自称カルデア最強マスターとぐだ子の人理修復録 作:なまゆっけ
カルデア、レクリエーションルーム。
職員が最大限のパフォーマンスを発揮するには、適度な息抜きも欠かせない。この部屋には古代のボードゲームから最新のVRゲームまで、古今東西あらゆる娯楽が用意されていた。
その豊富さたるや、レクリエーションルームに布団と生活用具一式を持ち込む猛者までいたほどである。一方で、忙しい部署の職員などは、ゲーム開始数秒で寝落ちする悲しい事件が絶えなかったという。
とはいえ。今日はその趣きを変え、空いたスペースにホワイトボードが雑に置かれている。
ホワイトボードの横にはマシュとロマンが教師然と立っており、
「……青空教室?」
立香はぼそりと呟く。ちらりと横を流し見ると、両手を枕に眠りにつこうとしているノアがいた。が、後ろから竹刀で肩を思い切り叩かれる。
「ギャーッ!?」
「今回はオレのメイン回だ、粛々とした気持ちで受けてもらう」
「おいこれパワハラだろ! 労基に訴えんぞ!」
「ノアくん、カルデアは所長の方針からしてパワハラを許容する体質だったんだ。諦めてくれ」
二人のさらに後ろ。そこには青いジャージ姿で竹刀を持ったペレアスがいた。パイプ椅子に腰掛けるその様は、まさしく昭和の体育教師であった。
そう、今日彼らがここに集められたのは、ペレアスのことについてだった。特異点Fの戦いを通じて、彼がまず思ったことは、自分の知名度の無さ。
召喚された直後の反応を大分気にしていたらしい彼は、マシュとロマンに打診して勉強会を開いたというわけだ。
あっさりと人に頼るあたり、ペレアスに騎士の誇りはなかったといえる。
「茶番も終わったので、始めましょうか。ペレアスさんはアーサー王物語の中では脇役の中の脇役なのですぐに終わると思いますが」
「マシュちゃん? なんでオレに辛辣なのかな?」
「……ペレアスさんが出てくるのは、ガウェイン卿の旅の途中でした」
……ガウェインが、ひょんなことから15歳の乙女と旅をすることになった道中。知り合った老騎士に〝不思議なことが起きる〟と伝えられた森に差し掛かったところだった。
大いに嘆き悲しんでいる騎士がガウェインの前を横切ったのである。
「……これがペレアスさんです」
「どんな登場の仕方!?」
「ガウェインからすれば恐怖でしかねえな」
ペレアスは森の開けた場所へと歩いていく。そこには、馬に乗った十人の騎士が彼を待ち構えていた。歩兵と騎兵の戦いは絶望的にも思われたが、ペレアスはなんと十人全員を落馬させた。
だが、どういうわけか、地上戦に移り変わった途端、彼は剣を納めてどこかへ連行される。その間、抵抗する素振りは一切見せなかった。
ガウェインは同行する乙女に、ペレアスを助けるよう頼まれるが、当のペレアスが助けてほしくないような素振りをするので、申し出を聞かなかった。
「11人のアホがコントしてるだけだろ、これ」
「ナチュラルにオレをその中に入れるんじゃねえ!!」
その後、ガウェインは騎士と小人が貴婦人を巡って、言い争う場面を目撃する。貴婦人は小人を選んだが、そこに二人の騎士がやってきて、その内のひとり──カラドス卿がガウェインに戦いを挑んだ。
「ガウェインさんがとばっちり過ぎる。というか小人の話は……?」
「それが、小人の話が後の伏線になっていたりはしません。なぜ入れたのか……ちなみに戦わなかった方の騎士は、15歳の乙女をナンパして何処かに行ってしまったそうです」
「渋谷のセンター街とかか」
「どんな世界観ですか!?」
当然、そこら辺の騎士がガウェインに勝てるはずがない。彼はカラドスをボコボコにし、せっかくの縁ということで泊めてもらうことにした。
ガウェインはカラドスにペレアスのことを聞くと、ペラペラと喋り始めた。
なんでも、ペレアスはエタードという婦人を愛しているのだとか。ある時、三日間にも渡る槍試合が催された。優勝者には剣と金の輪(冠とも言われる)が与えられる豪奢な大会だったそうだ。
ただし、優勝者はその槍試合に来ていた最も美しい女性に金の輪を譲らねばならなかった。
