ドーモ=ミナサン。
先日のニンダイにて『エピックミッキー』のリメイク発表、『ENDER LILIES』の続編である『ENDER MAGNOLIA』の発売決定を受け狂を発したseven774です。
『エピックミッキー』はお小遣いの影響でプレイしたくとも出来なかったので、switch版でリメイクが遊べると知って本当にうれしかったです。また、『ENDER MAGNOLIA』も前作がとても面白かったので、その続編が遊べると知れて楽しみで仕方ないです。
来週にはポケモンダイレクトもありますので、個人的には今年は良い年になりそうですねぇ。BWリメイクが発表されるとは思うのですが、どうかDPリメイクのような感じにはならないでほしいと考えています。あれはあれで面白かったんですけどね……。
今回より戦争が始まります。
それではどうぞッ!
罪都キャメロット。
妖精歴が終わり、モルガンが治世を敷く女王歴に変わってから二千年余り、この妖精國ブリテンの中心として栄えた都市である。
ブリテンの中心に開いた大穴を半分囲むように広がっているこの都市は城壁内外の二つに分けられており、内部の都市は妖精國内でも最大の規模を持っている。その城壁も千年級の樫の木を素材に使っているため、そう易々と破壊されるものではない。
普段ならば定期的に官氏や大使、場合によっては氏族長が足を運び女王に日々の報告を行い、城下では市民や貴族達が穏やかに過ごしている。
しかし、現在のキャメロットは、非日常の出来事の中心地であった。
「行け行け行けッ! なんとしても勝つんだッ!」
「我々には『予言の子』がついているッ! 一人でも多く倒すんだッ!」
「城壁内には決して入れるなッ! 陛下の威光を示すのだッ!」
「反逆者共めッ! ここから先には行かせないぞッ!」
剣戟。怒号。
そこかしこで巻き起こる鉄と声による喧噪は、日常には決してあり得ぬもの。
そして現在の戦況は、反乱軍の方が優勢に傾きかけていた。
円卓軍だけであれば、女王軍の圧勝だったであろう。円卓軍にはアルトリア以外にも、これまで数多くの特異点を乗り越え、五つの異聞帯を踏破した藤丸立香がいるものの、対する女王軍には、数百年を超える年月においてこの國を護り続けてきた妖精騎士達がいる。
しかし、その妖精騎士の内の一騎が秘密裏に立香達と密約を交わしていた事によって全力で戦っておらず、また円卓軍はノクナレア軍が付く事で戦力を向上。二つの陣営のリーダー達の存在が兵士達の士気を上げているのもあったのが、現在反乱軍が優勢になりつつある理由である。
だが、油断する事なかれ反乱軍。
たとえ戦況が自分達側に傾きかけていようとも、女王軍には並の兵士では相手にならぬ強豪がいる。
「ハハハハハハハッ!!!」
「ヒ―――ぐ、ぁ……」
怒号に混じる狂笑。まるで今の状況が楽しくて仕方ないと叫ぶように笑う彼女に怯えの感情を抱いた男の胸を、巨大な刃が貫いた。
鎧による防御などないも同然に貫いた操虫棍の持ち主であるカリアがそれを振るえば、遠心力で飛んだ男の骸が宙を舞い、壁に叩きつけられた。
続いて足のバネを使って加速。僅かに距離の空いていたノクナレア軍の兵士に肉薄すると、刃は振るわずに空いた右腕を突き出した。
一言も発させずに心臓を抉り取ったカリアがそれを握り潰すと、弾け飛んだ血飛沫が彼女の顔に付着し、
―――魂喰い。
他者の身に流れる魔力を奪い、自らの糧とする能力。
マスターであるバーヴァン・シーが充分な魔力供給が不可能な現状、彼女は目の前の敵を殺しながら、自分が戦い続ける為の魔力を回復し続ける。
他者の血を吸収し、その度に暴れる彼女の姿に円卓軍の兵士達がカリアに攻撃しようとするが、上空から急降下してきた
人間や魔獣よりも強固な鱗や甲殻に覆われたモンスターを狩猟する為に飼育される猟虫による突進は、最早妨害という枠を超えた威力であり、直撃した兵士の中には剣を持っていた腕が
そして、猟虫の特徴はただ闇雲に突っ込んで
「ぁ、が……」
