自称カルデア最強マスターとぐだ子の人理修復録   作:なまゆっけ

81 / 117
あけましておめでとうございます。今年で完結まで行きたいです。いつも読んでくださる皆様に感謝いたします。


第71話 女神たちの饗宴、天の落涙

 ウルク北壁。ゴルゴーンの侵攻を予見したギルガメッシュはEチームに加えて、ウルクが抱える全サーヴァントを戦線へと配置した。

 都市の守りが薄くなることは承知の上。サクラという最大の不確定要素を加味してもなお、ゴルゴーンの討伐を優先すべきだとギルガメッシュは結論付けたのだ。

 ティグリス川とユーフラテス川の間を横断する長大な壁は戦いの時を静かに待ち望む。それとは反対に、人間たちは騒然と北壁の周辺を駆けずり回っていた。

 ゴルゴーンと魔獣の襲来に備え、人馬が所狭しと行き交う。

 この戦いには自分たちの命だけではなく人類の未来が懸っている。この状況を喩えるなら、尻に火がついている状態で後ろからチーターが追いかけてきているようなものだ。

 ギルガメッシュが視た決戦の前日。

 全員が集まった食事の最中、アナは唐突に打ち明けた。

 

「私の真名はメドゥーサと言います」

 

 食卓が一瞬にして静まり返る。

 鉄板の上で焼ける肉と弾ける油の音だけが響く。一同は無言でありながら、瞳の色でその驚愕を雄弁に語っていた。

 ノアは目を平べったくして頬杖をつく。彼は立香が確保しようとしていたタン塩を横から奪い取ると、そのまま口へ運んだ。

 

「ハッ、いきなり血迷ったか? おまえみたいな小娘がメドゥーサなら、ロマンがソロモン王でもおかしくねえぞ」

「『そ、そうだね』」

「何がそうだねだ。ありえないに決まってんだろ。くだらない冗談言った罰だ、おまえの分のハラミを全て俺に献上して謝れ」

「リーダー、まず私が丹精込めて育ててたお肉を強奪したことを謝罪してください」

 

 立香のハリネズミより刺々しい眼差しがノアに照射される。が、彼は何食わぬ顔で他人が最高の焼き加減に仕上げた肉をかっさらっていく有様だった。

 そこで、アナは眉根を寄せてノアを睨んだ。

 ぴきり、とノアの全動作が停止する。彼は半開きにした口の手前で箸を止めた、間抜けな状態で沈黙していた。血の気が失せた肌には冷たい汗が滲んでいる。

 それでもドSとしての最後の意地か、表情だけは余裕を取り繕っていた。

 

「……なんか急に気分が悪くなってきたな」

「メドゥーサなので」

「しかも手先が冷たくなってきたんだが。忍者か? 忍者の仕業か?」

「メドゥーサの仕業です」

「もしかしてお化けのせいなんじゃ……リーダーお化け苦手ですもんね?」

「いやメドゥーサ……」

「おいふざけんな、霊障如きが俺の礼装の防御機能を貫通できるわけねえだろ、冗談もほどほどにしろ。それともアレか、まさか貞子級の怪異だったりすんのか……!!?」

「メドゥーサだっつってんだろォォ!!」

 

 わざとらしく会話を繰り広げる立香とノア。カルデアが誇る双璧を前に、アナは自身のキャラも忘れてタレの入った小皿を投げつけた。

 立香は無駄に機敏な動きで躱すものの、絶賛石化中のノアに避ける手段はない。小皿が顔面に衝突し、芳醇な匂いを香り立たせる。

 ここぞとばかりにノアの肉を奪う立香。ダンテはそれを尻目に戦慄した。

 

「せ、石化の魔眼……ですか?」

「はい。余程のアホでなければ、これで魔眼に掛けるまでもなく信じてもらえると思いますが」

「残念ながらリーダーは余程のアホですが……石化の魔眼は魔眼の代名詞と言って良いくらいです。武器の鎌はメドゥーサを倒したハルパーですか?」

「さあ。ただ、使い勝手が良いので気に入ってはいます」

フォウフォフォウ(自分を殺した武器なのに)……!?」

「ところで、なぜこのタイミングで暴露をしようと思ったんだい?」

 

 マーリンはにこやかに訊いた。

 この男の笑顔ほど不吉なものはない。彼の悪辣さを誰よりも知る湖の乙女姉妹とペレアスは、哀れみを込めた目線をアナに注ぐ。

 

「……なんだったら、氷漬けにしましょうか?」

「体中の水分という水分を奪い取ってミイラにして差し上げてもよろしいですわよ?」

「こいつの話は付き合うだけ損だぞ。知らない内にマウント取られて敗北感だけ残るからな」

「…………そ、そこは全面的に同意しますが、これは私のけじめです。決意表明です。なので気にしないでください」

 

 アナは力強く、はっきりと言ってみせた。

 世に広く知られる怪物メドゥーサ───一睨みで敵を石に変え、蛇の髪を棚引かせる化け物は神々に愛されし英雄ペルセウスによって討ち果たされる。

 人々の恐れと畏れを集める反英雄。

 討たれることでしか善を明らかにできぬ彼女はしかし、元は可憐な少女であった。

 メドゥーサをメドゥーサたらしめたのは、戦いと知恵を司る女神アテナ。かの戦女神の神殿にて、ポセイドンとまぐわったメドゥーサは醜悪なる怪物へと存在を変質させられるのである。

 故に、ここに在る少女アナとは。

 海神との契りを知らず、戦女神の怒りに触れる前の純粋な────魔獣の女神と化したゴルゴーンとは真逆の存在。

 なればこそ、女神と少女は互いが互いに仇敵と成り果てた。

 かたや、人を殺し尽くさんとする自分を認められず。

 一方、もはや戻れぬ過去の自分を受け容れられない。

 分かり合う、なんて道は無い。相互理解とは他者との間に成り立つもの。自分が相手ならば、分かり合う段階はとうに過ぎている。

 

「───なるほどね。自分にだけは負けられないってわけ」

 

 ジャンヌは冷たさすら感じる声音を響かせる。アナはこくりと首肯した。

 

「そうです。今の私にとってゴルゴーンはちいかわの反対語みたいなものなので。言うなれば、でかみにです」

「『でかくてみにくいやつ───!!!』」

「一気に深刻さが薄れたんですが!?」

 

 ダンテは目を剥いて叫んだ。一応フォローするとゴルゴーンの容姿は美人以外の何物でもない。アテナは彼女を醜い怪物に変じさせたと言われるが、その醜さの基準が疑われる結果である。

 その手のトングは鉄板の端で忘れ去られて消し炭になったなすびを掴み、マシュの小皿に追放する。レオニダスはそれを見咎めた。

 

「好き嫌いはいけません。健全なる肉体を養う第一歩はバランスの良い食事です」

「全くその通りです。このなすびの焼死体はジャンヌさんが供養してください」

「絶対に嫌なんですけど。そんなコゲ塗れのやつ食べたら病気になるわ」

「体に良いモノばかりを摂ることが良いとは限りません。毒を食らってこそ均衡が取れるのです」

「マイナスの値でバランス取らないでくれます? それもう悪食ですから」

 

