異世界学園の不適合者~史上最強の魔王の始祖、ボタンを押して異世界の学校へ通う~ 作:瓢さん。
すぐ直しました。
今回はぼっちが出てきます!
「後のことは任せたぞ、ロズワール先生」「わーかりまぁーした」
すると、ルーテルドルフの後ろから、一人の男が現れた。
青と黄色の瞳を持ち、顔を白く塗り、道化のような恰好をした男だ。どことなくエールドメードに似た雰囲気を感じる。
「アノス君、だったかぁーな。今から君たぁーちを案内すぅーるよ」
奇妙なしゃべり方だな。まるで本当の自分を隠すために使っているような、そんな口調だ。
人間にしては、魔力も多いほうだ。まあ二千年前にはこの程度のやつなどゴロゴロいたのだが。
「わぁーたしの名前はロズワール・L・メイザースだぁーよ。ロズワール先生と呼んでもらってかぁーまわないよ」
「まあ、考えておこう。案内してくれるというのは本当か?」
「本当だぁーよ。ここで嘘を言ってもしょうがないじゃーあないの」
「すまぬな。あまりにも貴様が胡散臭いのでな」
「よく言われぇーるよ」
なかなか面白い男だな。
「ねっ、ねえ。あんな胡散臭いやつに本当に案内させる気なの?」
サーシャはロズワールを警戒してるようだ。
「なに、案内してくれるのならいいではないか。エールドメードと奴、どちらが胡散臭いと思う?」
「あははー。それはエールドメード先生ですねー……」
ミサが苦笑しながら俺について来る。
「それに、別に危害を与えるつもりもなさそうだしな」
まあ、もしも危害を与えようとしてきても、傷つけずに無力化する手段などいくらでもある。奴程度の実力なら容易だろう。
「まあ、エールドメード先生に比べたらね……」
とサーシャが納得したのか、俺について来る。
「では、出発すぅーるよ」
そうして俺たちは、3組と呼ばれるクラスの扉の前まで案内された。
案内される途中で学校の内装をいくつか見せてもらったが、やはり魔王学院のとはまるで違うものだった。
改めてここが異世界だということを認識させられる。
「君たちにぃーはこのクラスで過ごしてもぉーらうよ」
この教室で俺たちは授業を受けるわけか。
「今日はもうそろそろ下校だぁーからクラスメイトと顔合わせだけでもしたほぉーうがいいんじゃ―あないかな?」
確か、一人だけいると言っていたな。
「確か、一人だけクラスメイトがいるんだったよね」「一人だけって、大丈夫なんですかそれ……」
レイとミサは例の一人だけのクラスメイトに興味を寄せているようだ。
クラスに一人だけというなら、それはこの学校の問題だと思うがな。
俺たちが意図されずに転移されてきたので、ルーテルドルフはこれを好機と思ったのかもしれぬな。
「そぉーれでは、私はこぉーれで失礼すぅーるよ」
そう笑うと、ロズワールは廊下を歩いて行った。
「ミーシャ、何か見えたか?」
ミーシャは感情の機敏を読むのに長けている。ゆえに、案内中にミーシャにロズワールを
「深い後悔と無力感。それに、激しい怒りと強い願望が見えた」
なるほど。となると、やはりあの口調は偽りか。自らの素顔を隠し、口調すら変えて、道化のように生きる。そこまでして、奴は何を成し遂げようとしているのやら。
「奴に何があったのかは知らぬが、それは奴自身の問題だ。誰でも必ず一つや二つ、秘密や秘められた過去を持っているものだ。気にする必要はないだろう」
必要以上に踏み込むことはしないが賢明だろう。
そんなことより――――
「それよりもアノス君、1組と2組にとんでもない魔力を持った人がいるの、気付いてる?」
エレオノールも気づいていたか。確かに1組と2組から尋常ではない魔力を持った者の気配がすることには気付いていた。数人だけだが、かなりの手練れだろう。
「すごい魔力」
「これ、結構ヤバいんじゃないかしら……?」
「面白いね。お願いしたら戦ってくれるかな?」
ミーシャやサーシャ、レイも気付いているようだな。
それにしても、すさまじいな。二千年前でもこれほどの実力を持った魔族は百人もいなかっただろう。面白くなってきたものだ。