一人の兵士の体に取り付いたオオシナトが口吻を突き刺せば、彼の体が瞬く間に萎んでいく。そして、オオシナトは自らが吸い出した命を表すようにその身に赤い光を纏い、主の下へと帰還する。
定位置である右腕へと戻った直後、赤い光はオオシナトからカリアへと移り、彼女の肉体を強化する。
身体能力が向上した感覚にカリアがさらに速度を上げ、次の標的に襲い掛かろうとするが―――突如として轟いた轟音が、彼女の動きを止めた。
「あれは……」
なにが起こったのかと視線を音のした方角へ向けると、上空へ向かって黒い煙が立ち昇っているのが見えた。
カリアはその黒煙の出所が、丁度正門が位置する場所だと気づき、「ハッ」と笑った。
(破壊されたか。となると、士気も上がるな)
正門が破壊されたという情報は、それだけで両陣営の士気に直結する。
反乱軍は城下へと続く道が開けた事で士気が上昇し、女王軍は正門が突破された事に動揺して士気が乱れる。
本来なら即座に対処すべき事態。だが、カリアは変わらず笑っていた。
敵の士気が上がる。それはつまり、今よりも勢いをつけた敵がやって来るという事。
他者を殺し、傷つける事に快楽を覚えるカリアにとって、それは獲物に脂が乗ったにも等しい。
思わず口端から垂れた涎を拭い、さてどれ程の敵が来るのかと身構えた直後、早速背後からジャラジャラとなにかが迫り来る音が聞こえてきた。
跳躍して難なく躱し、体を回転させて操虫棍を振るう。
カリアの真下を通り過ぎていった鎖の持ち主は、即座に右手に握っていた
攻撃を防がれたカリアが着地して構えを取るが、自身の前に立つ存在を視界に収め、唖然とした。
「……バーゲスト? なぜ、君が?」
「……申し訳ありません、カリア」
疑いようのない味方。そして、妖精騎士の中でも女王への忠誠心が強いはずのバーゲストが、なぜか目の前に立ちはだかっていた。
「君ともあろう者が、陛下を裏切るのかい? いったいどうして」
「
「ほう? 恋人の為であれば、陛下を裏切るというのか。ハハハ、忠誠心が強いと思っていたのだが、ボクの見当違いだったか。まさか、陛下より恋人を取るとはね」
「貴女にはわからないでしょうね、カリア。メリュジーヌに匹敵し、陛下にも届きうる貴女の強さには憧れていましたが……そういうところまでは好きになれませんわ」
「そう言ってくれないでくれたまえ。これがボクだ。……では、これからボクが殺すのは、君というわけかい?」
カリアの言葉に、バーゲストは僅かに彼女に向ける大剣の切っ先を下げた。
「……正直に言ってしまえば、貴女と戦いたくはありません。貴女や陛下には、返しても返しきれない恩があります。……どうか降伏を。
「ハッ、それはァ―――できないねェッ!!」
「―――ッ!」
飛び掛かったカリアの操虫棍と、バーゲストの大剣が激突する。
両者の間で発生した衝撃波が周囲の兵士を吹き飛ばし、建物を揺るがす。
両手で巧みに操虫棍を操り、時にはオオシナトを飛ばして攻撃するカリアと、鎖を鞭のようにしならせて防御しながら大剣で反撃するバーゲスト。
目にも止まらぬ攻防に周囲の兵士達が手を出せずにいると、バーゲストが横薙ぎに振るった大剣を回避する為にカリアが距離を取った。
「裏切り者のバーゲストッ! 戦友を斬るのは辛いが……こうなっては仕方ないからなぁッ! 君の首を貰おうかッ! 本当に辛いけどなぁッ!」
「本当はそう思っていないくせに……本当、貴女ってそういう人ですわねッ!!」
狂った笑い声を響かせる狩人と、彼女の言葉に苦笑した紅蓮の騎士が再びぶつかり合った。
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「バーゲスト、大丈夫かなッ!?」
「わからないけど、今は信じるしかないッ!」
斬りかかってくる騎士を魔術で作り出した円輪で弾き飛ばしたアルトリアの叫びに、杖から魔力弾を放ったダ・ヴィンチが叫び返す。
現在、アルトリア及び藤丸立香達は城下へと続く正門前で、女王軍と交戦していた。
密約を交わしていたとはいえ、バーゲストは律儀な性格の持ち主。
