【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 先日、遂に奏章Ⅱ『不可逆廃棄孔イド』が始まりましたねッ!
 まさかの公式学パロストーリーが始まりましたが、途中まで進めてみると学パロ云々よりも「やめてくれ……心が死ぬ……これ以上立香を精神的に追い詰めないでくれ……」と懇願するしかなくなりました……。一枚絵が多いですが、その分心に途轍もないダメージが来るんですよね……。しかも天気が基本的に曇天だったりするのがさらにのしかかってきますし……。

 話を変えましょう。
 皆さんはピックアップ召喚のマリーアントワネット・オルタと耀星のハサンガチャは引きましたか?
 自分はばっちり二騎とも確保しましたので、恐らく来るであろうエドモン・ダンテス(?)ガチャにも挑戦したいと思いますッ!

 それでは本編、どうぞッ!



罪都キャメロットの戦争/2

 

「ハハハ―――ッ!」

「ゥ―――ッ!!」

 

 

 跳躍し、縦に回転しながら落ちてきたカリアを受け止め、押し退ける。

 遠心力と重力による強化を受けて繰り出された斬撃の重みは、筋肉を貫通して骨まで軋ませ、鈍い痛みと鋭い痺れが走る。

 

 

「どうしたどうしたバーゲストッ! 防御が甘いじゃないかッ!」

 

 

 牽制として放たれたブラックドッグを難なく斬り捨て、直後に振るわれた鎖を掴み取る。

 勢い良く引っ張れば、バーゲストの体が持ち上げられてカリアの下へ引き寄せられるが、彼女は即座に両足を地面にめり込ませて踏ん張った。

 

 大剣を振るって炎の斬撃を飛ばすも、カリアは咄嗟に鎖を手放して跳躍。斬撃を回避すると、ジグザグに動きながらバーゲストへ接近していく。

 

 一直線に迫ってくるのなら対処は容易だが、ジグザグに動かれると対処の仕方が変わってくる。

 思わず目で追いたくなるものの、バーゲストは慌てずに意識を研ぎ澄ます。

 

 獰猛で直進のみしか能のない相手は、回避のタイミングを見極めて斬り伏せる。可能だと判断した場合、真正面から迎え撃ち、撥ね退ける。

 狡猾で速度が早く、手数の多い相手は、目で追うよりも意識で捉える。視界を惑わす策より逃れ、心の眼でその姿を捉え、迎え撃つ。

 

 いつかの模擬戦の際、彼女より教わった戦いの心得だ。

 

 

「ハァッ!」

 

 

 一秒にも満たぬ時間だけ視界から逃れた瞬間を狙って斬り掛かってきたカリアの刃を紙一重で躱し、大剣を振り下ろそうとするが―――

 

 

(駄目だ、近すぎるッ! まさか、ここまで計算して……ッ!)

 

 

 彼我の距離が近すぎたため、大剣に充分な威力を含ませる為に振るおうとした腕が止まってしまった。

 無意識の行動だった。回避の隙を突いて強力なカウンターを叩き込もうとした無意識下の行動が、バーゲストの首を絞めたのだ。

 

 動きが鈍ってしまったバーゲストの隙を、カリアは逃さない。

 金属が擦り切れるような甲高い耳障りな音を奏でてブレーキ代わりに使った片足を軸に回転し、バーゲストに向き直る。

 

 バーゲストの視線が、視界が、自らの眼球を刺し貫こうと迫る操虫棍の切っ先を捉える。大剣か鎖で反撃を行うも、こうまで接近されては間に合わない。反撃が当たるとしても、片目が潰された後になってしまうだろう。

 

 そう間もなくやって来るであろう眼球を潰される激痛に思わず体が固まりかけて―――

 

 

(な……)

 

 

 カリアの動きが、止まった。

 それまで自身の片目を貫こうとしていた体から力が抜け、態勢が崩れていく。

 

 そして、バーゲストの反撃は間に合った。

 

 

「ガッ?!」

 

 

 速度の緩んだ攻撃など恐るるに足らず。

 操虫棍を大剣で弾き、頭部を掴み上げ、地面へと叩きつける。

 

 ドオォォォンッ!! と、人体を叩きつけたとは到底思えない轟音が鳴り響く。

 叩きつけられた場所に発生した窪みと、全方位に走った亀裂―――その中心でバーゲストがカリアの顔から手を離そうとするが、素早く動いた腕がその手を掴んだ。

 