「まあ、敵対しないのなら今は別段気にする必要はないだろう。それよりも、クラスメイトにあいさつに行くのが先だ」
「……クラスメイト……ワクワク……します……」
ゼシアも待ちきれないようだしな。
「では……開けるぞ」
俺は扉に手をかけ、ガララッと引いた。
教室の中には、たくさんの机と、それと同じ数の椅子があった。
なるほど。魔王学院とは違って、一人につき一つ、机を持つ様式か。
そして、教室の中心には、一人の少女が帰り支度をしていた。
セミロングの黒髪をリボンで束ねている。燃えるような赤い瞳を持ち、芯が強そうながらどことなくおとなしめな顔立ちをしている。黒いマントと黒いローブを身に着け、腰には短剣を差していた。
少女は扉があいた音が聞こえたのかこちらをちらりと見たが、すぐにまた帰り支度をし始めた。
ボソッ「またいつもの幻覚ね…。今日はたくさん来たわね」
幻覚?何のことだ?そう思い、少女に声をかけようとしたのだが、声をかける前にサーシャが少女に向かってずんずんと歩み寄った。
「ちょっとあなた、アノスを無視するってどういうつもり!?」
いきなり至近距離で怒鳴られたからか、少女は
「うひえっ!??」
と驚いている。まあ、いきなり怒鳴られたら驚くかもしれぬな。それにしても珍妙な悲鳴だ。
「うひえ、じゃないわよっ!!アノスを無視するってどういうつもりか聞いてるのよっ!!」
「ごごご、ごめんなさい!あんまり人がこの教室に入ってくることがないから、てっきりいつもの幻覚かと思って!」
なるほど、俺のことを幻覚かと思ったわけか。しかし、いつも幻覚を見ているとは、どういう生活を送っているのだ?
「幻覚ってどういう事よっ!?アノスが幻覚に見えたっていうのっ!?」「ひいいっっっ!?」
なおもサーシャの少女への追及は止まらない。
少女がなんだか泣きそうになってきたことだし、サーシャを止めるとするか。
俺はサーシャをなだめるように彼女の頭を軽く押さえつけた。
「ちょ……ちょっと……アノス……手っ、いきなり、何よ?」
「そう怒るな、サーシャ。何か向こうにも事情があるのだろう」
そう言うと、若干ふてくされたように彼女はそっぽを向く。
「……だって、あなたが幻覚だなんて……」
小声で、俺にだけ聞こえるように、サーシャは呟いた。
「気持ちはうれしいがな。彼女には俺が幻覚に見える
「まぁ、そうかもしれないけど……。手……放してよ……」
前にもアルクラインスカでこのようなことがあったな。
言われた通り、すっと手を離すと、「あ」とサーシャが声を漏らす。
「どうかしたのか?」
「何でもないわ……」
と彼女は呟いた。
「……あの……」
声がしたほうを向くと、先ほどの少女が頭を下げていた。
「すみません。無視なんてしちゃって……。それに、幻覚なんて言って……」
「気にするな。過ちなど誰にでもあるものだ」
「はい……。ありがとうございます」
「こちらこそすまぬな。俺の配下が失礼をした」
「いえ……」
と再び少女は頭を下げた。
「ところで、先ほど言っていた、人がこの教室に入ってくることはないとは、どういうことだ?」
少女は何か言いにくそうにしていたが、決意したように顔を上げた。
「わ、私、友達があんまりいなくって……。それで、この教室に入ってくる人があんまりいないんです……」
なるほど。友がいないという事か。
「私……、元の世界でも友達がいなくって……それで……」
それで、教室に人が入ってこないので、俺のことを幻覚だと思ったわけか。
サーシャを見ると、申し訳ない顔をしていた。
「ごめんなさい……。あなたにそんな事情があったのに、あんなにどなって……」
すると、少女は慌てて、
「いっいえ、いいんですよ。大丈夫ですから。私、友達少なくてもやっていけてますから!一人でゲームとかして何時間も時間をつぶすことも、もう慣れてますから!」
全然大丈夫ではないがな。どれだけの間、友達がいなかったのだこいつは?
