【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 リリム・ハーロットが始まりましたが、既に復刻前のイベントでドラコーもロクスタもティアマトも召喚済み、イベント礼装もオール完凸なため高みの見物を決め込んでいるseven774です。
 ですがスカサハがPUされたのは嬉しかったですねぇ。スカディはキャスターもルーラーも召喚できているんですが、ランサーのスカサハはまだ召喚できていないんですよ。PU来てくれて本当に嬉しかったですが、結果は爆死でした。辛いッ!

 それはそれとして、モンハンワイルズ、新PVが公開されましたねッ! 自分はswitchしか持っていないのでプレイできないのですが、こういうのは見ているだけでも楽しんですよねぇ……。

 今回は作戦会議の続きです。
 それではどうぞッ!


襲来

 

「さて、一通り説明したが、なにか質問したい事はあるかな?」

 

 

 先程の会議でモルガン達と共有した情報を伝え終えたKからの質問に、アンナが連れてきた立香達はそれぞれ顔を見合わせ、最初にダ・ヴィンチが声を上げた。

 

 

「一か所に固まられると困るから分散する、というのは理解できた。問題はその後なんだけど、どうやって倒すんだい? 君達ならば問題ないように思える相手でも、申し訳ないがこちらにとっては充分強敵だ。出来るならそれぞれの敵の弱点になるものをはっきりさせておきたい」

 

 

 ボレアスとバルカンの二騎を伴っているアンナと影とはいえ複数のサーヴァントを展開できる立香を除けば、カドックとオフェリア、そして虞美人はそれぞれ一騎だけサーヴァントを使役している。サーヴァントを運用しての戦闘技術や経験については立香の右に出る者はいないが、逆に一騎のみだからこそ自身と己のサーヴァントを生き残らせる為の戦い方を知っている彼らは、その戦い方故に各々が担当していた異聞帯でも立香に対抗でき、時には窮地にさえ追い込んだ。

 モルガン達は言わずもがなだ。この妖精國ブリテンの女王にして、ある事情から一種の特異点へと変異した異聞帯の“王”であるモルガンを始め、彼女の配下の妖精騎士達は個々が並のサーヴァントを凌ぐ戦闘能力を有している。特にメリュジーヌは、元が“祖龍”ミラルーツによって創造された“境界竜”アルビオンの末裔だ。本体から分かたれた存在とはいえ、その強さは折り紙付きである。

 

 しかし、そんな彼彼女らからすれば『油断すれば負ける』程度の相手であろうとも、立香達カルデア側にとっては『気を抜けない相手』になってしまう。アンナ達のように本物のサーヴァントを使役する事などまず出来ず、己の身一つでサーヴァントの攻撃を掻い潜りチャンスがあればカウンターを叩き込むような身体能力もない藤丸立香という少女は、カルデアがこの人理漂白という事態を打破する唯一の切り札であり、最大の弱点である。

 

 長期戦は元より覚悟している。だからこそ生き残る確率を少しでも上げる為の敵の弱点を知りたい。そんなダ・ヴィンチからの質問に対し、Kは「わかった」と一言置いてから答えた。

 

 

「まず第一に言うならば、勝利の鍵は君だ。マシュ」

「え、わ、私……ですか?」

「っ、そうだ。マシュ、あの力の事だよッ!」

「あの力……あ、そういう事ですかッ!?」

「その通り。君が持つ絆原石の力。それが彼らに対する切り札になり得る」

 

 

 救世主トネリコやその仲間達との冒険を終えたマシュがオークニーで目覚めた後に使用可能となった新たな宝具―――『絆紡ぎし希望の城(リンクス・キャメロット)』。そしてその宝具の発動を可能とした力の源、絆原石。

 仲間との絆を力へと変えるその輝きは、オークニーに封印されていたマキリ・ノワの凶気のオーラさえも弾き、仲間達を護り抜いた。

 

 しかしなぜその力について知っているのか。彼らの前であの宝具を使った記憶がないマシュが不思議に思って訊ねると、Kは小さく微笑んだ。

 

 

「実はあの時、カイニスを偵察に向かわせていてね。途中に海があったとしても、彼なら問題ない」

「癪だが、海はオレの独壇場だからな」

 

 

 まだ女性だった頃の自身を凌辱した神の事を思い出してか不服そうな顔をするカイニス。そんな彼の表情に、「わかる」とアンナが頷いた。

 

 