正門が破られるまでは女王軍側の騎士として全力で戦っていたものの、ノクナレアの巨人兵団によって正門が破壊されると、密約通り立香達側に付いた。
しかし、彼女は立香達には同行せず、カリアを抑えに向かった。理由としては、正門が破壊された事に気付けば、彼女は間違いなく今まで以上に暴れるだろうからという。
『彼女はバーヴァン・シーのお目付け役だが、相手を殺す事に関しては右に出る者はいない。この戦争は彼女にとって、楽園にも等しいもの。恐らく、この戦場においてたった一人、この状況を楽しんでいる奴だ』
そこに、自分という獲物を用意する。
放っておけば反乱軍の戦力を単騎で半壊まで追い込める事も可能だと思われる彼女だが、
その間に、立香達は城下に入ってもらうという考えらしい。
他の反乱軍の兵士達に彼女が味方である事は既に“風”の氏族を通して報せているが、直接見てもわかるように監視役で反乱軍の中でも指折りの実力を持つ兵士をつけている。
「でも、バーゲスト、最後になにか怖い事言ってたよね」
「そうですね……」
召喚した影の英霊達を援護していた立香に、彼女の護衛をしていたマシュが頷く。
彼女達が思い出すのは、去り際にバーゲストが残した言葉だった。
『陛下は城下に兵士を配置しなかった。それがなにを意味するのかはわからないが……なにか仕掛けている可能性がある。気を抜くな』
「彼女の言葉の通りなら、馬鹿正直に城下に入るのは愚行だろう。けど、壁を上っていくわけにもいかない。上っている途中に妨害されるのがオチさ。あぁクソ、こんな時にあの『敵地潜入用タイツ』があれば……」
「それは絶対にヤダ」
悔し気に歯噛みするオベロンに、アルトリアが真顔で返す。
『予言の子』と扱われていた村正を購入したグロスターのオークションの商品だったタイツを着用すれば、城を囲む壁も簡単に登れるらしいが、あんなふざけたものを着る気にはなれなかった。
あれを本気で着ている者がいるとすれば、それは真正の馬鹿か、その馬鹿に巻き込まれた憐れな犠牲者だろう。
「たとえ罠だとしても、こうなると飛び込んでいくしかない。用心して―――」
「―――ォオオオオオォォッッ!!」
バーゲストの言葉を思い出していたダ・ヴィンチが言い終わりかけた直後、背後から咆哮が響き渡った。
いったいなにが、と振り向いた立香達の視界に映り込んだのは、頭部や胴体が千切れ飛ぶ反逆軍の兵士達の姿だった。
そして、その奥に見えたのは―――
「城には……陛下の元には行かせるかァッ!!」
「っ、ウッドワス……ッ!」
これまでどこに隠れていたのだろうか。突如後方に出現したウッドワスが片腕を震えば、それだけで複数人の兵士が消し飛んだ。
「そこを動くな『予言の子』ッ! 『異邦の魔術師』諸共、この私が鏖殺してくれるわッ!」
「マズイッ! 迎撃を―――」
オベロンが立香に指示しようとした直後、彼女目掛けてウッドワスが突っ込んできた。
常人であれば捉えられぬ速度。主を護る為に彼の迎撃を試みた影達も薙ぎ払ったウッドワスの拳が、遂に立香の頭部を捉えかけた、その時だった。
「ハァ―――ッ!」
横から突き出された槍が、ウッドワスの攻撃を逸した。
風圧に吹き飛ばされた立香が尻餅をつくもすぐに顔を上げ、自分を救ってくれた騎士の名を叫んだ。
「パーシヴァルッ!」
「立香達は先にッ! 彼は、私達が止めますッ!」
「でも……」
「立ち止まるなッ! 行くぞアルトリアッ!」
パーシヴァルと打ち合うウッドワスの肉体から、ロンディニウム防衛戦の時よりも強大な力を感じ取ったアルトリアが加勢すべきではないかと思うものの、杖を持っていない腕をオベロンに取られて連れて行かれた。
突き出された槍を受け流したウッドワスが、少しずつ距離が離れていく彼女達を狙い撃つべく掌から光線を撃ち出そうとするも、パーシヴァルが即座に攻撃を仕掛けて妨害した。
燃え盛る激情により、最早紳士とは言えない様相で犬歯を剥き出しにしたウッドワスに、パーシヴァルは両手で槍の柄を握り締めて叫ぶ。
「排熱大公ウッドワスッ! 貴殿はここで食い止めるッ!!」
