ドーモ=ミナサン。
steamでキングダムハーツシリーズのセールが行われているという情報を聞きつけ、steamに手を出すべきかどうか迷っているseven774です。
読者の皆様の中にsteamでゲームをプレイしている方はいらっしゃいますか? 私、恥ずかしながらパソコンでゲームをした経験がほとんどなく、steamの操作の具合など全くわかっていないので、軽くでもいいので教えてくださると幸いです。プレイするとなった場合は無線コントローラーを購入する予定です。
今年の夏イベの予告が来ましたねッ! ドラゴンという単語が出てきているので、恐らく竜種のサーヴァントを中心にしたイベントになりそうで楽しみですッ!
それでは本編、どうぞッ!
「まさか、こんな事が起きるなんて……」
崩落した建物、それを構成していた瓦礫の影に身を潜めていたコヤンスカヤは、つい先程地面を突き破って現れた“破翼龍”の幼体の触手と、暗雲を背負ってやって来た黒き竜達に歯噛みした。
一瞬。そう、一瞬の出来事だった。
“竜骸の沼”でアンナ達から受けた傷を癒やす傍ら、この國の中で唯一の庇護対象もとい協力関係となった妖精、ムリアンへの報告をしようと思いグロスターに来たものの、当のムリアンは何者かによって瀕死の重傷を負わされ、今にも死んでしまいそうな状態になっている。
すぐに応急処置は施したものの、次の瞬間には“破翼龍”の幼体が出現。ムリアンが領地であるグロスターに施した妖精領域の制約は受けているはずだというのに、ただ出現しただけで街を半壊させたのだ。比類なき巨大な体を持つが故のゴリ押しだが、それ故に恐ろしい。たとえ弱体化していたとしても、その巨体に宿るパワーは尋常ならざるものだから。
それに続いて、今度は空から“黒蝕竜”の群れ? 冗談は休み休みにしてほしい。タイミングさえ逃さなければ古龍種へと成長する竜種など是非とも
いずれこの街に降りてくるであろう大群に注意を払いながらも、コヤンスカヤの視線は今尚暴れる幼体へと向けられる。
なぜ動いているかは知らないが、突如加勢してきたストーム・ボーダーによる攻撃に怯んでいるそれが先程狙っていたであろう者達を思い浮かべながら、思考に走る。
(標的はカルデア……いえ、モルガン? まさか餌と認識して? いや、それとは別の理由が……)
「コ、コヤンスカヤ……」
「っ、喋ってはいけません。傷が開きますよ」
自らの腕の中から聞こえてきた掠れた声に、小さく答える。
応急処置の成果か、自分が発見した時に流れ出ていた血は今や固まり、呼吸も安定している。
「私のグロスターが……」
「……ムリアン様、あの龍は強大に過ぎます。この街はそう時間をかけずに地獄と化すでしょう。あそこにいる竜種が降りてくれば、この街はもう終わりです」
「ッ、そう、ですか……」
ハッキリと告げられたグロスターの終焉に、ムリアンが痛みとはまた別の苦しみに顔を歪めた。
だが、今の彼女に出来る事は、もうない。自分を除いた“翅”の氏族全員を玩び、そして殺した“牙”の氏族は、ウッドワスを除いて既に彼女の手によって殺し尽くされた。何百年もかけて行われた、たった数分の復讐の果てに己の目標を失い、尚且つ何者かの襲撃を受け致命傷を負ってしまった彼女に、最早活動する力など残されていない。
「私の行いは……愚かでした」
ムリアンの口から、小さくか細い後悔の声が漏れる。
「私は、間違ってしまった……。私のした事は、先祖達と大して変わらなかった」
(ムリアン様……)
