異世界学園の不適合者~史上最強の魔王の始祖、ボタンを押して異世界の学校へ通う~   作:瓢さん。

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慌ただしい一日の終わり

「それじゃあ、またあとで!」

 

 

 

 ゆんゆんは一度家に戻った。荷物を家に置いてから来るらしい。

 

 その間に俺たちは部屋を選んだ。レイとミサ、サーシャとミーシャ、ゼシアとエレオノールの二人で泊まるらしい。

 

 しかし、今日はお泊り会だ。ちゃんと別に寝室も用意してある。

 

 部屋を決め終わったちょうどその時、コンコン、とノックの音が聞こえた。

 

 門を開けると、ゆんゆんが立っていた。しかし、俺は一瞬立っている人物がゆんゆんなのかわからなかった。なぜなら、

 

 

 

「お…邪魔します……。重い……」

 

 

 

 ゆんゆんの顔が隠れるほどの、大量の箱を抱えていたからだ。

 

 

 

「わーお……。箱がいっぱいだぞ」

 

 

 

「……崩れ……そうです……」

 

 

 

 高く積み上げられた箱は、いまにも崩れ落ちそうだった。

 

 

 

「そんなに何を持ってきたのよ……」

 

 

 

 サーシャの問いに箱を机に置いたゆんゆんが恥ずかしそうにしながら、

 

 

 

「お、お泊り会なので……。部屋に合った遊び道具全部持ってきちゃいました……」

 

 

 

 よほど楽しみだったようだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダイレクトアタックだ」

 

 

 

「また負けた……。アノス、少しは手加減しなさいよっ!」

 

 

 

 俺たちはいま、ゆんゆんが持ってきたゲームをやっている。

 

 俺とサーシャがやっているのはカードゲームなのだが、これがなかなか面白い。

 

 モンスターだけでなく、多彩な魔法や相手の行動を阻害する罠のカードなどがあり、組み合わせによっては無限に戦略を作れそうだ。

 

 これはゆんゆんが作ったデッキなのだが、いつか自分で自分だけのデッキを作ってみたいものだ。

 

 

 

「そのデッキを完璧に使いこなせるようになったな、サーシャ」

 

 

 

 ゆんゆんはなぜかデッキをたくさん持っていた。俺たちはそのデッキを借りているわけだ。

 

 なぜそんなにデッキを持っているのか聞いてみると、

 

 

 

「ずっと一人だったので……二つのデッキを使って一人で対決をしていました……」

 

 

 

 ゆんゆんはぼっちだったゆえに、一人でもオセロなどの対戦型ゲームを楽しむことを極めたらしい。

 

 俺達が友達にならなければ、ゆんゆんは自分に気を引かせるために何か大変なことをやらかしただろう。

 

 

 

「そりゃ同じデッキで百回も対戦をすれば使いこなせるわよ……。アノスなんて二回目ぐらいでもう使いこなしてたじゃない……」

 

 

 

 ちなみに百戦全勝だ。

 

 向こうでは、ミーシャとゆんゆん、ゼシア、エレオノールが神経衰弱をしていた。

 

 

 

「ここと、これで」

 

 

 

「またそろいました!すごいですねミーシャさん!」

 

 

 

「わおっ、ミーシャちゃん神経衰弱すっごく強いぞ!」

 

 

 

「……ほとんど……取られました……」

 

 

 

 ミーシャが圧勝していた。

 

 彼女は見たものを瞬間的に記憶することができる。どのトランプがどこにあるかなど、彼女にとっては造作もないことだろう。

 

 

 

「うっ……うっ……」

 

 

 

 ゆんゆんを見ると、涙を流していた。

 

 

 

「!?ゆ、ゆんゆんちゃんどうしたんだぞっ!?」

 

 

 

 エレオノールが心配する。

 

 

 

「いえ、みんなと遊べるのって何か月ぶりかしら、って思って……」

 

 

 

「この子、本当に重症だぞっ!!!」

 

 

 

 エレオノールが涙ぐむゆんゆんに突っ込む。ちなみに彼女は一回もそろっていない。

 

 重症なのは理解できていたが、ここまでとはな。彼女の世界の住人は彼女に対して何もしなかったのか?そんな疑問がわいてきた。

 

 

 

「You win!」

 

 

 

「僕の勝ちだね」

 

 

 

「また負けちゃいました……」

 

 

 

 後ろでは、レイとミサがテレビゲームというものをしている。

 