「抜かせパーシヴァル……ッ! 今度は容赦しない……全力で、貴様を殺してやるッ! ウゥルォオオオオオオッッ!!」
全身から漆黒のオーラを迸らせたウッドワスの肉体が、より強固に、より鋭利に変貌していく。
―――極限状態。
戦友にして親友である狩人から得た力。自らの命を代価に、何者にも負けぬ無敵の肉体を獲得する。
これまで多くの失態を重ねてきた。
女王モルガンの忠臣として、偉大なる勇者ライネックの
眼前に立つパーシヴァルは、『予言の子』や『異邦の魔術師』程ではなくとも、この妖精國に長く反逆し続けた存在。
かつて面倒を見た相手であっても、最早ウッドワスには関係なかった。
敵として立ちはだかるのなら、殺す。殺して、少しでも汚名を雪ぐ。
自分はまだやれるのだと、陛下に叫ぶのだ。
己の生命すら
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「ウッドワス公、円卓軍のパーシヴァルと交戦を開始しました。カリア様は現在……バーゲスト様と交戦しています。周囲の状況を確認した結果、バーゲスト様は『予言の子』側に付いたようです。周辺の騎士を動かしますか?」
「必要ない。たとえ『選定の槍』の所有者であっても、たかが人間一人……本気を出したウッドワスの敵ではない。だが、そうか……バーゲストが裏切ったか」
戦況の報告を行う書記官に冷静に返していたモルガンだったが、その瞳には他者には気付かれない程小さな悲しみが宿っていた。
バーゲストが裏切った理由は憶測でしかないが、
恐らく、汎人類史に彼を連れて行こうとしているのだろう。マキリ・ノワや■■■■■■がいるこの國に、彼を長く留めておきたくないと考えたのかもしれない。
もっと自分に、奴らに対処する時間があればと後悔するも、最早後悔したところでどうにもならない。
軽く深呼吸して気を取り直したモルガンだったが、視界に入った妖精達に目を細めた。
(ウッドワス様や妖精騎士がいるなら安心だ。だが、まさかバーゲスト様が裏切るとは……)
(バーゲストめ。まさか向こうが勝つと思って寝返ったか?)
(『異邦の魔術師』は妖精騎士にも匹敵する影を無数に操ると聞く。中にはあのカリアと同等の影もいるのだとか……)
(もしそのような物を何体も出されたら、さしもの陛下であっても……)
(それに……あの龍はどこへ行った……?)
妖精の一人がちらりとモルガンの背後を見やる。
普段であれば、そこには彼女が友と呼ぶ古龍種がいるはずなのだが、今その場に彼の姿はない。
ディスフィロアはどこに消えたのか。もしやモルガンが自分達に黙ってどこかへ逃がしたのではないのか。
それは困る。モルガンが盟友と認める程の実力者であるのならば、仮にここに攻め込まれた時には自分達が逃げる際の時間稼ぎをしてもらわなくてはならない。
集まった貴族達は、言葉を交わさずとも仲間達の気持ちが理解できていた。保身を優先する彼らにとって、なにを犠牲にしてでも自分達が生き残る事こそが第一目標なのだから。
しかし、歪んではいるものの他者の心を視る事ができるモルガンは、彼らがなにを思っているのかなど手に取るようにわかっていた。
楽園に戻る際に戦い、絆を育み、そして現代まで自分を支えてくれた友を時間稼ぎに使おうとする彼らを今すぐにでも殺してやりたいという憤怒に顔が歪みそうになるのを必死に堪え、表情を変えずに口を開く。
「お前達が知ったところで意味はない。我が友は変わらず、キャメロットにいる。尤も―――
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「パーシヴァル。そっちは頼んだわよ」
遠くでウッドワスと交戦し始めたパーシヴァルの姿に小さく応援の言葉を投げかけたノクナレアは、反逆軍への休息や突撃の指示を行った後、正門へと向かう立香達の傍に駆け寄った。
「え、ノクナレアも来るのッ!?」
「当然、体張らないと臣下に示しが付かないもの。流れ矢で倒れるならそれまでの運命よ。無理はしないで、なんて言うだけ無駄。それは貴女達もでしょう? モルガンとサシで戦う機会はこれっきり。どちらが先に王城に入るか、競争よアルトリアッ!」