 

「やってくれたねェバーゲストォオッ!!」

「ッ!」

 

 

 自分とは筋力も太さも劣っているはずのカリアの腕から感じる力に思わず開いた指の隙間から覗く鋭い眼光に息を呑む。

 咄嗟に彼女の拘束から逃れようとするも、カリアの腕力は彼女の手を掴んで離さず、起き上がると同時に投げ飛ばした。

 

 

(今のは……)

 

 

 大剣を地面に突き立てて投げ飛ばされた体を止めたバーゲストが、先程のカリアの異変を訝しんでいると、自身の目の前にカリアが降り立った。

 

 

「淑女にあるまじき行為だね。女性の頭を掴むだなんて」

「カリア、先程の貴女は……」

「気にする必要はないさ。ボクも気にしていない。ほんの小さな荷物(・ ・)のようなものだからね。……む、失礼」

(……ッ!?)

 

 

 口の端から垂れた涎を拭ったカリアの瞳。それが一瞬理性を感じさせないものに変化したところが視界に入り、バーゲストは息を呑んだ。

 

 初めて見るはずなのに、どこか既視感がある。

 そう、あの瞳は。あの理性なき瞳は、キャタピラー戦争の時の―――

 

 

「カリア……貴女、まさか……」

「さて、続きをしようか、バーゲスト。ボクはまだ、この戦いを終わらせたくないんだッ!」

「く……オォッ!」

 

 

 脳裏を過る不吉な予感から目を背け、バーゲストはカリアを迎え撃った。

 

 

 

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「セェエヤッ!!」

「甘いわァッ! ヌゥンッ!!」

「―――ッ!」

 

 

 突き出した穂先を弾かれ、反撃の拳が飛んでくる。

 ギリギリで回避するものの風圧に吹き飛ばされて一瞬だけ身動きが取れなくなってしまい、その隙に右足による蹴撃が迫る。

 

 防御できない事を悟ったパーシヴァルが出来る限り体を後方に動かして威力を削るものの、それでも極限状態となったウッドワスの一撃は強力無比に尽きる。

 

 

「ぐ、ぁ……」

 

 

 鎧が砕かれ、胸部が圧迫される。

 無理矢理吐き出された酸素を取り込もうとする体を意志の力でねじ伏せ、呼吸を整えながら追撃の拳を回避する。

 先程まで自分の頭部があった場所を拳が通り過ぎていき、地面に小さな窪みを作った。あと少しでも回避が遅れていれば、自分はあの拳に頭部を粉砕されていただろう。

 

 とにかく距離を取らなければ満足に戦えないと判断して後退しようとするも、そうはさせないとウッドワスが瞬時に距離を縮めてくる。

 

 

「フンッ!」

「ハッ!」

 

 

 手刀と槍が衝突し、両者共に弾かれる。

 本来なら拮抗すらせずに押し切られてしまうところだったが、絶えず襲い来る生命の危機を前にパーシヴァルという人間の脳は無意識に肉体に施していたリミッターを解除していた。その結果、繰り出された槍による一撃はウッドワスの攻撃を弾くのに充分な威力を宿していたのだ。

 

 互いに距離を取り、パーシヴァルは大きく息を吸い込んで槍の柄を両手で握り締め、一歩踏み込む。

 眩い光を帯びた槍による薙ぎ払いは光の斬撃となってウッドワスへと接近するも、彼は掌から光線を放って相殺し、さらに球状に変えて撃ち始めた。

 

 一発でも当たれば欠損は免れないであろう威力を誇るそれを最小限の動きのみで搔い潜りながら、より強く足を踏み込んだ。

 一気に加速したパーシヴァルによる刺突がウッドワスに命中する。惜しくも右腕を盾にされた事で胸部には当たらなかったものの、ウッドワスは苦悶の声を上げながら弾き飛ばされた。

 

 幸か不幸か、ウッドワスによって胸部の鎧を砕かれた事で、パーシヴァルはその重量分身軽になったのである。反面、鎧がなくなってしまった事で再び同じ場所に攻撃を受けてしまえば確実に死んでしまうだろうが、正直なところあってもなくともどの道『胸部へ直撃=即死』は確実だったため、最早防御面については完全に思考を放棄している。

