番の店もあれば、かなり怪しげな占い屋もあるバリエーション豊かな市場だ。

 ここは島の中心。聖杯くんの被害が一切ない、約束された勝利の地である。それ故、マスターたちが島を駆けずり回っているとも知らずに、ペレアスは露店に立っていた。

 それがノアと立香よりも幸福かと言われれば、そんなことはないのだが。

 立ち込めるソースの香り。熱い鉄板の上で踊る麺と肉。それらを色とりどりの野菜が飾り立てる。

 そう、ペレアスは今────焼きそばを焼いていた。

 

「……なんでオレが焼きそば作ってんだァァァ!!!」

 

 蒼天を貫くが如き咆哮。そう言いながらも、彼の手は正確無比に焼きそばを量産していた。私情と行動は切り離す騎士の悲しい習性だ。

 猛然と働くペレアスの背後には二つの人影。その一方は言わずと知れた円卓最強の騎士ランスロットだった。

 湖の騎士は苛立たしいまでの爽やかな笑顔で、ペレアスの左肩を叩く。

 

「ふふふ、何を言っているのですかペレアス。ここは我らが王の勅命によって開かれた店、『円卓やきそば』です。ならば貴方が焼きそばを作るのは当たり前でしょう」

「円卓と焼きそばに繋がりがねえだろうが!! お前は生前に一度でも焼きそばを口にしたことがあんのか!?」

「いいえ、これは理屈ではありません。焼きそばの味とは人類の魂に刻みつけられた圧倒的な旨味───!! 連綿と受け継がれてきたものなのですから。おっと、ここは連麺と言うべきですね。焼きそばだけに」

「冗談がくだらねーんだよ! お前の穴という穴にソースぶち込んでやろうか!?」

 

 ピキピキと額に青筋を立てるペレアス。空いた右肩に、またしても手が置かれる。

 

「貴方はいつも騒がしいですが、今日は特別ですね。まあ、爛々と輝く太陽の下では仕方ありません。しかも、そこかしこに水着の女性がいるのですから……おっと、ペレアスは既婚者でしたね」

「お前もそうだろうがガウェイン!! つうか前回良い感じで死んだ癖に、すぐ登場してくるとか恥ずかしくねえのか!?」

「なんと野暮なことを言うのです。この時空では一切のしがらみなく交流し合えるというのに。再会を喜ぶ気はないと……?」

「こんな形じゃなかったら少しは喜んでたがな! 風情ってもんを考えろ! 頼むからもう少し死んでてくれ!!」

 

 ……というのが、現在の露店『円卓やきそば』の面子だった。ちなみにアグラヴェインは早々に帰り、モードレッドはサーフボード片手に海に繰り出して行ったらしい。

 堂々と先輩ムーブをかましてくるランスロットとガウェインに、ペレアスの怒りは急速に上限に達しつつあった。いくら歳を重ねようと、ムカつくものはムカつくのだ。

 二人の手を振り払い、深呼吸で精神統一を図る。

 肺の空気を一片まで出し切って、ペレアスはとりあえずの平静を取り戻した。

 

「それで、本当に王様がこんな店開けって言ったのか」

 

 ランスロットはこくりと頷く。

 

「ええ、王はこう仰られました。〝私は閉店間際の水分という水分を失って、しなしなになった焼きそばが好きです〟と。故に我ら、命を賭して王の望みに応える所存! 必ず王にしなしなの焼きそばを献上するのです!!」

「どんな趣味してんだあの人……というか体の良い厄介払いだろ! そもそも王様どこ行った!?」

 

 ペレアスが何の気なしに放った質問。それを聞いた瞬間、ランスロットとガウェインは感情を急転直下させて、大人しくなる。

 その瞳を満たす感情は悲哀。切り結んだ唇は僅かに震え、目線をどこかに逸らしている。あまりの変わり身に、ペレアスは眉をひそめた。

 ガウェインは落ち込んだ声で言う。

 

「───実はこの店を設営した時、王はまだおられたのです。しかし、何やら見知らぬ赤毛の少年がやってきて、彼とともに食い倒れの旅へお行きになられたのです」

「…………別に良くねえか? 王様がついてくなら悪い子じゃないだろ」

「問題はそこではありません。少年と並んで去っていく背中から見える王の、僅かに赤らんだ横顔───あれは完全に乙女でした! 私たちが見たこともない顔でした!」

「よし、分かった。止まれ。それ以上余計なことを言うな」

 

 顔面を両手で覆い、泣き伏せるガウェイン。そんな彼が言葉ひとつで止まるはずもなく。

 