「ノクナレアに心配は無用です。私達も行きましょうッ!」
我先にと正門へ入っていく兵士達に続き、立香達もまた中へと足を踏み入れる。
そして―――景色が一変した。
「…………は?」
呆けた言葉を発したのは、いったい誰か。
兵士の内の一人か。アルトリアか、ノクナレアか、立香か。
それとも、この場に辿り着いた者全てか。
空模様は変わらず、禍々しい赤紫色の禍々しいもの。
しかし、大地が変わり果てていた。
どこから見ても目立つだろうキャメロットの城も、城壁も、妖精達の住居も見当たらない。代わりに聳えるのは、天を衝くように屹立する無数の岩山に、毒々しい色の水溜り。
絶えず流星が降り注ぐその景色を見た立香の脳裏に、かつて読んだ叙事詩に記されていた単語が思い浮かんだ。
「ここって、“最果ての地”……?」
『その通りだ。ようこそ、我が盟友の世界へ』
「この声は……」
「モルガン……ッ!」
『貴様らに掛ける慈悲はない。反乱軍も、カルデアも、全てここで死に果てよ』
“最果ての地”の中心に、灼熱の火柱が聳え立つ。どこからか集まってきた氷塊が周囲を漂った後、火柱と共にそれを消し飛ばして現れたのは、女王が最も信頼する古龍種。
『蹂躙するがいい、ディスフィロア。その眼前に立つ者、尽く全て消し去れ』
「グォオオオオオオォォォッッッ!!!」
「っ、総員攻撃準備ッ! “熾凍龍”ディスフィロアを―――」
「「討伐するッ!!」」
立香とノクナレアの号令で構えたアルトリア達に、ディスフィロアが襲い掛かった。
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立香達がディスフィロアと交戦を開始した頃、女王軍と反乱軍が戦い続けている城下町を見下ろす人影が三つ。
「さて、では早速、仕事を始めるとしようか」
周囲にあるものよりも一際大きな建物の屋上に立ったプロフェッサー・Kに、カドックとペペロンチーノ。
Kとペペロンチーノはこれから始まる仕事に対するやる気を漲らせているものの、対照的にカドックの顔は鬱屈としている。
(なんでこんな事に……)
[ふふふ、とてもお似合いよ、カドック]
「やめてくれ……」
霊体化しているアナスタシアからの念話に口頭で返し、視線を自分の体に向ける。
カドックが現在着用しているものは―――一切の穢れのない全身白タイツだった。
それはかつて、Kが『予言の子』狙いで参加したオークションで持ち金全てを使って購入した、『敵地潜入用タイツ』だった。霊体化できるサーヴァントであるアナスタシアとカイニスは着用していないものの、ただの人間であるカドック達は三人全員これに身を包んでいる。
つまりは戦火に包まれた城下町の一角に、全身白タイツの変態三人衆が現れたというわけである。
なんでこんな事に―――と改めて思っていると、先日の記憶が思い起こされる。
あれはそう。確か最後の『巡礼の鐘』が鳴った後の事。
Kとアンナに呼ばれたカドックが会議室に向かうと、彼らからこのタイツを着用して罪都キャメロットに侵入してほしいと言われたのである。
最初は断った。既に大幅な準備は終わっているらしいが、なぜ全身タイツを着ていかなければならないのかと思った。
だが、この仕事は女王モルガンたっての願いであり、これを達成する為にはこのタイツを着る他ないのだそう。
『じゃあなんだ。まさかアンナもこれを着るのか?』
『いや着ないよ? 私は君達のナビをするし。状況が大きく変わった時はそっちに行くからね。この仕事……妖精騎士バーヴァン・シーの救出とキャメロットからの脱出は、君やKと君達のサーヴァント、そしてペペロンチーノがやるんだよ』
『はぁ……』
『なに言ってんだこいつみたいな顔しないの。アンナに対して失礼じゃない。さ、一緒に着て頑張りましょうね♡』
『え、嫌だけど』
『さ、打ち合わせの時間だ。それとこれの性能を改めて確認しないとね』