 

 今はとにかく、ウッドワスの攻撃を掻い潜り、死に物狂いで攻撃を仕掛ける事しかパーシヴァルの頭にはなかった。立香達の事は心配だが、今は彼女達の事など考えてはいられない。それについて考える暇があるのなら、目の前にいる恐ろしい相手を前にどう立ち回るか考えた方がずっといい。

 

 それに、今の自分の思考は驚く程クリアだ。焦りや恐怖といった感情が微塵もなく、ただ静かに状況を分析し、的確に肉体に起こすべき行動を指示してくれる。加えて、視界もどこかこれまでよりも色々な情報を脳に伝えてくれている。

 

 その証拠に、今まさに繰り出された飛び蹴りを前にしても、慌てて対処したりせずに冷静に槍で受け流し、返す一撃でウッドワスの背中を斬りつけている。

 

 

「き、貴様ァ……ッ!」

 

 

 自分の攻撃を受け流されただけでなく、そのまま反撃を受けてしまった事に表情を歪めるウッドワスだが、パーシヴァルは真逆に冷静な表情で小さく息を吐き出していた。

 そんなパーシヴァルの姿にさえ怒りを覚えたウッドワスが飛び掛かって来るが、パーシヴァルはスライディングで彼の真下を通り過ぎ、攻撃から逃れた。

 

 背後を取られたウッドワスが放ってきた光線を走りながら搔い潜り、距離を縮めてから飛び掛かって一閃。ウッドワスの胸元に横一文字に切り傷が刻み込まれ、血が噴き出した。

 

 

「なっ、ば、馬鹿な……ッ!」

 

 

 あり得ないとばかりに胸元から流れ出る自分の血に驚愕しているウッドワスの様子に、パーシヴァルは静かに確信した。

 

 ―――勝利の目が見えてきた、と。

 

 

 

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「うぉっとッ!?」

 

 

 頭上から落ちてきた氷塊を間一髪で回避し、掌を地面につく。無詠唱で発動された魔術によって足元から巨大な樹木が聳え立ち、何百本もの蔦をディスフィロアへと向かわせる。

 素早い身のこなしで躱していくディスフィロアだが、遂にその四肢を蔦に絡みつかれ、バランスを崩して転倒した。

 

 追い打ちにとグリムの炎とアルトリアの光の円輪が迫るものの、ディスフィロアは即座に自らの肉体に炎を纏わせて蔦を焼き切りながら、周囲に氷塊を展開する事でそれらを防いだ。

 

 炎と氷が衝突した事で発生した水蒸気の煙を吹き飛ばして飛翔したディスフィロアを、ダ・ヴィンチとノクナレアの魔力弾が追う。

 しかし、ディスフィロアは背中から小さな氷の粒をフレアのように発射して迎撃しながら新たに五つの氷塊を生成。

 

 氷塊が落下するより早く着地したディスフィロアが熱線をそれらに向けて放てば、内部で反射した熱線が敵対者を薙ぎ払うべく周囲に撒き散らされた。

 

 

「これはヤバいッ! いや本当にヤバいなッ!」

 

 

 どこを見ても地面を融解させ、打ち砕く熱線の威力に全速力で逃げながら叫ぶオベロン。直後、彼の目の前に火炎ブレスが着弾して爆発を起こした。

 

 

「オベロンッ!」

「大丈夫さこのくらいッ! 直撃だったらマズかったけど、ねッ!」

 

 

 吹き飛ばされたオベロンに立香が叫ぶも、彼女を安心させるように叫んだ彼は態勢を立て直しながら右手を払った。

 右手から放たれたのは、虹色の光。

 美しい光の斬撃は追撃のブレスを斬り裂いて空中のディスフィロアに命中するものの、途中ブレスと衝突した事で威力が下がっていたのか、古龍を撃墜する事は叶わなかった。

 この猛攻を受けながら自らに攻撃を加えたオベロンに、ディスフィロアの意識が向いた。そして、その隙をアルトリアは見逃さなかった。

 

 

「村正ァッ!」

「あいよ嬢ちゃんッ!」

 

 

 村正が周囲に数十本もの日本刀を精製。砲弾が放たれた時のような轟音を轟かせてディスフィロア目掛けて射出されていくそれらに、アルトリアが杖を向ける。

 