 消し炭なすびを巡って争いを繰り広げるジャンヌとマシュ。醜い戦いを目撃したレオニダスは一息になすびを口に放り込んだ。

 そこで、ノアはようやく石化から帰還する。タレまみれになった顔をタオルで拭き取りながら、

 

「結局は勝てばいい。自分で自分を殺れば足し引きはゼロだ。そこの焦げなすびを押し付け合うアホどもと違ってな」

「むしろゴルゴーンを倒せばプラマイゼロどころか大幅にプラスですよ! 人類(私たち)的に考えて!」

「ゴルゴーン三姉妹的にもですわ。妹には健やかでいてほしいのが姉というものです」

「リースさんは健やかすぎて逆に不健全ですよね」

 

 立香がそう呟くと、リースは鼻高々に胸を張った。

 

「えっへんですわ!」

「褒められてないからな?」

「……まあ、姉の気持ちは妹には分かり難いものだけれど」

 

 エレインはくすりと微笑み、アナの名前を呼ぶ。

 

「私たちにも負けられない理由ができたわ。とびきり大きいのが、ね」

 

 ───そして、決戦の日。

 要塞化したニップル市にて魔獣とゴルゴーンを迎え撃った前回とは異なり、今回は北壁に陣を敷くこととなった。増加すると予想される魔獣の数に対応するため、防衛線を長く引ける北壁を選んだのである。

 北壁の総延長は100kmを超える。無論、敵は戦力を薄く広げるよりも一点に集中して突破を狙ってくるだろう。守備軍は敵が攻める地点を予想して布陣しなければならなかった。

 無数に並び立つ針の穴にただひとつの正着を見出すかの如き難事。されど、ウルクが擁するサーヴァントはいずれも戦の巧者たちだ。

 たとえ人間が相手でなくとも、何処をどう守るかの最善手を見分けることは容易かった。

 

「───ドンピシャ。私たちの準備は無駄にならなそうね」

 

 黒き竜の旗が揺れる。

 黒炎の魔女は不敵に笑った。

 北壁の壁上。迫る魔獣の軍勢を、人理の英霊たちが見下ろす。

 大地をその体色で染め上げる魔獣。前回のそれと比しても桁の違う数。マーリンは訝しげに目を細め、顎の下に手をあてがった。

 

「地に満ちよ、とはまさにこのことか。私の千里眼を弾いたのは戦力を隠すためか……ノアくん、どう思う?」

「俺に振るな。手筈は変わらない。仕掛けた地雷で一通り掃除してから───」

「───神剣で神殿を叩き斬る! 分かっておりますとも!!」

 

 牛若丸は普段の五割増しの快活な笑顔で両腕を掲げた。右手に輝く、スサノオの神剣。持ち手の陽気さとは裏腹に、それは近付いただけで肌を裂くかのような凶気を秘めている。

 ノアと牛若丸の前に横一列でしゃがみこむ人影。立香とマシュ、アナ、数人のウルク兵たちは耳当てとゴーグルを装着し、小学生が図工の時間で作ったみたいなスイッチを携えていた。

 マシュは人差し指でスイッチの縁をついついとなぞる。

 

「たとえ敵の数が増えていようと、こちらの爆弾は数も火薬もマシマシです。ハリウッドのアクション映画も裸足で逃げ出す大爆発をご覧に入れましょう!!」

「まだですか。まだ押しちゃいけないんですか。ゴルゴーンと魔獣どもを木っ端微塵にすることだけが私の望みなんですが」

「マシュとアナさんが爆発の魅力に取り憑かれている───!!」

「よし、引きつけた。おまえらやれ!!」

 

 ノアが号令を下すが早いか、轟音を引き連れた突風が北壁の表面を波打たせる。しかし、彼らが見たのは爆散する敵の姿ではなかった。

 地平線に立つ要塞都市ニップル。天へと昇る魔力の奔流が、それを粉微塵に消し飛ばす。

 

「……ああん!?」

 

 次いで、地面が爆ぜる。

 火柱が噴き上がり、土塊と肉片が飛散する。次々と灼熱の柱が現れ、長大な炎のカーテンを形成する。しかしてそれは、障子の紙を指で突き破るように風穴を生じた。

 風穴の中心には漆黒の影。ニップルより解き放たれたそれは不可視の壁に張り付くように、空中に留まっている。

 立香とノアは眼球に魔力を通して、目を凝らす。

 かろうじてヒト型を保った、不定形の怪物。全身に黒く濁った泥を纏い、泥で構成された六本の触手が背に揺れている。ソレは空気そのものに爪を立てるかのように両手両足を這わせ、深い紫の瞳を楕円に細めた。

 限りなく不吉な凶兆に満ちた視線。濁り切った混沌の殺意。一瞬が数分にも感じられるほどに感覚が引き伸ばされる。

 果たして、その一瞬が終わりを告げた瞬間、その影は後脚で空気を蹴りつけた。

 大気が悲鳴をあげる。

 水面に石を落としたみたいに空間が撓む。

 爆発的な加速。ソレは数kmの距離を一秒とかからずに詰める────!!

 

「『悠か妙なる幻氷塔(トゥール・デ・ダーム・デュ・ラック)』!!」

「『遥か永き湖霧城(シャトー・デ・ダーム・デュ・ラック)』!!」

 

 異界法則の展開。それと同時に霧の城が巨大な防壁と化し、影の行く手を阻む。

 衝突は刹那、影が霧を穿ち抜く。

 リースの霧の城は水滴ひとつひとつが魔力を帯びるだけでなく、それを含んだ大気さえも支配下に従える。

 つまり、彼女の異界において霧の中を進むことは魔力障壁を掘り進めることに等しい。

 体積比としては北壁の総量すら上回る。

 影は徐々に勢いを減衰させながらも進み続け、北壁の手前で速度を失う。

 朱と金の円盾。影の触腕は北壁を破壊する寸前でレオニダスによって阻まれていた。彼は盾越しに影を目視し、その正体に至り着く。

 

「───キングゥ! 狂気に堕しましたか!!」

 

 ぎしり、と盾が軋む。レオニダスの踵が土を削る。彼は北壁を崩壊させるに十分な力をたったひとりで受け切っていた。キングゥは答えず、ただ五体を漲らせるのみで応える。

 

「行くぞ、リース!」

「ええ、ラブラブVの字斬りですわっ!」

 

 魔剣と霧剣が閃く。不死身の英雄をも屠った不癒の斬撃。キングゥはそれを一瞥さえせずに躱す。

 キングゥは一足で間合いに引き込める位置を保ちながら、ペレアスへの眼光を研ぎ澄ました。そこに込められた感情が何色であるかなど、考えるまでもなかった。

 騎士は剣の柄を握り締め、キングゥを睨み返す。

 

「見てくれは大分変わったみたいだな! ノア、この剣は斬った相手を絶対殺すんじゃなかったのか!?」

「知るか! しっかり両断しなかったおまえが悪い! 結局使い手が見合ってねえんだよ、俺に返せ!!」

「ふざけろ、この剣はオレのだ! 消滅しても座に持って帰ってやる!!」

フォウフォウ(それでも騎士か?)?」

 

