【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 遂にモンハン大狩猟展に足を運ぶ事ができたseven774です。
 大狩猟展、とても楽しかったですッ! AR体験もさせていただき、歴代パッケージを飾ってきたモンスター達を身近に観察する事が出来ましたし、黒龍襲来のエリアでもミラボレアスの迫力ある頭部や設定を見る事が出来、最後にコラボカフェではジンオウガのチャーハンとタマミツネのパフェを戴きましたッ!
 コラボカフェのメニューは美味しいかそうでないかのどちらかに分けられると自分は考えているのですが、今回のコラボカフェは自分がこれまで足を運んだものの中でもダントツで美味しかったですッ!
 等身大のワイルズハンターのフィギュアもありましたので、ワイルズの発売が今から待ち遠しいですッ!

 そういえば新モンスターの発表が行われましたねッ! 新エリア“隔ての砂漠”の生態系の頂点として飛竜種の“煌雷竜”レ・ダウ、“緋の森”では“刺花蜘蛛”ラバラ・バリナが発表されましたが、皆さんはどちらが好きですか? 私はラバラ・バリナが好きです。現実の蜘蛛は苦手なのですが、こういったゲームの中での蜘蛛型モンスターはなぜだか好きなんですね……。
 もちろん、レ・ダウもかっこよくて好きです。角が閉じてレールガン(?)を撃つようになるシーンとかかっこよかったですしッ! それに戦闘中に変形する体を持ったモンスターはバルファルクを除いていないんじゃないですかね?
 とにかく、今はこの二体のモンスターとも早く戦いたいという気持ちでいっぱいですッ! 早く発売日が知りたいッ!

 今回は独自設定が入ります。
 それでは本編、どうぞッ!


眠りと覚醒

 

 振り下ろされた右翼脚を、大剣が打ち払う。

 パリィした直後に伸ばされた鎖が翼脚に絡みつけば、大剣を大地に突き立てた後に両手で鎖を握ったバーゲストが渾身の力で真横に引っ張る。

 モルガンに忠誠を誓う三騎の妖精騎士達の中ではバーヴァン・シーに僅かに劣るが、元来己の肉体を活かして戦う“牙”の氏族として生を受けたバーゲストの筋力は、通常時であろうともバーヴァン・シーのそれを上回る。

 

 

「―――ッ!?」

 

 

 打ち払われた右翼脚を無理矢理引っ張られたゴア・マガラがそれに自身の前足を巻き込まれて態勢を崩す。

 相手が倒れた隙に鎖を分解したバーゲストは突き立てていた大剣を手に取り、回転斬りを繰り出した。

 

 遠心力を乗せられた斬撃と共に炎と爆発が両者を包み込み、しかしバーゲストはこれで終わらせまいとさらに横薙ぎに一閃。そして最後に上段に構えた大剣を振り下ろす。

 

 

「ギシャァアアアアアッ!!」

「ぐぁッ!?」

 

 

 先程の二撃と比べ威力が上の一撃を受けたゴア・マガラが激痛に叫びながらも周囲に撒き散らした狂竜ウィルスを爆発させる。自分の炎と爆発を以てしても消し飛ばし切れなかったウィルスの爆発を受けてしまったバーゲストが堪らず吹き飛ばされ、大地を数度跳ねていく。

 起き上がったゴア・マガラが態勢を立て直そうとしているバーゲスト目掛けて突進するが、その顔に不可視の斬撃が数発命中し、歪に潰れた眼がそれらが飛んできた方向へ向けられた。

 

 

「やらせるかよカリアッ!」

「キシャハハハッ!」

 

 

 矢継ぎ早にフェイルノートを奏でて斬撃を飛ばしてくるバーヴァン・シーに標的を変えたゴア・マガラが飛翔し、ブレスを放つ。

 迫り来るブレスを真横に飛びながら回避し、バーヴァン・シーは無詠唱で魔術を行使する。なにもない足元に意識を割きながらもフェイルノートで上空のゴア・マガラを狙撃して注意を引き続けると、ゴア・マガラが煩わしそうに翼を強く羽ばたかせ、バーヴァン・シー目掛けて突進してきた。

 

 

(今だッ!)