「なんだ? テメェもあの野郎に手ェ出されたのか?」

「出される前に玉潰してあげたよ。で、その後海の底にいる真体(アリスィア)も壊そうとしたんだけど、アポロン達に邪魔されてね……。破壊は出来なかったけど、ポセイドンは軽く二百年機能停止させたよ」

「マジかよ。クソッ、オレも参加したかったぜチクショウ」

「その時はもう君は死んでたからねぇ……。って、あぁいけない。話が変わってた」 

 

 

 歳取っちゃうとすぐ話題変えちゃうなぁ―――心中で呟くながら、アンナは咳払いしてKに左手を差し伸べて続きを促した。

 

 

「彼のお陰で君の力については凡そ把握できた。それにアンナも絆原石、もとい絆石の理解が深くてね。恐るべき凶気と凶光に対抗するには、絆の光でそれらを打ち払う君が必要だと思った。もちろん君もね、藤丸立香」

「Kさん……」

「一応言っておくけれど、マキリ・ノワとアルトゥーラの両方を君達に相手してもらう……なんていう無茶ぶりは絶対しないよ。君の力はあくまで凶気と凶光に対抗する為の方法だ。それを保有する君達と、その加護を受けた我々で各個撃破を狙う。大まかな作戦はこんな感じだ」

「じゃ、オレはその補助に回るとするかねぇ」

「あ、君にも全力で働いてもらうよ? その神気、オーディンのものだよね? あのお爺さんの名代として来たのなら、なにかしら強力な魔術とか貰ってるよね?」

「この土壇場で全力で働かねぇ奴がどこにいやがんだ。もちろん貰ってるぜ。即席だろうが神代の呪詛すら弾き飛ばす祭壇を作れる」

「え、グングニルないの……? オーディンの代名詞ってあの槍じゃん」

「その代名詞は流石に貰えねぇよ。それにどっちかと言や、ランサーのオレが持ってる魔槍(ゲイ・ボルク)の方が上だ。生憎と、そっちも手元にはないけどな」

「わかった。じゃあ、それも加味して戦術を考えていこうか」

「グリム。その祭壇は他の術者からの介入は受けますか?」

「基本は弾くが、発動者が許可すれば可能だ。が、介入する気なら用心してくれよ? 下手に弄ると誤作動起こして崩壊、場合によっちゃ効果が反転するからな。ま、アンタなら問題ないだろうが」

 

 

 もちろんです、と周囲に不安など一切抱かせない程の自信に満ちた返答の後、「それで」と、モルガンの視線が今まで静かに話を聞いていたアルトリア・キャスターに注がれた。

 

 

「貴様にも協力してもらおうか、次代の楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)よ」

「……ッ、はい、陛下……」

 

 

 まだマシュと合流していなかった頃、立香とダ・ヴィンチと共にキャメロットで謁見した時よりも近い距離で注がれる視線に、思わず目を逸らしてしまう。その様子にモルガンが僅かに眉間に皺を寄せたのがなんとなくわかり、アルトリアはなんとか逸らしたままで居続けようとする己の目を無理矢理動かし、彼女と視線を交わす。

 

 

「アンナは貴様らを勧誘する際、『目的のものは手に入れていない』と言った。が、私個人として言うならば、この戦いはそれなくして、我らに勝利の目は薄いだろう」

「……陛下」

「口を挟まないでください、K。これだけは伝えなくてはならない事項です。……いいか、アルトリア。これより我らが相手取るのは、この星を終わらせようとする者達だ。故に、我らには必要なのだ。貴様を贄として象られる(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)星の聖剣(エクスカリバー)が」

「ッ、エクス、カリバー……ッ!?」

 

 

 オフェリアを始め、その場にいる者達の視線がアルトリアへと向けられる。

 大多数の視線を一斉に浴びせられたアルトリアが思わず萎縮しかけるも、なんとか平静を保とうと努めていると、「どういう事……?」と立香。

 

 

「そのままの意味です。彼女、いえ、我ら楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)に課せられた使命とは、古の時代に鋳造されるはずであった聖剣を今度こそ鋳造するという事。私も一度は『巡礼の鐘』を鳴らし、その資格を得た。尤も、私は使命を果たす気はなかったため、資格を放棄しましたが」

「そんな、どうして……」

 

 

 ダ・ヴィンチが問いかけようとするも、モルガンの冷たい視線に射抜かれて言葉を詰まらせた。

 彼女の視線には、言葉にせずとも「黙れ」という意志が多分に含まれており、触れるべきでない内容だと否応なしに理解させられたのだ。

 

