【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 fgoフェス先着チケットの獲得に成功し、初めてfgoフェスに行ける事に歓喜しているseven774です。
 去年も一昨年も行きたかったのですが、バイトだったりなんだったりで行けずにいたfgoフェスに遂に参加できると思うと本当に嬉しいですッ! 明後日にはウルトラヒーローズEXPO2024に参加し、二週間後にはモンハン大狩猟展にも行きたいと思っているので、ここ三週間は楽しみがあっていいですねぇ。

 今回はモルガン達を中心に据えて書きました。

 それでは、どうぞッ!


混沌に堕ちたもの

 

「住人の避難を急げッ! 一人でも多くの命を護るんだッ!」

 

 

 バーゲストとモルガンの活躍によって触手の一本を切断されたアルトゥーラが自らの開けた大穴に消えていってから十分程経過した頃。

 K達は、離脱したアルトゥーラと入れ替わるようにグロスターの街へと降り立ってきた“黒蝕竜”達の対応に追われていた。

 

 

「アンナ、今上空のゴア・マガラ達を押し留めているのは……」

「あの気配と臭いは、間違いなくコヤンスカヤだよ。どうして彼女があんな事を……いや、今はそんな事を考えている場合じゃない」

 

 

 さしものビースト形態であるコヤンスカヤと言えど、未だ成体ではない彼女では二百を優に超える大群で飛翔してくる影の“黒蝕竜”の全てを捉える事は出来なかったようで、彼女の撃ち漏らしてしまった“黒蝕竜”がグロスターへと降り立ってきていた。

 本来の“黒蝕竜”よりも打たれ弱いが、本物と違って蝗害(こうがい)が如く群体を構築し襲い来る影の竜達は、アルトゥーラの触手とはまた別の脅威となる。

 

 それに加えて、影の“黒蝕竜”にはアルトゥーラの幼体にはない能力がある。

 

 

「ぐ、ぎゃあッ!」

「……っ、この……ッ!」

 

 

 “黒蝕竜”から逃げようとしていた妖精が苦悶の叫びを上げた瞬間、その胸部から小さな“黒蝕竜”の幼体が飛び出す。

 それに気付いたオフェリアが即座に召喚していた使い魔を操って切り裂き、苦虫を嚙み潰したように表情を歪めた。

 

 

「キリがない……」

「ここで魔力を使いすぎるのは得策じゃないわよ、オフェリアッ!」

「そう言われても、こうでもしないと対応が間に合わないの……ッ!」

 

 

 魔力で編んだ双剣で幼体を切り裂いていた虞美人からの注意に、オフェリアは呼吸を整えながら警戒を続ける。

 時計塔時代には“降霊科(ユリフィス)”に在籍していた他、生来の得意分野故に卓越した召喚魔術を操るオフェリアは、周囲に展開した使い魔達に影の“黒蝕竜”達を攪乱させる。

 本物とは違って脆いため使い魔を総動員させれば数体は討伐できるかもしれないが、脆くとも相手はかつて危険度の高いモンスターとして認知されていた“黒蝕竜”の群れ。そう簡単に討伐まで持ち込む事は出来ない。

 そうこうしている間にも、どこかで妖精や人間の体を“黒蝕竜”の幼体が食い破って出てくる。その対応に追われ、オフェリアは通常以上に体力と精神力を削られていた。

 

 

「マスター、後方へ下がる事を提案する。その間は当方に」

「あ、ありがとう……」

 

 

 戦地に立っているために安全地帯など皆無に等しいが、かつては戦士王と称されたシグルドにとっては問題ではない。

 突進してくる“黒蝕竜”を投擲した大剣で貫きながら指を動かせば、空中に描かれた幾つかの文字がオフェリアの足元に移動。すると、彼女の四方を囲むように正方形の結界が出現した。

 その中にいるオフェリアは荒れていた呼吸が穏やかに、消耗していた体力と気力が回復していく気配を感じる。

 

 

「これは、ルーン魔術?」

「そこにいれば体力、気力、魔力を回復させられる。防御の面でも抜かりはない」

 

 

 彼の言葉の直後“黒蝕竜”がブレスを結界に吐き出したが、結界は傷一つつかずにその輝きを損なわず、どこかから吹き飛ばされてきた瓦礫も逆に弾き飛ばしてしまった。

 

 

「流石神話の大英雄ね。頼りにしているわ」

「では、その期待に応えるとしよう」

 