「それに、友達って言ってもまともな人はいませんし……。もう半分諦めてますし、一人でもやっていけますから!」
そういって、少女は笑った。しかし、その笑顔は、どこか作られている偽の笑顔だった。
俺には孤独がどれだけ寂しく、つらいものかをよく知っている。
母は死んだ。父は死んだのか、俺を捨てたのか、わからない。俺は、生まれたときから孤独だった。
二千年前にも戦いの最中に家族や友人、恋人を亡くし、孤独のまま死んでいったものをよく知っている。そのようなものをもう二度と生み出さぬよう俺は戦争を終わらせた。
俺は魔王再臨の式典で俺は悲劇を許さぬと誓った。だからこそ、この少女を捨て置くことはできぬ。
この少女はもうあきらめ、受け入れたのかもしれぬ。
しかし、見ているがいい。
俺は、アノス・ヴォルディゴードだ。
「ごめんなさい……。初対面の人に向かってこんなこと言っても仕方ないですよね……」
少女は申し訳なさそうに謝る。
その謝罪を、俺は鼻で笑い飛ばす。
「半分諦めた?一人でやっていける?何を言っている、お前は?」
俺の言ったことを理解できていないのか、少女はキョトンとしている。
「友ならここにいるだろう。七人も」
いつの間にかミーシャたちが俺と少女の周りに集まっていた。
「俺たちは今日からこのクラスに編入する。いわば、俺たちはお前のクラスメイトだ」
今はまだ、友ではないかもしれぬ。しかし、この教室で共に学び、少しずつお互いのことをわかっていけばいい。
「貴様は決して孤独などではない。俺が、いや俺たちがいるのだからな」
少女は、少しうかがうような顔で、
「ほ、本当にいいんですか?こ、こんな私と友達になって?」
「大丈夫」「全然いいわよ」「困っている人を助けるのも勇者の使命だしね」「あははー。もう友達出来ちゃいましたー」「お友達がまた増えたぞっゼシア」「……お友達……百人……です……」
少女の問いにミーシャたちはそう笑いかける。
「そういうわけだ。友になってくれるな?」
俺は、少女の前に手を差し出した。
「わ、私が変なこと言っても嫌いになったりしませんか……?じ、事前に知らせずに遊びに行っても、いいんですか……?」
やれやれ、まだそんなことを気にしているのか。
「くはは。そう心配するな。その程度で貴様を嫌ったりはせん。俺は、魔王アノス・ヴォルディゴードだ。貴様の前に立ちふさがるありとあらゆる理不尽は、この俺がすべて滅ぼしつくしてみせよう!」
と宣言した。
すると、少女はおもむろに俺の手を握り……
「こっこんな私ですが、よろしくお願いしますっ!!」
と、とびきりの笑顔を見せた。
それは、先ほどのような作り笑いではなく、今まで心を押し殺してきた少女の、心からの笑顔だった。
そして、その後にお互いに自己紹介をしたのだが……
「我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、上級魔法を操るもの。紅魔族随一の魔法の使い手にして、やがて紅魔族の長となる者!」
とローブをひるがえしながら名乗ったときは、俺たちは皆あっけにとられたものだ。
隣に座り、ゆんゆんの自己紹介を聞いていたサーシャは、小さな声で、
「友達出来ないのって、これが原因じゃないかしら……」
――――――俺もそう思うぞ。
ゆんゆんは友達出来てもおかしくないと思うんですけどねぇ……。
誤字などがあればご指摘お願いします。