自称カルデア最強マスターとぐだ子の人理修復録   作:なまゆっけ

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第62話 苦き運命の矢が射止めるもの

「おぉーい!! 聞いとるかツヌグイ! お主なぁ、神世七代とは言うがその後の神話には全く出てこないし正直影が薄いぞぉーー!! え、つーか誰がお前みたいなやつ知ってんの!? 祀られてる神社少なすぎじゃね!!?」

 

 自分の親よりも年上の神に対して、果てしなく無礼な訴えが天を突いた。その音量たるや、木々を揺らし大気を痺れさせるほど。いかにも嵐の権能を有するスサノオらしい宣戦布告だ。

 ツヌグイが駆ける。その目には他の一切が写っていなかった。染め上げたような青空を横切っていく神の姿を眺め、陰陽師は小さく息を吐く。

 ───スサノオとツヌグイをぶつけ合わせ、その間に天御柱(アメノミハシラ)を制圧する。単純な作戦に思えるが、小細工を用いない分、勝敗を決める要因も単純だ。

 黄泉軍が東征軍に勝るのはサーヴァントの数。天津神の分霊が憑いた東征軍のサーヴァントに単体の戦力は譲るが、そう絶望的な戦いではない。

 数を活かす、という前提が成り立つなら。

 

「スサノオとツヌグイが盤面から外れるというのなら好都合。存分に主戦場を嬲り倒せるというもの。今度こそ潰して差し上げましょう!!」

 

 ここに、あの男はいない。

 焦がれ、超えんとする仇敵がいないのならば、この特異点は己が愉悦の糧とするためだけの箱庭だ。

 東征軍の大義も、黄泉軍の信念も、全て全て知ったことではない。人類史奪還を旨とするカルデアもまた同様に。

 世界は燃え尽きた。

 人類の痕跡はことごとく滅された。

 いかなる神話の大英雄であろうと、魔術王が創る新世界には一片の影すらも残らないだろう。

 これはあの男も例外ではない。

 ───奴が消え、自分だけが残る。

 正真正銘、全人類が燃えたのならば、奴の記憶を持つのは蘆屋道満ただひとり。

 それは紛れもない勝利だ。何もかもが新しく創世された場所で、自分だけがあの男の存在を抱えていられるのだから、相手の全てを手中に収めたに等しい。

 故に滅ぼす。

 未だ醜く元の世界にしがみつくカルデアなぞ、蟻にも劣る害虫。

 この蘆屋道満が、人類史に引導を渡すのだ───!!

 

「独白が長げえんだよ!!」

「ン……───!?」

 

 背後から首筋を狙う白刃。道満は呪術を発動させる間もなく、山の斜面を転がり落ちるように攻撃を躱した。

 枯れ葉と土まみれになりながら、斜面の上を見上げる。黒装束を纏った剣士。狂犬のように鋭く殺気に満ちた眼光が臓腑を串刺しにする。

 新選組鬼の副長、土方歳三。彼は距離を保ったまま、長銃の銃口を道満に突きつけた。

 

「ウチの大将はアホだが、俺は違う。てめぇみてえな俗物のやることなんざ分かりきってんだよ」

「フ、何人もの遊女を口説き落としていた貴方から俗物などという言葉が出てくるとは。同族故の直感ですかな?」

「おう、それは間違ってねえ。近藤さんが囲ってた愛人の人数知ってるか? お前が呪った人数よりは少ねえだろうがな」

「これはこれは、五十歩百歩……!!」

 

 道満は周囲に呪符を張り巡らせ、防御術式を組み上げる。時間にして一秒の半分も費やさぬ早業はしかし、それより速く剣の雨が呪符を射抜いた。

 その剣は異様な形をしていた。短く赤い柄に、杭のような刀身。刃はなく、見るからに投擲用の武装であることは明らかだ。

 それは道満と土方の知識にはない武器だった。

 聖堂教会の代行者が用いる洗礼兵装、黒鍵。道満が術式を組むより前に剣を放った張本人は、樹木の上から陰陽師を見下ろす。

 

「貴方のような妖物は早々に仕留めるに限ります。恨みはありませんが、ここで消えなさい」

 

 赤の外套を羽織った、聖意の執行者。天草四郎時貞は両手の指の間に黒鍵を携えていた。ずらりと並んだ白刃はまるで肉食獣の爪のようであり、しかしながら清廉な魔力を湛えている。

 びゅん、と風切り音が鳴る。天草の黒鍵が陰陽師を囲うように地面に食い込む。

 

「『右腕・悪逆捕食(ライトハンド・イヴィルイーター)』」

 

 黒鍵の群れが秘蹟の光を開帳する。

 蒼く発光する剣はさながら十字架。救世主の死と復活、勝利を意味する十字剣は自らを起点に半透明に輝く結界を造成させた。

 道満は眉をひそめ、手指の先を結界に掠める。ばちり、光と衝撃が弾けた。その指先は焦げた煙を吹き上げ、黒く炭化している。

 

「本来は死徒に対して用いる魔術……おっと、奇跡ですが、黒鍵は霊体にも作用する代物です。貴方とて簡単に抜け出せるモノではありませんよ」

 

 仮に天草と道満が東洋呪術で争えば、軍配が上がるのは考えるまでもなく後者だ。だが、彼は聖堂教会の秘蹟を知らない。知らないということは術式の解析、対策に時を要するということ。

 そして、その隙を見逃すほど敵は甘くない。いかに不死身であろうと、二人が神殺しのヤドリギを持っていればそれで終わりだ。

 しかし、道満は嘲るように笑った。

 

「笑止! この程度の小技、我が咒の前には児戯にも劣ろうぞ!」

 

 右手で剣印を結ぶ。陰陽師の影が細く弛み、足元を頂点とした三角形を作り出す。後方に伸びた二つの頂点には、じわりと円形の影が染み出ていく。

 右手の甲に幾何学的な赤い紋様が浮かび上がる。三画で構成される令呪とはまったくの異質。それは六芒星をいくつも重ねたような異形の円を形作っていた。

 その時、天草と土方は首筋に氷柱を打ち込まれたかのような悪寒を覚える。

 前者は一種の未来視能力。後者は幾度もの死線を潜り抜けた戦士の勘。発端に違いはあれど、彼らはほぼ同時に動いた。

 

「反魂法、起動! 四柱推命───三合火局!!」

 

 巻き起こる衝撃。魔力の閃光が結界ごと辺りの木々を吹き飛ばし、地面を揺らす。

 光が収まり、正常な視界が戻ってくる。

 彼らは見た。道満の背後の頂点それぞれに、大刀を担いだ漆黒の武者とまつろわぬ金星神。天津甕星は腕を軽く振るうだけで、山を倒壊させてみせた。

 岩石と土塊の雨が宙に浮かぶ。天草と土方は身を叩く豪風を利用し、空中の岩塊に着地した。つう、と唇の端から血滴が垂れる。星神の拳風はその衝撃波のみで二人の内臓を打ち据えたのだ。

 天草は血を拭いもせずに言う。

 

「悪霊と邪神の同時使役───三合火局にそれぞれを対応させることで魔力を循環、能力の強化も兼ねている訳ですか。流石、安倍晴明の対を張った術者なだけはありますね」

「感心してる場合か!? このままじゃ殺られんぞ!」

「三合火局は一角が崩れれば、後は衰退していくのみ。私があの悪霊を仕留めます。時間稼ぎを頼んでも?」

「…………お前のことはまだ信用してねえ。伊東と同じ匂いがするからな」

 

 だが、と土方は翻して、

 

「戦場じゃあ戦わなきゃ死ぬ。お前がどこから来たか知らねえが、死にたくなかったら仕事を果たせ」

 

 足場にしていた土塊を蹴り、彼は道満のもとを目指す。天草はその背中を見据え、小さく独りごちた。

 

「……ええ。こんなところで三度目の死を迎えるのは遠慮したいものです」

 

 その手に立ち現れるは、左右合わせて六本の黒鍵。神の聖典を具現化した武装を手に、悪霊の武者悪路王と天草四郎は互いに互いを敵と認識する。

 土方とて蘆屋道満と天津甕星(アマツミカボシ)を前にしては、死は免れない。精々が三十秒───そのリミットを超えれば、彼らは間違いなく敗北するだろう。

 つまり、これより始まるのは一分の半分にも満たぬ殺し合い。空中に広がる無数の岩塊を飛び移り、赤い影と黒い影が数度の邂逅を果たす。

 破砕する金属音が立て続けに鳴り響く。

 ぱらぱらと重力に従って、白い刃の破片が落ちる。一合重ねる度に天草の黒鍵は容易く粉砕されていた。その都度彼は新しい黒鍵を取り出し、得物を用意する。

 

「───私が殺す。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。我が手を逃れうる者はひとりもいない。我が目の届かぬ者はひとりもいない」

 

 四柱推命において、三合火局とは十二支の内、午・寅・戌の三つの方位の組み合わせを言う。その意味は火気の隆盛、運気の向上。季節においては夏を指す。

 道満はこれに自身らを対応させ、魔力を循環させることで悪路王と天津甕星の同時使役を成し遂げた。一度三合火局を形成してしまえば、手駒を維持する魔力は永遠に陣を流れ続ける。術者への負担は無いに等しい。

 さらに、概念的なエネルギーの興隆を上乗せされた三者の実力は平時のそれではない。一際大きな打ち合いを経て、天草の肩に切創が走る。

 