 というやり取りに堪えかねたのか、キングゥはペレアス目掛けて飛び込んだ。

 触腕が蠢動する。それらは振るわれる途中で刃へと変じる。ペレアスは咄嗟に半身を躱し、泥の刃をすり抜ける。行き場を失った一撃は北壁の上端から下端を一刀で切り裂いた。

 だが、キングゥの手数はそれのみに留まらず。矛戟と化した触手が左右から叩きつけられる。

 騎士は動かなかった。円盾と霧剣がそれを防ぐことを知っていたから。

 

「あのドロドロ、とてつもなく嫌な雰囲気がします。きっと聖杯の泥と同質のモノですわ。決して触れないように!」

「参考までに、触れたらどうなるのです?」

「その者の性質が魂レベルで反転すると思われます。あくまで私が知っているものと同じ場合ですが」

「……ノアとマーリンに触らせたら反転して真人間になりそうだな」

 

 キングゥが動く。人の域に在る者では立ち入ることはおろか、目視することさえ能わぬ戦い。ノアは眉をひそめ、緋色の王笏で自らの肩を小突いた。

 

「援護するぞ、ついてこい。ダンテとマーリンは強制参加だ。たまには働けアホども」

「私が行く意味ありますかねえ!?」

「ダンテさん強いじゃないですか。宝具が」

「先輩の言う通りです。ダンテさんの宝具が決まればキングゥも一撃ですから」

「宝具だけ使ったら後ろ下がってなさいよ、邪魔だから」

「そんなに私より私の宝具(さくひん)が必要ですか!? 詩人として嬉しい限りです! 人としての自尊心は大いに傷つけられましたが!!」

 

 その嘆きも虚しく、ダンテはノアと牛若丸に両腕を引っ張られて北壁を飛び降りる。それに立香たちも続いたところで、マーリンはゆっくりと歩を進める。

 杖に仕込まれた剣を抜く。その所作には一縷の淀みも存在しない。

 エレインは僅かに目を見開き、何かを察するように伏せた。

 

「……珍しいわね。あなたが戦場で剣を振るうなんて」

「現在から予測できる未来が大きく変わった。それも悪い方向に、だ。私が出て流れを変えてみる」

「そう。いざという時は手筈通りよ」

「ああ、それならこれも今渡しておこう」

 

 マーリンは懐から透明な液体を蓄えた水晶の小瓶を取り、そっと投げた。エレインはそれを受け止めようと手をかざすが、小瓶は指の間をすり抜けて額に当たる。

 エレインは胸元に滑り落ちた小瓶を慌てて握り込む。それを見て、マーリンは吹き出した。

 

「…………サーヴァントの体でも運動音痴は変わらな」

「り、リースと違って体の使い方がヘタなのは分かってるわ。目玉をガラス玉みたいに割られたくなかったら、早く行きなさい」

 

 エレインはマーリンの尻を蹴って、壁の下に突き落とす。その強制フリーフォールには目もくれず、右手に収まる杖を槍の形に整える。

 氷槍ロンゴミニアド。もう一方の手にある小瓶を眺め、彼女は独りごちる。

 

「この力───王は気に召さないでしょうね」

 

 稚気を帯びた火が心に灯る。その感情を振り払うように、湖の乙女は氷槍を薙いだ。

 凍てつく光波が魔獣の群れを氷漬けにし、ひとりでに破裂する。一面の雪原に血の赤色だけを残して、攻め来る魔獣の命は散華した。

 無数の血の跡が動き出す。それぞれが意思を持ち、蛇のように蠢く赤。その色はただ一点、キングゥのもとに集結する。

 混沌の黒に溶け合う命の赤。

 それは死に逝く魂の収奪。

 曖昧な体表がざわめき立つ。死したる獣の角を、爪牙を再現するように変形する。

 立香はマシュの肩越しにその光景を目の当たりにしていた。

 

「イメチェンにも程があると思う」

「はい、チェンジどころかイメージが根底から崩れています」

「『い、いや、変わってるのは見た目だけじゃない! 魔獣を吸収したことで魔力反応も増大してるぞ!』」

「こちらが魔獣を倒す度に強くなるということですか。厄介に過ぎますね」

 

 アナは吐き捨てるように言った。

 影はカタチを定め、その力を解放する。

 波濤の如く襲い来る泥の武装、漆黒の爪牙。そのひとつひとつがトップランクの対人宝具に匹敵する威力。策略も小細工も必要としない、純粋な暴力の結晶が此処に在った。

 彼我の数的不利など塵芥。肉体にまとわりつく霧も、氷槍の光線さえ意に介さない。表皮の硬度は並の宝具ならば、その真名解放すらもかすり傷に留めてみせるだろう。

 魔力出力も、戦闘性能も、敵う相手は何処にもいない。そう、かつて同じ肉体を使ったエルキドゥやその友であるギルガメッシュでさえも。

 ───だというのに。

 混濁する意識で、キングゥは思った。

 なぜ自分の刃は、爪は、人間の小娘ひとりの命も奪えていないのか、と。

 

「……惜しいな。そんな姿になりさえしなければ、キミは私たち全員をも上回っていたかもしれないのに」

 

 するり、とマーリンの白刃が走る。

 宙を揺蕩う羽根のように軽妙な斬撃。キングゥの知覚の間隙に滑り込み、左眼を裂く。

 キングゥは反射的に腕を振るうが、花の魔術師はひょいと身を躱して潜り抜ける。

 強大な力をそのまま振るう───その在り方を否定したはずのキングゥはここにはいない。人の業を知らぬが故に、魔術による偽装を施しただけのマーリンの接近にも気付くことができなかった。

 

「と、そういう訳だ! 今回ばかりは私も舞台の中心に立たせてもらおう! ペレアスくん以下諸君は脇役に甘んじてくれてもいいぞ!」

「おい誰が円卓の名脇役だ」

「名脇役でもないだろ。ドラゴンボールで言ったら戦闘力5のおっさんと同じだからな」

「うるせえ! 猟銃で頭ブチ抜くぞ!?」

「騎士なら剣を使うべきですがねえ」

 

 言いつつ、ダンテはのんきに祝福の文字を描いていた。彼が戦場においても正気でいられる理由は半ば自分の命を諦めていることに加えて、

 

「マシュさん、こちらはお任せください!!」

「了解です、盾サーの意地を見せます!!」

 

 決して砕けぬ二枚の盾があるからだった。

 怒濤の攻撃を防ぎ、逸らし、弾き返す。

 如何に敵が強く、速くとも彼ら盾の英霊を貫くには能わない。

 キングゥは獣性に身を任せて暴力を振りまくのみ。それでは、それだけでは鍛え上げた人の技量は揺らがない。

 何より、マシュ・キリエライトという少女は常に自分よりも強い敵と戦ってきた。ならば極論、相手のスペックがどれほど高かろうと変わらない。

 そう、ただいつものように。

 仲間を守る役割を果たせば良い───!!