 青白い光を纏った日本刀は不規則な軌道を描きながらディスフィロアに接近。途中何本かが熱線や氷塊によって阻まれるものの、迎撃を乗り切った日本刀の一本が直撃したのを皮切りに、続けて十本の日本刀がディスフィロアに命中しかけた、その時。

 

 

「チッ、読まれてたか」

 

 

 瞬時にディスフィロアを護るように展開された氷と炎の障壁によって日本刀は砕かれてしまい、村正の目論見は失敗に終わる。

 村正がやろうとしたのは、マキリ・ノワ戦で繰り出した技。投影した日本刀を対象に命中させた直後に爆発させ、その威力で相手を撃墜させるものだった。しかし、ディスフィロアは自身に向かってくる武具が触れれば即座に爆発しかねない程の魔力を宿していた事を見抜き、障壁で防いだ。

 しかし、標的には届かなかったものの、日本刀の爆発によって生じた黒煙はディスフィロアの視界を遮り、一時的にだが村正達の姿を隠した。

 

 

「ノクナレア、乗れッ!」

「えぇッ!」

 

 

 ディスフィロアを包む黒煙が消し飛ばされる前に植物を成長させていくグリムが伸ばした手を掴んだノクナレアが、彼と共に空高くまで昇っていく。

 翼を力強く羽ばたかせて黒煙を吹き飛ばしたディスフィロアが自身に接近してくるグリム達に気付きブレスを吐き出すも、グリムがルーン魔術を行使して迎撃。直後にノクナレアが飛び出し、爆風を背に受けて加速した状態で飛び蹴りを繰り出した。

 放出されるハート型のオーラを纏った右足はディスフィロアの胴体に直撃。加速によって威力を増したそれを受けたディスフィロアの巨体が大きく揺らぎ、その隙を逃さずアルトリアとダ・ヴィンチが魔力弾で追撃し、トドメとばかりに村正が斬撃を飛ばして攻撃した。

 

 遂にディスフィロアが滞空を維持出来ずに落下していく。重力に引かれるまま落ちていくディスフィロアだが、地面に落ちる前に態勢を立て直して着地すると、咆哮を上げて無数の氷塊を落とし始めた。

 

 氷塊に潰されないように走りながら各々がディスフィロアに攻撃を仕掛けるものの、ディスフィロアは自身の周りに炎の竜巻を出現させてそれを防いでいく。

 さらに、竜巻で防ぐだけでなく、その隙間からブレスを吐いて村正達を消し炭にしようとしていた。

 

 

「クソッ、ホント厄介だなこの炎ッ!」

「ッ、村正危ないッ!」

 

 

 上半身を消し飛ばそうと迫るブレスを間一髪で転がって回避するものの、彼の奥にあった氷塊で反射されたブレスに気付いた立香が叫ぶ。

 

 

「うぉおおおおぉッ!!?」

 

 

 咄嗟に右手に野太刀を投影。横薙ぎに振るわれた斬撃は寸でのところでブレスを相殺するが、衝撃までは殺し切れずに村正の体を吹き飛ばした。

 

 

「大丈夫ッ!?」

「気にすんなこんくらいッ! クソッ、氷がゴロゴロと……これじゃあどこからブレスが飛んでくるかわかったもんじゃねェなッ!」

 

 

 ほぼ直感で立香を抱えて跳躍。すると、今まで彼らがいた場所をまた別の氷から反射されたブレスが通り過ぎていった。

 

 

「村正、私に作戦があるッ! あのね……」

 

 

 抱えられた立香から耳打ちで伝えられた作戦に、村正は「あいよッ!」と頷き、彼女を安全な場所に下ろした後にそれをアルトリア達に伝えていく。

 

 

「お前ら一箇所に固まれッ! ブレスの狙いを集中させるんだッ!」

 

 

 グリムの指示に従い、アルトリア達が立香を中心に、互いに背を向け合う形で固まる。

 確かに無数に散らばった氷塊によるブレスの反射は、各自が分散していればいるほど効力を増す。どこから飛んでくるかわからないからだ。しかし、一箇所に固まってしまえば、自然と狙いはそこに限定される。

 

 ディスフィロアが固まった立香達を纏めて消し飛ばそうと、アギトに溜めた火炎ブレスを吐き出す。

 これまでのものと比べても上位に位置する威力に熱量。たとえ当たらずとも余波のみで全身が蒸発しかねないそれを前に、立香は―――

 