 

 主からの全幅の信頼を表す言葉に、僅かに口角を持ち上げたシグルドが三本の短剣を殴り飛ばせば、それらは空気の壁を容易く穿ちながら“黒蝕竜”達の体を抉り取り、態勢を崩させる。

 そこへすかさずアンナの緋雷が追撃を行い、態勢を崩した“黒蝕竜”達が黒煙を上げながら倒れ伏した。

 

 

「ありがとうシグルド。オフェリアちゃんを護ってくれて」

「当然の事だ、アンナ。だが……」

 

 

 眼鏡の奥の瞳が鋭く細められ、途切れず彼方の空からやって来る影の竜達を睨む。

 

 

「主の言う通りキリがないな。ただの自然発生ではない。宝具による召喚だろう」

「うん、私もあの子達を視てそう思ってた。あの子達、全部同じだよ。一つの違いもない、全てが同じ複製達。召喚している本体がどこかにいるはず。魔力切れを狙うのも一つの手だろうけど……」

「あの数を宝具で出し続ける奴相手に、魔力切れなんて概念あるのかしら」

 

 

 力強い踏み込みと共に突き出した右足で“黒蝕竜”の頭部を粉砕したペペロンチーノの言葉に、「確かに」とカドックが苦い顔をする。

 

 

「紛い物とはいえ竜種を召喚するのは至難の業だ。それをこうまで大量に召喚するとなると、相手の魔力量は相当だ。それとも……」

 

 

 チラリ、と。地面に転がっている“黒蝕竜”の幼体の死骸を見やる。

 

 

「『“黒蝕竜”の発生』は、あくまで副次的なものなのか(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)……」

「だったら猶更、根本を叩かないと……」

[―――それなら早く行ってくださいます? いい加減うんざりしてきたのですが]

「ッ!」

 

 

 ズドンッ! と音を立てて降りてきたコヤンスカヤが、獰猛な唸り声を上げる。

 

 

[貴方方に助力するのは癪ですが、えぇ、ここにいる“黒蝕竜”は私が殲滅して差し上げます]

「……いいのかい? 貴女に任せてしまっても」

[これは私自身の意思です。この世界でできた、たった一人の友人……彼女の宝物であるグロスターが破壊されるのは、もう見ていられませんから]

 

 

 五本の尻尾から放たれた呪詛の弾丸が上空から降下してくる“黒蝕竜”達を撃ち落とし、次いで彼女の足元から溢れ出した呪いの濁流が地上にいる“黒蝕竜”達を的確に呑み込み腐敗させていく。

 街への被害を考慮し、それでいて的確に街の脅威となる“黒蝕竜”のみを狙い撃ちするその姿からは、彼女の言葉に嘘が含まれていない事がありありと伝わってくる。

 

 

「ありがとう、コヤンスカヤ。お言葉に甘えさせてもらうよ」

[それでいいのです。同じ場所を護ってるだけでも嫌なんですから]

 

 

 さっさとどこか行ってくださいね―――そう言い残して再び空へと戻っていったコヤンスカヤを見送った後、バーヴァン・シーがモルガンに訊ねる。

 

 

「お母様、もしあの竜達が宝具によるものだとして、その発動者がいるのなら……」

「魔力の糸を辿れば、そこへ攻撃を仕掛けられます」

 

 

 モルガンの瞳が遠くから向かってきている“黒蝕竜”を捉え、その身から溢れる魔力を視る。

 

 

(……なるほど。確かに、宝具による召喚に近い。ですが、“黒蝕竜”は直接召喚されたものではない。カドック・ゼムルプスの観察眼は大したものですね。本当に副次的なものとして存在しているとは)

 

 

 生まれて二十年そこらの人間。出自も経歴も知らないが、それ程の若さで相手についての推測を立て、事実に近い結論に行きつく―――大した観察眼だ。生き残る為に相手の事を理解し、対応しようとする中で得たものなのだろう。

 近づいてきた“黒蝕竜”を遠隔操作する槍で刺し貫きながら、次の“黒蝕竜”を視る。

 彼らがどういった存在についてかは先程の“黒蝕竜”で把握できた。次に襲い来る“黒蝕竜”からは、彼らがどこからやってきたのかを調べ上げる。

 

 

(独立してはいますが、やはり基となる者の痕跡は残っていますね。教えてもらおうか、貴様らの根源を―――ッ!?)