「……場合によってはとんでもなく揉めるだろうね」
「もしリーダーならどうしてます?」
「まず賞品が剣と金の輪しかないのが気に食わねえな。騎士とか何が楽しくて生きてんだ?」
「うるせえ! オレたちは物より名誉なんだよ! オレの場合はその上に嫁だがな!!」
大会で優勝したのはペレアス。彼はエタード婦人に金の輪を贈った。これが両想いであったなら、話はこじれなかっただろう。
そう、ペレアスはエタード婦人を愛していたが、エタード婦人からすればそうでもなかったのである。顔がタイプではなかったのだ。
しかし、そこでめげるペレアスではない。エタード婦人が振り向くまで離れないと誓い、居城の近くの修道院に住み込んだのである。
「現代で言うストーカーじゃないですか!」
「勝手に誓ってるのが怖いですね。正直引きます」
「いやこれは若気の至りだから! 変態を見るような目でオレを見ないでぇ!」
「まごうことなき変態だろ」
そこで、エタード婦人はペレアスに騎士を送って戦わせた。質が悪いのが、ペレアスが下手に強かったことであろう。
騎士を倒してわざと捕まり、エタード婦人に一目会おうと何回も同じことを繰り返していたのだ。その度にエタード婦人はペレアスをなじっていたのだが、もはや彼に言葉は通用しなかった。
その話を知ったガウェインは翌日、ペレアスに会って事情を訊いた。ペレアスは、捕まるたびに馬と装備を奪われて城門から追放されていた。彼が徒歩だったのは、そのような理由からなのかもしれない。
彼を哀れんだガウェインは、ある提案を持ちかける。それが、
「あっ、ちょっと待って、胸が苦しくなってきた。オレの過去最大のトラウマが蘇ろうとしてるから」
「キリエライト、続けろ」
「はい」
「イヤアアア待ってえええ!!」
……ガウェインの提案はこうだった。
ガウェインがペレアスを殺したといってエタード婦人に接近し、彼女の信頼を得た後に真実を伝え、ペレアスを愛してもらおうという作戦である。
「「「「ガバガバすぎる」」」」
「オレにとっては一縷の望みだったんだよ!!」
予想外だったのは、エタード婦人の喜びようが異常だったことだろう。ガウェインがペレアスを殺したと伝えると、なんと彼女はガウェインのものになると誓ったのである。
そして、ガウェインはそれを受け入れてしまう。もしかしたら、婦人のあまりの熱意に押し切られてしまったのかもしれない。
そんなこんなで、帰りが遅いことを怪しんだペレアスがエタード婦人の幕屋に行くと、二人が同衾しているのを見つけた。
「あああああああああ!!! 辛い! 心が痛い!! 寝取られなんてものは所詮特殊性癖なんだよ!! この世には純愛だけで良いだろうが!!?」
「寝てから言えよ」
「素質あるよ」
「カルデアのマスターは鬼畜か!?」
ペレアスは二人を殺そうとするも、寸前で思いとどまった。代わりに自分の剣を二人の喉元に置き、その場を逃げるように後にする。
そして、ペレアスはショックで寝込んでしまったとも、ふて腐れて旅に出たとも言われている。
それでも確実なのはこの時期に、湖の乙女との邂逅を果たしたということだ。湖の乙女がいつからペレアスに恋心を抱いていたのかは分からない。
けれど、キャクストン版では湖の乙女は、エタード婦人に『ペレアスのことが好きになる』魔法をかける。そうして、エタード婦人は求愛するものの、ペレアスは逆に口汚く罵倒して婦人を追い出してしまうのである。
そんな傷心のペレアスを慰めたのが、湖の乙女だった。彼らはお互いに愛し合い、契りを結んだのだ。
ところで、キャクストン版のこのストーリーでは、エタード婦人は最後に死んでいる。中々のとばっちりである。
そこで、立香が手を挙げた。
「あの、少し思ったんですけど…」
全員の目が彼女に向く。
立香は顎に手を当てて、推理するように話し出した。
「湖の乙女が、もっとずっと前からペレアスさんに恋していた可能性はないんですか? ガウェインさんの行動に一貫性もないですし、エタードさんに魔法をかけなくても結ばれてましたよね?」
「……どういうことだい?」
ロマンが聞き返す。マシュは察したかのように頷いて、