 

 

 風を切り、邪魔な木々を圧し折りながら急接近してくるゴア・マガラに、だがバーヴァン・シーは決して狼狽えずにバックステップする。その瞬間、先程彼女がいた場所に毒々しい赤紫色の魔法陣が出現すると、その場にもう一人のバーヴァン・シーが現れた。だが、それは特に迎撃や回避といった行動は取らず、成す術なくゴア・マガラの突進を受けて砕け散る。

 

 一見すると行動を起こす間もなく砕けた分身。バーヴァン・シーの魔術は失敗に終わったかと思われるが―――

 

 

「跳ね返せ、スケープゴート・リフレクションッ!」

 

 

 ドォンッ!! と巨大な物体を叩きつけたような轟音が鳴り響き、ゴア・マガラの肉体が大きく吹き飛ばされる。

 

 ―――スケープゴート・リフレクション。

 それはバーヴァン・シーがモルガンとベリルから学んだ魔術の知識を基に編み出した、彼女オリジナルの魔術である。特殊な事情故、呪いに関連する魔術の扱いが他のものよりも秀でている彼女が、モルガン、ひいては彼女が治めるこの國を護る為に体得したこの魔術は、簡潔に説明するならばカウンター魔術である。

 ある日、汎人類史から漂着してきた呪いに関する書物を読んだ際、その中にあった身代わり人形というものからインスピレーションを受けて作り出されたこの魔術は、自身を模した人形が破壊された時、受けたダメージをそのまま相手に反射するというもの。

 

 だが、今相対しているのは、かつて己と共に生活し、時には戦場も共にしたカリアが変異したゴア・マガラ。理性が掻き消されているとしても、彼女の戦闘センスがそのまま残っているとすれば、見え見えの罠にハマる事などまずない(彼女が愉しさ優先で動いていた場合は除くとして)。だからこそギリギリまで引き付けてから魔術を発動させたのだ。

 結果として、その判断と行動は功を奏した。バーヴァン・シーを捉えられると確信していたゴア・マガラは見事に魔術に引っ掛かり、彼女に与えるはずだった威力をその身で味わう事となった。 

 

 

「ナイスですわッ!」

「追撃行くぞッ!」

 

 

 バーヴァン・シーが時間を稼いでいる間に態勢を立て直していたバーゲストが大剣を振り被り、バーヴァン・シーもまた彼女の援護にとフェイルノートに呪いを纏わせて爪弾いた。

 

 大地に突き立てられた大剣から放出された熱量は、一直線に地中を突き進んでゴア・マガラの真下へ向かうと火柱を立ち昇らせ、そこへバーヴァン・シーの攻撃が飛んでいく。

 

 思わぬ反撃を受けた後の追撃。さらに、バーゲストの火柱を受けた事で火傷が出来た体に呪いを帯びた不可視の矢が命中すると、その呪いは火傷で他の部位よりも脆くなった箇所から体内に侵入し始める。

 

 

(よし、これなら……ッ)

 

 

 目の前にいるゴア・マガラは群れを成す他の“黒蝕竜”よりも遥かに強力だ。なんとか互角に持ち込めてはいるものの、タフネスやフィジカルではまだあちらの方に分があるだろう。何度も攻撃を与え続けても尚倒れる気配がないのがその証拠だ。

 だが、火傷に加え自身が与えた呪いがあれば、そのタフネスとフィジカルも多少は弱体化させられるはずだ。もちろんそれで倒せるとは思っていないが、それでも戦況は僅かだとしてもこちらに傾くはず。

 

 だが―――そんな淡い期待は、次の瞬間に掻き消された。

 

 

「ッ!?」

 

 