「何よりも罪深きは私の心……主君がどこの馬の骨とも知れぬ男に私も知らない特別な表情を向けているのを目の当たりにし、その、結論から言うと正直興奮しました……!!」

「お前もかよォォォ!! ランスロットと同じ流れじゃねえか! ただ新しい性癖見つけただけじゃねえか!!」

 

 ペレアスはガウェインをげしりと蹴り飛ばす。一部始終を静聴していたランスロットは腕を組んで首肯していた。

 

「ガウェイン。ようやく貴方もこの境地に至りましたか。私とペレアスは生前に達していましたが」

「待てお前らの性癖にオレを巻き込むな」

「ええ、我が身の不甲斐なさを思い知りました。我ら産まれた時は違えど、性癖は同じということですね」

「おいマジでもう一回斬っていいかコイツ!? オレは純愛派なんだよ、劉備と関羽と張飛とオレに謝れ!!」

 

 ペレアスは調理中の焼きそばを掬うと、ガウェインの顔面に叩きつける。熱々の麺と具材の衝突により、さしもの太陽の騎士も悶絶せざるを得なかった。なお、食べ物を無駄にしてはいけない。

 ランスロットは出来上がった焼きそばをパックに詰めながら口を動かす。

 

「そういえば、義母上はどちらに?」

「ああ、『良妻賢母の会』とかいうのに出席してるらしいぞ」

「ほう、とても良い響きですね。願わくば私も混ざりたいものです。どのような婦人方が?」

「確か玉藻の前、ブリュンヒルデ、アルテミス……」

「あ、やっぱりやめておきます。どういう集まりか大体分かったので」

 

 円卓きってのプレイボーイ、ランスロットをもってしても手に余る面子だった。古今東西ヤンデレ選手権でもやっているつもりなのか。そんな感想が喉元にせり上がったが、義母と後輩の手前それは言えなかった。

 ガウェインは顔面に投げつけられた焼きそばをもさもさと頬張る。太陽はばっちり中天、絶好調の彼に隙はない。

 太陽の騎士は黙々と焼きそばを増産するペレアスに、ニコニコと笑いかける。

 

「それでは男三人水入らずで話ができるのですね。是非とも性癖について語り合いましょう」

「いや、オレはこれ作り終わったら上がるからな」

「……はい?」

「嫁と『紫式部と清少納言のWサイン会』に行く予定があるんだよ。その後はプールで泳いでディナーっつう完璧なプランだ」

 

 幸せ満載な計画を語り、ペレアスは焼きそばに青のりを振りかけてパックに詰めた。背後の二人が凍りついていることには全く気がついていなかった。

 額に巻き付けていた鉢巻を外し、エプロンを脱ぐ。ペレアスは夏の陽射しのような眩しい笑顔を輝かせる。

 

「じゃあな。王様が来たら呼んでくれ。その時は顔出しに来────」

 

 第一歩を踏み出そうとした両足に、ランスロットとガウェインが飛びついた。

 屋台を盛大に粉砕しながら倒れ込む。空中に舞い上がった焼きそばの雨が彼らの頭上に降り注いだ。

 

「……ぐああああああ!! いきなりなにしてんだ!!?」

 

 ペレアスは怒りと困惑を配合した顔で振り向く。足にすがりつく湖の騎士と太陽の騎士は目の端から血涙を流し、モルガンの呪いにも匹敵する濃密な瘴気を発していた。もはや英霊ではなく悪霊である。

 ランスロットはわなわなと震えて、

 

「行かせませんよペレアスゥゥ……!! 貴方はここで永遠に焼きそばを焼き続けるのです!」

「ふざけろ馬鹿!! こんなとこで焼きそばなんか売ってられるか! ガウェインも放せ、三倍の力を無駄にすんじゃねえ!!」

「ククク、そんな説得で私が止められるとでも? 貴方はなんだかんだで円卓屈指のリア充、カチグミ・ナイト・オブ・ラウンズ!! せめて今だけは負け組になっていただきます!!」

「お前らそれでも騎士か!?」

 

 カルデアでは不憫な扱いのペレアスだが、悲劇非業まみれの円卓内では間違いなく勝ち組のひとりである。そんな彼に対するガウェインとランスロットのひねくれた感情は根深かったようだ。

 ペレアスは両足に力を込めるが、びくともしない。いっそ剣で斬り落とす選択肢も脳内に浮かんだその時、彼らを冷たい目で見る二人の女性がいた。

 すなわち、マシュとジャンヌであった。常夏の島らしく水着にフォームチェンジした彼女たちは、それぞれ盾と旗を構える。

 

「人混みの往来でアホやってますね。それでも円卓の騎士ですか、ランスロットさん」

「こいつらがアホなのは今に始まったことじゃないでしょう。普通に軽蔑しますけど」

 

