異世界学園の不適合者~史上最強の魔王の始祖、ボタンを押して異世界の学校へ通う~ 作:瓢さん。
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転移
ノウスガリアの策略を打ち破り、魔王再臨の式典を行ってから数日が立った。
ある日、俺は配下達を家に招いた。家から不思議なものが見つかったからだ。
「突然呼び出して、どうしたのよ?」
金髪の少女、サーシャ・ネクロンが訊いてくる。
彼女は視界に映るすべてのものの破滅因子を呼び起こし、自壊させる<破滅の魔眼>という魔眼を持っている。
「くはは。サーシャ、お前は理由がなければここに来ないのか?」
そう問うと、
「べ、別にそういうわけじゃないわよ。ただ、アノスが私たちを呼ぶって何かあったのかと思っただけよ」
ふむ、最初に俺と会ったときには俺のことをオモチャなどと言っていたのに、なかなかどうして丸くなったものだ。
「サーシャは優しい」
そう微笑んだのは、銀色の髪の少女、ミーシャ・ネクロンだ。
彼女はサーシャの双子の妹で、<創造の魔眼>という頭に思い浮かべたものを見ただけでそれを創出する魔眼を持っている。その創造魔法の腕は今では我が魔王城デルゾゲードを創れるほどに達している。
「それで、私たちを呼びだした理由は何ですか?」
首を傾げたのは栗色の髪を持つ少女、ミサ・レグリアだ。
彼女は俺の右腕であるシン・レグリアと大精霊レノとの娘であり、俺の噂と伝承を持った大精霊だ。俺を倒す神の子アヴォス・ディルヘヴィアとしてノウスガリアによって生み出されたが、今では普通の精霊として生きている。
「僕たち全員が集まるなんてよっぽどのことじゃないかな?」
白髪の少年レイ・グランズドリィも同じく疑問に思っているようだ。
彼は「錬魔の剣聖」と呼ばれ、魔剣だけではなく、聖剣や霊剣、神剣をも扱うことができる男だ。
その正体は二千年前に俺と何度も死闘を繰り広げた勇者カノンが魔族に転生した姿だ。転生前と同じく七つの根源を持ち、人の名工が鍛え、剣の精霊が宿り、神々が祝福した聖剣「霊神人剣エヴァンスマナ」を操ることができる。ちなみにミサの恋人だ。
「実は、このようなものが見つかってな」
と言いながら俺の家で見つかった
それは赤い円形のものが出ている青く四角い箱。俗にいうボタンであった。
「んー、これがどうかしたのかな?見たところただのボタンみたいだぞ」
黒髪の少女エレオノール・ビアンカがそのボタンをじっと見る。
彼女は人間だが、ただの人間ではない。かつての人間界の王ジェルガによって生み出された人間魔法<
「このボタンは昨日の夜に母さんが見つけたものでな。母さんに聞いたところ見たことがないらしくてな。父さんに聞いても同じだった」
俺も見覚えがなかった。どこぞの誰かがいたずらで俺の家に置いたのか?いや、俺も父さんも母さんも家にいないのなら家は結界化している。そこらの魔族が入れる結界ではない。つまり、犯人は二千年前の魔族か?いや、それほどの実力のものならば家に入った時点で俺が気付いているはずだ。わからぬ。
しかも、それに加え、
「触った者にしかわからぬと思うが、このボタンからは何か異様な力を感じる。この世界のもののような、それでいてこの世界のものではないような力だ」
このような力は二千年前にも感じたことはなかった。
「……怪しい……です……」
そう目をときめかせたのは紫色の髪の小さな女の子、ゼシア・ビアンカだ。
彼女は<
「それで、どうするのよ?そんな力があるなら壊すとかすればいいんじゃないの?」
「すでに試した。だがな、<
まあ、それ以上の魔法をぶつければ壊れるかもしれぬがな。ここでやると周りにも被害が出る。
「じゃあどうすればいいのよ…。」
サーシャが考えていると、隣からミーシャが、
「押してみる?」
まあ、ここまで来たら押すしかないのかもしれぬな。
「それはまずいんじゃない?何が起こるかわからないんでしょ?」
ボタンを押すことはサーシャは心配しているようだ。
「僕は押すほうに賛成かな。何が起こるのか少し楽しみだしね」
とレイが答えたので、ミサも、
「レ、レイさんがいいなら私も賛成です」
「うーん、僕は反対かな。ゼシアに何かあるかもしれないかもだぞ」
「……ゼシアは……大丈夫……です……」
エレオノールは反対、ゼシアは賛成か。
「くはは。サーシャ、エレオノール、そのことなら大丈夫だ。心配する必要はなくなったのだからな。」
「「どういう事なの(だぞ)?」」
「もう押した」
「はぁ!?」「押しちゃったのっ!?」
彼女たちの視線の先にはボタンを押した俺の姿があった。
ピ~ンポ~ン
「な、なんか変な音したわよっ!?」「く、空間がなんか歪み始めたぞっ!?」
ふむ、確かに空間が歪み始めたな。この様子だとどこかに転移させるというのか妥当か。賛成派だったミーシャたちも予想外の出来事に多少慌てているようだ。
面白い。どこに転移させてくれるのやら。
「このボタンを押したのはどうやら正解だったようだな!」
「どこが正解なの!?馬鹿なのぉぉっっ!????」