 それは、突然の事だった。

 暗雲に覆われた空から降り注ぐ、二色の小さな靄。それぞれが赤色、黒色を持つそれらがゴア・マガラに降り注ぐと、先程与えた火傷や呪いはおろか、これまでバーヴァン・シー達が刻み込んできた傷さえ消え始めたのだ。

 

 

「そんなの、ありかよ……」

「キシャァアハハハハハハハッッ!!!」

 

 

 これまでの自分達の攻撃はなんだったのかと叫びたくなる気持ちを抑えながら、バーヴァン・シーは再起したゴア・マガラに攻撃を仕掛ける。

 

 だが、ゴア・マガラは止まらない。バーヴァン・シーの攻撃を受けても剥き出しにした牙の隙間から唾液を散らしながら突進してくる。

 目の前まで迫ってきた巨体をギリギリまで引き付けたタイミングで横に飛び退いて回避するも、バーヴァン・シーはほぼ無意識に両腕を交差させ防御の態勢を取る。瞬間、小さな地響きを立てながら左翼脚で無理矢理ブレーキをかけたゴア・マガラが、そのまま左翼脚を軸に回転。横薙ぎに振るわれた尻尾がバーヴァン・シーに直撃した。

 

 

「が―――ッ!?」

 

 

 背後にあった瓦礫を幾つも粉砕しながら弾き飛ばされたバーヴァン・シーを、ゴア・マガラの三つのブレスが追う。

 今も飛んでいくバーヴァン・シーに追いつきかねない速度で迫るそれらをフェイルノートで迎え撃とうとするが、先程の尻尾の一撃による痺れによって上手く指を動かせない。

 

 直撃する。バーヴァン・シーが数秒もしない内に襲い掛かってくるであろう痛みに目を固く閉じた瞬間、閉ざされた視界に青白い光が奔った。

 

 

「フ―――ッ!」

 

 

 鋭く息を吐き出しながらの一閃が、バーヴァン・シーへと殺到していたブレスを両断する。切り裂かれたそれらが爆発する前に、流星はバーヴァン・シーを抱えて離脱。爆発音を背後に置き去りにし、彼女をゆっくりと地面へと下ろした。

 

 

「ぁ……メ、メリュジーヌ……?」

「陛下からこっちの助力に回るよう言われてね。ここからは私も手を貸すよ。立てるかい?」

「なんのこれしき……まだ、やれる」

 

 

 土埃を払い、フェイルノートを握り締めて立ち上がる。

 遠くではバーゲストが振り下ろされた翼爪を抑え込んでいるが、ゴア・マガラの膂力に負けて放り投げられてしまっている。即座に受け身を取って炎を纏った大剣を構えた彼女がゴア・マガラに飛び掛かっていくのを見ながら、「よし」とバーヴァン・シーは自らに喝を入れ直すように呟いた。

 そんな彼女の瞳を見上げ、メリュジーヌはふっと小さく笑った。

 

 

「あ? ンだよ、その顔」

「別に。いい顔をしてるって思っただけ」

「そうかよ。じゃ、さっさと行くぞッ!」

「もちろん」

 

 

 メリュジーヌが走り出し、バーヴァン・シーから離れたところでスラスターを噴射して一気に加速。飛翔したゴア・マガラの頭上を取った彼女の拳打が、竜の頭部を捉えた。

 超高速による不意打ちを受けたゴア・マガラが地面に叩き落され、すかさずバーゲストが追撃を加える。

 

 頭部に炎の斬撃を受けたゴア・マガラが堪らず苦悶の声を漏らすも、怯んだのはそこまでで次の瞬間には斬撃を受け止めた頭部を勢いよく振り上げてバーゲストの態勢を崩し、両翼爪で体を前に押し出しての頭突きで突き飛ばした。

 

 

「う、この……ッ!」

 

 

 態勢を崩された隙を頭突きで突かれてしまい尻餅をついてしまったバーゲストが立ち上がろうとするが、それより先に伸ばされた右翼爪が彼女を掴み上げた。

 捕らわれた仲間を助けようとメリュジーヌが高速の連撃を叩き込むが、ゴア・マガラは攻撃を受けながらもブレスを吐き出し、メリュジーヌを撃ち落とそうとする。だが彼女の速度はブレスの速度を容易く上回っており、ブレスを撃った直後でがら空きとなっている頭部へ再び攻撃を仕掛けようと接近する。