 

「おるぁぁぁぁっ!!」

 

 頭を狙う触腕を盾で逸らす。

 体を捻りながら深く踏み込み、キングゥの胴へ打撃を加えた。

 ダメージはない。精々が衝撃を与えた程度。だが、英霊にとってはそれこそが必殺の隙となる。

 レオニダスが槍を投げ飛ばすとともに、ジャンヌは炎を纏わせた旗を振り抜く。

 巨大な鉄の塊を打つような手応え。槍の穂先がキングゥの額で破砕し、旗は表皮を焼くのみだった。

 

「堅っった……!! 何で出来てんのよこいつ!?」

 

 マーリンは飄々と答える。

 

「王の友エルキドゥとキングゥの肉体は同じだ。エルキドゥは聖娼シャムハトに会うまで、人とも獣ともつかぬ姿をしていたそうだ。今の彼はその頃に逆行しているのだろう」

「……それ早く言いなさいよ」

「言ったところで戦い方は変わらないさ。情が湧く質でもないだろう?」

「ジャンヌさんは血も涙もない女ですからね」

「黙れ冷血なすび」

 

 エルキドゥはかつて神々に創られた兵器として地上に遣わされた。知性も理性もなく、野の獣とともに暮らす日々を送っていた彼は妖怪じみた姿形をしていたという。

 だというのなら、目の前のキングゥこそが神の宝具たる肉体の原初のカタチ。純粋なる神威の具現。矮小なる人間の武装が通用するはずもない。

 今、この戦場でキングゥを毀傷できる武器は三つ。

 神殺しの魔剣、八つ首の竜の神剣、不死殺しの鎌。その使い手の接近を認めると、キングゥは大きく後方へ跳んだ。

 

「■■■■■■■■────ッ!!!」

 

 咆哮。

 触手の形状を槍に定め、空に撃ち出す。

 それは放物線を描き、地上へ降り注がんとする。人間の柔らかい肌を突き破り、臓物を引きずり出すために。

 ただし、狙うのは。

 眼前の敵ではなく、北壁を守る軍。手強い相手を倒すよりも、弱い敵を狩る。それは野に生きる獣の論理であった。

 

「ロンゴミニアド!」

 

 氷槍から放たれた光線が槍の雨を薙ぎ払う。

 いくつもの魔力の光が暴れ、雪模様の空を明るく照らす。が、その一手は敵に時間を与えることとなった。

 雪混じりの風を巻き上げ走る魔獣の大群。地雷を使い果たし、氷槍の迎撃を抜けた一群が北壁へと迫る。

 ここからは英霊のみならず、人の兵士も命を散らす戦場。魔獣に対処しながら、キングゥと未だ姿を見せぬゴルゴーンを倒さねばならない。

 

「───ナメんな!!」

 

 ノアは口角を吊り上げて吼える。

 ゲンドゥルの杖を地面に突き刺し、靴の裏で乱暴に埋め込む。

 その瞬間、ノアの足元を中心に、地面におびただしい数の光点が広がっていく。色とりどりの光彩はその全てがルーン文字。それは軍が布陣する場所の隅々にまで行き渡った。

 魔獣の足がルーンの領域に踏み込んだ途端、光が膨れて拡散する。足が千切れ飛び、地を転がる獣にひとりの兵士が槍を突き立てる。

 それは魔獣の硬い皮膚に守られた背中を貫通し、死に至らしめた。

 人間と魔獣の激突。あらゆる肉体の強度で劣るはずの前者は確かに、後者を圧倒していた。

 味方の武装を強化し、身体能力を向上させ、敵のみを穿つ複合効果のルーン。ノアはゲンドゥルの杖を起点にして、一帯に埋設したルーンを起動したのだ。

 ノアは高らかな哄笑を響かせる。

 

「思いつきで開発した自動書記のルーンを一晩放置した陣だ! おまえらケダモノごときにはもったいねえくらいだなァ!! ヒャハハハハハ!!!」

「『やってることは本当にすごいのに……』」

「言動で損するこの感じ、源氏によく馴染めそうです」

「と、とにかく、これで魔獣の心配は無くなりました! そろそろゴルゴーンの神殿をぶった斬っても良いんじゃないですか!?」

 

 立香はキングゥへコードキャストを撃ち込みながら言う。

 北壁からゴルゴーンの神殿まではおよそ30kmだが、神剣に距離の概念は通用しない。何もかもを問答無用で切断する一刀は、対象が地球上にあるというだけで全てを射程に入れている。

 牛若丸は唇を固く切り結んで頷いた。

 

「お任せを! キングゥの動きにも慣れてきましたし、今なら邪魔されずに斬れます!」

「イレギュラーがあったとしても、メイン盾のお二人と私の城でどうにかしますわ!」

 

 牛若丸は剣を強く握り締め、顔を上げる。

 彼女は見た。魔獣の命を吸い取り、膨張する魔力を。キングゥの肉体を染める泥は物理的にも膨れ上がり、刻まれたルーンさえ取り込んで大地を侵食した。

 地球に満ちるマナの隷属。エレインの異界さえ呑み込む勢いで増大した力は、ただそこに存在するだけで空間を曲げるほどの威容を湛えている。

 リースは青褪めて歪んだ笑顔に、だらだらと冷や汗を流した。

 

「……ど、どうにかすると言っても限度がありますが。どう少なく見積ってもエクスカリバー以上の威力がありますわ、アレ」

「攻撃はマシュが防ぎます! リースさんの霧の城は被害を抑えるために使ってください!」

「立香殿、私は!?」

「待機でお願いします!」

 

 そうして、獣はその名を紡ぎあげる。

 

「───『■よ、始■■の叫を■げ■(ナンム・ドゥルアンキ)』」

「『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)』!!」

 

 口腔より解き放たれる、黒き極光。

 雪原に立ち現れる、純白の聖壁。

 世界の色が黒白に分かたれる。

 集めた魔力を熱量に変換して放つ、ただそれだけの単純な一撃。強大な力をそのまま振るう信念を形どったそれはしかし、無垢なる城壁の前に敗れ去った。

 その次に訪れる結末は決まっていた。

 

「『神剣────」

「『強制封印・万魔神殿(パンデモニウム・ケトゥス)』!!!」

 

 女神は、視線だけで異界を切り拓く。

 ゴルゴーンの魔眼、その真骨頂にして神髄。自らの視界そのものを魔眼の内に置き換え、その領域に存在するあらゆる生物から生命力を奪い取る、蛇の眼光。

 キングゥの奮戦は布石。

 全てはその魔眼によって、敵対者たちを葬り尽くすために。

 ゴルゴーンの瞳に映るのは数万の生命。

 肉体を、魂魄の一片までをも蕩かし啜る女神の視線。微塵の間も与えぬそれを逃れる術はとうに無かった。

 

 

 

 

 

「───その未来、視えていたよ」

 

 

 

 

 

 銀世界に、鮮やかな花弁が舞う。

 ゴルゴーンの視界に咲き乱れる花の園。

 それはエレインの氷の異界に重なるように現れた。

 暖かな陽射しが降り注ぐ雪空。

 雪原に咲き誇る繚乱の花。

 天を突く純白の塔と氷の塔。

 そこには、二つの異界が共存していた。

 矛盾が矛盾のままに存在する異常。けれど、その光景は幻術などではなく、疑いようもなく現実であった。

 花の魔術師マーリン。冠位の資格を持つキャスターの宝具。その名は、

 