 唾でも吐くかのような口調。しかし、ランスロットとガウェインにはご褒美以外の何物でもなかった。

 彼らは即座に起き上がり、きらりと白い歯を光らせて詰め寄る。

 

「また会えましたね、マシュ。私は最期の瞬間まで貴女の勝利を信じていましたよ。さて、父娘水入らずで焼きそばでも食べましょう」

「そちらのお嬢さんもご一緒にどうですか? ペレアスの作った焼きそばは格別ですよ。……おっと、屋台が崩壊していますね。ペレアス、建て直してください」

「自分でやれ」

 

 ナンパ騎士たちの脳天にペレアスの鉄拳が落とされる。頭を抱えてうずくまる円卓の騎士を尻目に、マシュとジャンヌは廃墟と化した屋台を覗いた。

 

「焼きそばを食べるも何も、辺りに散乱しまくっているのですが。控えめに言って食への冒涜です」

「円卓やきそばって……他にもっとあったでしょ。何の関わりもないじゃない」

「我ら円卓の物語に正典はありません。どんな話でもバリエーションのひとつとして受け容れられるでしょう。故に! 円卓の騎士が焼きそばを焼いていたなら、それを事実にしてしまえるのです! 私の異名が太陽の騎士でなく焼きそばの騎士となる日も近いでしょう……!!」

「焼きそばの加護で力を三倍にするんですか!? ポパイ的なヒーローにでもなるつもりですか!?」

 

 マシュは絶句した。太陽が昇っている間だけの加護よりも、焼きそばを食べてパワーアップする方が使い勝手が良さそうではあるが。

 ジャンヌは呆れに呆れる。実物の有名人を見てがっかりする現象に近い。無事な焼きそばだけ奪って行こうかと考えた時、通りに悲鳴が湧き上がる。

 大通りの向こう側から全力疾走してくる巨大な狼。その上に黒衣を纏った首無し人間が騎乗している。両脇にはだばだばと泥を吐く特級呪物を挟んでいた。

 通行人を次々と跳ね飛ばし、狼と首無し人間は一瞬で駆けていく。その後ろでは、見知った顔が息を切らして猛追していた。胡散臭い陰陽師風の男がリードで引きずられている。

 

「待ちやがれェェェ!! それは俺たちの聖杯くんだ! 皮剥いで煮込んでやろうかクソ犬!!」

「さ、さっき食べたチャーハン吐きそう……おやつカルパスあげるから止まって!!」

「ンンンンン! 首、首がもげるゥ!!」

 

 マシュたちに気づく余裕もないのか、彼らは脇目も振らずに過ぎ去っていった。

 荒廃した大通りに砂混じりの風が吹く。

 ぽつねんと取り残された気分になったジャンヌは小さく言う。

 

「……ナニアレ」

「先輩とリーダーと……変態ですね」

「立香、私たちと別行動してアイツのところに行ったのね」

「まさか───いえ! わたしは認めません! 断じて認めませんよ! わたしの先輩がそんなはずはありません……!!」

 

 マシュは頭を抱えてしゃがんだ。ガウェインとランスロットは自然に両隣に座り込んだ。

 

「「ようこそ、こちらの世界へ……」」

「ペレアス。こいつらアホなの?」

「間違いなくアホです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Eチームマスターたちの聖杯くん回収戦争は最終盤に差し掛かっていた。

 楽な戦いなど一度もなかった。ペレアスが焼きそばを焼いている間、島の各地では想像を絶する過酷な戦いが繰り広げられていたのである。

 第三号聖杯くんの在り処では『シグルドとジークフリートの邪竜討伐体験ツアー』に参加してファヴニールが守る聖杯くんを盗み取ったり。

 第四号聖杯くんの在り処では『狼王と上に乗ってる変な人のワンワンパニック』に挑んで聖杯くんを取り損ねた挙句脱走されたり。

 その結果、脱走した狼には一年分のおやつカルパスを献上することで、上の人から聖杯くんを受け取ることができた。その出費によって立香とノアの財布が氷河期を迎えたことは言うまでもない。

 道満が最後に指し示した場所は透き通るような海を一望できる砂浜だった。疲れ果ててボロボロになった立香とノアは、肩を落として歩く。

 

「長く苦しい戦いでしたね……邪竜討伐体験ツアーで、銀髪の男の子がファヴニールに変身した時は腰が抜けるかと思いました」

「結局あの犬の上に乗ってたやつは誰だったんだ。首無しライダーとか都市伝説出身か?」

 

 二人の背中は煤けていた。聖杯くんを集めるために島中を奔走していたのだから当然ではあるが。砂浜ということで喜色に満ちた周囲の人々とはまるで対照的だった。

 太陽は随分と下がってきているものの、未だ日没には至っていない。最後の試練を達成する時間は十二分に残されている。

 長らく四つ足歩行をしていた道満は久々に二足歩行に戻る。首輪とリードをいとも容易く引き千切り、彼は拍手を打った。

 