 

 

 影の竜から、その発生原因を特定したモルガンは、しかし特定した情報に困惑と驚愕を覚えた。

 

 

「そんな、まさか……」

「お母様?」

「っ、いえ、なんでもありません」

 

 

 思わず崩れた表情を一瞬で掻き消し、娘に不安を与えないよう努める。

 たった今得た情報は、娘に伝えるべきかどうか……。が、それを伝えれば彼女はきっと動揺するだろうし、それで戦闘も疎かになってしまうかもしれない。もしそうなって彼女になにかあっては、自分は自分が許せない。

 伝えるべきか否か―――そう思っていると、“黒蝕竜”の首を切り落としたカイニスが叫んできた。

 

 

「根元がわかったンならさっさと叩きやがれッ! これ以上魔力を使い続けたくねェんだよッ!」

「……そうですね」

 

 

 可能なら攻撃したくはない。だが、彼女(・ ・)は今の自分を認めないだろう。

 自らの意思を持って行動し、死闘に興じる事を至上の喜びとする彼女にとって、今の自分の状態など論外にも等しいもの。それに彼女自身、自分がブリテンを滅ぼす存在などにはなりたくはないはずだ。

 

 故に、これは彼女(・ ・)の為の攻撃。今の自分に出来る、彼女に対する行動だ。

 

 

(対象特定、開始。……なるほど。対策は取っているというわけですね)

 

 

 “黒蝕竜”発生の原因を特定する事は出来た。だが、居場所が特定できない。

 その理由は明白。

 自分が確認できる範囲に、根源の気配がなかったからだ。

 ブリテン中の魔力反応、その全てを記憶しているモルガンにさえわからない、または知覚できない場所を調べてみると―――

 

 

(虚無の結界、ですか。この位置は間違いなくキャメロットですね)

 

 

 直接乗り込まれる事を考慮しての結界だろう。あらゆる介入を許さない、暗黒にして虚無の領域。キャメロットに襲撃をかけた時に展開したものよりも強力になっているようで、解除しない限り魔術による攻撃を遮断し、物理攻撃の威力を半減させる効果を発揮しているようだ。

 それに加え、結界内に入れば絶えず魔力を吸収され、あちらの力となる効果まである。魔力で編んだ疑似心臓で生き永らえている自分が入れば、そう時間をかけずに死ぬだろう。

 だが、それは逆に『自分達はここにいる』と宣言しているようなもの。他の場所に反応がない以上、根源の居場所はそこだ。

 

 ハルバードの柄頭で地面を強く叩く。

 コォン、と、戦火が渦巻く屋外であるはずなのに魂に反響するような聴き心地のいい音を響かせる。

 魔術を発動させるのは結界の外側。結界の効果が及ばぬ外部より、周辺の物質から魔力を纏わない武器を精製。構成に魔力が関わっている以上、完全に魔力を有さないものを創り出すのは不可能だが、これならば結界内にも攻撃が通る。

 

 再び柄頭で地面を叩き、射出。

 結界を覆う形で展開させていた武器が一斉に結界内へと殺到し、内部にいる者達に直撃した感覚を覚える。

 

 瞬間、モルガンは“黒蝕竜”の情報を閲覧し、彼らの身に起きた異変を知る。

 

 

「宝具を封じ、繋がりが途切れました。根源を仕留めるまでにはいきませんでしたが、これで“黒蝕竜”が増え続ける事はないでしょう」

「一歩も動かずに根源を攻撃するなんて……流石ですお母様ッ!」

「……えぇ、当然です。女王ですから」

「それなら、後はコヤンスカヤに任せよう。私達は急いで他の相手をしに行かないと」

 

 

 グロスターにいる“黒蝕竜”の群れは、コヤンスカヤが必ず殲滅してくれるだろう。他の街にいる“黒蝕竜”の群れも倒しながら、ブリテンを滅ぼそうとする影を始めとした二体の古龍種、そしてベリル・ガットを相手にしなくてはならないとなると、一秒も無駄にできない。

 

 

「城には結界が張られています。サーヴァントが入れば弱体化は免れられず、魔術も十分な効果を発揮しないでしょう。加えて、先程の攻撃もあり、あちら側も新たな対策を取ってくる可能性もあります。下手に攻勢に出ては不利になるでしょう」