 

 二本のアロンダイトを前に突き出し、ドリルのように頭部を切り開いてやろうとするが―――

 

 

「っ、ぅぐッ!?」

 

 

 それを予測していたのか、拘束されたバーゲストを盾にしてきた事で攻撃を中断し離脱しようとするが、その瞬間を狙って繰り出された左翼爪による一撃がメリュジーヌに直撃し、彼女の体を地面へと叩きつけた。

 直撃を受けてしまったメリュジーヌにゴア・マガラがバーゲストを掴んでいる右翼爪をハンマーのように叩きつけようとするが、そこへ飛来する巨大な影が一つ。

 

 

「―――ッ!」

 

 

 咄嗟に左翼を持ち上げて防御。強固な肉体から生える翼によって塞がれ落下したそれは、巨大な木の幹。

 どうやって飛んできた―――とゴア・マガラが思った直後、続いて幾つもの木が投げ飛ばされてくる。

 両翼を盾にしてそれを防いでいると、態勢を立て直したメリュジーヌが去り際に右翼爪を切り裂く。爪の付け根を攻撃されたからか、怯んだゴア・マガラが拘束の力を弱めた一瞬を突き、バーゲストが拘束から逃れ、メリュジーヌと共にその場から離れた。

 

 

「助かりましたわ……っ!」

「お礼なら彼女(・ ・)に言って。私はそれに乗っかっただけだから」

「こっちがただフェイルノート弾いてるだけだと思うんじゃねぇッ! ほらほら喰らえ喰らえッ!」

 

 

 メリュジーヌが指差す先。そこにはこれまでの戦闘の余波で破壊された木々を赤い糸で巻き取り、次々とゴア・マガラに投げつけているバーヴァン・シーの姿があった。

 フェイルノートや魔術とは違う、単純な投げつけ。魔力の『ま』の字もない純粋な物量による攻撃だが、当然、それをいつまでも受けているゴア・マガラではない。

 

 

「ギシャァアハハハッ!」

 

 

 全身が痺れるような獰猛な咆哮と共に放出される、赤と黒の奔流。それによって自身に飛来してくる木々を吹き飛ばし、二色のオーラを纏った状態で走り出す。

 体幹を支える翼脚が大地を抉り、四肢で大地を小さく揺らしながら迫ってくるゴア・マガラだが、途中でなにかが自身の体に絡みついていくのに気付く。しかし、それが自身に対して大きな障害となり得るものではないと判断し、そのまま突進を続行。一気にバーヴァン・シーとの距離を縮め、彼女の肉体を貫くべく右翼爪を突き出す。

 

 ―――が、しかし。

 

 

(かかった……ッ!!)

「―――ッ!?」

 

 

 バーヴァン・シーが獰猛に口元を三日月のように歪めた瞬間、ゴア・マガラの動きが止まり、伸ばされていた右翼爪も停止する。

 

 ゴア・マガラの動きを止めたのは、バーヴァン・シーの下へ向かう最中に絡みついていた赤い糸。一本のみであれば拘束力などないに等しく、複数本集まったところでもゴア・マガラの巨体を止めるなど夢のまた夢。

 ではなぜ、彼女の糸はゴア・マガラの拘束に成功したのか。その理由は、今彼女達が戦場としているフィールドにある。

 

 現在彼女達がいる場所は、湖水地方に位置する鬱蒼とした森林地帯。その名が示す通り、この地には数え切れない数の木々がある。ならば、それを利用すればいい。

 糸のみで拘束できないのであれば、この森の重量を活かす―――今ゴア・マガラの動きを封じているのは、自分のいるフィールドそのもの。

 

 そして、ただ拘束するだけで終わらせるなど、そのような勿体ない事はしない。

 