「フフ、フフフフッ! 見事四つの聖杯くんを集め、最後の地に辿り着いたこと、賞賛致す! こうなってはどの道、晴明桔梗の陣は成らず───まさしく拙僧の敗北と言えましょう!」

「ようやく負けを認めやがったな、平安のムックが! うだうだ言ってねえで聖杯くんを渡せ!!」

「平安のムックなどという不名誉な謂れはやめなされ! 拙僧はあの不人気な赤き畜生に非ず、稚児の人気を恣にする緑のガチャピンなれば!」

「ハッ! そりゃあ妄言にも満たねえ戯言だ! おまえ自身の血で赤く染め上げて正真正銘の不人気に改造してやる!!」

「とりあえず二人はムックに謝ってくれません?」

 

 ノアと道満は殺気に塗れた視線を火花の如く散らす。

 ふざけきってはいるが、相手は安倍晴明と壮絶な呪術戦を演じた怪人、蘆屋道満。数々の逸話を有する日本有数の呪術師であり陰陽師だ。油断できる要素など微塵も存在しない。

 道満は咒を書き付けた数枚の札を取り出す。彼の足元から地割れが走るように禍々しい魔力が噴出した。

 

「いざ、最終戦! 出でよ決戦のバトルフィールド────ハアッ! 急急如律令!!」

 

 異常な振動が砂浜を激しく揺さぶる。

 道満とノアの間にバレーボール用のネットが地中から現れ、面妖な模様を施されたボールがどこからともなく落ちてきた。

 怪人蘆屋道満は両手を掲げて、

 

「『第五回聖杯くん争奪! チキチキビーチバレー対決』ッッ!!」

 

 砂浜じゅうに響き渡る宣言。立香とノアは思わず目を白くする。最終戦だというのに、限りなくほのぼのした対決内容だった。

 しん、と場が静寂に包まれる。周囲から向けられる目線が痛い。

 立香は勢い良く挙手した。

 

「し、質問があります!」

「ンンンンン! 受け付けましょう!」

「ビーチバレーって二人組でやるスポーツですよね。そっちはひとり足りなくないですか」

「御心配には及ばず! 二人目はこれから喚び出すのです! 貴女も日の本の人間ならば知っているであろう、あの大怨霊を!!」

 

 魔力の込められた札が茜色の空に散りばめられる。

 その数は先程とは比べ物にならない。

 まさしく空を塗り替えるが如き膨大な物量。

 故に、符に宿る魔力も絶大。妖しき光を放つ無数の星屑は、ただそこに在るだけで空間を歪めていた。

 かつてない力の胎動。

 紡がれる咒は天上へと。

 どくり、と。形成された召喚陣が脈動する。

 ───ソレは、時の朝廷への反逆者。

 東国にて反旗を翻し、新たな皇を名乗った武人。

 死してなおその憎悪は醒めやらず。

 いくつもの伝説を遺した怨霊の王。

 その名は─────!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───優雅たれ」

「誰だァァァァァ!!!!」

 

 顕現を果たしたのは、優雅としか言いようがないおじさんだった。召喚条件の違いか、普段の真紅の礼服ではなく漆黒のスーツを着こなしている。

 がっくりと崩れ落ちる道満。日本三大怨霊の一角を召喚したかと思えば、知らないおじさんが出てきたのだ。それもやむなしであろう。

 深い絶望と落胆に沈む彼とは反対に、ノアと立香はシリアスな顔つきでおじさんを見据える。

 

「さすが蘆屋道満───!! 優雅なおじさんを召喚してみせるとはな。これで戦力は五分五分……いや、優雅な分あっちの方が有利か」

「優雅なおじさんは人類史最大級の優雅さを誇りますからね……しかも、いつもと雰囲気が違います。優雅は優雅でも優雅じゃない優雅というか」

「優雅がゲシュタルト崩壊してきたのですがァ!?」

 

 道満の雄叫びを無視して、ノアは考察を述べた。

 

「組んだ術式、もしくは聖杯くんの影響だろうな。あのおじさんは俺たちが知るおじさんじゃねえ、優雅の方向性が反転した状態───言うなれば、優雅なおじさんオルタだ!!」

「需要がなさすぎませんかねぇ!!? それならば拙僧がオルタ化した方がいくらかマシというもの!!」

 

 優雅なおじさんオルタはボールを掴み、サーブを行う位置まで移動する。勝手に先行を取っていることに関して、彼に限って文句を言う人間はいない。

 道満は渋々位置につく。真夏のビーチにスーツでやってくる見知らぬおじさんに後衛を任せることは不安でしかなかった。

 優雅なおじさんオルタはボールをじっと見つめて囁く。

 

「コトミネ……コロス……」

「いやだから誰ェ!?」

 

 道満の叫びとともに、おじさんはサーブを放った。それは相手の反応を置き去りにし、立香の足元をバウンドしてコートの外に飛んでいく。

 バレー部員としての自負を粉々に打ち砕くような一撃。背筋に悪寒が走り抜ける。

 

(速い! 優雅すぎてまったく反応できなかった!)