『そうね。時間がないんだもの。今の内に慣らしておくのが一番よ』
『離してくれ。頼むやめてくれ。僕はそんなの着たくない、着たくないんだッ!!』
あの時もっと激しく抵抗し、拒絶すればよかった。そうすればこんな目に遭わずに済んだのかもしれないのだから。
無意識に腹部を押さえている辺り、そろそろ胃薬を用意する頃合いなのかもしれない。
しかし、今更後悔しても後の祭り。
既に時は過ぎ去った。カドックの身を包むはいつもの服ではなく、一切の穢れを感じさせぬ純白のピッチリ全身白タイツ。
周囲の色を反射し、そして夜闇に在っても尚その存在を知らしめる衣装に身を包んだ自分達三人。太陽が昇らぬこの妖精國において、彼らの存在は異様に目立つ。
「なんだあいつらはッ!」
「全身白タイツだと……ふざけるのも大概にしろッ!」
故にこそ、バレるのは時間の問題であった。
地上で敵を斬り殺した女王軍の兵士達が彼らの存在に気付き、内何人かの弓兵が弓矢を構えた。
「はっ、危ないッ!?」
「うわ気持ち悪っ」
ぐにゅん、といった擬音が似合うような動きで矢を回避したK。しかし全身白タイツ、しかも唯一の肌色でもある顔の上半分を仮面で隠した成人男性が体をくねらせて矢を回避するという光景は気持ち悪いの一言に尽きるため、隣で矢を弾いていたカイニスがドン引きして距離を取っていた。
ペペロンチーノもまた彼には負けず劣らずの動きで
咄嗟に身を捩って回避するものの、次に来る矢を回避する為に身を捩った。
それはよかった。しかし同時に悪くもあった。
彼が最初に矢を避けた時、彼の全身はさながら『<』のようなポーズを取っていた。そして間髪入れずに飛んできた矢を避けた結果、今度は『>』のポーズを取る事となる。
そして、二射目を回避した彼の先になぜか同じ位置に矢が迫り、それを躱す。躱した先でまた躱す。
結果、彼は『<』と『>』を交互に繰り返すという、Kとペペロンチーノを超える変態的挙動を取ってしまったのである。
「あの二人を超える気持ち悪い動き……ッ! 間違いない、奴がリーダーだッ!」
「殺せ殺せッ! 奴らなにをするかわからないぞッ! なにかする前に殺すのだッ!」
「いやリーダーじゃないんだが……」
「来るわよリーダーッ!」
「リーダー、指示をッ!」
「お前らも悪ノリするなッ!」
とりあえず行くぞッ!
咄嗟に叫んだカドックと、彼に頷いた二人は―――
「「「―――とうッ!」」」
―――屋上から飛び立った。
飛び降り自殺……ではない。彼らはこの状況でその手段を取る軟弱者ではない。
そう、これは逃げの一手にして、進撃の一手である。
背筋を伸ばした彼らが腕を組んだ直後、いったいどこに仕込まれていたのかと言いたくなるようなグライダーが白タイツから現れ、彼らを風の道に乗せて運び始めた。
「う、うわああああッ!!? 変態がッ! 変態が空を飛んでるぞぉおおおおッ!!」
「撃ち落とせッ! 撃ち落とすんだッ!」
「そうはッ!」
「させません」
地上からカドック達を射落とそうとする者達もいたが、彼らは地上に降り立ったカイニスとアナスタシアによって倒されていく。
二騎のサーヴァントによって護られたカドック達は誰一人欠ける事無く城壁に到達。グライダーを収納後、あらゆる状況に対応する城壁を物ともせずにゴキブリが如くカサカサと這い上がった。
「止まったぞッ! 撃ち落とせッ!」
「待てッ! その先は城があるんだぞッ! 陛下のお膝元に矢を浴びせるつもりかッ!」
「く……っ!」
「フハハハハハッ! さらばだ諸君ッ! 我々が城下に降り立つ様を、指を咥えて見ているがいいッ!」
なんかKが悪役っぽい言葉を叫んでいるが、カドックは冷静に状況を分析していた。
Kが言うには、この戦争中は正攻法で門から城壁内部に入ると、敵味方問わずに“熾凍龍”ディスフィロアがいる“最果ての地”へと強制転移されてしまうという。しかし、これから自分達がやるような城壁からの侵入であれば、問題なく内部に入れるのだそうだ。
『連絡だよ〜。聞こえてる?』
「バッチリ聞こえてるよ、アンナ。ここから飛び降りればいいのかい?」