「『永久に閉ざされた理想郷(ガーデン・オブ・アヴァロン)』」

 

 いまやこの世界は魔眼の裡。

 しかし、花の魔術師が在るところは全て、朽ちることなき永遠の妖精郷と成る。

 それ故に。

 全生命を溶解する魔眼の領域は意義を失った。

 

「───天叢雲剣』!!」

 

 神剣の一閃。

 振り抜いた斬撃に迷いは無い。彼女はたとえ魔眼に冒されていたとしても、その一刀を成し遂げてみせただろう。

 剣は直線上の何もかもを切り裂く。

 空を、地を、木々を。例外はひとつとして有り得ない。

 咄嗟に身を躱したゴルゴーンの右腕を断ち、女神の核心たる神殿を真っ二つにする。しかして、それらは全く同時に行われた。

 間合いを超越し、時間さえも無視する神剣の一撃───それを目の当たりにした瞬間、ノアたちは言葉を交わさずとも思考を同期させる。

 神殿はその役割を失くし、女神に傷を与えた。

 すなわち、この時こそが最大の好機。

 銃口から発射された弾丸のように、人間たちは走り出す。

 

「未来視───!! この現在(けっか)さえも貴様の目論見通りか!」

 

 ゴルゴーンは口角を歪めて哮る。苛立つ声音の裏には僅かな高揚が滲んでいた。

 失った右腕は即座に再生し、荒れ狂う蛇髪と尾が津波の如く襲いかかる。

 

「さて、それは誰に対して言っているのか、なっ!!」

 

 マーリンは振り向きざまに剣を振るう。背面に迫っていた泥の触手が弾かれ、明後日の方向の地面を穿った。

 人間たちがゴルゴーンを狙うというのなら、キングゥはそれを背後から刺すのみ。

 瞬間、騎士と精霊は同時に踵を返し、キングゥを見据える。

 

「お前と戦うのは二番煎じだが仕方ねえ! オレたちはリベンジは拒まない主義だ、相手してやるよ!」

「先程は面食らいましたが、今度はバッチリ止めてみせますわ! 円卓最強の騎士はランスロットでも、円卓最強の夫婦は私たちですっ!」

「……真面目にやろうという気はないんですかあの人」

「アナさん、いちいち気にしてたらあの雰囲気に呑まれますよ!」

 

 立香はアナの手首を引く。面を上げ、望むのは魔獣の女神ゴルゴーン。彼女さえ倒せば、ウルクが流す血の量は確実に減少するだろう。

 

貴様ら(にんげん)が奪い続けた命のように……無惨に潰れろ!!」

 

 視界を覆い尽くす、質量の嵐。

 工夫も細工もない、シンプルな圧撃。マシュとレオニダスは盾を構えつつ前に出る。ジャンヌはその二人の肩を掴み、押し退けるみたいに後ろに引き寄せる。

 

「片腕で私を除けるとは、良い筋肉です……!!」

「ええ、まるでゴリラのような腕力です!」

「うっさいわ! 攻撃は最大の防御よ、あんたら盾サーにばっかり良いツラさせてらんないでしょう! 立香、魔力寄越しなさい!!」

「う、うん!」

 

 魔女の五体を這う炎。それは一瞬にして高く燃え盛り、

 

「───『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』!!」

 

 黒炎と鉄杭の暴虐が、女神の迎撃を嬲る。雪と花の楽園に現れた黒炎の暴嵐は一層禍々しく、地獄のようにすら見えた。

 蛇髪を焼き焦がし、振るわれる尾を縫い留める。

 その時、飛び出した影がひとつ。

 不死殺しの鎌を携えた少女、アナ。

 未来の自分を殺すため、彼女は誰よりも速く駆け出した。

 

「もう言葉はいらない───あなたを、殺します!!」

「付け上がるな……!!」

 

 アナを迎え撃つ悪意がざわめく。無数の牙が、打撃が少女を細切れにする直前、花の氷原に冷たい光が充満する。

 

「氷塔、最大起動」

 

 光り輝く氷の塔。

 騎士王の聖槍ロンゴミニアド。それは星に貼り付けられたテクスチャを表面に縫い付ける最果ての塔の影、子機であった。

 湖の乙女エレインはこの世の誰よりも聖槍を知り尽くした精霊。さらに、三姉妹の中でも随一の魔術の腕を有する彼女はロンゴミニアドを再現するだけでなく、最果ての塔の機能をも自らの異界に付与することに成功していた。

 つまり。この塔が発する光は子機である聖槍/氷槍とは比較にならぬエネルギーを秘めた────────

 

「収束……射出───!!」

 

 ─────最果ての塔の一撃!!

 鋭く研ぎ澄まされた光線が、ゴルゴーンの心臓を射抜く。

 ただ霊核を破壊されただけならば、不死の象徴たる蛇神は悠々と再生してみせただろう。

 だが、それは聖槍ならぬ氷槍。

 肉体のみならず魂にまで作用する凍気を宿した光。

 ゴルゴーンの肉体に霜が降りる。傷口から凍りつくのは彼女の霊基そのものだ。

 

「───行ってください!!」

 

 マシュは盾に足を着けたアナを勢い良く打ち出す。

 空中を駆ける少女。次に彼女を狙ったのはゴルゴーンではなく、

 

「『母■、始■りの■を■■よ(ナンム・ドゥルアンキ)』」

 

 漆黒の獣、キングゥだった。

 轟く絶叫。叫びは空間さえ崩壊させる魔力の奔流へと生まれ変わる。眼前に立ちはだかる騎士と精霊はとうに意識の外。敵を滅する代わりにゴルゴーンを巻き込むことさえ考慮していない。

 狂気に堕ちた脳髄に、それを考える余剰は残されていなかった。

 

「リース!」

 

 自らの名を呼ぶ騎士の声に、精霊はこくりと頷く。

 異界に満ちていた霧が一点、リースが伸ばした右手の先に収束する。それは細長い先端から上へやや幅が広がるような形状だった。

 ───聖槍を最も理解する者がエレインだというのなら。

 アーサー王が振るいし聖剣。それを誰よりも把握しているのは、湖の乙女リースに他ならない。

 収束する霧が再現するのは星の聖剣か───否、聖剣と対を成す鞘こそを、リースは司る。

 

()()()()()

 

 幽玄なる妖精郷。かの王が眠りし島の名が、聖剣の鞘の名前だった。

 所有者を異次元に置き、あらゆる攻撃、あらゆる魔術、果ては魔法さえも防ぐ最強の防御。なれど、リースがそれを再現することは現在は元より、生前から不可能だ。

 霧の鞘が行使する力はオリジナルの模倣。

 所有者を異次元に置くことで護るのではなく、向かってくる攻撃を異次元に追放することで護る。

 キングゥの咆哮は霧の城を一瞬で貫通してみせただろう。単純な破壊力と耐久力の勝負であれば、彼に敵うモノはここにはなかった。

 霧の鞘の能力は防御でも回避でもなく、異次元への転送。何かを壊す力しか持ち得ぬ咆哮に、抵抗する術はありはなしない。

 キングゥの叫びは霧の鞘に吸い込まれ、そして共にどこかへと消えた。その行方はもはやリースにさえも分からない。

 そうして、アナはゴルゴーンと真正面から対峙する。

 