「それなら、結界は私が消すよ。私の雷は魔術じゃなくて権能(チカラ)。効果に阻まれずに届くと思う」

「だったら、最初にアンナに結界を破壊してもらって、その後にモルガン陛下に分断させ、各自それぞれの相手をする……これでどうかしら」

 

 

 オフェリアの言葉に全員が「異議なし」と頷き、モルガンが『水鏡』の魔術を発動させる。

 瞬間、先程までグロスターだった周囲の景色が一変し、かつては罪都キャメロットと呼ばれていた廃墟の近くの景色へと移り変わった。

 

 

「嘘……、あれが、キャメロット……?」

 

 

 最初にキャメロットの有様を視界に収めたのは、バーヴァン・シー。その瞳は驚愕と悲しみ、そして怒りに大きく見開かれている。

 

 この二千年、常に國の頂点に君臨し続けた偉大なる母。その盟友であるディスフィロアや、彼女を護る自分達妖精騎士とは別に、彼女の権威を示し続けてきた王城。

 

 それが今や、かつての荘厳さは失われた墟城と化していた。薄紫色の結界に覆われているため辛うじて見える程度だが、結界越しでも半壊している事が理解できるあの地は、最早王族やそれに連なる者達が住まう場所ではない。上空に渦巻く、結界の光に薄く照らされている暗雲も相俟って、余計にそう考えさせられる。

 強いて言うならそう、いつかの書物で見かけた、『魔王の城』とでも言うべきものとなっていた。

 

 ギリィッ、と、バーヴァン・シーは憎悪と憤怒に歯軋りし、鋭く獰猛に細めた瞳でキャメロット―――もとい、キャメロットをそのような姿に変えた者達を睨みつけた。

 

 

「あいつら、よくも私達の(いえ)を……ッ! ゼッテェブッ殺してやる……ッ!」

「その前にあいつらをなんとかしますわよッ!」

 

 

 モルガンの娘として招かれてから、彼女や他の妖精騎士達、そして従者(カリア)と共に生活してきた場所。そこを穢された怒りに打ち震えるバーヴァン・シーに、バーゲストが大剣を構えながら叫んだ。

 よくよく見れば、結界の上部から、墟城を護るかのように旋回していた“黒蝕竜”達がこちら目掛けて飛んできているのが確認できた。

 

 

「早速お出ましってわけか……ッ!」

「全部倒そうとは思わないで。モルガン、城の真上にいる子達は撃ち落とせる?」

「問題ありません」

 

 

 モルガンが小さく人差し指を振れば、彼女の頭上に数十本もの青黒い槍が出現し、射出される。

 一瞬で空気の壁を突破したそれらは一秒の時間もかけずに城の上空の“黒蝕竜”達を貫き、霧散させていく。

 

 

「流石だね。それじゃあ、次は―――」

「―――させるかよッ!」

 

 

 アンナが人間のものから龍のそれへと変化させた右腕を掲げようとした瞬間、凄まじい勢いで城から飛んできた黒い影がその手を斬り落とそうと迫ってきた。しかし、彼女の右腕を肘から切断しようと振るわれた鎌は、彼女と影の間に滑り込んだ剣によって受け止められる。

 次いでアンナの背後から湧き上がった黒い靄から一人の男が飛び出して攻撃しようとするが、その拳もウッドワスによって掴み上げられる。

 

 

「残念だが、それはこちらのセリフだ」

「っ、クソ親父が……邪魔をしないでくれるかなぁ……ッ!」

「その言葉は些か傷付くな、我が息子よ」

「ベリル・ガット……ッ! 陛下を裏切った大罪人めッ!」

「ま、そう簡単にゃ獲らせてくれねぇよなぁ……ッ!」

 

 

 火花を散らして鎌を弾いたボレアスの左腕が動き、灼熱と共に双剣の片割れが影へと迫る。

 咄嗟に身を翻して回避した影にボレアスが右手に握る剣を振るえば、今度はブレードから飛ばされた炎がチャクラムのように回転しながら追跡し始める。

 

 ウッドワスの拘束から逃れたベリルにバーヴァン・シー達の攻撃が浴びせられるが、それを両手から放った光線や身のこなしで躱し続けるベリル。

 

 影とベリルをボレアス達が抑えている間に、アンナは掲げた右腕を城の上空へと向ける。

 

 

「標的補足……『創まり(ルーツ)』の名の下に命ずる―――潰えよ、虚無の結界」

 

 