ムリアンは妖精國の中でも指折りの知恵者だった。過去の文献を参考に、妖精國誕生以前、つまり妖精歴の始まりの時代になにが起こったのかを考察していた。
白き災厄の襲来。
鋳造されなかった聖剣。
奪い去られてしまった
災厄から生き残った神とその巫女。
最後に、彼らと同様に生き延びてしまった、自分達の祖先である『はじまりのろくにん』。
そう、『はじまりのろくにん』だ。彼らの愚かさが、遥か未来にあるこの世界の終わりを決定づけた。
そして自分もまた、彼らと同様の過ちを犯し、愚かな結末を迎えた。
「……本当に、愚かですね。真に倒すべき敵をわかっていながら、自分の利益のみを優先して、最後まで利用された……。だから―――」
「一矢報いたいのですね? お任せください。貴女の分まで、この私が―――」
「―――違う。違うんです」
己の感情を利用され、挙句に致命傷まで負わされた。ならば行うべきは報復だと、そう思っていたコヤンスカヤだったが、彼女本人の口から出た否定に、思わず眉を吊り上げた。
なぜ、報復を望まないのか―――口には出さずともコヤンスカヤが思っている事を察しながら、ムリアンは手を伸ばす。
「コヤンスカヤ、お願いが、あります……」
せめて、これだけは伝えなくてはならない。
「ブリテンを、この國を、護ってください……」
「……
「はい。これは、私同様に、この世界で同族がいない貴女だからこそのお願いです……。最早滅びは回避できないものだとしても……せめて、緩やかな最期を……」
自分も含めた妖精達。今生きている者も、既に死んでいる者も、そのほとんどが、『はじまりのろくにん』の罪を受け継いでしまった。ただ気に入らないからと無為な殺戮を繰り広げ、愚かな事件を起こし続けた。
自分達妖精は、元から滅びるしかない生き物だった。間違っても、世界の代表に立ってはいけない種族だった。代表を名乗るにはあまりにも愚かで、罪に塗れている。
だが、先祖の犯した罪のため無慈悲に滅ぼされるのは違うはずだ。罪を背負いながらも、他者と絆を結び、生活を営む者達もいたはずだ。彼らもまとめて滅ぼすのは、きっと間違っている。
ならばせめて、異聞帯という『行き止まりの世界』に相応しい、緩やかな最期を迎えさせるべきだ。
「ごめんなさい、貴女に、こんな事を頼んでしまって……」
「…………」
「どうか、どうか、お願いします……コヤンスカヤ、私の、友……達……」
握っていた掌から力がなくなり、滑り落ちる。
薄く開かれた瞼。その奥にある双眸に、最早光は宿っていない。
それを静かに見つめ、コヤンスカヤはそっと彼女の目元に左手を添えて優しく瞼を閉ざし、そこから流れた涙も拭い取った。
「……わかりました、ムリアン」
敬称をなくし、彼女の名を口にする。
集めた“牙”の氏族を己が策略に嵌め、殺し尽くした彼女は、先程までその出来事に関する記憶を失っていた。そうしなければ、今この時まで生き続けてきた意味がなくなるも同然の事だったから。
けれど、彼女は死の間際に当時の記憶を思い出し、そして自らの行いを反省した。
愚かだった。間違いだった。自分のやった事は、かつて同胞を皆殺しにした“牙”の氏族と大して変わらなかったのだと。
その上で彼女は、この國の緩やかな滅びを願った。回避できないものだとしても、その滅びは理不尽なものであってはならないと判断した。
なんという妖精なのだろうか。自分がこの國にいた期間は短いが、それでも彼女と同じ妖精など見た事がない。同時に、心の底から自分を『友』と呼んでくれた者もまた、ムリアンしかいなかった。
「貴女の喜びも、哀しみも、大切な商品として買い取らせていただきます。安心してください。誰にも売ったりはしません。お気に入りですからね」