「競技の趣旨が変わっているのですが!?」

「ナチュラルに心を読むな」

 

 道満とおじさんのミスマッチはあったものの、勝負自体は彼らの優勢で進んだ。

 ビーチバレーは1セット21点先取。これを2セット取るまで続けるのである。細かい攻防をいちいち描写していては何文字あっても足りないのだ。

 そんな訳で2セット目。スコアは10対20。Eチームマスターズは窮地に立たされていた。そのほとんどが優雅なおじさんによる得点である。

 ここまで来ると道満のおじさんへの不信感も拭えてくる。二人は一蓮托生、比翼連理と化しつつあった。

 

「フフフフフ! この蘆屋道満、どうやら神引きをしてしまったようですねえ! カルデアの者共よ、貴方がたは我らに手も足も出ぬという絶望を刻みつけられながら敗北するのです!!」

 

 果てしなく調子に乗った笑い声が響いていく。道満とおじさんは優雅にハイタッチをキメていた。非常に神経を逆撫でられる光景である。

 立香は歯噛みして、頬の汗を拭った。

 

「くぅっ、どうしましょう。このままじゃまずいです!」

「焦るな。俺には一発逆転の秘策がある。キマればどんな点差があろうが俺たちの勝ちだ」

「リーダーのことだからやろうとしてることは分かりますけど……私はどうすれば?」

「次のサーブを全力で防げ。後は俺がやる」

 

 そうして、両チームは向かい合う。

 空中に白球が上がる。追随しておじさんは優雅に跳んだ。

 優雅なおじさんとの実力差はもはや語る必要もない。

 ここを外せば負ける。

 けれど、そんなプレッシャーは無いに等しかった。

 仲間が任せたと言うのだから、自分はそれに応えるだけでいい。

 故に、立香は淀みなく動くことができた。優雅に打ち出されたボールを、彼女は揃えた両腕で泥臭く跳ね返す。

 ノアは既に空中で待ち構えていた。その右手には帯電する鎚。さらに、右手は鋼鉄の手袋に覆われていた。

 ノアが掴んだ無属性魔術と投影魔術の混合。再現された武具は北欧神話最強の武神が有する武器と、それを扱うための道具。

 空に舞うボール目掛けて、ノアは雷電を帯びた鎚を振り抜いた。

 

「『雷神の鎚(ミョルニル)』!!」

 

 莫大な熱と雷が弾け、相手コートに球が落ちる。

 ノアの秘策。それは相手を戦闘不能にして強制的に勝利するというものだった。

 それを迎え撃つ道満は冷たく微笑んだ。

 

(愚か! 実に愚かなりノアトゥール・スヴェン・ナーストレンド!! 威力は目を見張るが、拙僧に掛かればこれを凌ぐ手など幾千万も思いつく! 我が呪術を用いて、その傲慢ごと貶めてくれようぞ!!)

 

 呪符に魔力を浸透させる。

 その瞬間、彼のつむじに矢文が突き刺さる。

 結び付けられた紙が解け、目の前で開かれる。そこにはただ一文、

 

〝あのSMプレイはどうかと思う〟

 

 とだけ書かれていた。

 ぶちん、とこめかみの血管が切れる。

 迎撃用の術式を編むことも忘れて、激しく叫んだ。

 

「────せっ、晴明ェェ!! 貴様、貴様貴様貴様ァッ!! いつから見ていたァァァ!!!」

 

 空間を引き裂くような雷撃の球が直撃する。

 蘆屋道満の対魔力はAランク。たとえこれほどの一撃であっても、彼には決して通用しない。が、ボール自体は神秘を宿しただけの物理攻撃だ。これを軽減することはできない。

 顔面に球が打ち込まれる。着弾とともに雷電が拡散し、優雅なおじさん諸共吹き飛ばした。

 黒焦げになった相手コート。ノアは暫時視線を注ぎ、そして切る。Eチームマスターズは手のひらを打ち合わせた。

 

「これが優雅な勝利だ───!!」

「黙祷を捧げましょう。優雅なおじさんオルタのために……」

 