 一切の感情を感じ取らせない、氷のように冷たい声で告げられる命令。

 瞬間、キャメロットを覆っていた結界全体に緋色の雷が迸り、頂点から糸が解れるように崩れ始めていく。

 

 それは、全盛期の“祖龍(かのじょ)”が有していた権能(チカラ)の一端。触れたものの存在証明を剥ぎ取り、焼き尽くし、消去する、惑星(ほし)より与えられた権能。

 これまでは自らの魔力を大幅に削って行使していたが、シュレイド異聞帯で生活する中で彼女の肉体が全盛期のものに近づいていくにつれ、その魔力消費量も減少していった事により、サーヴァントの真名解放のような手段を取る必要もなくなったのである。

 

 彼女の宣言(らいげき)に、あらゆる防御は意味をなさない。特に、意思なきものであれば猶更。

 彼女が繰り出す絶死の雷に対抗しうるには、それ相応の覚悟と勇気を必要とする。そのようなものなどない結界など、彼女にとっては紙屑にも等しい。

 

 

「クソッ、ホンット面倒くさいなッ!」

 

 

 それなりの魔力を削って展開した結界を消去されてしまった影は舌打ちの後、自らの手を勢いよく地面に叩きつける。

 

 

「アルトゥーラッ!!」

「キィイイイイイイ―――ッッッ!!!」

 

 

 同胞の呼び声に応え、大地に巨大な穴を開けて出現したアルトゥーラの幼体が、その身をしならせて真下の敵対者を叩き潰そうとしてくる。

 しかしそれを許す程、その場にいる者達は甘くない。

 

 

「バルカンッ!」

「応ッ!」

「っ、項羽様……ッ!」

「ヌゥンッ!!」

「させるかァッ!」

 

 

 アンナの叫びにバルカンと、虞美人を残して跳躍した項羽、そしてベリルをバーヴァン・シー達に任せたウッドワスが迎撃し、凄まじい勢いで落ちてきていた触手を打ち払い、自分達が護るべき者達を護り抜く。

 

 

「よくやりました、ウッドワス」

 

 

 触手が大きく仰け反った絶好の機会。このタイミングを逃すまいと、モルガンがアルトゥーラとアンナ達に水鏡を発動。

 シュピンッ、と軽い音と共に、彼女達の姿がその場から消え失せた。

 

 

「我々も行きます。後は頼みましたよ」

「あぁ、こいつは僕らが相手する」

 

 

 奇襲を受けはしたが、態勢を立て直してからの分断作戦。アンナ達はアルトゥーラの、そして自分達はマキリ・ノワの討伐を行う為に転移したモルガン達。

 ウッドワス達も同様に、ベリルと共に別の場所に転移させている。今頃は戦闘を始めているところだろう。

 

 

(逃がしたか……だが、邪魔はさせてもらおうか)

 

 

 シグルドの大剣をいなして距離を取り、影は少し前にこの地を離れた新たな同胞(・ ・ ・ ・ ・)に命令を下す。

 返答はない。だが、それでいいと影は薄く笑い、鎌を握り直した。

 

 

「滅びを止めさせはしない。ここで消えてもらおうか……ッ!」

「生憎だが、そのつもりはない。消えるのは貴様だ、ヴォーティガーン」

 

 

 ほぼ同時に動き出した鎌と双剣が激突し、火花を散らした―――。

 

 

 

 Now Loading...

 

 

 

 激突した氷炎のブレスを撃ち破り、暗黒のブレスが飛来する。

 躱し切れずにブレスを受けて墜落していくディスフィロアにマキリ・ノワが炎を纏って向かっていくが、突然真横から突っ込んできた青い流星によって突き飛ばされた。

 

 

「大丈夫ッ!?」

 

 

 マキリ・ノワが態勢を整えている間に弟を庇うように滞空したメリュジーヌに、ディスフィロアは小さく唸りながら傷を気にせずに起き上がる。

 フンッ、と鼻を鳴らしてまだまだと言わんばかりの眼をする彼に微笑みを零すと、彼女達の前に複数の人影が出現する。

 

 

「待たせました、メリュジーヌ、ディスフィロア。ここからは私達も加わりましょう」

「陛下……ッ!」

 

 

 喜色を滲ませるメリュジーヌに頷いたモルガンがハルバードを掲げれば、辺りを優しい光が包み込み、瞬く間に彼女とディスフィロアの傷を癒していく。

 何度も展開されるバリアを攻撃し続け、逆に攻撃を受け止め続けてきたために綻びが生じていた(つめ)が修復されていく様子に「これなら……ッ!」と頷き、メリュジーヌは顔を上げる。