「つまり、湖の乙女はペレアスさんをオトすために、ガウェインさんとエタードさんを同衾させて失恋させたと?」
とすると、湖の乙女はかなりの策士である。懸想する相手が失恋した直後を狙っているのだから。
「そうそう! 私が察するに湖の乙女は奥手だけど嫉妬深くて、好きな人のためなら何でもできるタイプと見た!」
「もしそうなら、ボクはガウェインが可哀想だと思う…」
そう、この話でまず目につくのがガウェインの描かれ方である。高潔清廉な騎士が、女性に押されただけで一夜を共にするだろうか。
後世の我々はテキストにあることを信じるしかないが、やはり人物像の乖離は人によっては疑問に思うはずだ。
さらに言えば、エタード婦人はほぼ被害者でもある。彼女が魔法をかけられ、死ぬ結末においては、湖の乙女のそこはかとない悪意を読み取ることもできるだろう。
しかし言えることは、現代の価値観と当時の価値観は全く違うものであったということだ。
ペレアスは一貫して被害者的に描かれ、最後に愛を得て報われる。現代ではストーカーだが、当時の価値観ではエタード婦人に対する行いは愛に殉じる騎士として、何ら問題はなかったのかもしれない。
ペレアスは数度手を叩くと、話題を切り替えさせる。
「オレの華々しい戦績は流石に現代にも残ってるだろ。それを解説してくれても良いんだぞ?」
「……あの、特に残ってないんですが」
「いやいやいや、何かはあるはずだって。頼むよマシュちゃん!!」
「え、えーとそれでは──」
10人の騎兵に徒歩で勝つなど、先のエピソードでも地味な強さを見せていたペレアス。湖の乙女に『ランスロットと戦えない』という加護を掛けられたのは、逆に言えばランスロット以外なら勝つか生き残るかはできる、ということであろう。
マロリーによると、フランスの書物にはペレアスはガウェインよりも強い、と記述があるらしいが……
「そのフランスの書物は何てやつなの?」
「……さ、さあ? 逸失してしまったのかもしれませんし、単なるでっち上げかもしれません」
「マロリーの生涯もほぼほぼ謎だからね……ガセの可能性も高いとボクは思う」
ペレアスの強さを表す話はもうひとつある。
ギネヴィア王妃がペレアス含む軽装の騎士10人をお供に連れて出掛けた際、メレアガンスが重装騎士160人を率いて襲撃した。
10人の中で実力者といえるのは、ペレアスとアイアンサイドという騎士のみだった。彼らの奮戦の末、王妃は連れ去られるものの、ランスロットにそれを伝えることに成功する。
そうしてメレアガンスを追う旅の途中、ランスロットはやむなく荷車に乗る恥を忍びながらも、メレアガンスを討つのだ。
160人と10人の戦い。それも王妃を護りながらの状況で生き残ったことは、ペレアスの揺るがぬ強さを示している。
その話を聞くと、彼は何度も頷いた。
「アイアンサイドはオレのズッ友」
「パッとしない仲間ってことか」
「ぶっ飛ばすぞ」
ちなみに。アイアンサイド卿はガウェインと同じく、日が出ている内は筋力が上がるという加護の持ち主だった。
ペレアスはアーサー王物語では、ガウェインの珍道中に遭遇する騎士のひとりである。だが、幸せな最期を迎えた数少ない人間として、異質な存在と言えるだろう。
そんな風にロマンは締めくくり、何の気無しに訊いた。
「この世に未練とか無さそうだけど、なにかやりたいことはあるのかい?」
ペレアスは少し考えて、指を二本立てる。
「二つ、今思いついた。まずは人理修復だな。世界を救う戦いに参加できるなんてのは、これ以上ない名誉だ」
名誉を最上とする騎士には、世界を救うことより箔が付く戦いはないだろう。
騎士として生き、死んだ人間にとって、それほど重要なことはなかった。
ペレアスは続けて言う。
「二つ目は生前からの夢だ。──竜を殺してみたい」
「……ああ、なるほど。竜殺しは英雄の誉れだからねえ」
竜殺しで名を馳せた英雄は非常に多い。
竜という分かりやすい悪役を、これまた分かりやすい主役の戦士が打ち倒す。このような話の類型は、誰もが目にしたことがあるに違いない。