 

「私は聖剣とならず、代わりとして内海の門番であったディスフィロアを友とした。使命を放棄した私は、二度と楽園には至れない。故にアルトリア、貴様が行くのだ」

「アルトリア……」

「……うん、わかってたよ。昔からずっと、それこそ、最初から」

 

 

 初めて鐘を鳴らした頃から、鐘を鳴らす旅を始めた頃から、いや、ずっと昔、アルトリア・キャスターという妖精がこの世に生まれ落ちた時から、本能で理解していた。

 星の内海―――楽園(アヴァロン)から派遣された自分の使命は、故郷に戻った後に己が身を聖剣へと変え、人理の補助装置として成立させる事。

 

 ぽつぽつと自分の使命を伝えると、「そうだ」とグリムが言った。

 

 

「正直なところ、資格のあるなしは関係ねぇ。『巡礼の鐘』を鳴らした楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)が楽園に帰れば、それで解決だ。オレがここにいる理由は、その為だ。最悪の場合は死体でも構わないって話だったが……」

「むしろ生きてる状態だからこそ最高の形、というわけね。意思も魂のない死体よりも、その両方がある生きている体だからこそ、その性能は保証される。……それに、君は行く気なんでしょう? アルトリア」

「……はい。わかるんです。口ではなんとでも言ったとしても、私は必ず、楽園に戻るんだって。他ならない私自身が、そう気付いている」

(……やっぱり、君は彼女と同じなんだね)

 

 

 小さくもはっきりと自分という存在について口にしたアルトリア・キャスターに、アンナは内心思う。

 彼女の精神の形は、汎人類史で生きていた聖剣の担い手と全く同じだった。どのような言葉を吐いたとしても、どのような経験をしたとしても、決して悪の道へと堕ちず、精神が歪む事はない。

 しかし、アンナはもう、二人の『アルトリア』を同一の存在とは思わなかった。

 

 アルトリア・キャスターは純粋な女の子だった。あの地で聖剣を抜き、王として戦場を駆け、ベディヴィエールと共にその死を看取ったアルトリア・ペンドラゴンではなく、ただ楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)として生まれてしまっただけの少女だった。

 

 グロスターで初めて出会った時から両者の違いは朧気ながらも気付いていた。しかし、それは種族の違いだけだったのだ。今回の話を通して、ようやく深い面まで理解する事ができた。

 

 

「……後も先もあったものじゃなかったんだね」

「後なんてないさ。負ければそれで終わり。だからこそ戦うしかない」

「だったら、これからの作戦を修正しないとだねッ!」

 

 

 懐から取り出した眼鏡を勢いよく装着するダ・ヴィンチ。これまで共に旅をしたアルトリアが聖剣として生まれ変わらなければならないという事実に苦しんでいるはずなのに、それをおくびにも出さずに空気を切り替えようとしてくれる彼女に感謝しながら、K達は大きく頷いた。

 

 

「前提として、聖剣は必ず入手する。これは絶対に外せない。最初にチームを考えよう。敵を食い止めるチームと、アヴァロンに向かうチームだ」

「後者のチームに関してだけど、あそこは魔術世界最大の聖域。誰もが入れるわけじゃない。メンバーは人理代表として藤丸立香ちゃん、聖剣に成るアルトリアは確定として……」

「あの、私の同行は可能でしょうか」

 

 

 おずおずと手を上げたマシュに「どうして?」とアンナが訊ねる。

 

 

「私の中には、ギャラハッドさんがいます。円卓の騎士の一人である、彼の霊基が」

「そうか、円卓の騎士かッ! アヴァロンはアーサー王伝説に登場する地名だ。親和性が高いギャラハッドの霊基があるのなら、彼女もまたそこに入る資格はあるはずだ」

「おっと、なら従者は必要か? (オレ)なら行けるぜ」

「従者か……アヴァロンに従者を伴って入ったって伝説はないけど、もしかしたら入れるかもしれない。わかった。なら君も入れよう」

「ありがとよ」

「アヴァロンのチームはこんな感じかな。あそこは戦闘とは無縁の場所だから、下手に戦力を割くわけにはいかないし」

「となると、内海に行く為の道は……」

「道なら拓けます。我が友、ディスフィロアの力があれば可能です。彼は元々、楽園への道を塞ぐ門番だったのですから」

「僕もいるよ。具体的に言うなら、その大元だけど」

 