 

 

「ありがとうございます、陛下」

「気にする事はありません。今まで耐え抜いてくれた報酬です」

「っ、陛下―――ッ!」

「グギャァアアアアアアアアッッッ!!!」

 

 

 態勢を整え終えたマキリ・ノワが、凶気の帯を引きながら突っ込んでくる。

 最初にそれに気付いたバーゲストの叫びを合図に全員が散開して逃れ、バーヴァン・シーがフェイルノートを奏でてマキリ・ノワを攻撃する。だが不可視の一撃はバリアによって阻まれてしまい、その奥にある体躯に傷をつける事は叶わなかった。

 

 

「下手な攻撃は意味ないよ、バーヴァン・シー」

「テメェ……いきなりの言葉がそれかよ、あぁッ!?」

「余計な体力を使うだけって事。牽制にせよ、あのバリアを破るにせよ、それ相応の威力でやらないと意味がないの」

「だったらそう言えってんだッ!」

 

 

 着地すると同時、魔術を発動。

 身体強化と武器強化の魔術で己と妖弦を強化し、もう一度奏でる。

 

 バーゲストに攻撃を仕掛けようとしていたマキリ・ノワのバリアに攻撃が当たると、その威力に意識を逸らされた龍の視線が僅かにバーヴァン・シーへと向けられる。

 そこへバーゲストが力任せの一閃を叩き込めば、マキリ・ノワの巨体がバリアごと僅かに後方へ押し飛ばされ、次いで上空から急降下してきたメリュジーヌが籠手を振り下ろす。

 

 加速と重力によって威力を増した一撃にバリアが亀裂を走らせると、今度はモルガンの飛ばした無数の槍が突き刺さり、爆発する。それによってバリアが破壊されると、間髪入れずにディスフィロアが自身の前に降らせた三つの氷塊に熱線を発射して分散させ、三方向からマキリ・ノワへ直撃させた。

 

 モルガン達の連携を前にバリアを破られ、さらに手痛い攻撃を受けてしまったマキリ・ノワは、さらに追撃しようと接近してきたバーゲストとメリュジーヌを凶気を放出する事で牽制し空へと逃れる。

 即座にディスフィロアも翼を広げてマキリ・ノワを追い、背後につくや否や熱線を発射する。それを真横に動いたマキリ・ノワが振り向きながら雷と氷が混ざり合ったブレスを放って迎撃すると、熱線とブレスが衝突した結果生まれた黒煙を突き破ってディスフィロアに食らいつこうとする。

 

 翼を強く羽ばたかせて回避したディスフィロアを、今度は追う形で飛翔するマキリ・ノワだったが、そこへモルガンの遠隔攻撃とメリュジーヌの剣撃が襲いかかる。

 

 周囲から浴びせられる魔術による攻撃。色鮮やかながらも一発一発が決して無視できない威力を誇っているが故に、今も少しずつ修復されつつあるバリアで防ぐのは得策ではないと判断するも、その間を掻い潜って飛んでくるメリュジーヌまでは対処できず、バリアの割れ目から入り込まれた末に頭部―――特にそこから左右に伸びる角を攻撃された。

 角が欠けた事でバリアの強度が弱まったマキリ・ノワが怯めば、(つめ)を収めたメリュジーヌの右拳がその顎を捉える。

 下方からの打ち上げに頭部を跳ね上げられるも、マキリ・ノワは無理矢理首の力を使って頭部を下ろし、鈍器として活用する事でメリュジーヌを叩き落す。

 

 メリュジーヌが地面に叩きつけられている間に、マキリ・ノワは突進してきたディスフィロアを躱し、すれ違い様にブレスを放って吹き飛ばす。

 追撃をしようとするも、その瞬間自身の周りに四つの魔法陣が描かれ、そこから巨大な魔力光線が放たれる。

 咄嗟にバリアで威力を削るも、貫通してきた光線に焼かれたマキリ・ノワが怯めば、モルガンの転移魔術でその上空へ転移したバーゲストが大剣を上段に構える。

 

 

「喰らいやが―――ッ!?」

 

 

 今にもバーゲストが炎の大剣を振り下ろそうとした直後、どこからともなく飛んできたブレスが直撃してしまい、吹き飛ばされてしまう。

 