 で。

 全ての聖杯くんを回収し、平和が取り戻された常夏の島。無事日没を迎え、満天の星空が広がる砂浜で宴が開かれていた。

 聖杯くんの処遇については、カルデアの倉庫で最厳重態勢で収容されることになった。収容違反が起きた場合、ただちにサーヴァントたちが駆り出される手筈になっている。クラスは現時点ではSafeといったところだろう。

 今回の騒動の解決を押し付けた元凶であるロマンは夜になってようやく島を訪れた。上手い話には目がないダ・ヴィンチちゃんと所詮食欲には勝てないフォウくんも同行している。

 パチパチと火が弾ける。上に置かれた鉄板には見ただけで高いと分かる肉が脂を滴らせていた。

 今回まったく登場がなかったダンテは聖杯くん回収戦争のことを聞いて、

 

「そんなことがあったんですねえ。私は『文学者の集い』に参加していたのでさっぱり知りませんでした。マシュさん、こちらコナン・ドイルさんのサインです」

「本当ですか!? ありがとうございます! 必ず家宝にします!!」

「それと、ジャンヌさんには中原中也さんのサインを……」

「ふぅん、普段役に立たないアンタも中々やるじゃない。褒めてあげます。重力を操って戦う姿がイイのよね」

フォウフォフォウ(それ別の作品ですよ)?」

 

 立香とノアは肉を貪りながら、恨めしい視線をダンテに送る。奴は出番がなかったくせに唯一真っ当にこの島を楽しんでいたのだ。

 悪辣な感情をひしひしと感じつつ、ダンテは某NERV総司令官のように手を組んだ。

 

「…………ところで、道満さんと私の口調が被ってません!? 絶対に会いたくないんですが!」

「どこがだよアホ」

「何を言うのですペレアスさん! 私は嫌ですよ、キャラを喰われてフォウさんのように出番が減るのは!!」

フォフォウ(ぶっ飛ばすぞ)

 

 フォウくんはダンテの頭に飛び蹴りをかまし、テーブルに叩きつける。

 ダンテの頭部は板の裏側にまで突き抜けていた。ダ・ヴィンチちゃんとロマンは彼を引っこ抜く。

 

「まあまあ、蘆屋道満は倒したんだろう? どこかのアイドルじゃあるまいし、再登場なんてしないさ。彼の呪術は面白そうだけどね」

「うん、その言葉でとてつもなく嫌な予感がしてきたぞボクは」

「あ、そうだドクター。ひとつ聞きたいことがあるんですけど。ちょっと場所変えていいですか」

 

 立香は唐突に切り出した。ロマンは要領を得ないながらも頷き、二人は距離を取る。

 

「その、ドクターはリーダーがカルデアに来るまでのことを知ってるんでしたっけ」

「うん。曲がりなりにもカルデアの指揮官だからね。彼のことはラプラスを使って調べてある」

 

 それに、と言葉を区切る。

 

「実は第四特異点の後に、彼から身の上話を聞いたんだ。だから、ボクは全部の事情を知っていた。黙っててすまない」

「謝らなくていいですよ。その……少しだけあの人の話を聞かせてもらえませんか」

 

 卑怯だとは思いつつも、それを口に出すことは止められなかった。

 彼のことをもっと知りたい。

 その衝動に嘘を吐くことなんてできない。

 ノアトゥールという人間がカルデアに来た経緯。その全てを知る男は、優しく微笑んだ。

 

「……その必要はないかな。立香ちゃんが訊けばきっと、ノアくんは教えてくれるよ」

「…………そうですかね?」

「うん。そうだよ。尻込みする気持ちは分かるけど────勇気を出すのはキミの得意技だろう?」

 

 彼の目は、どこか暗かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 島のどこか。

 鬱蒼とした熱帯林のど真ん中で、彼は目を覚ます。

 

「フ、フフフ、フフフフフフゥゥ……」

 

 特徴的な笑い声。その声音は思わず身震いするほどの不吉さを伴っていた。

 ───許してなるものか、晴明。そしてカルデアのマスター。

 たとえ何度もあの男に負けたこの身なれど、敗北の苦渋はいつだって同じ味だ。

 

「なればこそ、なればこそ! なればこそォ! この味、必ずや奴らに与えてみせようぞ!! 知恵の女神より授けられた力に手を染めたとしても!!」

 

 使えるものはすべて使う。

 自分の力だけで勝つ。そんな綺麗事にこだわっているのが間違いだったのだ。その論理は武人のモノであって、外法を司る呪術師のモノではない。

 漆黒の森に、彼は宣言する。

 