(姉さん、見ていてください)

 

 斬る。

 何があろうともこの体は止めない。止められない。

 アテナの呪いを受け、怪物と成り果てる前の自分がこうして在ること。その意味はきっと、この瞬間のためだ。

 ゴルゴーンの目には何も映ってはいない。ティアマトを偽称し、人を滅ぼさんとするなど冗談にしても質が悪い。そんな可笑しい自分さえ見えていないのなら、盲目も同然。

 ───そう、私だけは。

 どんなに変わり果てた未来の自分でも、目を背けたりなんかしない。

 だって、過去(いま)の私も、成長した私も、怪物になった私も、どれもメドゥーサという同じ名前を持つひとりだから。

 せめて。異なる場所でカルデアと共に戦った姉さんに胸を張れる妹であるために。

 醜いと言われた自分でも、受け止めて超えてみせる─────!!

 

「終わりだ」

 

 背骨を貫く悪寒。

 指先から、足先から、急速に熱が奪われていく。

 

「羽虫は羽虫らしく墜ちていろ」

 

 石化の魔眼。凍りついた体と魂で、それでも残った女神の核心。

 ちっぽけな小娘程度、石にするのは一秒とかからない。

 まず初めに体の操縦権を失い、次に体温を失い、五感が閉じていく。一秒とかからぬはずのそれは数時間にも感じられるほど長く思えた。

 思考までもが無機質になり、視界が闇に覆われ、音も尽きようとしていた時。

 

 

 

「「────令呪を以って命ずる!!」」

 

 

 

 その声が、魂を震わせた。

 立香とノアは背を押すように、

 

「しっかり前を見て───」

「───おまえの願いを果たせ!!」

 

 石の体に血が通う。

 感覚が冴えて、動かないはずの筋肉に力が籠もる。

 武器を握る手に力を込めた瞬間、びしりと指にヒビが入る。

 六画分の令呪によるブースト。限界を遥かに超えた性能を手に入れたとしても、この体は脆い石の塊だ。動作に耐え得る強度など持ち合わせてはいない。

 たとえゴルゴーンが手を下さずとも、アナは崩壊する。それは変えようのない事実だ。

 令呪とは結局のところ魔術であり。

 奇跡を起こすなんて、都合の良い魔法じゃない。

 

「く────あああああっ!!」

 

 それなら、奇跡を起こせるのは自分自身だ。

 

「…………!!」

 

 ゴルゴーンは見た。

 壊れていく体で、刃を振るう少女を。

 目を奪われた理由はとうに分からないけれど。

 

〝後は、貴女の努力次第だ〟

 

 知恵の女神との盟約。

 それが果たされるのなら、この身がどうなろうとも構わない。

 不死殺しの鎌が首を断つ。同時にゴルゴーンは自らの霊基を暴走させ、命の炎を撒き散らした。

 

「……アナさん!!」

 

 立香たちは煙の立ち込める爆心地に駆け寄る。

 ゆらり、と白む空間の中に黒い人影が揺れる。それは弱々しく地面を這いずり、煙の幕から抜け出した。

 体の大部分が石化したアナ。左足は膝から下が砕けており、左腕も手首から先が失われている。か細いが息は途絶えていない。マシュは石化した体が崩れないようにそっと肩を貸す。

 

「とても嬉しいばかりですが、あの爆発からどうやって生き延びたのですか?」

「残った令呪の魔力を放出して、爆風を弱めました。おかげで体じゅうボロボロですが……それと、マーリン、さん」

「なんだい?」

 

 アナは片足で花の魔術師のもとへ歩いていくと、右手をかざした。

 

「ばん」

 

 砂粒ほどの反物質が弾け、魔術師の胸に大きな風穴を開ける。

 マーリンはぽっかりと空いた胸元を握るように手の指を開閉した。

 

「───参ったな。これは流石に予想外だ……!!」

 

 アナの形が崩れ、黒白の少女に組み変わる。

 偽神サクラはつややかな唇を愉しげに歪め、

 

「はい、ドッキリ大成功〜♡♡ イシュタルさんイジメは分身に任せて、私は一週間前くらいから土と同化してたんですけど……ゴルゴーンが都合よく自爆してくれて助かりました! 今時自爆なんて流行らないと思ってましたが、これは評価を改めなきゃですね。それに変わり身の術、なんてニンジャみたいでかっこよくないです?」

 

 サクラは朗らかな笑顔を浮かべる。

 崩れ落ちるマーリン。弛緩しかけた空気が一気に張り詰める。その場の誰もが動こうとした直前、黒い影が上空より墜落した。

 

「ああ、そうだ。あなたにも用があったんでした」

 

 キングゥ。彼がサクラを襲ったのはゴルゴーンの死に様を揶揄されたからか、単に最も強い獲物への警戒か。

 泥に塗れた爪牙が稲妻より速く振るわれる。しかし、それらはサクラに到達する直前で衝撃そのものがキングゥ自身に反射した。

 自らの攻撃を受け、硬直する獣の首をサクラの細指が掴み取る。そのまま、彼女はもう一方の手をキングゥの心臓部へ突き刺す。

 

「あなたの目的は、私が果たしてあげます」

 

 手を引き抜く。

 その掌中には光り輝く聖杯が在った。

 

「太母を微睡みに誘う魔術師は消え、彼女の核となる聖杯は此処に」

 

 キングゥの体が地面に落ちる。まるで用済みになったものを捨てるように。

 少女の背より広がる灰色の石翼。

 ふわりと、サクラは宙へ舞い上がった。

 

「───ゲームをしましょう。みんなで、楽しい楽しいお遊びを」

 

 腰まで届く白髪を棚引かせ。

 この世のすべてを見下しながら、サクラは微笑んだ。

 

「プレイヤーは多い方が楽しいから────できるだけ無様に逃げてくださいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペルシャ湾。金星の女神イシュタルは、海へ注ぐ大河の流れを空から眺めていた。

 水平線へ沈む太陽が世界の色彩を塗り替える。

 茜色の空を望み、女神は盛大にため息をついた。

 

「はあ〜〜……神の武器に頼ったとはいえ、人間だけでゴルゴーンを倒したから、力を貸してあげても良いと思ってたんだけど」

 

 ゆったりと鎌首をもたげ、薄明に浮かぶ月を見遣る。

 

「その前に、貴女に付き合わないといけなそうね」

 

 視線の先には、月を背負う女。

 夕空に舞う、鮮やかな栗色の髪。薄いブラウンの瞳が冷たく光をそり返す。彼女は死人のように血色の失せた肌を、純白の外套で彩っている。

 女は切り結んだ唇を静かに開く。

 

「天の女主人イシュタル。多くの女神の起源となった女神……一目逢いたいと思っていた」

「そう、それは嬉しいわ。今じゃなかったらサインのひとつでも書いてあげたのに」

「───アシェラという神を知っているか」

 