煤と砂埃で汚れた緑色のドレスを脱ぎ捨て、仕事着である白スーツへと着替える。
「『ブリテンを真の意味でお守りする』―――貴女の願い、承りました。倒すのではなく護る、というのであれば、なにを護るかは明白です」
悔しい事に、自分はムリアンを殺害した仇敵を知らない。彼女の遺体から探り始め、時間をかければ見つかるだろうが、そんな事をしている暇はない。
だが、『護る』のであれば、自分のすべき事はすぐにわかる。
「最新、強力、総合力のNFFサービスにお任せください。えぇ、黒幕にとって最も目障りな勢力を、バシッとお守りしてみせましょうッ!」
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「嘘……ゴア・マガラの大群ッ!?」
ボレアスによってストーム・ボーダーに転移させられたダ・ヴィンチから齎された恐ろしい報告に、思わず立香の表情が強張る。
『そうッ! 距離はまだ少しあるけど、
「離れたいのは山々だけど―――」
「あいつ、私達を逃がす気はないみたいッ!」
「先輩ッ!」
咄嗟にマシュが立香を抱き上げてアルトリアと共に飛び退くと、先程まで彼女達がいた場所に巨大な瓦礫が落ちてきた。
軽く身動ぎしただけで彼女達を圧し潰そうとした“破翼龍”の幼体の触手は、逃がさないとばかりに耳障りな咆哮を上げる。このままここに留まっていては最悪この触手とゴア・マガラの大群を相手取らなくてはならなくなると立香が思った時、そうはさせないとアンナが声を上げた。
「ボレアス、立香ちゃん達を“竜骸の沼”に連れて行ってあげてッ!」
アンナの指示に従い、ボレアスが立香達の前にブラックホールに酷似した空間の歪みを作り出す。
「アルトゥーラは私達に任せて、君達はアヴァロンにッ!」
「ありがとうッ!」
「行きなさい、ディスフィロア、メリュジーヌ」
任せろと言わんばかりに唸り声を上げたディスフィロアと、頷いたメリュジーヌも加えた立香達が歪みへと飛び込み、グロスターから離脱する。
一先ず今回の戦いの切り札になり得るアルトリア・キャスターを含めた者達をこの街から離脱させられた事に安堵するも、即座に気持ちを切り替えてその場から飛び退く。直後、大地を崩落させながら新たな触手が飛び出してくる。
「別の触手か……ッ! 本当に厄介ねッ!」
ただデカいというだけで脅威になる。その単純明快な事実に悪態を吐きながら虞美人が真紅の魔力で作り出した双剣を次々と投擲する。
受肉した精霊種特有の豪快な魔力放出による投擲は新たに出現した幼体の触手に直撃するも、赤色の障壁に阻まれて霧散してしまう。だが、その程度の事などわかりきっているとばかりに虞美人が距離を取ると、彼女と入れ替わるように飛び出した項羽が三対の腕で握った六本の剣を叩きつける。
緑色の炎のようなオーラを迸らせながらの連撃は、虞美人の力任せの連撃を受けて微かに弱まっていた障壁を打ち砕き、その奥にある本体への攻撃を可能とする。
「シグルド、追撃ッ!」
「ヌゥン―――ッ!」
すかさず指示を飛ばしたオフェリアに従い、シグルドが短剣を殴り飛ばす。力強く握り締められた拳によって打ち出された短剣は凄まじい勢いで触手に殺到し、刺さりこそしなかったものの衝撃で鱗を引き剥がし、間髪入れずに飛び込んだシグルドの振り下ろしたグラムが皮膚を切り裂いた。
竜殺しの代名詞たる大英雄の一撃を受けたからか、今までよりも明らかに痛みを感じた様子で怯んだ触手に、次いでアナスタシアが両手に抱えたヴィイを高く掲げる。