「我こそは最後の『暗黒の人類史』───この蘆屋道満、恩讐の彼方より舞い戻ってみせよう!! フフ……ハハハハハハッ!!!」




・ベイリンのステータス
クラス:バーサーカー
真名:ベイリン
属性:中立・中庸
ステータス:筋力 A+ 耐久 A+ 敏捷 A+ 魔力 C 幸運 E 宝具 A++
クラス別スキル
『狂化:A』……バーサーカーのベイリンは自分の理念でしか動かない。一応忠誠や親愛や友情という概念はあるので、それに従うこともある。完全な自由主義。本能と理性が一体化した異常な精神性により、意思疎通は可能。セイバーやランサーのクラスで召喚されると多少マシになる。どのくらいマシになるかというとデフォで敬語が使えるようになる。性格が絶望的に騎士に向いていない。
固有スキル
『無窮の武練:A+』……円卓結成以前から初期において、最強を誇った武芸の手練。あのマーリンが諧謔なしで褒め称えたほどの技量を誇る。ベイリンとほぼ相討ちになった弟のベイランもかなり強いが、このスキルは持っていない。対戦相手が弟なのではないかという疑念があったため、ベイリンは意図的に力をセーブしながら戦っていた。
『勇猛:A+』……精神干渉を遮断するスキル。また、格闘ダメージを向上させる。個我を突き詰めたその有り様の具現化。と言えばかっこいいが、とてつもなく自己中ということ。
『心眼(偽):A』……第六感による危険予知。戦闘の天才たるベイリンは生まれつきこの能力を有していた。姿の見えない騎士・ガーロンとの戦いでさらに磨かれ、特に魔術に対しては未来予知レベルの反応を発揮する。
宝具
『雷光耀う勝利の剣』
ランク:A+ 種別:対城宝具
 エクスカリバー・コールブランド。湖の乙女(末妹)が管理していた聖剣。真名解放によって例のごとくビームを撃つことができる。ベイリンの場合は掬い上げるように撃つ。コールブランドとはエクスカリバーの別名。エクスカリバー、ガラティーン、アロンダイトに続く第四の聖剣。
 ベイリンの死後はマーリンがこの剣の柄を取り替え、『最も優れた騎士にしか抜けない剣』となった。その後も愛する者を殺す呪いはあったのだが、絶対聖杯見つけるマンのギャラハッドに剣を抜かれて解呪されてしまう。聖騎士は格が違った。
 マロリー版ではこの剣がランスロットの剣ということになっている。最も愛する男を殺す呪いがかけられているので、ランスロットがガウェインを手にかける伏線になっている。
『輪廻の紅鎧』
ランク:B 種別:対人宝具
 エンドレスペイン。元はベイリンの弟、ベイランが決闘の際に着ていた鎧。装備者の生命力を高め、魔力を送り込むことで一時的に筋力と耐久のステータスを上昇させる。この鎧は殺された者から殺した者へ、次から次に持ち主を変える呪いが掛けられており、ベイリンを倒した者は強制的に鎧を移される。ベイリンは弟を殺した罪を戒める意味で常に鎧を着ていたが、脱ぐことはできる。が、戦闘時になると自動的に出てきて装備される。ペレアスに自分を殺させて鎧を移した。
 人の旦那を勝手に呪うとか何考えてんだ?(湖の乙女談)
 聖剣に呪いを掛けるとかお前の妹何考えてんだ?(ベイラン談)
『光絶つ運命の槍』
ランク:A++ 種別:対国宝具
 ロンギヌス・カウントゼロ。ベイリンがペラム王の城で手に取った、神の子の肉体を貫いた槍。三つの国を滅ぼし、ペラム王を不具にしてしまうほどの威力を持つ。三つの国を滅ぼしたと言うとキャメロットにも被害が及んでいそうだが、ペラム王の城は異界にでもあったのだろうか。
 パーシヴァルのように使いこなすことはできない。というのも、ベイリン版ロンギヌスは手にした際に降り注いだ神罰を再現するものであり、一度の召喚に一度限りの使用しかできないからである。その性質上、拘束もなく威力は絶大。本編では聖都の壁を一撃で打ち破った。
 ベイリンが聖槍を手にした時に呪いが降り掛かったのは、聖具を武器として使ったからだと言われている。ペラム王の城で追い詰められたベイリンはやむを得ずこの槍を手に取ったのだが、そんな言い訳は通用しないらしい。
 私も武器として使いまくってるのですが大丈夫なんですかね……!?(パーシヴァル談)
 ベイリンとマーリンは何かと関わりがある。どちらも特に嫌がらせをし合ったりしている訳ではなく、天罰をくらった時はマーリンに助けられたりもしている。そのため、ベイリンは珍しくマーリンに悪感情を抱いていない。墓に名前を刻んでくれたことには感謝すらしている。
 だってベイリンは天然だから冗談通じないし……戦争では毎回大活躍してアルトリアを助けてくれたからこれくらいはね。でも普段の素行はどうかと思う。(マーリン談)