 

「シ―――ッ!」

 

 

 バーヴァン・シーが手元の糸を切断すれば、巧みに張り巡らされていた糸が一気に動き出す。

 絡みに絡んだ糸は、その中心にいる標的―――ゴア・マガラ目掛けて周囲の木々を動かし、封じ込めた。

 

 全方位から襲い来る木々の圧力。糸が幾重にも絡みついている事もあり砕ける事なくゴア・マガラを抑え込んだバーヴァン・シーは、自分達妖精騎士の中で最も早く奴との距離を縮められ、かつ自身よりも強力な攻撃を繰り出せる者の名を叫んだ。

 

 

「メリュジーヌッ!」

「任された―――ッ!」

 

 

 地上を駆ける流星の名は、メリュジーヌ。

 バーヴァン・シーもバーゲストも、どれだけ己を鍛え上げようとも『妖精』という枠組みは越えられない。自分達には女王に届く程のポテンシャルもなければ、カリアのように天才的な戦闘センスもない。ただ実直に鍛えるしか、彼女達の後を追う以外の道はない。

 

 だが、メリュジーヌは別だ。

 彼女は自分達とは違う、かつてこの世界に生きた竜種から分かたれた存在。本人は『自分は彼女とは違う』と口にしてはいるが、だからといって自身の存在を過小評価しているわけではない。寧ろ、自身が他とは違う竜の妖精だからこそ、“境界竜”と呼ばれた竜の末裔だからこそ振るえる力を行使する。

 

 

「切り拓け、アロンダイトッッ!!」

 

 

 そして今、その力の一端を解放したメリュジーヌが急加速してゴア・マガラへと突貫する。

 

 真横からの流星の衝突を受けたゴア・マガラが、自身を抑え付けていた木々と共に弾き飛ばされる。

 胴体を覆う翼脚などないも同然かと言うように襲い来る重く鋭い衝撃を受けたゴア・マガラは、弾き飛ばされた先で起き上がろうとしても体内、体外に共通して走る激痛に悶えて上手く立ち上がる事が出来ない。

 

 一気にダメージを与える絶好の機会。これを逃す手はないとばかりにメリュジーヌはゴア・マガラとの距離を縮め、僅かに遅れてバーゲストも肉薄。バーヴァン・シーも彼女達の邪魔にならないよう注意しながらフェイルノートで追撃し始める。

 

 

(これは……)

 

 

 そのメリュジーヌは、目の前にあるゴア・マガラの体から赤と黒の靄が漏れ出ている事に気付く。

 その靄がなんなのかは把握している。自分がこちら側の戦いに参戦する前に、バーヴァン・シーとバーゲストが与えていたダメージを回復させた、黒の凶気と凶光の靄だ。モンスターを暴走させるそれがなぜ回復作用を齎しているのかについてだが、もしや元々崩壊寸前だったカリアの霊基を無理矢理修復させている事が、回復という形で自分達の目には見えたのかもしれない。

 だが、それが今は漏れ出ている。攻撃の手を緩めず観察してみると、特に漏れ出ている場所はすぐにわかった。

 

 

(……もしかすると)

「っ、離れますわよッ!」

 

 

 ゴア・マガラから魔力の高まりを感じ取ったバーゲストの言葉に従い、彼女と共に離脱。瞬間、ゴア・マガラを中心に狂竜ウィルスの爆発が起き、周囲のものを吹き飛ばした。その間に起き上がったゴア・マガラは開いたアギトから狂竜ウィルス、黒の凶気、凶光が混ざり合ったブレスを発射して三騎の妖精騎士達を薙ぎ払った。

 

 

「クソ、もろに喰らっちまった……ッ!」

「だ、大丈夫ですか……ッ!?」

「あぁ……、この程度でくたばって堪るかよ……あ?」

 

 

 大地に叩きつけられながらもそのまま力尽きる事などなく起き上がったバーヴァン・シーが右手で口元を拭うと、右腕に装着していた、絆石が埋め込まれた腕輪が光っている事に驚いた。