視界が真っ白に染まる中、サーシャの叫び声だけが響いていた――――――――
ところでまだ俺の自己紹介をしていなかったな。
俺の名はアノス。暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴードだ。二千年前に人間と精霊、神々との戦いを終わらせるべく創造神ミリティア、大精霊レノ、勇者カノンの魔力と、俺の命と魔力すべてを使い千年間の間、人間界、魔界、精霊界、神界を隔てる壁<
壁を作るときに転生し二千年後の今、こうして生きているわけだ。
転生してからもいろいろあったが、ここで語る必要はないだろう。
この物語は、俺と俺の配下が見知らぬ世界で別の世界の者たちと学園生活を送る物語だ。
この物語の結末がどうなるかは、貴様たちに見届けてほしいものだ。
気が付くと見知らぬ場所に立っていた。見知らぬ建物が並び、目の前には白く大きな建物が鎮座している。周りは緑のひもで編まれた壁のようなものに囲まれ、足元には何やら白い線が長丸く引かれ、それが内側に何重にも引かれている。
ふむ、こんな光景は俺がいた世界のどこにもないな。ということは、ここは俺がいた世界ではない、という事か。
そのことを裏付ける証拠として、この世界で感じる力は、ボタンから感じる力と同一のものだ。間違いなく、別の世界だろう。
「ここはどこなのかな?」
声のするほうを向いてみると、そこにはレイがいた。周りを見ると、あの時家にいた俺の配下が全員立っていた。ミーシャたちもこの世界に送られてきていたか。
「アノスッ!!どうするのよこれ!ここがどこか全然わからないんだけどっ!!」
サーシャが怒鳴ってくる。エレオノールも、
「どうするんだぞ…」
少し途方に暮れていた。
とりあえず俺はミーシャたちにここが別の世界だということを告げた。
「別の世界って、これからどうすればいいんでしょうか…?」「一度、人を探してみる?」
ミサとミーシャが周りを見ている。確かに、ここにいてもこれ以上情報は得られそうにないな。人を探してみるか。
そう思い、周りに人がいないか確かめようとしたとき、
「お前達、一体何者だ?」
と後ろから声が聞こえてきた。振り向くと、そこには、見たことがない服を着た、豪快かつ活動的な風貌をした男が立っていた。
誰だこの男は?この世界の住人か?
「貴様こそ何者だ?名を聞きたいのなら先にそちらから名乗るのが礼儀というものだろう」
男は少し考えるそぶりを見せた後、自分の名を名乗った。
「クルト・フォン・ルーデルドルフだ。この学校の校長をやっている」
この学校?この白い建物のことか。なるほど、この建物は教育施設というわけか。
「アノス・ヴォルディゴードだ」
俺と配下たちは、ルーテルドルフにそれぞれ自己紹介をした。
「アノス、といったか。お前ら、どうしてここにいる?」
「妙なボタンがあったのでな。そのボタンを押したらここに転移させられた」
そう答えると、ルーテルドルフは少し考え、誰にも聞こえないようにか、こう小さくつぶやいた。
「どういうことだ…?新しい世界の者が来るとは、予想外の出来事だぞ…」
なるほど。どうやら俺たちは招かれざる客らしいな。まあ、関係ないが。
「ここはどこだ?貴様、何か知ってはいないか?」
ルーテルドルフにそう問うと、彼は少し考え、
「教えてやってもいいが、一つ条件がある」
と答えた。まあ、そうだろうな。こちらもタダで教えてもらえるとは思っていない。条件の一つぐらいは出してくるだろう。
「聞こう」
「この学校に入学し、最後まで過ごすことだ。それができたらこの世界のことを教えてもいいだろう」
なるほど。ルーテルドルフからしたら、俺たちは招かれざるものだ。ここに入らせて監視しようというのだろう。
その程度なら呑んでもいいか。
「いいだろう。その代わり、<
ルーテルドルフの前に魔方陣を展開する。
「これは…?」
ルーテルドルフが俺を見る。
「これは<
今回の<
「分かった。調印しよう」
ルーテルドルフは<
それにしても<
振り向くと、俺とルーテルドルフの話を聞いていたミーシャたちに、
「聞いていたと思うが、俺たちはこれからこの学校で過ごすことになった。まあ心配するな。アルクランイスカに比べればなんてことないだろう」
と告げると、
「まったくもう、しょうがないわね…。相変わらず私の魔王様はこうなんだから」
「私たちなら平気」
サーシャとミーシャはこういうことは日常茶飯事だとばかりに首を振り、
「異世界なんて言ったことないからワクワクするよ。ね、ミサ」「はい。どこの世界でも、私達は大丈夫ですよー」
レイとミサも笑顔で返す。
「アノス君がそう言うなら、仕方ないんだぞっ」「……頑張り……ます……」
エレオノールとゼシアはなんだか楽しそうだ。
この俺の配下なのだ。そのくらいの心構えでないとな。
「ところで、俺たちはどのクラスに入ればよいのだ?」
「実は一人しかいないクラスがあってな。お前たちにはそこに入ってもらう」
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