 

 大元の“境界竜”アルビオンはとうに朽ち果て、残されたのは骨のみ。しかし、朽ちた古龍種から溢れたエネルギーが新たな生態系を構築するように、アルビオンの場合は周囲の境界線を曖昧にし、その在り方を捻じ曲げる。

 故に、通常の手段ではたどり着けない星の内海へのアクセスが可能となる。

 

 

「それなら、入り口まではディスフィロアとメリュジーヌに同行してもらおう。その後は戦闘に参加してもらうよ。私とグリムは先に戦闘に参加してるから、立香ちゃん達は状況に応じて参戦する相手を決めて」

「わかった」

「次は影、ベリル・ガット、マキリ・ノワとアルトゥーラ。それぞれの対処チームだ」

「マキリ・ノワの相手は私が請け負いましょう。奴には煮え湯を飲まされてきました。今度こそ殺します。可能ならばベリル・ガットも担当したいですが……この体では満足に戦えませんので」

 

 

 心底悔しそうに顔を顰めるモルガンの気持ちは、大いに理解できるもの。何しろ最も愛する娘の信頼を裏切った挙句、この國を滅ぼそうとする勢力に加担したのだ。最早容赦する気など毛頭なかった。

 すると、ディスフィロアが静かに唸り声を上げ、友であるモルガンにそっと顔を寄せた。

 

 

「ディスフィロアは君と共闘するみたい。信頼されているんだね」

「だったら私も参加する。お母様を護りたい。いや、今度こそ護ってやるッ!」

「ならば(わたくし)も行きますわ。理由は、えぇ、バーヴァン・シーと同様です。メリュジーヌはどうされます?」

「『予言の子』をアヴァロンに送ったら、当然そっちに参加するよ」

「それじゃあ私達は、アルトゥーラを担当しようかな。どっちの古龍も侮れないけど、成体になった時の脅威度はアルトゥーラの方が上。私達が食い止めるよ。バルカンも連れて行っていい?」

「もちろんだよ」

「だったら私も同行するわ。あいつ、幼体で三体のワーム型の古龍種でしょう? 貴方達でも対処は可能だとしても、不測の事態が起きた場合はカバーするわ。……項羽様を戦場には送りたくはないのだけれど」

「いいの? ぐっちゃん」

「ぐっちゃん言うな。こうなったら仕方ないでしょう? だったらやってやるわよ」

「助かるよ。羽化する前に倒してくれると尚いい。頼んだよ」

「ベリルは私が相手しよう。ボガードを殺し、その心臓を奪った奴は、あの男の代わりに私が殴り飛ばしてやる」

「僕も行きましょう。この命は、もう長くありません。竜種を相手に挑んでも、まともに戦えないですから」

「安心しろ。私がサポートする。全力で戦え」

「ウッドワス公……ありがとうございます」

「それなら私もよ。あの狩人と同じバーヴァン・シーの御目付け役だったから見逃してたけど、いずれ私と争う彼女の信頼を裏切ったなんて、許せないもの」

「私も行くわ。彼はうちのサーヴァントの仇でもあるしね」

 

 

 一人一騎ずつ、それぞれが対処する相手の名前の横に彼らの名前を手元に用意した紙に書き込んでいくダ・ヴィンチが、「次はこれだな……」と呟く。

 

 

「いい感じに埋まってきたけど、まだ影の欄が一人も入ってない。誰か立候補する人いる?」

「影か……。ボレアス。君、確かあの時会話してたよね? 私は影の正体に心当たりがあるんだけど、イマイチ確証が持てなくてね……」

「奴の正体は把握している。奴の名はヴォーティガーン。姉上……いや、どちらかと言えば我が系譜に連なる者だ」

「ヴォーティガーン……やっぱり……そうなんだね」

「ヴォーティガーン……それって、昔ブリテン島にいたっていう竜種の事だったっけ……」

「少しは知っているみたいだね。それならもう少し教えてあげるよ」

 

 

 ヴォーティガーンに関する知識をあまり持たない立香が首を傾げた姿を見たアンナは、簡潔ながらも説明し始める。

 

 ヴォーティガーン―――それはアーサー王伝説に登場する卑王の名である。元は人間であったものの竜種の血を飲んだ事で黒き竜へと変異し、聖剣の持ち主であったアーサー王(アルトリア)率いる軍勢を瞬く間に蒸発させ、王とその従者として従軍していたガウェインという二人の聖剣使いを相手にしても尚優勢を保ち続けた存在。