「打ち砕かれよ。敗れた者、老いた者を私が招く。私に委ね、私に学び、私に従え」

 

 悪路王。古くは鎌倉時代、東国に住まい、朝廷の統治を拒んだ蝦夷たちの王。征夷大将軍坂上田村麻呂によってその命を奪われ、しかし、彼の怨念が消え去ることはなかった。

 傷を起点として、天草の体がぐらりと揺れる。鉄塊を括り付けられたかのような不可視不可触の重量が全身にのしかかる。

 それこそは、悪路王の果てなき怨念。

 化外の者として朝廷に討たれただけではなく。

 後の時代、鬼にまで貶められたという非業そのものを相手に押し付けているのだ。

 

「休息を。唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる」

 

 天草の両腕が発光する。生前、数々の奇跡を起こした彼の宝具が、加重に押し潰されぬよう肉体を補強する。

 だが、悪路王と天草の戦いは既に大勢が決していた。

 打ち合う度に重くなる体。単純な技量においても劣っている以上、彼の勝ち目は潰えている。

 遥か上空の戦いは頂点へと。

 赤と黒の軌跡が絡み合いながら岩石群の上面に飛び出す。

 墜ちる赤い影。黒き武者はただ、大太刀の切っ先を敵へと差し向けた。

 

「装うなかれ。許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を、生あるものには暗い死を」

 

 ズン、と天草の脇腹を錆びた刃が刺し通す。

 体内に浸透する呪い。数秒前とは比べものにならぬほどの加重が聖人を襲う。

 それを物ともせずに、彼は微笑んだ。

 怒りも憎しみもなく、ただただ超然とした慈愛だけで顔貌を染め上げて。

 天草の右手が悪路王の顔面を掴む。

 

「休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ、印を記そう。永遠の命は、死の中でこそ与えられる」

 

 急転直下、地上への墜落。

 空を裂き、岩石を砕き、地面へ真っ逆さまに赤の軌道を描く。増加し続ける重量を糧に、悪霊と聖人は一条の流星と化した。

 

「許しはここに。受肉した私が誓う」

 

 上空からの直滑降は四秒と経たずに終わりを迎えた。

 大地と天草に挟み込まれた悪路王の五体が四散する。唯一原形を留めていたのは頭部。未だなお、尽きぬ憎悪を表現する目と口とを残す顔面だけだ。

 そこへ、天草は黒鍵を突き立てる。

 

「────この魂に憐れみを(キリエ・エレイソン)

 

 聖堂教会の洗礼詠唱。

 主の威光のもとに迷える魂をあるべき場所へ還す浄化儀式。

 それは魂を術者の手中に囚える反魂術とは対極に位置する。魂を拘束する法と魂を解き放つ祈りがぶつかり合ったなら、結末は決している。

 二十五秒。それが、決着までに費やされた時間であった。

 飛び散った肉体が瘴気を放ち、断末魔もなく消滅する。天草は荒々しい息を吐き、腰に差した刀を引き抜く。

 その目が捉えるのは蘆屋道満。相手もまた、己が手駒のひとつを消し去った男を瞳に収めた。

 

「三合火局は崩れた。代償なき魔術は存在しない。ツケを払う時です、蘆屋道満」

「否! これしきで我が咒を破ったなどとは思わぬことです! 一角が欠けたのであれば、補填するだけのこと───ハッ! 急急如律令!!」

 

 三角形が形を変える。欠けた一角が移動し、場所を定めたのは土方の足元。道満と天津甕星の対処に疲弊していた彼に気力と活力が戻り、莫大な魔力が流れ込む。

 土方は戦場にも関わらず、気の抜けたような表情になった。

 

「…………いや、敵を強くしてどうすんだよ。アホが極まったか?」

「貴方ひとりを強くしたところで屁の突っ張りにもなりませぬ! ただし、再度この陣が破られた際は貴方も道連れに不幸を被ることでしょう!!」

 

 道満はニタニタと毒々しい笑みを見せつけて、

 

「これからは拙僧と一蓮托生ですぞ、土方殿……?」

「ふざけんな気色悪ィィィ!! おい天草、これをどうにかしろ!!」

「すみません、無理です。気色悪いことは間違いありませんが」

 

 土方と天草は顔色を青くする。

 苦し紛れにしか見えない一手だが、これは悪辣だ。三合を構成する一角として土方を取り込み、陣の崩壊を防ぐ。敵ひとりが陣の恩恵を受けたとしても、差し引きで言えば釣りは十分だ。

 最悪、土方が自死という手段を取ったとしても、道満は不死。如何なる反動が襲ってきたとしても問題はない。

 

「貴方方は三合の陣のことを考えるよりも、どう生き残るかに集中すべきでしょう。なぜなら、我が方にはまつろわぬ邪神────天津甕星が存在するのですから!!」

 

 その時だった。

 三者は同時に東の方向に振り向く。

 何かが来る。その姿を目視しなかったにも関わらず、彼らはその思考を共有していた。

 しかして、サーヴァントの視覚はそれを捕捉する。

 数は一騎。馬を駆る武者。右手で手綱を掴み、左手に弓を携える。威風堂々としたその一騎駆けに淀みはなく、ひたすらに清冽な気勢だけを纏い持っていた。

 が、遠間の彼らにも感じ取れるほどの気勢となると、それはもはや殺気だ。

 動いたのは悪神と謳われた天上の星神。

 金星そのものを体現する天津甕星は、一挙一動が天変地異。腕を振るえば嵐が起こり、歩を進めれば大地が割れる。ならば、その突進は隕石の墜落にも引けを取らぬ大異変にもなろう。

 故に、ソレを止められる者は誰もいなかった。術者である道満でさえも、勝利の確信を持ってかの悪神を見送るに留める。

 迫り来る破滅の光星。相対する武者は天を埋め尽くすが如き金色の光に臨み、口角を吊り上げた。

 

「まつろわぬ邪神、天津甕星! 奴を斃すのはやはり、我らでなくてはなりますまい!!」

 

 誰かへ語りかけるような言葉。

 神の威光を前に狂したのではない。どこまでも愉しげに、勝利を確信した笑みをもって、彼は言い切った。

 天津甕星。記紀神話において、唯一悪神と評された神。天津神でありながら、高天原に反旗を翻したまつろわぬ星。タケミカヅチとフツヌシという神話有数の武神を相手取り、返り討ちにしたこの神の武力は計り知れなく強力だ。

 人の身で星の神に挑む無謀。

 なれど、彼はそれをやる。

 矢筒から一本の矢を取り、番えて、引き絞る。

 ───星を落とすものは数あれど、星を砕く神技は。

 

「南無八幡大菩薩! この矢当たれることを願い奉る!」

 

 星の墜落が大気を撹拌し、空間を軋ませる。

 天津甕星に言葉はない。遥かソラに輝く星の神に、ヒトの言語など必要ない。だから代わりにその眼光で感情を表す。

 瞳にありしは静かな水面の如き戦意。

 武者の顔を透かして、奥にあるモノへと意識を向けていた。

 彼はそれを見逃さなかった。

 

「『八幡祈願・大妖射貫』」

 

 番えた矢に尋常ならざる神力を込め、手放す。

 果たして、その矢が星を砕くことはなく。

 ───だが、星を射止めることは。

 天津甕星の眉間に矢が突き刺さる。

 神の五体が不出来な振り子のように崩れ落ちる。額を射抜かれ、力を失ってもなおその突進は止まらない。否、本体の統制が奪われた以上、暴走となるのは当然の帰結だった。

 まつろわぬ星神は地面を削りながら突き進む。そのすれ違いざま、武者は袖の内より白き織物を抜き出す。

 それは空に棚引く雲のような。

 はたまた、夜空に輝く天の川のような。

 

「『降神(こうじん)建葉槌(たけはづち)』!!」

 

 それこそが、彼に与えられし分霊。

 雷の武神と剣の武神。高天原有数の戦神も以ってしても落とせぬ星神を下した、ただ一柱の神だった。

 天津甕星の肉体が、神威が、平面となって布に織り込まれる。

 これはかつてありし戦いの再現だ。神霊や英霊が伝承の影響を受けるのなら、たとえ如何なる強化を果たしていたとしても、自らに設定された弱点は打ち破れない。

 此処に、まつろわぬ神は封印された。

 タケハヅチの力を宿していたとはいえ、事も無げに天津甕星を封じてみせた。そんな彼に、道満らは驚愕の面持ちで眼差しを向ける。

 そこで、道満と土方は男の真名を思い出す。カルデアがこの世界にやってくる前。京を襲撃した東征軍の中に、彼はいた。

 

「俵藤太……!!」

 

 土方は敵意と、ある種の畏敬を込めて言い切る。

 龍を喰らう百足を、不死身の魔人を討ち果たしてみせた英雄は笑顔で応える。

 

「生憎、今は武将として藤原秀郷と名乗っていてな。ここで会ったのも何かの縁。腕比べと参ろうか」

 

 三者は思わず後退る。すいーっ、と天津甕星を失った三角形の頂点が、天草の足元に移動する。道満は死んだ目で無言を保っていた。天草は引き攣った笑みで、道満に言う。

 

「……さて。一蓮托生、ですね?」

「ンンンンンン!! こんな! こんなはずではァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視点を変えて、天御柱付近。