「視通し、凍えさせなさい、ヴィイッ!」
所有者の指令を受けたヴィイの瞳が妖しく輝いた直後、怯んでいた触手全体が薄く凍り付いた。
―――シュヴィブジック。
アナスタシア・ニコラエヴァ・ロマノヴァがサーヴァントに昇華される事で獲得した、
相手が持っているものをこちらの手元に移動させる、足元に亀裂を作って躓かせるなどといった、まさしく『悪戯』と呼ぶに相応しい程度の現象しか引き起こせないが、効果対象が巨大な体躯を持つ幼体の触手だと、その規模は大きくなる。人間大の大きさの標的と、天を衝く程に巨大な古龍種とでは訳が違うように。
完全に凍てつかせるなどというのは決して小さな不可能ではないため実現は不可能だが、それでも彼女とヴィイの力は幼体といえども古龍種相手にも届いたのである。
「よし、いいぞアナスタシアッ!」
「悪い気分ではありませんが……長くは持ちません。すぐに追撃を―――ッ!?」
触手の停止に力を注いでいるのに集中し続けているアナスタシアを邪魔者と認識した別の触手が、彼女を抹消しようと襲い掛かってきた。
スキルの維持に尽力しなければならないが、今ここで倒れるわけにはいかない―――アナスタシアがスキルの維持を中断しようとするが、「そのまま続けてろ」とボレアスがバルカンを伴って彼女の前に降り立った。
「合わせろ、バルカン」
「言われるまでもねェッ!」
大地を削り取りながら迫ってくる触手に、ボレアスが双剣を、バルカンが大剣を構える。
「フ―――ッ!」
「ドォリャァアアッ!!」
X字を描くように振るわれた双剣、上段から下ろされた大剣から飛んだ三つの炎の斬撃が触手を正面から迎え撃ち、一瞬の拮抗の末触手を弾き飛ばした。
「二人共ありがとッ! カイニス、行くよッ!」
「応ッ!」
アンナが緋雷の軌跡を残しながら接近し、徒手空拳で追撃。さらにカイニスも激流を纏わせたトライデントで攻撃を繰り出し、さらに触手を弾き飛ばす。
「っ、もう限界……ッ!」
「だったら私らに任せろッ! バーゲストッ!」
「もちろんですわッ!」
「私も行くわよッ!」
遂に維持が難しくなったアナスタシアが離脱し、拘束が解かれた触手が氷の欠片を撒き散らしながら動き出す。
たった数秒といえどたった一騎のサーヴァントに動きを止められていた事に対する怒りをぶつけるように自らの体を鞭のようにしならせた一撃を回避したバーヴァン・シー、バーゲスト、ノクナレアが攻撃を繰り出す。不可視の矢と炎の斬撃、ハート型の魔力弾は吸い込まれるように触手へと向かっていくが、その身を膜のように覆う赤い光が防壁の役割を果たし、それらを本体へと届かせない。
「クソッ、ホンットに
「来ますわよッ!」
見上げる程の巨体が大地へと叩き付けられた影響で発生する風圧に態勢を崩されないようにする彼女達を轢き飛ばそうと、触手が横薙ぎに振るわれる。
凄まじい勢いで迫る銀色の巨体。空中にいるため回避する事が出来ないと息を呑んだ瞬間、その背後に青白い空間が出現し、彼女達を呑み込んだ。
すると、彼女達の姿からグロスターから消え、幼体が小さく見える程の高所に出現する。
(お母様の転移魔術ッ!)
「バーヴァン・シーッ!」
「あぁ、かませよデカ犬ッ!」
「犬って呼ばないでくださいましッ!」
叫びながらも、バーゲストは全身から黒く染まった炎を立ち昇らせ、己に宿る呪いを力へと変える。
だが、その力に危機感を抱いたのか、大地を突き破って新たな触手が姿を見せ、バーゲスト目掛け真っ直ぐに向かってきた。
(ッ、三本目の触手ッ! ですが―――ッ!!)