 そして、その男が飲み込んだ血の持ち主の名も、“魔竜”ヴォーティガーンと呼ばれた。それは西暦に入って久しく、太古の昔に打倒された、文明を滅ぼす権能(チカラ)を持つ“黒龍”の因子のほんの一欠片を受け継いで生まれた竜種であった。

 

 

「あれ、でもヴォーティガーンって『白き竜の化身』って伝えられてなかったっけ。そうなると君の方になるんじゃないの?」

「確かにボレアスは私の息子で、この子の因子を継いだのなら私の子孫も同然だけど……だからって私の化身ってわけじゃないよ。ぶっちゃけちゃえば、色が似ていただけ。それに、私の因子を継いだのは汎人類史のアルトリア……アーサー王だよ」

「そうなんだ……って、えっ。アーサー王が君の因子を継いだのッ!?」

「そう。あの頃は神秘が衰退し始めていた時期だったからね。ヴォーティガーンの存在はブリテン島の神秘を終わらせるものだったけど、その過程で星の聖剣を砕かれてはいけない。下手に暴れて星の防衛、生存に悪影響が及ばないようにする為に、ヴォーティガーンが取ったものとは別の手段で新たな時代を創る為に、ウーサー王とマーリンに私の力の一部を分け与えた。その結果として、アルトリアが産まれたんだよ」

「どうしよう、目の前に歴史の生き証人がいるんだけど……。魔術世界の歴史がひっくり返るぞ……」

 

 

 表に語られる歴史でも、その裏に潜む魔術世界でも有名なアーサー王(アルトリア)。彼女の身に宿る竜の因子が、地球のアルテミット・ワンである“祖龍”ミラルーツより齎されたとなると、魔術世界の歴史は大きく揺らぐだろう。

 地球上の頂点に君臨する存在の系譜。その力の一端とはいえ、彼―――彼女はそれを受け継いでいたのだから。

 

 

「実に興味深い話だが、今はその話は置いておこう。ボレアスには影の、いや、ヴォーティガーンの対処に出てもらおうか」

「それなら、僕達はそのサポートに回る。アナスタシア、援護を任せてもいいか?」

「もちろんです」

「シグルド。相手が竜種ならば、貴方の竜殺しの力が活きるわ。協力してあげて」

「了解した」

「私も出るよ。私もどっちかというと後方支援寄りだからね。グリムはどうする?」

「悪ぃが、オレはアルトゥーラの方に行かせてもらうぜ。連中の中で一番時間をかけちゃいけねぇのは、間違いなくあいつだからな」

「だったら私とカイニスもそちらに回ろう。そのような相手なら、戦力はあった方がいい」

「わかった。……うん、これでメンバーはほぼ決まったね。確認よろしく」

 

 

 ボレアス達の名前を書き終えたダ・ヴィンチは、それを人数分用意した紙に模写してからK達に渡した。

 

 攻防チーム。

 影―――ボレアス、カドック・ゼムルプス、アナスタシア、オフェリア・ファムルソローネ、シグルド、ダ・ヴィンチ。

 ベリル・ガット―――ウッドワス、パーシヴァル、ノクナレア、ペペロンチーノ。

 マキリ・ノワ―――モルガン、ディスフィロア、バーヴァン・シー、バーゲスト、メリュジーヌ。

 アルトゥーラ―――アンナ・ディストローツ、バルカン、虞美人、蘭陵王、項羽、グリム、プロフェッサー・K、カイニス。

 

 アヴァロンチーム(後に状況に応じて影らとの戦闘に加勢)。

 藤丸立香、マシュ・キリエライト、アルトリア・キャスター、千子村正。

 

 

「どうかな……?」

「いいんじゃない? 戦力が偏りすぎてるところはないように感じられるし。こうでもしないと勝てない相手もいるからね。みんなもこれで大丈夫?」

 

 

 ダ・ヴィンチにアンナが頷き、念の為に周囲に確認を取るが、誰も異を唱えなかった。

 

 

「それじゃあチームメンバーはこれで決定ッ! そうとなれば早速―――……? なに、この揺れ……」

 

 

 正式に二つのチームとそのメンバーが決まった事で早速行動に出ようとした直後、地下室が揺れ始めた。

 立香が「地震……?」と訝しんだ直後、血相を変えたアンナが自分の座っていた椅子をひっくり返す勢いで立ち上がって叫んだ。

 