 

「バーゲストッ!?」

 

 

 黒煙を引きながら落ちていく仲間にバーヴァン・シーが叫ぶと、先程彼女に放たれたものと全く同じブレスがバーヴァン・シーにも飛んでくる。

 咄嗟にバックステップで回避したバーヴァン・シーがいったい誰がと見上げれば、そこには無数の黒い竜の群れがいた。

 

 

「追ってきやがったのか。うじゃうじゃと飛んできやがってホンットうぜェ……ん?」

 

 

 脆いが数が多く、それでいて油断ならない火力を持つ“黒蝕竜”の群れに辟易していると、その中に他の“黒蝕竜”とは明らかに違う個体がいる事に気付く。

 左半身は他と同じく漆黒。しかし、右半身は所々が白くなっており、頭部もまた同様に右側からは一本の白色の角が生えている。

 まるで、中途半端な形で成長が止まってしまったような外見を持つ、周囲にいる“黒蝕竜”と比べ一回り大きい体躯を誇るそのモンスターが翼を羽ばたかせれば、周りにいる同胞達を吹き飛ばされていく。しかし、そんな事など気にかける素振りすら見せずに急降下してきたモンスターを躱し、バーヴァン・シーは、これまで相手にしてきた“黒蝕竜”達以上の濃密な魔力に当てられ、確信と共に叫ぶ。

 

 

「あいつらの親玉は―――テメェかッ!」

 

 

 フェイルノートを爪弾き、不可視の斬撃を飛ばす。

 空気を切り裂き真っ直ぐ向かっていくそれを、しかしそのモンスターはまるで見えているかのようにひらりと躱し、そのままタックルを繰り出してきた。

 

 咄嗟に後方へ飛び退いて直撃を避けようとするバーヴァン・シーだが、完全に距離を取る事は出来ず大質量の衝撃を受けて弾き飛ばされてしまう。

 

 

「バーヴァン・シーッ!」

「大丈夫、です……ッ! お母様はマキリ・ノワをッ!」

 

 

 加勢しようとするモルガンを片手で静止し、フェイルノートを構え直す。

 

 叫んでいるのだ。このモンスターの相手は自分でなければならないと、心が強く叫んでいる。

 なぜそう思うのか、そう考えるのか、バーヴァン・シーが疑問に思っていると、呻き声に似た威嚇の声を上げるその竜と視線が交わった。

 

 

「―――ッ!!? テメェ、いや、お前……まさか……」

 

 

 そして、気付く。今自分と対峙してる竜の正体に。

 

 右手の甲が疼く。

 かつてそこに刻まれ、今は消えてしまった令呪(それ)の残滓が、目の前にいる存在が、いったい何者であるかをバーヴァン・シーの脳に伝える。

 

 信じられない。あり得ない。

 まさか、まさか、まさか―――

 

 

「―――カリア(・ ・ ・)なのか(・ ・ ・)……?」

「キシャァアアハハハハハハッッ!!!」

 

 

 愕然としたまま漏れた問いかけに、混沌に堕ちた竜は狂笑に似た咆哮を轟かせるのだった―――。

 




 
・『アンナ(ルーツ)の肉体と能力』
 ……シュレイド異聞帯で過ごす間に、彼女の肉体は全盛期に戻りつつある。北欧異聞帯やオリュンポスでは真名解放に近い形で行使していた権能だが、今ではただ対象を指定し、宣言するだけでその効果を発揮できるようになっている。

・『“混沌に呻くゴア・マガラ”』
 ……かつては國を、女王を、姫を護っていた者の成れの果て。ブリテンを、世界を滅ぼさんとする者達の尖兵となった、新たな『厄災』。


 そういえば最近、毎年旅行に行っていた栃木県の自然を思い出すんですよ。自覚はないですが、もしかすると今の仕事に対してストレスを感じているのかもしれませんねぇ。温泉行きたいですし森林浴したいですし、なんなら運転免許持ってるので日光まで行ったりとかしたい気持ちが凄いあります。
 まだ初めて三か月程度でしかないため有休が貰えないのが辛いところです。希望休は通るかどうかが不安すぎて旅行のスケジュール立てられませんし……。
 その分のメンタル回復は今度のウルフェスやfgoフェスで図りたいと思いますッ!

 混沌ゴアの宝具に関しては次回説明しますので、楽しみにしていてくださいッ!
 それではまた次回ッ!
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