「やらせはせんッ!」
「そうは問屋が卸さないってなァッ!」
大剣を構えるバーゲストを逆に喰らおうとアギトを開いて迫る触手に、モルガンの転移魔術で彼女の前に出現したウッドワスとグリムが構えを取る。
グリムが懐から幾つもの種子を放り投げた後に杖を振るえば、映像を早送りするように種子が急成長し、触手に巻き付いて動きを阻害する。その隙に極限状態へと変化したウッドワスが漆黒のオーラを纏った拳を突き出せば、そこから放たれた衝撃波が触手を怯ませる。
「行け、バーゲストッ!」
「助かりましたわッ!」
ウッドワスとグリムの間を通り過ぎ、己の重量も合わせて急降下していく。
自分一人では絶対に抑え切れなかったであろう呪い。それをこうして制御し純粋な力として扱えるようになったのは、バーヴァン・シーの御目付けであるあの狩人のお陰だ。彼女やモルガンの助力で己のものとしたこの力で、ブリテンを滅ぼさんとする厄災を打倒する―――ッ!
「ハァアアアアアァァァ―――ッッッ!!!」
高所からの急降下。呪いの炎を帯びた大剣。巨大化した肉体と、そこに詰め込まれた筋肉。周囲に仲間達がいないからこそ出せる現段階での最大出力―――それら全てを掛け合わせた振り下ろしは、拘束を解いた触手の防壁を容易く食い破り、大地へと叩きつけた。
轟音と共に叩きつけられた触手が、その身に刻み付けられた傷口から大量の血液を噴き出しながら起き上がるが、上空から落ちてきた無数の槍がそれを許さない。
「よくやりました、バーゲスト」
静かに、淡々と。しかしその奥には確かな配下への賛辞と労いが秘められた声色で告げたモルガンが、ハルバードを高く掲げる。
先程のバーゲストの一撃は、彼女が誕生した瞬間から身に宿っていた飢餓の呪いを纏わせたもの。形があろうとなかろうと関係なく喰らうその力は本体から触手へ注がれている活力さえも奪っており、今はまだ動いているが、時間さえ経てばいずれ動かせなくなるだろう。
だが、触手が動かなくなるまで待つつもりなど毛頭ない。満足に動かせない、それだけで充分な好機なのである。
「当初の予定とは違いますが―――これで、一本目だ」
ハルバードが振り下ろされる。
ゆったりとした動作で振り下ろされたそれは、しかし凄まじい威力と速度を以て触手を襲う。瞬間、触手に突き立てられていた槍も輝きを発し、パイルバンカーのように触手の体内に衝撃を与え、怯ませる。それに触手の動きが無理矢理止まった隙を突いたハルバードの斬撃は、触手を真っ二つに両断するのだった―――。
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「す、凄い……。幼体の触手の一本を斬った……」
「おい見ろッ! あいつら逃げてくぜッ!」
「三本ある触手の一本を斬られて危険と判断したんだろう。お陰でこちらは、安心してあの群れに対処できる」
『よしッ! ブリテン島用の巡行プログラム構築完了ッ! これでいつも通り動かせるよッ!』
モルガンによって切断された断面から血液を噴き出しながら出現した穴に撤退していく触手ら。それに一先ず「助かった」と誰からともなく溜息を吐いていると、ネモ・プロフェッサーと協力してブリテン島の巡行プログラムの構築が完了した旨を伝えるダ・ヴィンチの声が届いてきた。
その報告に即座に意識を切り替え、ネモは口元に笑みを浮かべる。
「でかしたッ! これで―――ッ!」
「マズイ、ゴア・マガラの大群が来るぞッ!」
「面舵一杯ッ! 回避と同時に迎え撃てッ!」
『合点だオラァッ!!』
迫り来る漆黒の群れを前に、ストーム・ボーダーの船体が動く。ダ・ヴィンチとネモ・プロフェッサーによる巡行プログラムの構築により従来通りの性能を発揮したストーム・ボーダーの魚雷発射管から撃ち出された魚雷がゴア・マガラ達を迎え撃つ。