 

 

「バーヴァン・シー、それは……」

「わかんねぇよ。いきなり光り出して……」

 

 

 突然の出来事に呆然とするバーヴァン・シー。だが、その腕輪を見たメリュジーヌは「これだ」と小さく呟き、バーヴァン・シーの肩を叩く。

 

 

「ねぇ、バーヴァン・シー」

 

 

 なんだよ―――と、口には出さずとも目線だけでそう訊ねてきたバーヴァン・シーに、メリュジーヌは小さく微笑んで告げる。

 

 

「―――カリアを取り戻せるとしたら、どうする?」

 

 

 

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 鎌と剣がぶつかり合い、火花を散らして両者が距離を取る。

 距離を取りながらも大剣の持ち主―――シグルドは着地と同時に大剣を殴り飛ばすも、影は上空に掲げた左手を下ろして出現させた黒い泥の壁で防ぐ。

 

 

(……っ、今一瞬だけ汚染が薄れた。メリュジーヌか……?)

 

 

 鎌を握る力を強めて次の攻撃に注意しながら、一瞬だけ感じ取ったゴア・マガラ(カリア)の変化に目を細める。

 

 マキリ・ノワとアルトゥーラが健在な限り、彼女の霊基は常に汚染され続ける。今の一瞬の間に汚染が薄れたところで問題ではないが、それでもやろうと思えば汚染を防ぐ事に気付かれたのは痛手なのでは―――そう考えたところで今度は背後から炎を纏った斬撃が迫ってきている事に気付き、咄嗟に飛び退く。

 

 

「チィ、クソ親父がッ!」

「フ―――ッ!」

 

 

 躱すと同時に鎌を横薙ぎに振るうが、それを左手の剣で軽く受け止めたボレアスが、右手に握った剣を向かわせてくる。

 周囲の空間を熱で歪めながら迫ってくる炎の剣を、影は上半身を仰け反らせて回避。自分の顎のすぐ上を通り過ぎていく剣に寒気を覚えながら肉体を靄に変換して離脱。自身を追おうとしてきたボレアスを攪乱して距離を取った後に指を鳴らせば、いったいどこに隠れ潜んでいたのか、大量の蟲達がボレアスや攻撃に参加しようとしていたシグルドやアナスタシアに襲い掛かる。

 

 

「ヴィイ、凍て殺しなさい」

 

 

 短く下される皇女の命令。指示を受けた人形の瞳が妖しく輝き、周囲に冷気を放出して自分と(カドック)に飛び掛かってきた蟲達を氷像に変えていく。

 シグルドも万が一にも主であるオフェリアに怪我を負わせてはならないと彼女の防御に回るが、彼らのように主がここにいるわけではないボレアスは双剣から火炎の斬撃を飛ばして周囲の蟲達を一気に焼き尽くし、影との距離を縮めていく。

 

 迫り来る黒き狂戦士を前に、影は脳を回転させる間もなく口を開く。

 

 

「温かな夢に浸れ。彼方にかざす夢の噺(ライ・ライム・グッドフェロー)……ッ!」

 

 

 ガクン、と。

 それまでの勢いが嘘だったかのように失われていき、ボレアス達の動きが大きく鈍る。

 炎が消え去った双剣を取り落とす事はないが、それでも脱力感によって態勢を崩しつつあるボレアスの視界に映るのは、影から放出される黄金の鱗粉。

 

 

「っ、これは……」

 

 

 ―――『彼方にかざす夢の噺(ライ・ライム・グッドフェロー)』。

 それは、影が己の本性を隠していた頃に被っていた(オベロン)の力の象徴。その効果は、自身の翅から放出された光り輝く黄金の鱗粉に触れた対象の肉体や霊基を夢の精神体に変えるというもの。

 現実から夢の世界に隔離される―――つまりこの宝具で眠った者達は現実世界における実行力を剝奪され、現実世界への干渉も出来なくなってしまう。

 