 ツヌグイの対処に行ったノアたちと、道満の抑えに回った土方天草コンビを除いた全員が、天御柱破壊のために殺到していた。

 空と地を席巻する雷轟。雷電で構成された津波が、直線上の全てを焼き焦がして進む。

 柱に近付く遍く敵を討ち滅ぼす固定砲台。猛き雷の武神───その力を注ぎ込まれた器である彼女に正気はなく、機械的に敵を屠る手段を講じていた。

 それを見て、ダンテは戦いの前にスサノオが語っていたことを思い返す。

 

〝源頼光……アレは不憫な人間よ。自らの戦い方というものを奪われておる。儂とも少なからず関わりがあることじゃし、できればシラフに戻してやりたいのう〟

 

 大地を次々と焦土に変えていく様に視線を移し、ダンテは叫んだ。

 

「……いや、無理では!!?」

 

 最後方でガタガタと震えていた享年五十六歳英霊男性が大声をぶち上げたのを受けて、沖田ら一同は肩をびくりと痙攣させた。

 

「うわあ、いきなりどうしたんですかこの人!? 情緒不安定すぎません!?」

「ダンテェ! 汝は誇り高き鬼、大江山愚連隊の一員であろうが! たかがこれしきで喚くでないわ!!」

「ダンテのこれはいつもの発作だ! 放っとけ!」

「ペレアスさん、少しはフォローしようという気概を見せてください!」

「他人の助けを前提にしているのが駄目なのだと思いますが……」

 

 清姫の鋭い言葉がダンテの胸を刺す。

 そんな間にも雷撃による遠距離砲火は一層勢いを増していた。頼光の側に控える二人の剣士、渡辺綱と佐々木小次郎は剣を抜くことすらなく佇む。

 それも当然だ。Aランクの対軍宝具にも匹敵する一撃を連発できる頼光がいるのだから、彼らは彼女を守る盾となれば良い。

 このまま逃げ続けていても、こちらの体力が尽きる。そうでなくとも、源頼光は敵を一掃するまで手を緩めることはないだろう。

 ペレアスは赤の甲冑の兜を下ろし、背後の仲間たちに告げる。

 

「ライコーだっけか。オレがあいつの手を止める。後はお前らに任せた」

「単騎で? それは少し無茶じゃない?」

 

 武蔵の言に、騎士は首を振った。

 

「いいや、ひとりじゃねえ。リース!」

「はいっ! 夫婦の共同作業ですわ! ……フヒッ。敵には申し訳ありませんが、私たちのラブラブぶりを見せつけてしまうことになりますわね!」

「ちょっと、緊張感とかないんですか!? 新選組なら士道不覚悟で切腹ですよ!」

「それは今更ですねえ」

 

 騎士と精霊はその身を雷光の巣に投げ込む。

 過たず、目も眩む閃電が瞬く。魔女の鎧を纏ったサーヴァントとて刹那で焼き尽くす暴威はしかし、

 

「『死に逝く騎士に、湖光の愛を(ル・アムール・ド・ダーム・デュ・ラック)』」

 

 騎士にかすり傷すら付けることはなかった。

 剣を担ぎ、焦げた大地を疾走する赤い砲弾。土を蹴る度に放たれる電撃は全て、彼を通り抜けてその後方だけを焼く。

 迎撃は一切が無為。ペレアスの宝具が死を回避する概念であるならば、相手の攻撃が強ければ強いほどにその真価を発揮する。

 因果逆転、運命の否定。神の雷光といえど、それが純粋な暴力である以上、騎士を屠るなど夢のまた夢だ。

 極光の雷火が世界を無色に染め上げる。その向こう側から、赤き騎士は現れる。一足一刀の間合いに踏み込む直前、頼光の盾である二人の剣士はその腕を振るっていた。

 疾風の如き斬撃が閃く。刃が騎士に食い込んだ瞬間、ばしゃり、と騎士の像が水となって解きほぐれる。

 水の幻影。妖精の悪戯じみた技に化かされたと気付いた時には、もう遅かった。

 

「よし───届いた!」

 

 水の魔術によって光を屈折させることで、簡易的な透明化をしたペレアスは、頼光の背から剣を薙ぐ。

 が、彼女は図ったかのようにそれを躱し、返しの一刀を叩きつける。

 灼熱の稲妻を宿す刀身は触れるだけで相手の神経を硬直させ、筋肉を炙る。直接的な死に直結しないそれはペレアスにも有効であったが、騎士は変わらぬ動きで剣を弾き返した。

 その理由は彼の両手を篭手の上から覆う水。純水は電気を非常に通しにくい。精霊が生み出した混じりなき水が、騎士を護ったのだ。

 佐々木の唇が密やかに弧を描く。

 

「成程、比翼連理とはまさにこのこと。独りで技を磨くでなく、他者を求めたが故の強さか」

 

 自らの真名でさえ偽りを装うしかできぬ彼は、試すように剣風を放つ。だが、刃を振り抜く寸前、地を走る火炎が剣士の機先を制した。

 敵陣を分かつ炎のカーテン。それは清姫によるものだった。とはいえ、東征軍の三者がそれを切り裂くことは造作もないだろう。

 ただし、その一刀に費やさねばならぬ時間と隙は、両軍をそれぞれの敵へと引き合わせた。

 三重の斬撃が佐々木を襲う。我が身を狙う三つの殺意に対し、彼は返す刀を振るうでもなく、ただ一歩下がる。

 それで十分。白き刃の切っ先が眼前を通り抜ける。さらに数歩間合いを取り、彼の瞳に映るのはだんだら羽織、そして二刀流の剣士だった。

 安易に間合いに入るのは危険だ。沖田は剣の刃長を見測りつつ、

 

「この人が佐々木小次郎その人らしいです。三尺余りの剣を使っていたというのは、どうやらフカシじゃないみたいですね」

「というか……若くない? 私が知ってる佐々木小次郎はもっとおじいちゃんだったんだけど。どうせならもっと若くなってくれても良かったのに!!」

「ふ、随分と良い趣味だ。年端もいかぬ稚児に逸楽を見出すとは。私は花鳥風月を愛でるが、そこまで倒錯してはおらぬよ」

「倒錯上等! 趣味は迷走してこその趣味ってもんです!」

 

 沖田はぎっと頬を引きつらせた。

 

「もしかして御用改め案件? お縄頂戴いたします?」

「人の性癖に貴賤はなし! 宮本武蔵、参ります!!」

「くっ、ここからシリアスに持っていかなきゃならないなんて……!!」

 

 そう言って、二人は左右から挟み撃ちをかける。

 心は揃っていないが、足並みは揃っていた。二方向からの挟撃に逃げ場はない。加えて、佐々木の長刀は強度に欠ける。武器を用いて凌ぐのならそれを壊し、距離を取って躱そうとも沖田の縮地には通用しない。

 彼の一手は単純明快。長刀故の間合いの長さを活かし、敵が到達する前に斬撃を放つ。

 半月を描く長刀。一手で首を刈り取る刃をもって、挟撃の足を止める。

 そこからは斬撃入り乱れる剣戟戦だった。三者共に思考を洗練し、眼前の敵を斬ることのみを追求する人切り包丁と化す。

 いくつもの剣閃が綺羅星の如く瞬く。頼光が撃ち出す雷撃に比べればその規模は遥かに小さい。けれど、稲妻が渦巻く嵐は見る者を立ち寄らせないが、彼らの戦いは見る者に立ち寄ってはいけないと確信させるものだった。

 なぜなら、綾のように織り成される斬撃の数々は周囲の理解を置き去りにする。相対する者にしか分からず、武術の高みに立つ者でしか目で追えない。

 天より降る雷が人々に畏怖を与えるのだとしたら、綾なす斬撃は畏敬をもたらす。

 そして、そのほとんどが佐々木の剣によるものだった。

 武蔵と沖田は仕掛けたとしても、即座に飛び退き剣を振り切ることがない。

 佐々木の剣は常に首を狙う。相手の警戒を嘲笑い、執拗なまでに。そこにあり、そうするのが当然であるように。

 だから、二人は攻め切れなかった。たとえ相討ち覚悟で踏み込んだとしても、先に落ちるのは自分の首だ。先に死ぬのが自分であるなら、それは相討ち以下。捨て身は敵の死を見届けてこその捨て身だ。

 

「ならば───!!」

 

 二刀の剣士の瞳に光が灯る。

 宮本武蔵の魔眼、『天眼』。本来無数に枝分かれする未来を、対象を斬るという結末に収束させる天佑の瞳。その眼が引き寄せた未来は、胴を真っ二つに割られる敵の姿────では、なかった。

 刃風が首筋を撫でる。どろりと肩を伝う赤い液体。長刀の先から血の雫が地面に点々と滴り落ちる。

 

「……勝負を焦ったか」

 

 佐々木は短く述べた。

 ぎり、と二刀の柄が軋む。

 ───相手の言葉に不足はない。確かにあの瞬間、自分は勝機を掴むため無心を捨てていた。かつて斬った、吉岡道場の門弟たちのように。

 数的有利をして、勝負を焦らせるほどの相手。佐々木小次郎……過去相見えた剣士と同じ名なれど、その剣技は一線を画している。

 宮本武蔵がただひとつ追い求める境地、空位。強弱の話ではない。眼前の男は既にその位地に達している。自分はそれを見抜けていなかった。

 彼女は肺の中の空気を底まで絞り尽くして、晴れやかに笑む。

 

「よし、反省終わり! 私が斬るべきもの───それは貴方よ!」

 