 イシュタルは記憶の糸を辿るように顔を上げる。数秒経って、その眼差しを女へ投げかけた。

 

「私にはアシュタレトの名の方が馴染み深いわ。ええ、もちろん知ってる。アレと私はほとんど同じみたいなものだから」

 

 ああ、そう。金星の女神は納得したように呟く。

 

「微かだけど、貴女との繋がりを感じる。……なるほど、知恵の女神(ソフィア)なんて大層な名前を背負っていると思っていたけれど、そんなものまで抱え込んでいたの」

 

 イシュタルは目を伏せる。続く言葉が互いにとって善くはならないと感じていても、二人はそれを止めようとはしなかった。

 

「───可哀想に。貴女は、総ての人間を救う十字架にすら否定されていたのね」

 

 上空に吹く凍えた風が、さらに冷え込む。

 女は縋りつくように手を伸ばし、あらん限りの力で指を畳んだ。

 

「これは八つ当たりだ。が、私にとって必要なことでもある。人の世の終着のためにな」

「勝てると思う?」

「不安か?」

「まさか」

 

 胎動する魔力。

 戦いの幕開けは寸前。

 ここに、誰も知らぬ殺し合いが始まる。

 

「───術式総覧。書庫を展開。『真理の盤(ソフィア)』接続を開始」

 

 先に動いたのは知恵の女神。

 ぎゅるり、と彼女の周囲の空間が渦巻き、虚空より三冊の本を引き出す。

 それらは夜空に磔にされた、星のような輝きを宿していた。星々は光の尾を引きながら飛び回り、知恵の女神に寄り添うように止まる。

 

「禁書指定『神の理』を第666層まで限定解放」

 

 まるで手品のように、一冊の本が予兆もなくソフィアの右手に収まる。虚ろな白色の装丁。ひとりでにページがめくれあがり、静謐の光彩が昇っていく。

 

「儀式場検索───終了。第36儀式場『鏡面の月(リバースムーン)』を設定」

 

 薄明の空は深い夜空へと。

 月の模様が逆転し、色さえも暗黒に染まる。

 イシュタルは沸き立つ感情を抑え、拳を握り締めた。

 

「テクスチャの貼り替え───それくらいはやってみせるようね!」

「準備は終わりだ。貴女はもはや詰んでいる」

「いいえ、貴女が詰まされるのよ!!」

 

 イシュタルは即座に光弾を放つ。目にも留まらぬ速度で打ち出された弾を、ソフィアは最初から知っていたかのように悠々と回避する。

 その程度で動揺するイシュタルではない。先の射撃は目くらまし。ソフィアの裏を取り、右腕を勢い良く横に薙ぎ払う。

 腕の軌跡に散らばる、十の宝石。色とりどりの石が互いに共鳴し、発光する。

 

「───Anfang(セット)

 

 宝石魔術。魔術の起源としては古代メソポタミアやエジプトにまで遡る、旧き幻想。宝石に魔力を蓄積、流用することで高威力の魔術が一瞬のうちに発動可能となる。

 溜め込んだ魔力の量によっては、人間の魔術師であろうとサーヴァントにも致命傷を与え得る魔術。それをイシュタルが行えば、結果はその何倍にもなるだろう。

 イシュタルは逡巡を挟むことなく、魔力を点火した。

 

Es last frei(解放). Eilesalve(一斉射撃)───!!」

 

 十個の宝石を共鳴させ、魔力を数十倍に高めた一斉射撃。その威力は対城宝具の真名解放をも超える。

 虹色の閃光はソフィアの背へと伸び────

 

「『天の理』、粒子加速」

 

 ────その手前で、上方に軌道を変えた。

 跳ねるように、イシュタルは顎をそらす。ソフィアの頭上に開く黒色の穴。投射した魔力光は欠片も残さず吸い込まれ、ぴたりと穴が閉じる。

 ソフィアが振り向くより速く、イシュタルは大きく距離を取った。

 

「…………今のは」

「ブラックホール、とでも呼べば良いのかな。粒子を衝突させることでほんの一瞬だけ魔術としてアレを創造した。当然、そもそも目に見えない実物のそれとは違うがな」

「光さえ吸い込む暗黒天体───たかが宝石魔術ひとつ防ぐのに、大層な手間をかけたじゃない」

「貴女への敬意だよ。ところで、宝石は全部焼かれたはずだが……投影魔術か。貴女がそれをやると、とても間に合わせの魔術とは呼べないな」

 

 ただ、その場で魔力を込めるだけならば宝石は投影で事足りる。それは年月をかけて魔力を蓄積する宝石魔術の強みを消すことにもなるが、イシュタルの膨大な魔力量がそれを欠点にしていない。

 だからといって、溜め込んだ宝石を吹き飛ばしたサクラへの恨みが晴れるはずもないが。

 ソフィアはあくまでも怜悧に告げる。

 

「次は私の手番だ。『神の理』、術式転写」

 

 右の人差し指をイシュタルへ差し向ける。まるで、銃口を突きつけるように。

 

「これは、貴女の宝石魔術に比べればいささか不格好でな」

 

 ぞくり、と魂が震え立つ。

 突き出した指先。そのほんの小さな一点から目が離せない。

 

「この宇宙はビックバンより始まり、今もなお膨れ上がっている。その膨張速度は諸説あるが、約326万光年あたりに毎秒75kmと言われている」

「有り難い講釈をどうも! 宇宙博士にでもなったらどうかしら!?」

「───この魔術は、宇宙を広げるエネルギーをほんの爪の先ほど掠め取る」

 

 その時、指先に小さな光球が発生する。

 点にさえ見える光の粒。それはしかし、周囲の時空を歪め、シュルレアリスムの絵画のように風景を歪曲させていた。

 宇宙の膨張。ビックバンから続くエネルギーは今もこの世界を広げている。

 だが、終わりはある。宇宙を広げるエネルギーが有限ならば、それを使い尽くした時、宇宙の膨張は止まり、収縮へと向かう。

 それこそが世界終焉の形のひとつ、ビッグクランチ。ソフィアが発動させようとしている魔術は果てしなく微小なれど、それを招きかねないモノだった。

 宇宙の膨張を否定する。

 故に、その魔術の名は。

 

 

 

「『逆行起源・天地収斂(ネガ・インフレーション)』」

 

 

 

 宇宙から掠め取ったエネルギーを置換魔術によって魔力へ変換し、撃ち放つ。

 言ってしまえば、二工程の魔術。

 だがしかし、ソフィアが放った光は水平線の彼方まで吹き飛ばし────ペルシャ湾の総水量の30%を蒸発させた。

 

「く、うっ…………!!」

 

 眼下の惨状を気にする余裕もない。イシュタルは魔術の阻止も迎撃も諦め、回避のみに専念していた。

 命を繋ぎ止めた代償は右手右足の蒸発。即座に治癒魔術を発動し、傷口を止血する。加えて、投影した宝石を手足の形に整え、義肢として機能させる。

 イシュタルは砕けんばかりに歯を噛み締め、噛み付くように吼えた。

 