 

「それを……待ってたッ!」

 

 

 ギラついた眼光でブレスを見据え、右手を掲げる。

 

 

「簡易召喚―――」

 

 

 身に纏う礼装が稼働した証拠として、右手に刻まれた令呪が強く輝きを放つ。

 直後、立香達を護るように、一騎の影の英霊が現れた。

 

 豪華な装飾が施された青色のマントに、四肢を包む黄金の鎧。渦を巻く頭部も、また黄金で隠したその英霊の名は……

 

 

「―――アヴィケブロンッ!!」

 

 

 立香(マスター)に名を呼ばれたアヴィケブロンは、召喚されている段階で既に魔術を行使していた。

 周囲に散乱していた氷塊が独りでに動き出し、結合していく。

 

 ―――我が手は蒼氷の錫(ケセド・サフィロ)

 ゴーレムを繰るキャスターのサーヴァントである彼の宝具の一つによって起動した氷のゴーレムが、両腕を交差させてブレスを防ぐ。

 

 巨大なエネルギーの奔流を前にゴーレムの巨体が押されるも、ゴーレムは自らを造り出したアヴィケブロンと、彼のマスターである立香とその仲間達を護る為に一歩前に踏み出し、その真価を解き放った。

 

 ブレスと同じ色に変色した体を大の字に開いた瞬間、自らが受けたブレスの威力を何倍にも増幅したエネルギー波をディスフィロア目掛けて撃ち放った。

 

 自身の放ったブレスの威力を倍増されて返されるとは思わなかったのか、ディスフィロアの対応が遅れる。

 

 

「―――グギャァアアアァァッッ!!!?」

 

 

 反射された自分のブレスを受けたディスフィロアが悲鳴にも思える咆哮を上げて吹き飛ばされた。

 背後に聳える岩山に叩きつけられたディスフィロアがブレスを反射したゴーレムを忌々し気に睨みつけながら態勢を立て直している間に、立香達は改めて散開し、標的を見据える。

 

 

「グリム、アヴィケブロンに氷塊でゴーレムを作らせるからサポートお願い。村正達は引き続きディスフィロアに攻撃ッ! マシュ、また護ってくれる?」

「もちろんですマスターッ!」

「よし―――反撃開始ッ!!」

 

 

 

 頼もしい新たな戦力を加えた立香は、飛翔したディスフィロアを強く睨みつけて叫ぶのだった。

 

 

 

 

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 カドック・ゼムルプスは、努力型の魔術師だ。

 他の魔術師よりも高いレイシフト適正があった事からマリスビリーによってAチームの一員に選ばれたものの、他のメンバーのような突出した能力を持たない彼は、彼らに喰らいついていく為にひたすらに己を高め続けた。

 アンナ・ディストローツの助力もあってAチームに入ってからより魔術に対する理解を深め、失敗や他者と自分の差で悲観的になる事も少しずつ減っていった。結果的に、『なぜ200年程度の家系の出が……』と、彼がAチームに配属される事に嫉妬の感情を向けていた魔術師達も、最後には彼もまたAチームに必要な人材であると認識するようになった。

 

 しかし、カドックはそれで終わらせたくはなかった。

 周囲からの目線が変わっても、自分の為す事は変わらない。自分が変わっても、それよりも早いスピードで他のメンバー達は先を行っている。絶対に彼らに追いつき、そして追い越してみせると自身を奮い立たせ続けた。

 

 

「アンナ。さっきの蘇生薬の予備は残ってるか?」

 

 

 そして今、彼の不屈の闘志はこの危機的状況を前に燃え上がっていた。

 

 現在この地下牢で動けるのは、自分とアナスタシアのみ。使い魔を介して通信するアンナもいるが、流石に伝達用の使い魔に地下牢を破壊できる程の力があるとは思えないので除外する。

 ペペロンチーノならばこんな状況でもあっという間に解決して地下牢の外で笑っていそうだが、当の本人はこの状況を作り出したプロフェッサー・K(アホ)達と共に三途の川でシンクロナイズドスイミングしている。このままなにも出来なければ自分達も仲間入りしかねないが、諦めるつもりなどさらさらない。

 

 