 如何に“禁忌”の存在として知られるボレアスといえども、完全な抵抗(レジスト)が出来ない宝具は存在する。今回の宝具は彼に通用するものの一つであるが、それでも眠るわけにはいかぬと、片膝をつきながらも絶えぬ闘志の炎を宿した瞳で影を睨みつける。

 だが、最早抵抗は無意味だと告げるように、影は口元に笑みを作っていた。

 

 

「墜ちろよ、目覚めない夢の世界に」

 

 

 最後の抵抗として振るわれた斬撃は、しかし持ち主の力が抜けきっているために威力を発揮できず空を切る。

 

 

(……姉上、すまない)

 

 

 まさか、これ程までとは。

 もっと早く斬り捨てるべきだった。そう後悔しながら、ボレアスは眠りの淵に墜ちていくのだった―――。

 

 

 

 Now Loading...

 

 

 

「……はぁあああああぁぁぁ……」

 

 

 最後まで抵抗を続けていたボレアスが項垂れるように眠りに落ちた事が確認できた瞬間、開かれた口から重い溜息が吐き出される。

 

 キツイ。本当に、キツかった。魔力を全開にし、集中に集中を重ね続けて、ようやく眠らせる事が出来た。その事実に思わず安堵してしまう。

 如何に自身に強化を施していようと、“禁忌”相手、しかもそれに二騎の英霊が加わった状態で彼らを全員撃破するなど、自分には出来ない。何百年もかけて伏せてきた計画を遂に達成する為に動いたものの、このような状況になった時は「なぜだ」と叫びたくなる気持ちでいっぱいだった。

 

 この時ばかりは、自分に被せられた妖精王オベロンの(かわ)に感謝した。彼の宝具がなければ、自分は自分の力のみで彼らの相手をしなければならなかったのだから。

 

 だが、最早戦う必要はない。

 妖精王オベロンの宝具、『彼方にかざす夢の噺(ライ・ライム・グッドフェロー)』は対象を夢の精神体に変え、現実世界から隔離するもの。デメリットとしてこの宝具を受けた相手はこちらからも攻撃できない無敵となってしまうが、そんなものは問題にすらならない。

 

 絶対に殺さなければならないというわけではないのだ。こちらは崩壊までの時間稼ぎをすればいい。時が来ればこの世界は崩れ、氾濫した呪いはいずれ惑星全土を覆い、二度と目覚めぬ闇の中へ消えていく。

 

 それでいい。それで、自分達の役目は終わりだ。

 

 

「……あぁ、いけない。あいつらの援護に回らないと」

 

 

 一安心している余裕はない。アルトゥーラとマキリ・ノワの援護に回り、彼らと交戦している者達を撃破、または今回と同様に眠らせなければならないのだ。

 

 いつの間にか下ろしていた腰を上げて―――

 

 

「ッ!?」

 

 

 ―――背後で起き上がる、彼女の存在に気付いた。

 

 

「……まさか、このような事になるとは」

 

 

 ゆっくりと立ち上がったのは、オフェリア。だが、その所作は本来の彼女のものではない。

 乱れた髪を払う掌も、砂埃のついた服を軽く叩く動作も、なにもかもが気品溢れる振る舞い。それはまるで、モルガンやバーヴァン・シーと同じ王族(・ ・)のような―――。

 

 

「お前は……」

 

 

 その立ち振る舞いを、声色を、彼は知らない。だからこそわかる。わかってしまう。

 

 ―――あれは、異常(・ ・)だ。

 絶対に、確実に、人間に施していいものではない。施されれば最後、その人間は当たり前の生き方に戻れなくなる。元々人でなし(・ ・ ・ ・)の魔術師であろうと、言葉通りの人でなしになってしまうものだ。

 

 

「あいつ、本物の馬鹿か……ッ!?」

 

 

 思わず喉を突いて飛び出す驚愕と困惑。

 彼女をこのような状態にするなど馬鹿馬鹿しいにも程がある。彼女はこの人間を愛しているというのに、まさかヒトの道から蹴落としてしまうとは―――ッ!