 テレビというものが俺の世界にないので、彼女の記憶を読み取り、<創造建築(アイリス)>で創った。

 

 それにしても、なんだあれは?細かい部品が山のようにあり、それが複雑に配置されているので、俺が予想していた以上に魔力を使った。途中からは複雑な魔方陣を構成するのに似ているのに気づいたので、楽に作ることができたがな。この世界には俺の知らぬことがまだまだあるようだ。

 

 テレビゲームも初めて知った。コントローラーの使い方が少々複雑だったが、テレビを創造することに比べたらなんてことはなかった。

 

 二人がやっているのは格闘ゲームというらしく、様々な戦士の中から一人を選び、相手を画面外に吹き飛ばすゲームだ。ダメージを与えれば与えるほど相手が吹き飛びやすくなるらしい。

 

 戦士にもいろいろあり、相手の技と姿を模倣するピンク色の丸い生物や赤い鉢巻をした武闘家、雷を操るネズミなど多種多様でそのすべてが興味深い戦士ばかりだった。

 

 先ほどのカードゲームといい、面白いものばかりだ。元の世界に戻れたらこのゲームを作ってみるか。流行るかもしれぬ。

 

 

 

「そろそろご飯にする?」

 

 

 

 ミーシャが聞いてくる。もうそんな時間か。時間がたつのは早いな。

 

 

 

「そうだな。そろそろ飯にするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食はキノコグラタンだ。食材は<食料生成(ロウズ)>で生み出した。魔力を食料へ変換するのは、お世辞にも効率が良いとは言えぬ上に、魔法術式はひどく難解だが、八人分くらいの食材なら余裕で生み出せる。

 

 俺とレイは食材を切り、ミサとゆんゆんが切った野菜を洗い、サーシャとミーシャが調理をしている。エレオノールとゼシアはパンを焼く係だ。

 

 サーシャは前は料理の腕は壊滅的だった。

 

 あの時のサーシャの料理は食材と食材が魔力反応を起こし、破滅的な闇が産声を上げていた。どうしたらこのような闇を生み出すことができるのか、疑問に思ったほどだ。

 

 しかし今はミーシャと母さんとの特訓のかいあってか、彼女の料理の腕はミーシャと同じレベルまで達していた。

 

 こういった配下の成長は、喜ばしいものだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 調理の過程で、レイとまた野菜の皮むきの対決をした。今回はレイもピーラーを使っている。今回の勝負は引き分けだった。レイも腕を上げたな。

 

 

 

「ピーラーで……野菜を切るなんて……」

 

 

 

 ゆんゆんは目を丸くしていた。まさかピーラーで野菜を切るとは思いもしなかったのだろう。

 

 

 

「そう驚くな。道具を本来の用途にしか使えないようでは、始祖とは言えぬ」

 

 

 

 まあ、この時代は平和だからな。いつでも包丁が手に入るのなら、ピーラーで野菜を切る必要もあるまい。しかし、二千年前は違ったからな。

 

 

 他にも、ゆんゆんに彼女の世界の常識を教えてもらったりもした。

 

 

 

「ほう。貴様の世界では野菜が動くのか」

 

 

 

「そうなんですよー。たまに人が死んじゃったりします」

 

 

 

 どんな生命力なのだ、その野菜は。

 

 

 

 そんなこんなあったが、無事料理は完成した。

 

 

 

「これすっごくおいしいです!」

 

 

 

 ゆんゆんがサーシャとミーシャが作ったキノコグラタンに舌鼓を打っていた。

 

 

 

「このグラタンの作り方って、教えてもらうことできますか?」

 

 

 

 ゆんゆんがミーシャとサーシャにお願いしている。よほど気にいったようだな。まあ、特別な食材とかは何も使っていないので、彼女の世界でも作れるだろう。

 

 

 

「わかった」「別にいいわよ」

 

 

 

 ミーシャとサーシャが了承する。やったぁ、とゆんゆんは喜んでいる。

 

 夕食が終わったことだし、ゲームの続きでもするか。

 

 そう思っていると、気持ちが落ち着いたのか、ゆんゆんがこんな提案をしていた。

 

 

 

「あの、皆さん、明日私のこの世界を案内させてくれませんか?」

 

 

 

 この世界を案内?それはありがたいのだが、明日も学校があるのではないか?放課後だけでこの世界をすべて案内するのはさすがに無理がある。

 

 そんな俺の思考を読み取ったのか、ゆんゆんが説明した。

 

 

 