 だというのなら、彼は乗り越えるべき壁にして、自らを高みへと運ぶ糧。さながら獲物の死骸を運ぶ鳥のように、その役割を佐々木小次郎へと見い出したのだった。

 ───一方、その頃。

 頼光四天王、渡辺綱は生前の仇敵と刃を交わしていた。

 

「オルァァァ!! 死に晒せ綱ァァァ!!」

 

 業火を纏った骨刀が踊る。

 触れれば骨まで炭にする火炎の乱舞。鬼種の暴虐を体現するかのような茨木童子とは裏腹に、渡辺綱は清廉そのもの。返す刀は凪いだ湖面の如き静けさすら思わせた。

 ダンテは右手に紙束を握り締めて、剣風入り乱れる立ち合いの最中へと走っていく。

 

「わ、私の宝具は必中必殺! フン族の大王やヘラクレスさんですら昇天させました! しかとその身に受けなさい!!」

 

 ごう、と剣が衝突し、突風が吹きつける。ダンテの筋力で踏ん張れるはずもなく、辺りに紙をぶちまけて地面を転がった。

 

「うがああああああ!!」

「筋力Eにしても貧弱すぎません!?」

 

 清姫は目を剥いて叫んだ。茨木童子の援護として炎弾を撃ち込んでいた彼女は、さっと右足を出してダンテの体を止める。

 サッカーボールの気分を味わったダンテは肩で息しながら立ち上がった。

 

「ふふふ、これで分かりましたね。私の仕事はもう終わりました……!!」

「普通に転んだだけに見えましたが!?」

「清姫さん、結果は所詮物事の帰結にすぎません。戦う意志を示したという過程と事実が重要なのです」

「言い訳にしてもキレがありませんわ!」

 

 綱はその会話を感覚の端で捉えていた。茨木童子の一刀を真っ向から弾き返し、彼は述べる。

 

「……賑やかな仲間を持ったな」

「ふん! 神の器となり、配下を失い狂った頼光とは違うということだ! 受けた借りは返す───汝にそのような激情はあるか、綱!!」

「戦いに感情は不要。迷いは剣を鈍らせ、思考を融かす」

 

 ───この身はただ、ひと振りの剣でさえあれば良い。

 鬼殺しは、そう語った。

 茨木童子は牙を見せつけるように笑う。

 

「そんなものは人でも鬼でもない、物言わぬ絡繰と同じではないか!!」

 

 炎剣一閃。綱の頬を掠めた切っ先。流れ出すはずの血は一瞬にして蒸発し、火傷の跡が刻まれた。

 それを意にも返さず、彼は反撃を繰り出した。咄嗟の迎撃も甲斐無く、鬼が振るいし剣は大きく跳ね飛ばされる。

 鬼殺しに宿りし天津神は天手力男神。天岩戸に籠った太陽の女神を、引きずり出した剛力の神。それは鬼の怪力を優に超える力を人間に与えた。

 体を回し、空いた胴に剣を滑り込ませる。綱の技量、神の力、その二つが合わさった一撃は鬼の知覚すらも越えて、骨肉を断つ。

 ただし、相手が独りであったなら。

 

「わたくしはダンテさんとは違いますので!」

 

 迸る烈火が綱へ向かう。ついでに投げつけた扇が茨木童子を間合いの外へ突き飛ばした。

 身を焼く火炎。それを視認し、鬼殺しは迷うことなく足を踏み出す。

 必然、その五体は炎熱に焦がされる。五体を焼かれる痛みは容易く意識を飛ばすはずが、彼は涼しい顔でそれを耐え抜いてみせた。

 敵は目と鼻の先。剣の刃にて鬼を断つことはできない。渡辺綱は柄頭を用いて、茨木童子の鳩尾を打ち据える。

 

「ぐ、ぶっ……!!」

 

 血の塊が喉をこじ開ける。思わず後退する茨木童子を、鬼殺しは間断なく追い詰めた。

 ───そう、この身は絡繰。ヒトのカタチをした機械だ。

 かの時代、無数の魔と呪詛が飛び交う平安の世。人面獣心、生き馬の目を抜く怪物が人魔問わず跋扈する京の都では、武士とはそういうものだった。そうでさえあればよかった。

 余計なモノはいらない。

 奴らはそこにつけ込んでくるから。

 欲も快楽も切り捨て、鍛え上げられた一本の刀。

 護国の刀剣。その在り方はある意味、哄笑とともに暴虐を成し遂げる鬼たちよりも、遥かに怪物的だった。

 怜悧な鋼の視線と燃え滾る熱の視線が交差する刹那、はらりと紙がなびき立つ。

 

「ダンテ、やれぃ!!」

 

 地面より浮き上がる光の文字。そこは先程、ダンテが紙を撒いた場所だった。

 誘き出された。それに気付くと同時、

 

「『至高天に輝け、永遠の淑女(ディヴァーナ・コンメディア)』!!」

 

 固有結界の遠隔展開という絶技が、ここに成された。

 ───白き花弁が世界を覆う。

 現実を塗り潰す幻想。イタリアという局所ながらもバベルの塔より続く言語の壁を破壊した詩人の言葉の前には、この世界はあまりにも脆かった。

 花弁が弾ける。

 光輝が辺りに満ちる。

 無数の魂で構成された白薔薇の大輪が、無上の天にて爛漫と咲き誇る。

 無尽無辺にして全ての初発たる神の愛が覆う至高天にて、鬼と剣が抱いた想いは奇しくも同じだった。

 

「「人は、こんなものを紡げるのか」」

 

 異教の神なれど、此処に至った詩人の想いは伝わる。

 それは一時、両者の頭から戦いというものを忘れさせた。

 そして、永遠の淑女は降臨する。

 鬼殺しの刀剣の魂を抱き、彼方の空へと。

 糸が切れた操り人形のように全身から力が抜ける。ダンテと清姫が勝利を確信したその瞬間、綱の足が天国の地を強く踏み締めた。

 本来なら消滅するはずの体も、その気配はなく。むしろ全身に戦意を漲らせ、彼の威容を増している。

 茨木童子はダンテを睨みつけて、

 

「おいダンテェ! 必殺と言ったのは嘘か!? ガッツリ生きておるではないか!!」

「まさかそこもフカシだったとは……」

「ち、違います! 確かにベアトリーチェは魂を連れていきました! 彼が生きているのはつまり……分霊! 神の魂が身代わりになったのだと考えられます!」

 

 永遠の淑女ベアトリーチェが天へ上げる魂はひとつ。天手力男神は自らの魂が消える代わりに、渡辺綱を生かしたのだ。

 

「これで、俺たちは真に対等だ。戦いを再開しよう」

「……望むところだ!!」

 

 天上の薔薇咲き誇る世界にて、剣戟の応酬が起きる。

 分霊の力は失われた。もはや渡辺綱に残されているのは、己が鍛え上げた剣技のみ。それも、先に負った傷が影響して本来の技の冴えは期待できないだろう。

 相手が、茨木童子でなければ。

 ───この技は、たったひとり、目の前の鬼を斬るためのモノだ。

 その昔、刀剣たる自分が初めて焦がれた女性がいた。

 命を奪うこの手では触れられぬ、触れてはならぬと思わせるほどの御方。結ばれずとも良い。報われずとも良い。ただ、あの人が生きて、幸せであれば他に望むことはない。

 それだけが、冷たき鋼のような心に熱を与えてくれたから。

 やがて彼女は子を産んだ。その子が育つ度に彼女の表情は色を失い、天女のような相貌は儚さを増していった。

 しかして、彼女は死んだ。

 鬼と化した我が子に、体を引き裂かれて。

 錯乱する思考はじきに一本の妄執へと収斂した。

 ───あの鬼は、俺が斬る。

 その時から、男が握る剣は鬼を斬るためのモノになった。

 彼女の子を斬ることに負い目はある。

 だが殺す。

 アレは何もしなかった自分の罪だ。

 だから殺す。

 それで、何が救われる訳でもないのに。

 それでも殺す。

 斬る。斬る。斬る。それだけを考えて剣を振るう。体の傷など関係ない。全身を走る痛みなどとうに忘れた。

 今度こそ、その首を獲る────!!

 

「『大江山・菩提鬼殺』」

「『大江山大炎起』!!」

 

 宝具の同時解放。

 鬼を殺す絶死の一刀と、灼炎逆巻く十十連撃。

 手数では勝負にならない。しかし、刃のひと振りに懸ける速さ、鋭さは前者が圧倒している。

 脳裏をよぎる結末は相討ち。この一撃が鬼の首を跳ね飛ばした直後、十連撃が自身を灰に変えるであろう。

 互いに互いの命が欲しい。

 互いに互いを殺したい。

 なら、その結果はきっと、これ以上ないものだ。両者の望みがどちらとも果たされることになるのだから。

 

「───『転身火生三昧』」

 

 …………それが、少なくとも、今この場においては間違いであったことを彼は知った。

 刹那の攻防に大蛇の顎が割り込む。龍への変身を成し遂げた清姫は下顎を切り裂かれつつも、綱の左肩から心臓までを喰い破る。

 

「綱よ。汝が知る吾であったならば、相討ちも是としただろう」

 

 薄れゆく意識。求め続けた鬼の声が頭に響く。

 

「しかし、今の吾は黄泉軍(よもついくさ)の総大将だ。道半ばで死ぬわけにはいかぬ。それが、勝敗の差だ」

 

 綱は微かに頬を上げる。

 ───ああ、俺は見誤っていたのか。

 俺は鬼を相手にしていたのではない。

 敵軍の大将を相手にしていたのだ。

 最初から敵の姿を捉えられていなかった。

 それが、偽りなき敗因だ。

 