ゴア・マガラ達は翼を羽ばたかせて魚雷を回避するも、魚雷と同時に発射された対艦ミサイルがそのうちの数体に着弾する。魔力によって象られた対艦ミサイルの威力は竜種であるゴア・マガラにも充分な効果を発揮し、直撃した個体はその身を肉片へと変え、爆発の余波はその周囲にいたゴア・マガラ達の鱗や皮膚を焼き焦がし、奥にある肉と骨さえも焼いた。
しかし、仲間の死を歯牙にもかけていないのか、後続のゴア・マガラ達が爆炎を突き破って襲い掛かってくる。
「あいつら、仲間がやられたのに怯まねぇのかよッ!?」
『そういう思考は元からないんだろう。解析してみたけど、あのゴア・マガラ達はシャドウ・サーヴァント同様に、意思のない残滓―――謂わば、シャドウ・モンスターと呼ぶべき存在だ』
「ふむ、この状況で彼らの名称を決めるとは。余裕が出てきたのかな、技術顧問?」
『あるはずないッ! ただあいつらは本物のゴア・マガラとは違うって言いたかったのッ! っ、攻撃が来るッ! どこかに掴まってッ!』
「魔力障壁用意ッ! 攻撃を防げッ!」
ダ・ヴィンチの叫び声に、全員が咄嗟に近くにあるものにしがみつく。
直後、魚雷や対艦ミサイルによる迎撃を掻い潜ったゴア・マガラ達のブレスがストーム・ボーダー目掛けて放たれるも、ネモの瞬時の判断によって展開された魔力障壁がそれを阻む。だが、ストーム・ボーダーを包囲するゴア・マガラ達は絶え間なくブレスを放ち続け、瞬く間に魔力障壁の耐久値を削り取っていく。
「や、やばくないかねッ!? なんか嫌な音がすっごい聞こえてくるんだけどッ!? これ私の気のせいって事でいいッ!?」
「残念ながら現実ですねゴルドルフ所長。耐久値がゴリゴリ削られてます。破られるのは時間の問題かと」
「なんで平然としてるのかな君ィッ!?」
『これ以上は無理だ、破られる……ッ!』
ゴルドルフとダ・ヴィンチが悲鳴を上げた瞬間、バリンッッ!! と甲高い音を立てて魔力障壁が破られ、その破片の間を通り抜けたブレスがストーム・ボーダーに直撃した。
「ぐ、うぅううううぅぅ……ッッ!!」
『船体損傷ッ! 発射管三門破損ッ!』
ストーム・ボーダーの損傷を報告している間にも、状況は進み続ける。
邪魔な障壁が消えた事で、ゴア・マガラ達とストーム・ボーダーの間を隔てるものはなくなった。
「キシャァアアアアアアアアッッ!!」
影の“黒蝕竜”の一体が咆哮を上げたのを合図に、周囲のゴア・マガラ達が一斉にストーム・ボーダーへと殺到し、甲板や側面に翼の爪を突き立ててきた。
『まずい、取り付かれたッ! こいつら、船体を引き裂こうとしてるッ!』
「船体加速ッ! ゴア・マガラを振り落とせッ!」
船長の命令に従い、ネモ・エンジンがマリーン達に指示してストーム・ボーダーを加速させる。
エンジンとタービンをフル稼働させて航行速度を上げれば、浅く取り付いていたゴア・マガラ達が堪らず引き剝がされていく。残りのゴア・マガラ達も船体に爪痕を残しながらも吹き飛ばされていくが、唯一司令室の前に残ったゴア・マガラが、背後から打ち付ける強力な風圧に耐えながらアギトを開き始める。
鋭利な牙が並ぶその奥には、青黒い粒子によって構成されたブレスが覗いていた。
―――やられる。
そう誰もが思い、身構えた瞬間だった。
[―――させません]
脳内に直接響くような、重々しい声。
それが聞こえると同時、甲板に取り付きブレスを撃ち出そうとしていたゴア・マガラを赤黒い魔力の渦が吹き飛ばした。
「な―――」
「今のは……」
『ストーム・ボーダーから左側に魔力反応検知ッ! この反応はコヤンスカヤ、いや……ビーストッ!』
「なにィッ!?」