 

 

「馬鹿? えぇ、確かに、貴方からすればあり得ない話でしょう。ですが、それが彼女なのです。愛するが故に、愛してしまったが故に、破壊の道を選んでしまう」

 

 

 愛しているが故に破壊してしまう。破壊してしまう程に愛している。

 それはいつの日か、八番目の絶対悪(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)に成る可能性を秘める程に。

 

 なにもかもをぶち壊し、その果てに愛を証明しようとする彼女(・ ・)。だが、自分にそれを否定する事は出来ない。彼女をその道に引き込んでしまったのは、他ならぬ自分がかけてしまった(ねが)いなのだから。

 

 しかし、それでも。

 

 

「未来のない破滅を、あの(ひと)は望みません。もちろん、この(わたくし)も、今この世界の為に戦っている者達も同様に」

 

 

 ならば、自分もまた戦おう。後悔と悲嘆を胸に、覚悟と信念を手に宿して。

 

 それは、瀕死の重体となったオフェリア・ファムルソローネを救うべく、アンナ・ディストローツ、否―――“祖龍”ミラルーツが彼女の内側に召喚した存在。

 崇高なりし冠位(グランド)の座を頂く天の御使い、その一角。彼女(・ ・)の名は―――

 

 

「シュレイド王国第三王女、アンナ・ディストロート・シュレイド。この一時の間、貴方のお相手を務めさせていただきます」

 





・『スケープゴート・リフレクション』
 ……本作オリジナルのバーヴァン・シーのカウンター魔術。術者が魔法陣から離れると、その場に術者の人形を作成し、受けた攻撃の威力を反射する。チェンジリングで流れ着いた書物に記載されていた身代わり人形の内容からインスピレーションを受けた事で開発された。

・『影(ヴォーティガーン)』
 ……Q.全力全開で妖精王オベロンの宝具を使用してボレアス達を眠らせて一安心かと思いきや、まさかの冠位(グランド)が出てきた時の彼の心情を答えよ。

・『アンナ・ディストロート・シュレイド』
 ……影の宝具を受けてオフェリアが眠ってしまった事で、彼女の魂に混ざっていたアンナの人格が表に出てきた。「どうして?」という質問に返答するならば、「ルーツによって召喚されたアンナはオフェリアの魂と融合する過程で彼女の精神や肉体にも影響を与える→精神・魂・肉体の情報(せかい)に英霊アンナ・ディストロート・シュレイドが追加される→オフェリアの精神体が閉じ込められたので、今回はそれと入れ替わる形で精神のアンナが表に出てきた」という独自設定によるもの。


 アンナの人格表出については、Fate/EXTELLAにてアルキメデスの策に嵌められたザビ/ザビ子が巨神アルテラから逃れるために自身を精神/魂/肉体の三つに分けたのを参考にさせていただきました。
 ちなみにアンナがオフェリアの三位一体に関係しているのは以下の通り。

 魂……ベリルが致命傷を負わせた際に彼女を蝕む凶気などの呪いを排除する際に混入。
 精神……汚染された魂の復元に付随する形。
 肉体……召喚する際に使用された“祖龍”の血による龍化の変異を食い止める為に干渉。

 偶然にもザビ/ザビ子が夏イベ&奏章Ⅲに登場するタイミングでこちらの設定を出しましたが、思い返してみるとEXTELLAの主人公って本当にとんでもない事をしたと思いましたね……。下手すれば分割どころかそのまま消滅してもおかしくなかったのに、それを実行するのですからね。ですがそういうところが彼/彼女らしいと思いますので好きなんですよね。
 今からextraリメイクが楽しみですッ!

 ところで皆さん、今回のPUはもう引きましたか? 私はシエルとニキチッチは召喚できたのですが、石の残りも考えて徐福ちゃんは見送る事にしました……。早くBBドバイ引きたいです……ッ!(乳に惹かれたから)

 それではまた次回ッ!
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