「……見事なり、茨木童子」

 

 確かな感情を込めて、そう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し時間を巻き戻して。

 地面に穿たれた大穴は暗い闇に埋め尽くされ、底を覆い隠している。

 スサノオがツヌグイを冥界に落とすために掘削した穴。荒ぶる神の名に恥じぬ、圧倒的な暴力。それを目の当たりにさせられたノアたちは、スサノオの拳風の余波で地面に転がされていた。

 マシュは平たい目で空を眺める。

 

「……もうあの人だけで良いのでは?」

 

 応える声はなかった。ノアは服についた土を払いながら立ち上がる。忌々しげに眉根を寄せ、ズレた帽子を目深に被り直した。

 

「あんなアホに任せてられるか。俺たちが汗水垂らして掘った銀を台無しにするやつだぞ」

「力の使い方が乱暴ですよね。さすが、荒ぶる神だけはあるっていうか。他の神様とは違う感じがします」

「アルテミスは普通にトライデントぶっぱしてきたけど?」

「あれは頭ギリシャだから……」

「お前らどんな体験してきたんじゃ?」

 

 本人の預かり知らぬところでスサノオと張り合わされるアルテミス。信長は思わず呆れた。実感を持ってこんな話ができるのはEチームくらいだろう。

 

「スサノオ任せにしないのは正解ですよ。アレは所詮戦う者、人間にとっては……いえ、神にとっても良い迷惑にしかなりませんから」

 

 上空より響く少年の声。もはやその声の主が誰であるかなど、考えるまでもなかった。信長は挑発するかのような口調で言う。

 

「アメノワカヒコ。一度儂らに負けた貴様が何の用じゃ? そのしぶとさは評価するがの」

「貴女は俺と戦ってないでしょう。そこの娘にしてやられたのは認めますが、人の手柄を横取りするとか恥ずかしくないんですか?」

「藤丸の手柄は俺の手柄だからな。こいつの武器も俺とダ・ヴィンチが造った以上、おまえは俺が倒したに等しい」

「なんですかその理屈!? 私の手柄はいつからリーダーの税率がかかったんですか!?」

「安心しろ、俺がかける税率は常に100%だ」

「手柄どころか会話を横取りするのやめてくれます?」

 

 アメノワカヒコは唾を吐き捨てるように言った。頭上を飛ぶ雉、鳴女を一瞥すると彼はだらりと下げた弓に矢を番え、不満げに鼻を鳴らす。

 

「じゃ、殺し合いますか。手加減はできないのでそのつもりで」

 

 どこまでも軽薄に、少年は矢を解き放った。

 語気とは裏腹に、鏃に込められた殺気は重厚。鋭い風の刃を纏う一射は、山をも容易く削り取る威力を秘めている。

 マシュはがばりと起き上がり、アメノワカヒコの一矢を盾で跳ね返す。

 

「チッ、良い盾ですね! 俺一応神なのに自信なくすんですが!?」

「神様だろうが何だろうが知ったことではありません。純真無垢の化身にして清らかな心を持つわたしの盾は無敵ですから!」

「寝言は寝て言いなさいアホなすび!」

「サルと張るくらいの自信家じゃのぉ!」

 

 ジャンヌと信長はマシュを押し退けて、それぞれ黒炎と銃弾を撃ち出す。

 先に到達するのは黒き熱線。アメノワカヒコを取り巻く旋風がカタチを変える。自由自在に空を舞う天の弓手は悠々と黒炎を回避した。

 続けて銃弾の雨をすり抜ける───その思考は肉体に連動せず、アメノワカヒコは空中に縫い止められたみたいに停止する。

 

「……『elder_rune_Ⅹ』!!」

 

 科学と魔術の融合術式、コード化された原初のルーンがアメノワカヒコの動きを止め、神秘殺しの弾丸が風の防壁を抜けて肉体を穿つ。

 日ノ本の神仏、権力者を時に利用し時に蹂躙した織田信長は神性や神秘に対しての特攻を有する。天より降りた神であるアメノワカヒコにとってはまさしく天敵。風の防壁も意味をなさなかった。

 ノアは黄金の腕輪を投影し、それを二振りの剣に成形する。

 『必勝の剣(フレイ・ヴェルンド)』。自動的に敵を討つフレイ神の剣が空を滑り、アメノワカヒコを付け狙う。

 

「藤丸、おまえはあいつの動きを止めることに専念しろ。いくら不死身だろうがヤドリギをぶち込めば死ぬ。とにかく動けなくすればこっちの勝ちだ」

「はい! それじゃあ、ジャンヌと信長さんはなんとかして撃ち落とすってことで!」

「ま、それしかないわね。私が消し炭にして終わらせてあげるわ」

「しかし油断は禁物じゃぞ! 今川義元然りわし然りな!」

「それ自分で言っていいんですか!?」

 

 立香の声を背で受けながら、信長は展開した銃列から砲火を噴き上げた。

 アメノワカヒコが選んだ手は急降下。大気に風の波紋が広がり、地面の間近を滑るように飛行する。

 一秒間に二十度の射撃が放たれる。それらひとつひとつが天津風を纏った風の槍となって、敵陣を襲った。

 ノアはゲンドゥルの杖を引き抜くとともに、オーディン第五の秘法を唱える。

 

「『矢避けの呪法(Elder Rune Ⅴ)』」

 

 大神オーディンが得た第五のルーン文字は投げ槍をひとにらみで落とすと言われる。転じて、それは飛び道具から戦士を護る意味を持ち、その通りに風の矢のことごとくを撃ち落とした。

 そして、二振りの剣がアメノワカヒコの胸を裂き、左腿の肉を削り飛ばす。

 血の粒が風に乗る。無数の赤い雫が少年の周囲を彩り、彼は笑った。

 

「この程度か、人間。そんなので俺を殺せると思うな……!!」

 

 ───それこそが、自分の願いだ。

 見ろ、タカミムスヒ。

 人間はこんなにも強い。サーヴァントという存在に固定された身であれ、彼らは俺を圧倒している。

 何が東征軍。何が高天原だ。お前らのためになんて戦ってたまるか。一度武力で支配したこの土地を、もう一度武力で取り戻そうなど、その愚かしさに反吐が出る。

 そう、結局。お前たちは自分の都合しか考えていない。神が神であるのを良いことに、人から供物を搾り取っているだけだ。

 だからこそ、俺は天の法ではなく地の理を選んだ。

 遥か高みから人を見下ろすだけの貴様らよりも、この地上で人とともに生きることを選んだオオクニヌシに付き従った。

 だけど、俺はどこまでも馬鹿で。

 他人の言葉にそそのかされて、天の使者を射殺してしまった。

 使者を殺すということは実質的な宣戦布告だ。俺の行いが原因で、高天原は武力行使の大義名分を得た。

 そう、つまるところ。オオクニヌシが天に国を譲ったのは、俺の愚盲さが故だ。

 そんな俺に、こんなことを望む資格はないかもしれないけれど。

 この戦いで、俺は誰も殺したくない。

 たとえ天の命令に肉体を操作されていても、その意志だけは貫き通す。

 だから、頼む。人間たちよ。

 愚かで、幼稚で、能無しで、役立たずで、救いようがなく、どうしようもないこの俺を。

 お前たちの手で─────グッチャグチャに、ブッ殺してください。

 

 

 

 

〝───天の下僕如きが、何考えてるんですかぁ?〟

 

 

 

 

 頭の中に響く声。

 その冷たさに、息を詰まらせたその瞬間、肉体の操縦権は完全に天の意思へと手渡された。

 

「 あ 」

 

 右脳と左脳の間に仕切りが立てられる。

 思考はできているのに、体が動いてくれない。

 否、体は動いている。前よりも強く速く矢を射ち、一帯の全てが肌で知覚できるほどに感覚が研ぎ澄まされている。

 風の後押しを受け、飛行速度は音速の十倍に達する。炎も、銃弾も、必勝の剣も置き去りにして、アメノワカヒコは飛翔する。

 

「く……いきなり動きが変わって───!?」

「立香、ノアトゥール、さっきの相手を止める魔術はいけるか?」

「やろうとはしてるんですけど、すぐ逃げられるというか……そもそも速すぎて狙いが定まりません!」

「アホ白髪、いつも大口叩いてるアンタでしょう。なんとかしなさい」

「おまえに言われるまでもねえ。俺の天才たる所以を目に焼き付けろ」

 

 アメノワカヒコを追っていたフレイの剣が溶けた黄金となってノアの元に帰る。腕輪の形状に戻す過程を省略して、新たなる神具を投影する。

 

「『夜天の星眼(スィアチ・アーガ)』」

 

 輝く二つの光球が上空に打ち上がる。まるで花火のように空を飛ぶソレは弾けることはなく、雲の下で滞空した。

 それこそはオーディンが天空に浮かべたスィアチの双眸。神々の花嫁スカディを娘に持つ巨人である。

 北欧神話の神々に不老を約していた黄金の林檎。スィアチは林檎を管理する女神イズンを攫い、その咎で殺害される。しかし、後にかの大神はスカディとニョルズの婚約の際に、バルドルを夫として望んでいた彼女の心を癒やすため、父の目を空に上げて星としたのだ。

 故に、スィアチの眼球は地上を見通す。

 ノアの視覚には、マッハ10で移動するアメノワカヒコの姿さえもはっきりと映されていた。

 

「藤丸、手を貸せ。視覚を繋げる」

 