『万が一の為に作っておいたのがあるよ。出しておく?』

「いや、それでまた砕けたら元も子もない。こっちから言うから、その時出してくれ」

『ん、わかった』

「アナスタシア。確認だが、ヴィイの目はここからじゃ見えない通路も見えるか?」

「可能です。この子の魔眼であれば、如何なる障害であろうと存在しないも同然です」

「その力で地下牢を開けられたりは……しないよな」

「残念ながら」

 

 

 浮かばせたヴィイと共に肩を竦めたアナスタシアからの返答に、カドックは「なるほど」と脳を回転させる。

 

 

(ヴィイの魔眼の力は僕でも把握している。念の為に確認したが、僕の記憶に間違いがなくてよかった。彼女の返答からわかるのは、ここの扉はヴィイの魔眼を使っても開錠不可能という事。特殊な方法でない限り、こういったものは鍵で扉を開けるものだから、鍵さえ奪えればこっちのものか……?)

 

 

 魔術師は自らの研究成果を他者に見られる事を極端に嫌う。そのため、研究成果に関連する物品などは自分や家族にのみ出入り、または開けられる場所に隠す事も珍しくない。そして、その際に使用するであろうものは、そこに自由に出入りできる者達だけが所持するもの。

 この場合、囚人である自分達がまず入手できない道具―――この地下牢であれば恐らく鍵こそが、ここから唯一外に出る為の糸口だ。

 

 となると、今自分達が取るべき行動は―――

 

 

『マスター、番兵が近づいてきています』

 

 

 その時、アナスタシアから念話で報告を受け、丁度いいタイミングだと思ったカドックは彼女に念話である考えを話した。

 

 

『出来るか? アナスタシア』

『もちろんです』

 

 

 頷き合い、揃って息を大きく吸い込み―――

 

 

「ゲホッ! ゴホッ、ゴホ……ッ!!」

「ァ、ガ……ッ! アァ……ッ!」

 

 

 自らの首元を抑え、可能な限り苦しんでいる真似をした。

 遠くからガシャガシャと鎧の擦れる音が聞こえてくる。囚人の自分達の異変に気付いた番兵達が近づいてきている音だ。

 

 

「グ、そ……ッ! こんな、ところで……」

「マス、ター……っ!」

 

 

 その場に倒れ込み、全身から力を抜く。

 目は閉じず、口の端からは唾液が垂れているが気にしない。その方がらしい(・ ・ ・)だろう。

 

 やがて番兵達の足音が自分達のいる牢の手前で止まり、次いで話し声が聞こえてくる。

 

 

「さっきの声はこいつらか……?」

「そのはずだが……死んだのか? 他の奴らも動いてねぇけど……」

「一応確認しておくか? 俺はこっち見るから、お前はこいつらを」

「ちっ、面倒くせぇ……」

 

 

 ジャラリと金属同士が擦れる音が聞こえた直後、ガチャンと扉が開かれ、一人分の足音が近づいてきた。別の足音が少し離れた事から、恐らくもう一人はK達の牢に入ったのだろう。

 

 自分の背後まで歩いてきた番兵が籠手を外し、首元に触れる。

 

 

「ッ、おい、こいつ―――」

「鍵を寄越してもらおうかッ!」

「ガペッ!?」

 

 

 脈がある事に気付いた番兵が慌てて離れようとするも、それより先に跳ねるように動いたカドックの拳が顔面に突き刺さった。

 鼻を押さえて怯んだ番兵の側頭部にハイキックを仕掛けて意識諸共体を蹴り飛ばせば、壁に叩きつけられた彼はそのまま動かなくなった。

 

 

「お前達―――ッ!」

「凍てつかせなさい、ヴィイ」

 

 

 K達の様子を確認しようとしていた番兵が剣を引き抜こうとするが、その直後に全身をヴィイから放たれた冷気によって凍らされ、一体の氷像へと姿を変えた。

 

 

「よし、今の内にッ!」

 

 

 瞬時に番兵の無力化に成功したカドックはガッツポーズしたくなる気持ちを押さえて、傍らで気絶する番兵から鍵を回収。アナスタシアとヴィイと共に出た後に鍵を閉め、番兵が意識を取り戻しても出られないようにしておく。

 

 

「アンナ、頼む」

『は~いッ!』

「……もうちょっとこう、なかったのか? 出し方とか」

『これしか出来ないの。許してね』

 