 

「ボレアスッ!!」

 

 

 瞬間、主の声に従ったボレアスが地下室の床全体にブラックホールを構築。足元が消えた全員がその場から強制転移させられ、地上に排出される。

 目の前の景色が一瞬で変化した事で幾人かが思わず周囲を見渡した直後、グロスターの大地を突き破って銀色の巨体が屹立した。

 

 

「キィイイイイイイッッッ!!!」

 

 

 先程の地響き以外の前兆を一切見せずに出現したその蟲龍は、突然の異変に慌てふためく妖精や人間達の混乱と恐怖など歯牙にもかけずに、己が取り逃した標的を睨みつけた。

 

 

「アルトゥーラ……ッ!」

「っ、ヤバイッ!」

 

 

 再び耳障りな咆哮を轟かせながら、幼体のアルトゥーラが花弁のように開いたアギトでこちらを捕食しようと迫ってくる。

 それにアンナやモルガンが対処しようとした、その時だった。

 

 ドォンッ! ドォンッ! と、二度に(わた)って轟音が轟き、それによってアルトゥーラの動きが止まった。

 その隙を突いて繰り出されたアンナの雷撃とモルガンの魔術がアルトゥーラに直撃し、アルトゥーラは苦痛に呻きながら大きく仰け反った。

 

 

「今のは―――」

「っ、見て、あそこッ!」

 

 

 立香が指差した先。

 そこにあったのは、暗雲の中に浮かぶ一隻の鋼鉄の船。その名は―――

 

 

「ストーム・ボーダーッ!?」

 

 

 

 Now Loading...

 

 

 

「撃て撃て撃てッ! 立香達に近づけさせるなッ!」

『魔力魚雷、発射します~。海でもないのに撃てる魚雷とはこれ如何に~』

『うっせぇぞプロフェッサーッ! つべこべ言わずに手伝えッ!』

『私、肉体労働苦手なんですけど~』

 

 

 船長のネモの号令を合図に、管制室に彼の分身達の声が響く。

 

 

「あ、あれが伝書鳩の報告書に書かれてた蟲かね……? いくらなんでもデカすぎないかッ!?」

「いえ、ミスター・ゴルドルフ。トリスメギストスⅡはあれを単なる昆虫、ないしそれに近しい存在ではなく、古龍種の幼体だと結論付けています」

「なんで君はそう冷静でいられるのッ!? え、幼体ッ!? あのバカでかい奴がッ!?」

『ちょっとちょっとッ! なんでストーム・ボーダーが動いてるのさッ!? この國に入った時から動かなくなったはずだよねッ!?』

「おや、ミス・ワトソン。久しぶりだね。では簡潔に説明しよう。つい先程から、ボーダー内の機能が回復しつつあってね。その瞬間、再起動したシバが君達の危機を報せてくれた。お陰でこうして助けに来れたわけさ」

『ま、そのせいで俺たちゃ全員馬車馬のように動き回りまくってるわけだがなッ!』

『正直きっついです。ダ・ヴィンチさん、早く来てください。そして助けてください。この島の魔力密度に対応する巡行プログラムは、流石に貴女なしには作れませ―――あっ』

『わわわっ、ちょっとそこで転ばないでよ~ッ!?』

『ごめんなさぁ~いッ!!』

『……うん、わかった。だったら降りてきてッ! じゃなきゃ乗れないッ!』

『だったら私が送ってやろう』

『え、わッ!?』

 

 

 ダ・ヴィンチの通信に割り込むように聞こえてきた声。それにネモ達全員が訝し気に思った直後、彼らの背後に人間大程の大きさのブラックホールが出現し、そこからダ・ヴィンチが飛び出してきた。

 

 

「ぎ、技術顧問ッ!? いったいどうやって……」

「いたた……お尻打った……って、嘘ッ!? ここボーダーの中ッ!?」

『それでいいかな、ダ・ヴィンチちゃん?』

「うわ、いきなり通信乗っ取んないでよッ! でもありがとうッ!」

「ま、待てッ! まずは説明を―――」

「後でする~ッ!!」

 

 

 今の一瞬で起こった出来事についての説明が欲しいと叫ぶゴルドルフだったが、ダ・ヴィンチはそれに答える前にダッシュで管制室から出て行ってしまった。

 

 