 無作法に伸ばされた手を、立香はおずおずと握る。

 自分のそれよりも一回り以上は大きく、骨ばった左手。自然と緩みそうになる表情を必死に締めつける。この距離なら、心臓の鼓動も悟られないと確信して。

 アメノワカヒコの対魔力はA+ランク。ノアが扱う原初のルーンは魔術である以上、敵には効かない。だが、立香のコードキャストならば十全とは言えぬまでも効果を発揮するだろう。

 立香はノアを介して、上空に瞬く星の眼に接続する。普段とは全く異なる視界。膨大な情報量に頭が眩むのを、気力で何とか抑えつけた。

 視界を絞り、アメノワカヒコを捕捉する。吊るような笑みを張り付けていた彼の顔に、彩りは存在しない。石膏で固めたような無機質さはマネキンや人形のようだ。

 

「三つ数えたらコードキャストを使います。後はジャンヌと信長さんに任せます」

 

 頭上からの視界で、二人が頷くのを確認する。立香はアメノワカヒコの変わりように違和感を覚えつつも、術式を起動した。

 

「さん、に、いち───『elder_rune_Ⅹ』!」

 

 合図に合わせて、焦熱の火線と神秘殺しの銃弾が標的に殺到する。

 アメノワカヒコがそれを避けることはできなかった。竜の息吹に等しい熱線が風の防壁を突き破り、五体を炭に変える。直後に無数の弾丸が脆く炭化した肉体を崩壊させた。

 再生の隙を突く。ノアは立香の手を放して視界の接続を切り、ヤドリギをアメノワカヒコの残骸へ撃ち込む。

 

〝タカミムスヒの権能は確か、これでしたね〟

 

 だがしかし。

 黒い炭の山と化したはずのアメノワカヒコは、時間を巻き戻したかのように元の姿に戻り、弓矢を構えていた。

 

「〝俺が愚か者であるならば、この矢は当たる〟」

 

 アメノワカヒコの宝具は『誓約(うけひ)』の一矢。自分からして相手に関する不確定的な事柄を推理し、言い当てることによって、その一射は因果を捻じ曲げて敵の心臓に必中する。

 だが、それは到底『誓約(うけひ)』とは呼べぬものだった。占いとは未知を知るためのものであり、自明な事実を占うことはない。

 それでも、これは宝具の発動条件を満たした。

 なぜなら、彼を依り代としているのはタカミムスヒ。高天原における根源的なエネルギーであり、法則そのもの。日ノ本で行われる全ての『誓約(うけひ)』の決定権を、この神は持っている。

 

「『天下る糾罪の矢(あめのはばや)』」

 

 だから。

 その矢は、絶対に当たる。

 どさり、と誰かが崩れ落ちる音がした。

 血に濡れた一本の矢。胸の中心を深々と突き刺す。少女は、声を詰まらせて叫んだ。

 

 

 

 

「────先輩!!」

 

 

 

 

 鮮血を流して倒れる赤毛の少女。その目は限界まで見開き、瞳孔が小刻みに揺れる。息を吸い、出てくるのは粘ついた血液。じわりじわりと、服の白地が赤く染め上げられていく。

 マシュとジャンヌが咄嗟に駆け寄るのを、ノアは漂白された感覚の端で捉えていた。

 ───唇からか細い息が漏れる。脳髄が凍りつき、指先が感覚を失う。周りで響く声はどこか遠くのことのように聞こえる。

 こんなことは、前にもあった。

 一族の全員を皆殺しにしたあの日。

 しんしんと雪の降るクリスマス。

 血の海に伏せる親子の死体。

 魂の芯まで凍るような寒さの中、泣いたことを覚えている。

 これはその再演か。

 否。断じて認めない。

 その絶望は、とうに乗り越えた。

 

「俺が治す。おまえらは、あいつを殺せ」

「……応。いけるな、二人とも」

 

 ジャンヌは旗の柄をへし折らんばかりに軋ませて、立香の側から離れる。彼女の下唇は噛み切ったのか、一筋の血が伝っていた。

 

「当然よ。マスターをこんなにされて、サーヴァントが黙ってられるはずないでしょう。……ええ、ブッ殺すわ」

 

 一拍、間を置いて。マシュもジャンヌに続く。まぶたに滲む涙を流れる寸前で堪えて、

 

「治療を行うなら、守る役割が必要です。いつも通り、わたしにやらせてください」

「分かった。すぐに取り掛かる。死ぬ気で俺を……こいつを、守れ」

「───はい!」

 

 ノアは立香の横にしゃがみこむ。

 周りの状況を把握する必要はない。

 Eチームの盾を疑う余地など一切ない。

 胸元をはだけさせ、患部を解析する。その折、カルデアからの通信が入った。

 

「『ノアくん、ボクも手伝うよ。ここからでもサポートくらいはできるから』」

 

 ノアは傷から全く視線を外さずに返答する。

 

「ああ、頼む」

 

 短く、素っ気ない返事。しかしそれは集中の表れだ。ロマンも当然理解しているし、咎めるつもりは毛頭ない。

 だからこそ、彼は大人としてやるべきことを見極める。ノアが立香を治療するというのなら、彼を助けるのが自分の役目だと。

 ノアの邪魔をしないように、優しく、柔らかく言う。

 

「『キミなら大丈夫だ。もう、あんなことは二度と起こらない』」

 

 ───ああ、知っている。

 この世界に、都合よく人間を救ってくれる存在なんていない。

 眼前の不幸を変えられるのは自分だけだ。自分しかいない。自分しか頼れない。いくら神や世界に文句を吐こうとも、何かが変わって誰かが救われることなんてない。

 言葉は無力だ。

 人を殺すことはできても、人の傷を治すことはできない。

 そこで、立香と目が合う。胸を貫かれた痛みと、呼吸ができない苦しみの最中で、彼女はそれでも意識を手放していなかった。

 すがりつくような眼差し。けれど、目が合った途端に目の色は柔らかくなり、血濡れた口元が気丈に微笑む。

 

(…………くそ)

 

 一体、いつから。

 おまえは、俺の心に住み着くようになったんだ。

 ───言葉は無力だ。だが、それこそを望んでいるとしたら。

 

「冬木の特異点から戻った後に言ったことを覚えてるか。……今、それを果たしてやる。安心して眠れ」

 

 …………うん。確かに、覚えている。

 あの時、リーダーは私の手を握り返して。

 

〝……藤丸。おまえは死なせない〟

 

 大丈夫。覚えている。絶対に忘れない。

 いつもヘンテコなことばかりを言うけど、あの言葉が嘘じゃないってことだけは絶対に信じられる。

 だから、ああ。あなたに、そんな苦しそうな顔をさせたくはなかった──────

 

「…………は、ははっ。くそ。ああ、結局また、これか」

 

 脳の真ん中に立てられた仕切りが取り払われる。

 アメノワカヒコは何もかもを諦めたように笑う。そんな彼を嘲るかのように、ひとりでに肉体が動き、矢を弓に番え放った。空を裂く一射。ジャンヌはそれを真っ向から叩き落とし、空中へ跳ね上がった。

 自らの炎を推進力として飛翔する荒業。しかしそれ故にアメノワカヒコの意表を突き、

 

「堕ちろ!!」

 

 黒炎を宿した旗のひと振りが、彼を墜落させる。

 打撃をくらった頭部は一瞬にして燃え尽き、それでも首から下はなおも動く。自身に対する特攻を持つ火縄銃の弾も、修復される体には無意味。発砲音とともにゆらゆらとステップを踏みながらも、矢を撃ち返す。

 頚椎が生え、頭骨が足され、肉と皮がその上を覆っていく。復元された少年の顔を見て、信長は眉をひそめた。

 

「アメノワカヒコ。貴様は、なぜ戦う」

「それを訊く意味が、どこにある」

「なに、単なる疑問じゃ。狂を発したかと思うたが、少々込み入った事情があるのじゃろ」

「人の心が分からない故に死んだ貴女に、何が分かる」

「分かるとも。お前の頬に伝うものを見れば、何かがあることはわしにも分かる」

 

 ふと、アメノワカヒコは手を顔に添えた。皮膚を濡らす熱い液体。それが何であるかなど、誰の目にも明白だ。

 ばきり、と顔の奥で音がする。砕けた奥歯を飲み込み、少年は表情筋を歪める。

 それは笑顔とも、憤怒とも似つかぬ異形。

 ───俺は、この役目を貫き通す。

 

「愚かで、幼稚で、能無しで、役立たずで、救いようがなく、どうしようもない人間たちよ」

 

 そこから先は、泥沼だった。

 

「───俺を、殺してみせろ」

 

 夢遊病のように戦う。既に地に落とされた彼に、勝ち目はなかった。行動のことごとくを叩きつぶされ、それでも踊ることだけはやめない。踊らされることだけはやめられない。

 何度も血を流して再生して。

 終わりが見えぬ舞踏は、

 

「投影、『大神の魔槍(グングニル)』」

 

 どこからともなく現れた槍に心臓を貫かれ、幕を閉じた。

 一度手を離れれば、必ず敵を突き刺すオーディンの槍。かつて霧の都で見た神具の模倣。それはノアの無属性投影魔術によってさえ、一秒しか形を保てぬ武装であった。

 傷口から染み込むルーン文字が、アメノワカヒコの肉体に死を刻み込む。いくら修復を成そうとも、魂が死に誘われる以上、動かすことなどできない。

 ノアは神殺しのヤドリギを突きつける。

 