 

 Kの時と同じように悶えて蘇生薬を吐き出した小鳥に苦虫を嚙み潰したような気分になる。必要な事とはいえ、女性がなにかを吐き出す声を聞く趣味はない。

 それはそれとして、とカドックはK達の下へ駆け寄り、彼らの口へ蘇生薬を放り込む。すると、蘇生薬は飲み込まれずにその場で光となって弾けた。

 

 

「……ぁ、カドック……?」

 

 

 少し掠れた声で自分の名を口にしたKに、カドックは安堵と呆れの溜息を吐き出した。

 

 

「はぁ……。変な苦労かけさせるなよ」

「そうか、私は……。すまない、馬鹿な事をしてしまった」

「過ぎた事は仕方ないさ。アナスタシア、そっちは?」

「問題ありません」

「チッ、おいKッ! なに馬鹿な事やってんだよッ!」

「すまない。いや本当に」

 

 

 巻き添えを喰らったカイニスにKが謝っている間に、カドックはペペロンチーノのいる牢の鍵も開け、先程と同じように彼女に蘇生薬を与え、目覚めさせた。

 

 

「ありがとう、カドック……」

「体は大丈夫か? それなら早く行くぞ。大分時間を食った」

「そうね」

「ここからは私に任せてくれ。なに、やらかした分は働くさ」

「今度はヘマするなよ」

「もちろんさ。今度は油断しない」

 

 

 Kが先陣を切り、カドック達はその後に続く。

 そして、Kは宣言通りしっかりと働いた。

 

 

「な、お前た―――」

「ホァタァッ!!」

「あべしッ!?」

 

「へへっ、逃がしゃしねぇ―――」

「アタァッ!!」

「ぐぺェッ!?」

 

「大人しく地下牢に―――」

「アアアァァァチョォオオオオウッ!!!」

「ひでぶッ!?」

 

 

 敵地潜入用タイツを着用している事による変態的挙動で瞬く間に番兵や兵士達を無力化していくK。もっと静かに出来ないのかと思ったカドックだったが、彼は彼なりに真面目に後れを取り戻そうとしているんだと自分に言い聞かせる事で口には出さなかった。

 

 そして、気付けばカドック達は一つの扉の前に辿り着いていた。

 

 

『この先にバーヴァン・シーがいるみたい。でも、Kがモルガンから聞いた話だと、中は部屋じゃなくて、そこへ続く迷宮になってるんだよね?』

「あぁ、確かそう言っていた」

『それに加え、侵入者に対してトラップを仕掛けているらしいね。気を付けてね』

「解除する事は?」

『乗り越えていくしかないみたい。でも避けられるものもあるらしいから、それはこっちで伝えるね』

「よし……では、行こうか。お姫様を連れ出しに」

 

 

 カドック達が頷いたのを確認してから、Kは扉を開けるのだった―――。

 




 
・『バーゲスト』
 ……カリアが一時的とはいえ戦闘中に意識を失った事や、一瞬だけ理性を失った瞳から、彼女になにかが起きている事に気付く。後者に至っては自分の初陣であるキャタピラー戦争で、ファウル・ウェーザーを喰らった際の自分と似た不吉な予感を感じた。

・『パーシヴァル』
 ……絶え間なく来る生命の危機によって生存本能が覚醒し始めている。如何なる状況においても冷静な思考を保ち、通常時とは比べ物にならないパワーとスピードを獲得した。特性はくだけるよろい/ふくつのこころ。

・『アヴィケブロン』
 ……ディスフィロアが巻き散らした氷塊を利用すべく影のサーヴァントとして召喚された。氷塊やその欠片からゴーレムを作成し、立香達をブレスから護り、反射してみせた。

・『カドック』
 ……自分とアナスタシア以外に動ける者がいなかったため、久しぶりに全力で脳を回転させて窮地を脱してみせた。アナスタシアポイント+100000000点。ついでにアンナ(ルーツ)ポイント+10000点。


 そういえばジャンヌとジャンヌ・オルタのモーション・宝具改修が来ましたね。自分は残念ながらオルタは未召喚なので見れないのですが、マントがはためくのかっこよすぎですねぇ。自分、ああいうの大好きなんですよね……。

 それではまた次回ッ!
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