故に、パッとしない戦績のペレアスにとって、竜殺しとは夢なのである。
「えーと、ペレアスの戦いはこれからだ! みたいな感じでオチつけますか?」
「立香ちゃん!?」
「これがもうオチだろ」
そんなこんなで勉強会は失敗で幕を閉じた。
(皆さんこんにちは、ムニエルです)
ムニエルはレイシフトを行うためのコフィンを担当する技術スタッフである。技術担当官とはいえ、魔術の知識もそれなりにあり、コフィン担当ということからカルデアに欠かせない人材だ。
現在、マスターを除くスタッフたちは第一特異点の調査を進めていた。マスターやサーヴァントとは違い、この業務が彼らの戦いなのである。
当然、人手は全く足りていない。数百人単位で動くはずの組織を、その十分の一以下で賄っている弊害だ。
ムニエルは数少ない休憩時間を、自室で過ごすことに決めた。
突然のカミングアウトになるが、ムニエルはオタクである。しかも、かなり特殊な類の。人前ではできないゲームをするため、彼は自室に引き籠ろうとしているのだった。
だが、得てして現実は残酷である。
「さーてノアくん、どうやってカルデアを恐怖のズンドコに落とそうか」
「キリエライトとペレアスが厄介だな。あいつらに勝つ自信はあるか?」
「無いねえ。まあ私? 万能の天才だから? かなり頑張れるとは思うけど?」
「ならいけるな。俺カルデア最強マスターだし、はっきり言って向かうところ敵なしだろ。俺たちは無敵だ!」
「た、確かに……!! 天才かな!? あ、私も天才だった!!」
「「HAHAHA! ナイスジョーク!」」
一言で言うと、
(終わったァ! 俺の休憩時間が死んだ! この人でなし!!)
パソコンの前でひとり項垂れるムニエル。いよいよ目当てのゲームを起動しようとしたその時、ノアとダ・ヴィンチが部屋に入り込んできたのだ。
聞いただけでIQが下がるような会話を繰り返す二人。どうやら、彼らはイタズラの計画を練っているようだった。
ムニエルは嘆いた。カルデアの未来は暗黒次元である。
ノアとダ・ヴィンチはさも自室であるかのように冷蔵庫を漁っていた。ノアは魚肉ソーセージを、ダ・ヴィンチはアイスを取り出す。
「まあ冗談はここまでにするか。ああ、ムニエル、何かやりたいことがあるならやっていいぞ」
(そう言いながら食ってるの俺の魚肉ソーセージなんですけど!!)
「そうそう。私らは私らで勝手にやっておくからさ。お構い無く〜」
「いやお前らは構えよ!!? それ人のソーセージとアイスだからぁ!!」
ムニエルの怒りが頂点に達する。残念でもないし当然である。
しかし、彼らにその怒りが届くはずもなかった。
「そうだ、まずはこの集まりの名前を決めないかい? いざという時に名乗れたらカッコいいじゃないか」
「百理あるな。『カルデア最強天才コンビ』とかどうだ?」
「う〜ん、いい響きだ。でもそれだとムニエルくんが入ってないね」
「なぜ俺も!?」
「よしムニエル、おまえが名前決めろ」
「うわああああああ!!!」
ムニエルは絶叫する。これは自分が決めないといけない流れである。この人でなしたちを前に、断るという選択肢は彼にはない。
何かないか──部屋中を見渡し、あるポスターが目に入る。
「か、カルデアなかよし部!!」
「「3点」」
「何点満点中の3点!? せめて10点であってくれ!」
無茶振りに答えたにもかかわらず、辛辣な評価を受けるムニエル。オタクは自分のネーミングセンスを否定されるとひどく傷つくのだ。
ノアとダ・ヴィンチはわざとらしくため息をつくと、仕方がないといった素振りで、
「ムニエルくん、カルデアを愉快な地獄に落とすユニークなアイデアはあるかな?」
「おまえが欲しいものでも言ってみろよ。どうせ媚薬とかだろうけどな」
「媚薬かぁ〜、ムニエルくんもなかなか隅に置けないね。正直気持ち悪いかな!」
「妄想で人を評価するのやめてくれます!? いや、確かにちょっと欲しいけど!!」
そこで、ムニエルは一旦落ち着くことにした。この馬鹿たちに合わせていては、いつまでもやられっぱなしになる。まずは冷静になる必要があった。