「まぁ、この場合は仕方ない。今はこの状況をなんとかしないとだね」

「わかってる。まずはあの古龍種をどうにかするッ! あぁクソッ、今度はなにッ!?」

 

 

 改めて古龍に攻撃を加えようとした直後、管制室はおろか、ボーダー全体に響き渡る緊急アラート。それに苛立ちを覚えながらもネモがプロフェッサーに叫ぶ。

 

 

『今レーダーが大量の魔力反応をキャッチしました~。過労死しそうなので確認お願いします~』

「なんなんだいったい……。な、こ、これは……ッ!?」

 

 

 作業の傍らに大量の魔力反応が近づいてきている事に気付いたプロフェッサーに言われ、ネモはレーダーを表示し、絶句した。

 

 ストーム・ボーダーを中心に据えるレーダー。その正面には、無数の赤い点が表示されていた。

 それだけならばまだ新たな敵群の出現だと納得できた―――もちろん納得などしたくない―――が、ネモが絶句した理由は別にある。

 

 その理由を口にしたのは、彼の傍らにいたゴルドルフだった。

 

 

「こ、この赤い点、反応が全部全く同じではないかね……?」

「あぁ……構成要素もなにもかも、全部同じだ……」

 

 

 レーダーが捉えた魔力反応。その全てが一つの違いなく、同一のものだったのである。

 これまで自分達は多くの敵と戦ってきた。中には同種で群れを構成して襲ってきた敵もいた。だが、それでも彼らの構成要素は必ず違っていた。それもそのはずだ。生命であれば遺伝子構成がどこかで違うはずだし、ゴーレムのような無機物であっても物質の組み合わせの違いはある。

 だが、レーダーに映る魔力反応にはその一切が存在しない。

 

 全くの同一存在。一つの間違いもない、完璧な群れ。だが、故にこそ恐ろしく不気味だった。

 

 ネモの指は自然とレーダーに映る者達の正体を把握しようと、それらにカメラを合わせて表示させた。

 

 

「な―――」

「ぁ、あぁ……」

「これは、マズいな……」

 

 

 そして、再び絶句する。

 

 彼らが目撃したもの。それは、暗雲に覆われていた空をより暗黒に染め上げる、無数の“黒蝕竜”の群れであった―――。

 

 




 
・『ルーツにナンパを仕掛けたポセイドン』
 ……いつもの如く美しい女性に手を出そうと思って声をかけた相手がまさかの“祖龍”だった件について。結果、ポセイドンは人間態の玉を踏み潰され、本体にも電撃を浴びせられ二世紀近く機能停止させられた。この二百年を古代ギリシャ人は『海神の睡眠期』と名付け、現代にも伝えられている。当時のアンナは本気でポセイドンを破壊しようとしていたが、ギリシャの神々がそれを看過するわけもなく、アポロン、ヘリオス、ヘルメス、アレスの四柱が阻止に向かい、大地に逆さに突き立てられたという。ちなみにこの時ゼウスが参戦しなかったのは、『ポセイドンの奴“祖龍”に手を出すとかwwwこれで私達制裁兄弟にもなったなwww後で慰めてあげよう……』状態だったから。尚、二百年後再び犬神家になる。

・『アーサー王伝説時代のルーツ』
 ……当時の彼女はアンナ・ディストロート・シュレイドの転生体を探しながらも、地球の守護を信念としていた。故に、(ソラ)より来る侵略者から星を護る為の聖剣を砕きかねないヴォーティガーンが自身の系譜に連なる者だったとしても、その討伐に動いた。結果として誕生したのが、アルトリア・ペンドラゴン。彼女は聖剣の担い手であると同時、創()/創造の権能を持つ“祖龍”の力の一端を宿した少女であったのだ。その最期を、その先にある永遠の聖杯探索が始まった時、彼女を造ったルーツが抱いた感情は……。

・『“黒蝕竜”の群れ』
 ……渾沌より生まれ落ちた竜の群れ。本来ならば群れるはずもない彼らが群れを成すという時点で異常事態であるこれは、最新の『厄災』の始まりであった。


 今回は見切り発車の弊害が出ました……。前回アンナに『試練(聖剣をゲットする事)を達成する事よりもやらないといけない』と言わせておきながら結局取りに行かせてますし……見切り発車はこういう時本当に書き難いんですよね……。もっと事前に構想を練っておかないと……。

 次回もよろしくお願いしますッ!
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