「よくもやってくれたわね!! 今まで引き篭もってたくせに、いざ出てくるとこう! これだからニートは困るのだわ、どこかの冥界女みたいに!!」

「エレシュキガルか。一応言っておくが、世間的にどちらがロクデナシと言われるかは理解しているか?」

「はああん!? なにその言い草! 今ので完全に同情心が失せたわ! じっっくり叩きのめしてあげる!!」

「叩きのめされる、の間違いだろう?」

 

 返しの言葉も上の空。イシュタルは怒濤の勢いで攻め立てる。

 光の矢と宝石が宙に星空を描き出す。絢爛なる攻勢にまさしく、金星の女神と呼ばれるに相応しい光景だった。

 ソフィアは機械的に、ひとつひとつの攻撃を潰していく。血肉を削り合う戦場にあって、しているのは戦闘ではなく作業だとでも言うかのように。

 

「『山脈震撼す明星の薪(アンガルタ・キガルシュ)』!!!」

 

 金星という概念を掌握し、弾丸として射出する超絶の宝具。巨大という表現も生温い金星の総質量に等しい弾を、超高速でソフィアへ叩きつける。

 たとえ暗黒天体を創ろうと、すべてを呑み込むことはできない。ソフィアは一切の防御を砕き散らす光条を前にしても、焦りの色を浮かべさえしなかった。

 

「術式参照、次元跳躍」

 

 知恵の女神は三次元を逸脱し、銃弾をやり過ごす。

 異次元の回廊を通り、イシュタルの背後へ。

 この次元で魔術を使っても、敵が存在する三次元に干渉することはできない。

 無論、知恵の女神はその程度の障壁をくぐり抜ける術などいくらでも知ってはいたが────イシュタルを倒すならば、対等の位置で、確実に、言い訳のしようもなく敗北したと思わせなくては、意味がない。

 なぜなら。

 そうでなくては、彼女を慈しめない。

 ───常人には至れぬ結論を胸に、とどめの術式を組み上げたまま三次元上に姿を現す。

 

「───そこっ!!」

 

 イシュタルは待ち兼ねていたように振り向き、宝石を解き放った。

 液体のように流動するエメラルド。それを喩えるなら、ウォーターカッター。翠の斬撃が、ソフィアを襲う。

 頭部を袈裟に分かつ刃は、触れる寸前で弾けた。

 念には念を。仕込んでいた防御術式の起動。安堵しかけた心はしかし、瞳に映る未来が揺さぶりかける。

 知恵の女神は反射的に目を瞑って顔を背けた。

 視た未来に現在が追いつく。イシュタルは固く握り締めた拳を、ソフィアの顔面目掛けて振り抜いていた。

 鋭い拳撃が頬を掠める。

 真っ白な肌を伝う血液。

 次撃は当たる。その確信は、ソフィアの魔導書が投射する魔弾に阻まれた。

 

「……目を閉じて顔を背けるなんて、案外可愛らしいところがあるじゃない。ペルシャ湾を干上がらせた人間とは思えないわ」

 

 知恵の女神は目を見開いたまま、両腕で自分を抱くようにして硬直していた。額に汗が滲み、ゆっくりと頬の傷に手をかざす。

 小さな切り傷は見る間に修復される。ソフィアは深く息を吐き、怜悧な眼差しを向けた。

 たったひとつのかすり傷に動揺する様を見て、イシュタルは呟く。

 

「……貴女、もしかして」

 

 すぅ、とソフィアは空気を吸い込み、その言葉を遮る。

 

「今の貴女は、とある少女を依り代にした存在だ。ただしそれは肉体だけであって、魂はイシュタルそのもの……意識はいくらか混ざっているようだが」

「はあ、それがどうしたの」

「イシュタル。貴女が世界の裏へ隠れたのはいつの時代だ? ギルガメッシュが神との訣別を成し遂げた時か、アーサーの王国が滅びた時か……」

「少なくとも後者は有り得ないわね。その時にはもう、神霊が存在できる環境ではなくなっていたから。メソポタミアの神々が消えたのはもっと昔」

「では、キリスト教の洗礼を受けたことは?」

「ある訳ないでしょ!!」

 

 ソフィアは小さく唇を吊り上げた。

 

「そうか。ならば、私の勝ちだ」

「───は?」

 

 知恵の女神、その右手が淡い光を纏う。

 それは微弱ながらも、透き通るような神性を湛えていた。

 

「ベツレヘムの星が輝いたあの日、ひとりの男が産まれた。やつはその最期に命を賭して、人類の原罪を持ち去った」

 

 ───そもそも、原罪とは。

 最初の人間アダムとイヴが神に背き、知恵の木の実を食した罪を指す。それ以来、アダムから受け継がれた血を引く全ての人間は、その魂に原罪を刻まれ生きてきた。

 それを取り払ったのが新しきアダム、かの救世主だ。彼が磔刑に処されたことによって人類を戒める原罪は消え去ったのである。

 イシュタルは腕を組んだままその話を聞いていた。とんとんと人差し指を忙しなく上下させ、苛立たしげに言う。

 

「知恵の女神だけあって、知識を披露するのが好きみたいね。いつまで聞いてればいいわけ?」

「ではオーディエンスに質問しよう。ダンテの神曲を読んだことは?」

「ない!!!」

「ダンテが訪れた地獄の第一圏には、洗礼を受けなかった人間が置かれている。ホメロスやウェルギリウスなどの救世主生誕以前の人間もな。分かるか、十字架の救いはそれを信じる機会が無かったというだけで、その人を切り捨てる」

 

 つまり。

 ソフィアは一瞬で距離を詰め、イシュタルの胸元に右手を当てた。

 

「〝新しき歌を主へと捧げよ。主は驚くべき偉業を成し遂げられる。右の御手、聖なる御腕によって、主は救いの御業を果たされる〟────『天の落涙(ヘヴンズティアー)』」

 

 右手の光がイシュタルへ乗り移る。女神は思わず、後方へ飛び退いた。彼女は赤面して胸元を手で庇う。

 

「な、なにをしたの!?」

「救世主の代わりに審判を施した。生前に悔い改めなかった者は地獄へ落ちる。……さて、貴女は洗礼を受けたことがなかったのだったな?」

 

 イシュタルは唇の端を引きつらせる。

 

「───ま、さか」

「その通りだ。冥界へ落ちろ、イシュタル」

 

 洗礼を受けていない人間を強制的に冥界へ叩き落とす、審判の術式。依り代の少女ならばともかく、イシュタルが洗礼を受ける機会などあるはずもなく。

 

「……なっ、なによそのインチキはーーっ!!?!?」

 

 光に包まれたイシュタルがその場から消える。

 目を丸くして、口を大きく開き、青褪めたその顔を見届け、ソフィアは踵を返す。

 知恵の女神はじとりと、ペルシャ湾を眺める。その海底を見透かすような瞳は淡く発光していた。

 

「喜ぶがいい、ゴルゴーン。貴女の願いは叶う」

 

 花の魔術師も、金星の女神も退場した。

 もはや厄介な障壁は存在しない。

 これより、人の世の滅びが始まる。

 

「───これでも、未来は明るいか? ギルガメッシュ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。