媚薬は確かに欲しい。喉から手が出るほど欲しいが、まだ命は惜しい。ここは誰もが抵抗なく、かつカルデアを混沌に陥れるアイデアが求められる。
それに少し自分の嗜好を混ぜ込むとするなら。ムニエルは答えた。
「性転換できる薬とか? 変態に高く売れそう」
自分もその変態のひとりということに気付いていなかった。
「なるほど。昼飯にでも混ぜれば全員が苦しむことになるな」
「良いじゃないか。さっそく作ろう!」
「言っといて何だが、そんな簡単に作っていいものではない……」
常人からすれば何を馬鹿な、と笑うような話だ。魔術師からしても理論の構築に手間取り、ひとつの研究として仕上げられるテーマである。
しかし、彼らはどこからか器具を取り出してきて、薬の調合を始める。その仕事ぶりは恐ろしいほど手際が良い。完全に才能の無駄であった。
ムニエルは率直に思う。
(才能だけは本物なのがムカつく)
単純な話、神は二物を与えなかった。今だけはその懐の狭さに恨みを覚えるムニエルだった。
何やらおどろおどろしい煙が立ち込め、蒸留した僅かな霊薬を結晶製の小瓶に閉じ込める。
ムニエルはそれを受け取った。ごくりと喉を鳴らす。この手のひらの上には、あらゆる男たちの夢があるのだ。
覚悟を決め、彼は小瓶をあおった。食道が熱を持ち、皮膚の下の筋肉がもぞもぞと動くような感覚に襲われる。
ばさり、と髪の毛が肩にかかる。視点が少し低くなり、どことなく腕の筋肉がすらりとしていた。
(ま、まさか俺も念願の美少女に…!?)
姿見の前に立つ。そこに写る姿を見て、彼は言った。
「………………ナニコレ」
鏡に写っていたのは、ムニエルだった。目に見える違いと言えば髪が伸びたくらいであり、ToLOVEる的な変化はなかった。
「ふざけんなああああああああ!! 髪伸びただけじゃん! え? 俺女の子になってもこんなんなの? 吸引力の変わらないただひとつのムニエルが鏡に写ってるよぉ!!」
「性転換なんだから当たり前だろ。股触ってみろ、ちゃんと
「そりゃそうだけどさあ! 違うんだよ、女体化っていうのはただ性別が変わるんじゃなくて、見た目も変わらないと意味がないんだって!! この女体化には救いがないんだよ!! 全国のおっさんの夢を返せよ!!」
「そう言えば良かったのに」
「そこは察してくれよ! ちくしょう、こんなことなら男の娘になる薬でも頼んでおくんだった!!」
ムニエルの悲痛な叫びがカルデアじゅうに響き渡る。
……そんな一部始終を見ていた男がいた。管制室のモニターで、ノアとダ・ヴィンチの動向を監視していたロマンである。
目下、カルデアの要注意人物はあの二人である。彼らが悪い方向に噛み合えば、人理焼却以前にこの施設は崩壊しかねない。それ故の監視だった。
ロマンは同情の涙を流しながら、
「す、すまないムニエルくん……!! ボクにキミは救えなかった!」
ロマンからのささやかな贈り物として、ムニエルには休暇が与えられた。
無論、その分は他の誰かがどうにかしなくてはならない。その晩、管制室にはスタッフたちが死屍累々と倒れていたという。
クラス:セイバー
真名:ペレアス
属性:中立・善
ステータス:筋力 B 耐久 A 敏捷 B 魔力 D 幸運 A+ 宝具 A
クラス別スキル
『対魔力:C』…詠唱が二節以下の魔術を無効化。
『騎乗:B』…大抵の乗り物は乗りこなせる。幻想種は不可能。
固有スキル
『精霊の加護:EX』…私の愛を数値化できるとでも? by湖の乙女
『心眼(真):B』…これのせいで仕留められなかった byメレアガンス
宝具
『死に逝く騎士に、湖光の愛を』
ランク:A 種別:対人宝具
ル・アムール・ド・ダーム・デュ・ラック。
訳すと湖の貴婦人の愛。幸福な人生を送り、安らかな最期で幕を閉じたペレアスの人生を『死の運命を回避する』という形で具現化した宝具。故に生前は宝具と呼べるものは持っていなかった。
なお、訳の通りこれは湖の乙女から向けられている愛なので、使う前に彼女にお伺いを立てると心なしか効果が上がる……気がする。妻の力は偉大である。逆に夫婦喧嘩をすると発動しないかもしれない。