「言い残すことはあるか」

 

 ───地上の日々が、脳裏に蘇る。

 

 

 

 

 

 

 高天原の司令を受け、出雲に降り立ったその時、真っ先に抱いた感情は嫌悪感ただそれだけだった。

 何もかもが清らかで、完成された天の世界とは比べ物にならぬ異郷。日々変わる天候に左右され、この地に住まう人々はいつも何かに追われている。

 こんな世界は、天の威光のもとに掌握されるのが妥当だ。そう思った。

 けれど、それはひとりの男に出会ったことで変わった。

 

〝天上の御使いですか。それはそれは、長旅だったでしょう。是非、おもてなしをさせていただきたい〟

 

 オオクニヌシ。前人未踏の大偉業、国造りを成し遂げた英雄は拍子抜けするほどに柔らかい笑みで、天の遣いを受け入れた。

 他の神には警戒する者もいたが、彼はそれを宥めて、アメノワカヒコを歓待した。

 その宴は天上のそれと比べれば質素にすぎる代物だったが、人間たちが育てたという作物を使った食事は、

 

〝……あたたかい〟

 

 太陽の女神の完璧な統治のもとに育てられたモノよりも、よほど。

 神よりも弱く、不完全な人間が、こんなものを作れるのだと、初めて知った。

 そこからの時間は、矢のように過ぎ去っていった。この地上を支配せよという天の命令を果たすためにはまず、人間のことを知らねばならないと考え、オオクニヌシのもとで生活を送った。

 椀一杯分の稲を育てるだけでも、果てしない労力が要る。種を撒く時期を見極め、突然の嵐に備え、稲が病気にかからぬように目を配る。

 そうして穂を垂れる稲を収穫しても、少し油断すれば容易く腐り、鼠に食い荒らされることもあった。

 稲作ひとつ取っても、地上の生活はこんなにも過酷だ。

 だけど、国津神の恵みを護り育て生きる人々は、当然であるかのようにそんな生活を送っていた。

 ある時、オオクニヌシは言った。

 

〝アメノワカヒコ。私の娘を娶る気はありませんか〟

〝…………はあ? 懐柔策にしても下劣ですよ、それは〟

〝そういう訳ではなく。貴方なら娘を任せられるのと……私の理想のためです〟

 

 目を細めて訊き返す。それはどういうことか、と。

 

〝この国を率いるに足る神は三柱。天に坐す太陽の女神と、我が祖神スサノオ。それと、まあ、私です〟

〝自意識過剰、とは言いませんよ。自分でそれを言うかとは思いましたけど〟

 

 オオクニヌシは微妙な顔をして続ける。

 

〝私たちの特性はそれぞれ異なります。太陽の女神は『統治する者』、スサノオは『戦う者』、私は『産み育てる者』……さて、人間たちにとって誰が良いと思います?〟

〝とりあえずスサノオは駄目ですね。絶対に。やることなすこと滅茶苦茶で、権能の使い方も下手な馬鹿ですから〟

 

 オオクニヌシの顔がさらに微妙な表情になっていく。祖神を揶揄されたにも関わらず、彼は思うところがあるのか、その話題に踏み込むことはしなかった。

 

〝私はこう考えます。我ら三柱の神が、共にこの地上に法を敷くべきだと〟

 

 国家の頂点として太陽の女神が君臨し、武力機構はスサノオが担う。そして、自分はその下で生産者としての立場を果たす───オオクニヌシは、そう語った。

 

〝……ですから、天の神である貴方と地の神である私の娘とで、その架け橋になってほしい〟

 

 彼は、手を差し伸べて。

 

〝────共に、理想の世界を創りましょう〟

 

 オオクニヌシの国造りは終わっていなかった。彼が理想とする三神の統治こそが、国造りの終わりなのだ。

 アメノワカヒコはその手を取った。

 この男が創る世界を見てみたいと、痛感した。

 

〝で、あなたと結婚するのね。顔は良いけど、性格の悪さが滲み出てるわ〟

〝貴女は性格の悪さを隠そうともしないようですね? その目元のキツさは化粧でもどうにもならなそうですが〟

〝ああ、ごめんなさい。あなたみたいな背の低い男に言われても全く響かないわ。力しか取り柄がないスサノオ様に頭を引っ張ってきてもらえば少しは伸びるかもしれないわよ?〟

〝は? そんな訳ないでしょう。理屈で物を考えられないんですか貴女は。どうやらまだまだ勉強が足りないようですね。今の貴女はスサノオと同じくらいアホですよ〟

〝え? ねえなんでこいつら儂に流れ弾当ててんの? 酷くない?〟

 

 …………オオクニヌシの娘、下照比売命(シタテルヒメノミコト)

 軽口を叩き合う彼女との生活は、まあ、悪いものではなかった。父と同じように草花を愛で、民を慈しむ姿は俺にはもったいないくらいだった。

 

〝……ふふっ。どうせなら、この国をあなたのものにしてみる? なんてね〟

 

 いたずらっぽく笑うその顔が、愛おしかった。

 それでも、終わりは訪れる。

 俺は天の使者である鳴女を、他人の言葉にそそのかされて撃ち殺した。

 それが叛逆の証であると見做され、タカミムスヒの矢に胸を貫かれたのだ。

 分かっている。俺の天への憎悪は逆恨みだ。───人間と育てた稲だって、天の太陽がなければ育たないのだから。

 全ては俺の愚かしさが招いた罪。赦しは望まない。裁き続け、償い続けることだけが望みだ。

 でも。

 これだけは信じてほしい。

 俺には天への逆心と邪心もなく。

 ただ───────

 

 

 

 

 

 

「────ただ、俺はあの暖かい場所にいたかっただけなんだ」

 

 地面に倒れ、太陽を見上げる彼はそう呟いた。

 ノアの瞳孔が開く。

 表情が固まり、薄い唇が強く引き締まる。

 …………くそ。おまえも俺と、同じか。

 ヤドリギをアメノワカヒコの左胸に突き立てて、告げる。

 

「喜べ。おまえは誰も、殺さなかった」

 

 顔は見ない。即座に踵を返し、立香のもとへ戻っていく。

 その途中で、土を擦る音がした。

 

「……リーダー」

 

 マシュの視線に目線を合わせる。

 そこには、胸をヤドリギに貫かれながらも立ち上がるアメノワカヒコの姿があった。彼は最後に残った矢を引き絞っていた。

 ヤドリギが効かなかったのか。否、彼はとうに死んでいる。神であり、不死であるなら、ヤドリギは問答無用でそれらを殺す。

 ならば、最後の最後、彼を動かしているのは天の意思でも何でもなく、アメノワカヒコ自身の意地だった。

 その鏃が向く方向は大きく広がる青空の中心、輝く太陽。

 最期の一矢。アメノワカヒコは力強く、タカミムスヒへと宣誓した。

 

「〝()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!〟」

 

 果たしてその矢がどこへ、どこまで翔んでいったのか、射った本人にも知る由はない。

 だが、天の法たるタカミムスヒはこの場の誰にも知られることなく。

 

〝…………痛い、痛い。痛いです。神如きが、私の玩具風情が、よくもこんな───!!!〟

 

 その矢を、返してみせた。

 アメノワカヒコは消滅の間際、意地の悪い笑みを浮かべて、

 

「ハッ! ざまあみろ……!!」

 

 命中の感覚を手に、金の粒子となって解けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗く、粘ついた泥の中から引き上げられるように目を覚ます。

 ゆっくりと上体を起こし、ぼやける目を手で擦る。その拍子にずるりと掛け布団が落ち、そこで自分が寝ていたのだと言うことをぼんやりと思い知った。

 なんとなしに胸に手を置く。背中まで貫通した傷はそれが嘘だったみたいに塞がっていた。むしろ傷跡もなく元通りになっている。

 頭を左右に振って、周囲を把握する。どこかの建物の一室であることは確かだが、見覚えがない場所だった。

 ───とりあえず、こういう時にやることは決まっている。

 がばりと上体を後ろに倒し、布団を掛け直す。天井を見上げ、呆然と呟く。

 

「知らない、天井だ……」

「何言ってんだアホ」

 

 べしん、と冷水を含んだ手拭いが顔面に叩き落とされる。

 立香はそのまま口をもごもごと動かして、

 

「何するんですかリーダー。せっかく私がロボットアニメ主人公の気持ちを味わってたのに」

「おまえのジャンルはロボットアニメじゃねえ、鼻毛系ギャグ漫画だ」

「そんなのひとつしかないんですけど!? あの世界でやっていける自信なんてないですよ!」

 

 手拭いと布団を跳ね除けて起き上がる。

 隣には帽子を外したノア。左手にはなみなみと粥が注がれた赤い茶碗を底から持ち上げている。白い米粒の中にこれまた赤い匙が突っ込まれていた。

 手袋のおかげか手の皮が厚いのか、熱くはないらしい。面の皮が厚いことは確かだが。

 

「それで、ここは何処なんですか」

「太宰府だ。残りの天御柱は高千穂にあるからな。おまえが眠りこけてる間に関門海峡を越えてここまで来たんだよ」

「太宰府……歴史苦手な私にはさっぱり分かりませんね。ところで、お腹空いたんですけど」

 

 そう言うと、ノアは無言で茶碗を差し出した。立香は真っ直ぐにノアの瞳を見て言う。

 