・ラモラックのステータス
クラス:ランサー
真名:ラモラック
属性:秩序・善
ステータス:筋力 B+ 耐久 A+ 敏捷 A 魔力 D 幸運 C 宝具 B+
クラス別スキル
『対魔力:B』
固有スキル
『心眼(真):B』……宝具と組み合わさると、とんでもない堅守を実現する。圧倒的な実力差でもない限り、真っ向勝負でラモラックを突破することはほぼ不可能。囲んで殴るのが最適解だが、それでも異常にしぶといというクソゲーを強いてくる。ダンテのような即死系宝具は弱点。即死系宝具が弱点じゃないやつとは?
『勇猛:A』……精神干渉を遮断するスキル。また、格闘ダメージを向上させる。勇猛というか蛮勇。よりにもよってランスロットとトリスタンに喧嘩を売る狂犬。モルガンとギネヴィアのどちらが美しいかメレアガンスと言い合いになったこともあり、止めに来たランスロットも内容を知るとラモラックに決闘を挑む始末。結局プリオベス卿が〝自分が好きな婦人が一番美しいと思うのが普通じゃん〟という大人の理論で場を収めた。
『戦闘続行:A』……往生際が悪い。とにかく悪い。まさしくラモラックを体現したスキル。アーサー王の名誉のために向かった槍試合で全員フルボッコにして優勝した後、殺しに来たガウェイン・モードレッド・アグラヴェイン・ガヘリスの四人と疲弊した状態にもかかわらず、三時間斬り結んだ。つまりガウェインの加護が切れるまで粘った。死に物狂いという言葉すら生温いほどに激しく戦っていたと推察されるが、その三時間でラモラックは文字通り全てを使い切ってしまったのだろう。
宝具
『我が驍勇の前に敵は無し』
ランク:B+ 種別:対人宝具
 キャバルリィ・オブ・フェイス。Bランク以下の攻撃を反射し、真名解放によってAランクでも防げる優れもの。ただし反射はできない。ラモラックの前方に常に展開されている赤い盾であり、攻撃を受けた時にしか現れない。ラモラック自身は自分の攻撃が盾に反射されるか透過されるか選ぶことができる。
 拡大解釈の末に生まれた宝具。コンセプトはタイマン最強。
 ラモラックの最期はガウェイン・モードレッド・アグラヴェイン・ガヘリスの四人を同時に相手取り、ガウェインに背中を斬られるという壮絶なものだった。こうなるに至った理由はラモラックとモルガン(モルゴース)が肉体関係にあったこととされる。しかもラモラックはモルガンの夫のロット王を殺したペリノア王の息子であり、ロット王の子らは良い感情を持っていなかった。話によっては、二人の不倫現場を抑えたガヘリスがモルガン(モルゴース)を殺してしまうことも。そのため、ラモラック殺しを先導したのはガヘリスと思われる。身内で殺し合ったこの事件は、後の王国の崩壊の予兆だったのかもしれない。物語的にも、ランスロットの不倫発覚と似た流れなので、ラモラックはランスロットを意識して作られたキャラクターなのかもしれない。王位の簒奪を狙っていたモルガンではなく、ギネヴィアの不倫がその決定打となってしまったのは酷い皮肉である。

『運命絶す神滅の魔剣』
ランク:A+ 種別:対運命宝具
 ミストルティン・ミミングス。かつてスウェーデンの英雄ホテルスが振るった、神をも倒せるという必勝の神剣。半神半人の英雄バルデルスに癒えない傷を刻んで死に至らしめ、雷神トールの槌ミョルニルすらも断ち切ったと言われる。
剣のミストルティンを造り出す業は長らく実現できなかったが、ノアがスカサハから原初のルーンをパク……賜ったことで復活。ただし、原典はホテルスがサテュロスから奪った剣であり、こちらは限りなく精巧なレプリカということになる。ビームは出ない。なぜかノアの家系はこの剣の造り方を知っていた。
 真名解放によって、間合いの内にいるなら回避・防御不能の一斬を放つことができる。その斬撃は対象の硬度やあらゆる防護を無視し、癒えることのない傷を刻む。単純な殲滅能力や威力では星の聖剣や竜殺しの魔剣に大きく引けを取るが、単に『殺す』という点では勝る。また、トールの槌であるミョルニルを断ち切った逸話から、宝具破壊の効果がある。こんなものを森の神から奪えたホテルスはとてつもない英雄である。
 この剣が斬るモノは運命。この世のありとあらゆる全ての万物に定められた崩壊・消滅・停止といった死に至るまでの寿命を強制的に断絶させる。あえて言うなら、直死の魔眼ならぬ直死の魔剣。アルクェイドも十七分割できるぞ!
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