Kが頭上を見上げれば、上空からアンナがオフェリアに頼んで用意してもらった小鳥型の使い魔が彼の右肩に止まった。この使い魔が、彼らやその周囲の情報をグロスターにいるアンナ達の元へ届けているのだ。
『うん。だけど、君がモルガンから聞いた話を考えてみると、定期的に落とし穴が設置されるんだって。落ちたら地下牢行きでバーヴァン・シーのいる部屋までの距離が開いちゃうから、気を付けて。合図はこっちから送るね。10数えるから、その時に飛び降りて』
「わかった」
通信越しにアンナがカウントを始め、K達も飛び降りる構えを取る。
そして―――
『1……飛んでッ!』
指示に従い、ジャンプ。
重力に引かれて地面へと落ちていき、着地と当時に衝撃を受け流す。
骨折も外傷の一つもなく、そして“最果ての地”に引き込まれる事もなく、K達は城壁内への侵入を成功させた。
「よしッ! 侵入成功だッ!」
「やったわねKッ!」
『あ、馬鹿ッ! ハイタッチする暇があったら早く走ってッ!』
「「あっ」」
(馬鹿すぎる……)
タイミング良く侵入に成功したKとペペロンチーノがハイタッチした―――そしてそれが、彼ら(そして巻き添えを食らったカドック達)の行く末を決定付けた。
ガコンッ、と。
彼らの真下の地面が開き、奈落へと続く口が現れた。
「ヤバいッ!」
こうなった張本人の一人が叫び、全員揃ってクロールや平泳ぎなどしてなんとか落とし穴から逃れようとするが、そう上手く事は運ばない。
悲鳴を上げながら落ちていく彼らは途中で三つのグループに分けられ、質素な狭い部屋に排出。
即座にガチャンッと音を立てて鉄格子が落ちて、落とし穴に喰われた者達を捕らえた。
カドックとアナスタシア。
ペペロンチーノ。
そしてプロフェッサー・Kとカイニス。
三つの地下牢に因われた者達は、揃って顔を見合わせ―――
「「で、で♪」」
「でら、でら♪」
「「出られない〜♪」」
『檻ッ!!』
『……こんの、馬鹿ぁああああああああッッッ!!!』
小鳥の小さな体から、それに似合わぬ大音量が吐き出されるのだった―――。
・『カリア』
……バーヴァン・シーが万全な状態ではないため、魂喰いをしながら戦う。カルデア側についたバーゲストと交戦する事には少し抵抗感があるが、敵に回った以上
この戦場で唯一、恐怖もなにも抱かず、ただ『相手を殺せる』という快楽のみで行動し続けている。
・『バーゲスト』
……原作通り裏切る。理由としては、マキリ・ノワや赤い光の蟲といった脅威から、恋人のアドニスを汎人類史に逃がす事で護る為。カリアとは彼女を抑え込む為に交戦するも、自らの飢餓を抑え込んでくれた彼女と剣を交える事に抵抗感を覚えている。
・『ウッドワス』
……これまでの失態を帳消しにすべく、後方から急襲。パーシヴァルに阻まれるも、まずは彼から殺すべく極限状態に変化した。
・『モルガン』
……ウッドワスの事は心配していないが、バーゲストの裏切りには心を痛めている。城下へと続く門に細工を施し、通った反乱軍がディスフィロアのいる“最果ての地”へと強制転移されるようにした。
・『ディスフィロア』
……モルガンの作った世界に“最果ての地”を展開。彼女の細工によって飛ばされてきた反乱軍と交戦を開始。
・『変態三人衆』
……血風吹き荒ぶ戦場に全身白タイツで現れた馬鹿二人と、彼らに巻き込まれた憐れな犠牲者一名。アナスタシアとカイニスを護衛に付け、城壁から城下へ侵入するも、落とし穴に引っ掛かり地下牢へ投獄された。初っ端から躓いたものの、これよりバーヴァン・シー救出作戦を開始する。
・『アンナ』
……グロスターから変態三人衆のナビを行う。オフェリアも使い魔の操作を行っている。虞美人も状況の確認を行っており、不測の事態には項羽の手を借りて解決策を講じる。
が、まさか彼女達も初っ端から三人(というか二人)がミスするとは思っていなかった。
次回もこんな感じでそれぞれの話を進めていこうかなと考えています。場合によってはこの中のどれか一つか二つに焦点を当てます。
それではまた次回ッ!