思わずネモ達がストーム・ボーダーのカメラが船体から左側、そこに突如出現したビースト形態のコヤンスカヤを見る。
黄色い瞳を持つ、白い体毛に包まれた五本の尻尾。その中心からは眩い光を放つコヤンスカヤは、先程自分が吹き飛ばしたゴア・マガラがこちらに飛んでくるのを視認すると、尻尾の一本から呪詛の波動を放出。
弾丸のように打ち出されたそれは、一発目でゴア・マガラの動きを止めるなどという事はせず、そのまま打ち砕いた。
「我々を、助けたのか……?」
[勘違いしないでください。私は契約に則って行動しているだけですので。貴方方に助力するなど心底嫌ですが……えぇ、今回ばかりは手を貸してあげましょう。まずはこの竜擬きを排除しますので、離脱するならお早めに。私、今ちょっとだけイラついてますので♡]
その言葉を行動で表すが如く、コヤンスカヤの全身から呪詛の嵐が吹き荒れる。
強力な敵の出現に滞空していたゴア・マガラ達がそれから逃れようとするも、嵐はコヤンスカヤを中心に瞬く間に拡大し、彼らを呑み込んでいく。そしてその嵐は、ゴア・マガラどころかストーム・ボーダーさえ吞み込まんとしてきた。
「離脱ッ!!」
ネモが短く叫び、ストーム・ボーダーが速度を上げ嵐から逃れる。
凄まじい速度でグロスターの上空から離れていくストーム・ボーダーをゴア・マガラ達が追おうとするが、彼らの前に瞬きと共にコヤンスカヤが立ちはだかる。
[さて、貴方方に恨みはないですが、これも仕事ですので……さっさと死んでもらいます]
彼女が契約の名の下守護すべき、敵にとって最も目障りな存在である少女は既にこの地より離れたが、彼女が拠点としているこの船を壊されては最早どうにもならない。ブリテン島全体の気配を探った結果、最もゴア・マガラの数が多いのはこの街だ。まずはここのゴア・マガラの群れを滅ぼそう―――そうして、コヤンスカヤは数多の呪詛を鎧と武器に変え、ゴア・マガラ達を迎え撃ち始める。
『ビースト形態のコヤンスカヤ、シャドウ・モンスター群団と交戦を開始しました~。怪獣映画みたい~』
『ブリテン島を精査してみたけど、ゴア・マガラの反応はまだまだある。どうやら他の街も襲っているらしい。立香ちゃん達が戻るまで、私達は奴らの相手をしようッ!』
「わかったッ! 行くぞッ!」
立香達が戻って来た時、ブリテン島全域にゴア・マガラの大群がいては満足に戦えない。今の自分達に出来る事は、そのような事態を防ぐ為に戦う事だ。
エンジンとタービンを回し、推進力を増したストーム・ボーダーは、他の街を襲っているゴア・マガラ達を討伐すべく動き出した―――。
・『アナスタシアのシュヴィブジック』
……人間大の対象に対する悪戯が手元にあるものをこちらに転移させる、足元に亀裂を作って躓かせるというものであれば、元がデカいアルトゥーラの幼体の触手なら小さな不可能の範囲も広がるのではないかと思いこのような形に。でないとヴィイと契約しなければ幻霊止まりらしいアナスタシアを活躍させられないので……。
・『アルトゥーラの触手』
……脅威となる存在達を抹殺すべくグロスターに襲撃を仕掛けるも、三本ある触手の内の一本をモルガンに切断された事で撤退。二本あればまだ戦えるが、その状態で戦闘しても不利だと判断したための行動である。
・『影の“黒蝕竜”』
……ダ・ヴィンチの解析により、突然出現した彼らは本物のゴア・マガラではなく、外見こそそのままなものの性能は劣る存在であると判明したため、シャドウ・サーヴァントと酷似したシャドウ・モンスターという名称を与えられた。本物には届かないため打たれ弱いが、影であろうとも竜種であるため、群れでかかられると厄介極まりない。
最近、気温が高い日が続くようになりました。熱中症で倒れる方も増えてきているので、皆様もご注意くださいね。
それではまた次回ッ!