「大丈夫です!今日は金曜日なので、明日と明後日は休日なんです」

 

 

 

「じゃあ、案内をお願いしようかな。いいよね、アノス?」

 

 

 

 レイがこちらを向く。そうだな。明日が休日なら何の問題はないな。

 

 

 

「ああ。では案内させてもらうとするか、ゆんゆん。明日の案内、お前に任せたぞ」

 

 

 

 そう告げると、ゆんゆんはいかにも任されました!といった顔で、

 

 

 

「はい、わかりました!」

 

 

 

 と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後は、皆で先ほどレイとミサがやっていた格闘ゲームをした。

 

 

 

 ドォォン

 

 

 

「きゃー!負けちゃいました……」

 

 

 

 ドォォン

 

 

 

「あー、あとちょっとだったぞ」

 

 

 

 ドォォン

 

 

 

「相変わらずアノスは強いね……」

 

 

 

「You win!」

 

 

 

 これで俺の十五連勝だ。大抵最後は俺とレイの一騎打ちになるので、そうなるともう俺の勝ちは確定したものだ。完全にこの戦士の動きや特徴を把握した。俺が負けることはないだろう。

 

 

 

「全員でアノスを狙うのよ!あいつを一回でも負かしてやらないと気が済まないわ!」

 

 

 

 サーシャの提案に皆乗ったのか、次のラウンドでは皆の戦士が俺の戦士に攻撃を仕掛けてきた。

 

 俺は目の前にいた一人をつかみ投げ飛ばし、二人をスライディングでふきとばし、背後から襲ってくる矢を跳んでかわし、目の前の一人の頭をつかみ地面にたたきつける。間髪入れずに残りの三人が攻撃してくるが、先ほどのように冷静に対処する。

 

 共闘しているとはいえ、一応は敵なのだ。同士討ちなども起こるので、楽に対処できた。結果、全員を一人で画面外に吹き飛ばした。十六連勝だ。

 

 

 

「全員で攻撃しても勝てないってどういうことなのよ……」

 

 

 

「……悔しい……です……」

 

 

 

 サーシャが机に突っ伏し、ゼシアは悔しそうな表情を浮かべる。

 

 

 

「数に頼った戦術は個々の思考をおろそかにする。動きが先ほどよりも単純だ。全員で攻めてもいいが、もっと戦術を工夫しろ。でないと俺は倒せぬぞ」

 

 

 

 それでも倒される気は微塵もないがな。

 

 その後も連勝記録を伸ばし続け、三十連勝を達成した時、エレオノールが、

 

 

 

「もうこんな時間だぞ、ゼシア。よい子は寝る時間だぞっ」

 

 

 

 と言った。時計を見ると、十時を過ぎようとしていた。見れば、ゼシアも少し眠そうだ。

 

 

 

「今日はもう寝るか。色々疲れもたまっているかもしれぬしな。ついてこい」

 

 

 

 俺たちは一回に設けられた魔法陣の上に乗る。魔法陣に魔力を込めると、寝室に転移した。

 

 寝室は女子用と男子用に分かれている。

 

 俺とレイは男子用寝室に、ミーシャたちは女子用寝室に行った。

 

 ベッドに横になる。すると、隣のベッドのレイが声をかけてきた。

 

 

 

「アノス、僕たちはなぜこの世界に転移させられたんだろうね?」

 

 

 

 それは俺も思っていたことだ。なぜ俺たちはこの世界に転移された?何物の仕業だ?

 

 世界間を超えて転移させるなど尋常な魔法ではない。神の仕業か?

 

 

 

「なぜ俺たちがこの世界に転移させられたのかはわからぬ。まあ、学校で暮らせばそのうちルーテルドルフが教えてくれるのだ。気を長くして待つとしよう」

 

 

 

「そうだね。そろそろ僕たちは寝ようか」

 

 

 

 レイは布団に潜り込む。すぐに寝息が聞こえてきた。

 

 俺も寝るとするか。女子用寝室のほうから何やら話し声が聞こえてくる。ガールズトークとやらをしているのだろう。

 

 この様子だと、あと一時間は彼女らは寝ないな。

 

 明日からどうなるかわからぬ。しかし、俺はアノス・ヴォルディゴードだ。どんな理不尽も、どんな困難も、滅ぼしつくしてみせる。

 

 そう思いながら、俺は瞼を閉じた。




 大体最初に吹っ飛ばされるのはゆんゆんです。みんな上達が早いんですよ。
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