「食べさせてください」

「……子どもか、おまえは」

「高校生なんてまだまだ子どもです。さあ、その白くて熱いモノを私の口に突っ込んでください!!」

「おいやめろ!! この世界が終わる(BANされる)ぞ!!」

 

 ノアはため息をついて、匙で粥を掬う。立香は餌付けされる雛鳥のように、唇でそれを受け止める。すると、じゅっととてつもない熱感が迸った。

 

「あっつぅ!!? なんで冷ましてくれなかったんですか!!」

「おいおい、注文が多いな。オプションが欲しいならそれなりのもんを払いやがれ」

「いかがわしいお店みたいなこと言わないでください」

 

 仕方がないので、自分で息を吹きかけてから粥を口に運ぶ。

 数分、無言の時間が続き、立香は米粒ひとつ残さず粥を平らげた。ほう、と息をついて、ぬるい水を嚥下する。

 

「ごちそうさまでした。リーダーも、ありがとうございます。私の怪我を治してくれて」

「Eチームのリーダーだからな。当然のことをしたまでだ。……それはそれとして、五体投地して感謝しろ。俺の恵みを受けたことを日々思い知りながら生きていけ」

 

 立香はくすりと微笑み、右手でノアの手を取る。

 

「……はい。良いですよ。私だって、感謝してますから」

 

 思わぬ肯定。ノアは面食らった顔をする。その面持ちはすぐ取り繕うように変わるが、動揺は隠せていなかった。

 彼は小さく舌打ちする。

 

「…………他の奴らを呼んでくる。手を離せ」

「嫌です」

「はあ?」

「まだ、二人きりが良いです」

 

 心の内から浮かぶ想いを、繕うことなく言葉に乗せる。俯いて彼の顔を見ることはできないけれど、言葉は無力ではないと思うから。

 

「リーダーって、自分の過去のことは深堀して喋らないですよね」

「……偶々その機会がなかっただけだろ。それがどうした」

「だから、私に教えてください」

 

 右手の上に、左手をさらに重ねる。

 

「どうしてカルデアに来たのか……あなたのことが、もっと知りたいんです」

 

 勇気を出して、その顔を見上げて、そう言った。

 

「…………面白さは期待するなよ」

「知りたいだけだから、そんなのどうでもいいです」

 

 ノアは嘆息して、微かに笑んだ。

 

「仕方ねえな。話してやる。耳の穴かっぽじってよく聴け」




・アメノワカヒコのステータス
クラス︰アーチャー
真名︰天若日子
属性︰中立・善
ステータス︰筋力 B 耐久 B 敏捷 A+ 魔力 A+ 幸運 D 宝具 B
クラス別スキル
『単独行動︰A+』……マスター不在でも十二分に活動できる。アメノワカヒコは高天原から地上に降って、八年間オオクニヌシの国を満喫していたのでこのランクになっている。
『対魔力︰A+』……神様で神秘が名古屋飯の味くらい濃いので当然対魔力が高い。コードキャストが直撃しても動きを止められたのは一瞬だけだった。
固有スキル
『神性︰A』……神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊の混血とされる。アメノワカヒコは天津国玉神という天津神の息子で、自身も天津神として生を受けている。なので神性は文句なしの最高クラス。
 ちなみに、記紀神話にはよくあることだが、天津国玉は果てしなく影が薄い。一応、アメノワカヒコの葬儀の際には天から駆け付けてきてくれているので、親子仲は悪くなかったのだろう。
『疾風の葬送︰B』……アメノワカヒコの喪屋を天へと飛ばした風。喪屋とは遺体と家族が喪中に籠もる建物のこと。死とは最大級の穢れなので、それが母屋に伝染しないように新しく喪屋を建てる。大変。
 古事記では登場せず、日本書紀にだけ見受けられる。自分を天へ上げた天津風を操ることができる。また、高天原に吹く聖なる風なので穢れや呪いを跳ね除けることもできる。矢に纏わせて射つことで、山を削り抜く威力にもなる。矢を射るだけでは地味なのでなんとかこじつけたスキルである。
 ここではアメノワカヒコ死亡→地上で葬儀が行われる→アヂスキタカヒコネが喪屋を斬る→疾風に打ち上げられるという流れに改変している。
『紅顔の貴公子︰A』……とっても美形。アメノワカヒコの名前は〝天の若い男〟という漠然すぎる意味なのだが、美しく若い男の悲劇という、カレーにカツを載せてチーズまで追加したような彼の話は昔の人々にとてもウケた。また、若い男というイメージから少年の姿で召喚されることが多い。時に七夕伝説と結び付けられて御伽草子に天稚彦物語があったり、宇津保物語や狭衣物語にも天から舞い降りて来る音楽上手な美男子として、アメノワカヒコは登場する。つまり、ある種イケメンのテンプレートとして扱われた。…………のだが、本編で会った女性がEチーム三人娘に恋愛脳精霊、敦盛ダンサーの変人揃いだったので特に役立つことがなかった。その美貌で女性を狂わせたディルムッドのような逸話がないので、魅了効果を持っていないのも一因である。アメノワカヒコが飛べるのはこのスキルのおかげでもある。
宝具
『天下る糾罪の矢』
ランク:B 種別:対人宝具
 あめのはばや。アメノワカヒコがタカミムスヒから譲り受けた弓矢を使い、『誓約』を行うことで発動する。『誓約』に勝利した場合、相手の心臓に回避・防御不可の矢が出現する。心臓、もしくは心臓にあたる部位がない場合は強制的に弱点を創り出し、それを撃ち抜く。
 『誓約』を行う条件は何でも良いという訳ではなく、アメノワカヒコの主観では確定していない相手の事実について、それが真か偽か当てなくてはならない。なので、ノア相手に「地球が回っているならこの矢は当たる」などといったことはできない。「ノアがクズならこの矢は当たる」であればイケる。判定はタカミムスヒが行う。
 例えば、アメノワカヒコがアストルフォを見て「どう見てもこいつは女だろ。絶対」と思えば、それについて『誓約』をすることはできない。逆に、「伝承では男? どっちだ!?」となれば、それはアメノワカヒコの中で確定していない情報なので宝具を使用できる。が、その上でアストルフォの性別を当てなくてはならない。もちろん外れたら不発になる。また、性別を当てる『誓約』の場合では、女性の体で性自認が男性といったカイニスのような存在は性自認を当てる必要がある(見た目が女性なのは分かりきっているため)。デオンのような性別不明組も同じ。果てしなく難しいので、これを当てるくらいならアメノワカヒコは別のことを予想するだろう。
 正直、外れてもデメリットがないので片っ端から予想して宝具を連発できるのが強みではある。魔力消費も格段に安く、一般的な魔術師なら普通に戦わせていた方が魔力の消費がキツいほど。しかし、単独行動スキルのおかげでそれも解消できる。初心者に優しいサーヴァント。
 アメノワカヒコは自分の幸運がアレなのを理解しているので、あまりこの宝具を使いたがらない。あと単純にタカミムスヒが嫌い。
 アメノワカヒコの葬儀にはアヂスキタカヒコネという神が唐突に登場する。彼はアメノワカヒコに瓜ふたつの容姿をしていて、親戚一同はその顔を見てアメノワカヒコが生き返ったと勘違いしてしまう。が、古代の日本では死者=穢れなので、そんな死者と間違えられたアヂスキタカヒコネはキレてアメノワカヒコの喪屋を剣で切り倒してしまう。怒って去っていくタカヒコネだが、アメノワカヒコの妻のシタテルヒメは自分の兄だと説明する……というのが記紀で共通する流れ。古事記ではタカヒコネが喪屋を斬った後に蹴り飛ばすのだが、それがなんと美濃国まですっとんで喪山になったという。筋力A++は固い。実際に現代の岐阜県には喪山天神社という神社がある。
 これは古代の農耕儀礼を色濃く残した神話であるという説がある。アメノワカヒコが亡くなった後に、似た顔のタカヒコネがやってくるのは冬に枯れた穀物が春に復活する流れを表しているのだとか。こじつけにも思えるが、アメノワカヒコは穀物神として祀られることがあったり、日本の神々は外国と比べて圧倒的に農耕神が多いので、可能性は高いと思われる。

・神様解説、アマツミカボシ・タケハヅチ編
 アマツミカボシは記紀神話に登場する数少ない星の神である。古事記には登場せず、日本書紀にだけ見られる。天津甕星(天上にある甕のような星、天上の神威の盛んな星)や、天香香背男(天上で光り輝く男性)などといった名前を持っている。
 アマツミカボシが金星を表す説は平田篤胤など、江戸時代の国学者が発端。広く星を表す神である説もあるが、金星説が優勢なようである。この金星を象徴する、天に叛逆するというだけでルシファーと結びつけたりする説もあるらしい。こじつけがすぎる。
 タケミカヅチやフツヌシといった、スサノオを除くならトップクラスの武神を返り討ちにした。その後にアマツミカボシを服属させたのがタケハヅチである。タケハヅチは織物の神様であり、とても戦闘には向かなそうなのだが、二大ビッグネームの武神ができなかったアマツミカボシの服属を成し遂げている。
 これにはいくつかの説がある。
 ①建葉槌は文字を入れ替えると武刃槌とできるため、実は武神であったという説。
 ②織物の中にアマツミカボシを織り込んで封印したという説。
 ③戦いによって服属させたのではなく、他の搦め手を使って籠絡した説。
 武力では従えられない相手なので籠絡する……といった③が流れとして綺麗だと思われるが、本編では見栄えを考えて②の説を採用した。
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