【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 奏章Ⅲがいよいよ始まったものの、敵メンバーがコヤンを除いて「なんか色々馬鹿なのがいるな……」と思ったseven774です。
 シリアスな本編なはずなのに水着ジャンヌが敵にいる事が確定してる時点で最早半分ギャグ世界に入っているアーキタイプインセプション、これからどうなっていくか楽しみですッ!
 皆さんは奏章Ⅲ新サーヴァントPUガチャはもう引きましたか? 私は目当てのBBドバイとテノチティトランをゲットできたのですが、謎のヒロインXX[オルタ]が引けなかったのが残念です……。石はまだ540個ありますが、爆死を恐れて今回は撤退します……。イドガチャでモンテクリスト伯で大爆死した記憶が強烈に残っておりまして……。

 今回はオフェリアの体を使ってアンナ・ディストロート・シュレイドが戦闘ッ!
 それではどうぞッ!



逆転の兆し

 

 暗雲渦巻く空を舞う、銀色の小鳥達。

 自然界に生息する本物の鳥類のように群れを形成しているそれらが向かう先は、地上で迎撃の構えを取っている影。

 

 

「シ―――ッ!」

 

 

 鋭く短い吐息と共に横薙ぎに一閃。鎌から放たれた暗黒の斬撃は群れを形成していた鳥達の数羽を両断するが、攻撃を逃れた鳥達が敵討ちとばかりに加速し影との距離を縮めていく。

 

 

Schwert(シュヴェーアト)Gleiten(グライテン)

 

 

 凛とした静かな、芯の通った声が響けば、鳥達の翼が一瞬だけ瞬く。瞬間、これまでよりも速度を上げた鳥達が影に殺到する。

 影が咄嗟に真横へ飛び退くと、標的を逃した鳥達の翼は大地に巨大な斬撃痕を残して再び上空へ。

 

 人の掌に収まる程度の大きさでしかない小鳥型の使い魔が有する火力の高さに彼女(・ ・)への警戒心を強めながら走り出す。

 

 目指す先は一つ。あの鳥達を操る魔術師ただ一人。その命を刈り取れば、それでこの戦いは終わる。

 

 

Kanone(カノーネ)Adfangen(アドファング)

 

 

 もちろん、彼女がそれを許すはずがない。

 指揮者のように指先を振るえば、彼女の周りに待機していた鷹達が動き出す。

 攻撃開始と告げるように鳴き声を上げた鷹達が翼を羽ばたかせれば、そこから飛び出した羽根の弾幕が影を阻む。

 

 一枚一枚が決して無視できない魔力を宿している事に舌打ちしながらも、影は鎌を手放して自由にした両手を掬い上げるように動かす。

 すると、彼の眼前に大量の黒い泥が波のようにうねり、羽根から影を護りながら彼女をも吞み込むべく迫っていく。

 

 しかし、それでも彼女の表情に焦りはない。

 寧ろ小さく笑みを浮かべながら、彼女は軽やかな足取りで波に吞まれない高さまで一気に跳躍した。

 

 身体能力を向上させる類の魔術を発動させたのだろう。しかも、跳躍したはずなのにそのまま浮遊しているところを見るに、その手の魔術などお手の物なのだろう。

 

 

「わぁすっごい。君、その体の事考えてないのかい?」

「ご心配なく。この戦闘において消費されるのは(わたくし)の魔力。言い換えるのなら別腹、いえ、別魔力といったところでしょうか?」

「解説どうも。ありがたく受け取っておくよッ!」

 

 

 追ってきた小鳥達を躱せば、オフェリア―――否、アンナ・ディストロート・シュレイドが「Umwandlung(ウムヴァンドゥルング)」と唱える。

 すると、小鳥達の姿が眩い光に包まれて変化。その身を巨大なハヤブサに変え、小鳥の時よりも素早い動きで影を追跡していく。さらにアンナがパチンと指を鳴らせば、ハヤブサ達が炎と水を纏い始める。

 

 

「私はアルバのようなアベレージ・ワンではありませんが……それならば自分が使える魔術属性を極めれば良いだけの事。燃やされるか激流に切り崩されるか、お好きな方をお選びください?」

「チッ!」

 

 

 二つの属性を帯びたハヤブサ達の間を掻い潜りながら、影は苦し紛れに斬撃を飛ばす。しかし、それもアンナが近くに待機させていたハヤブサが主を庇って霧散した。

 

 ならば、と影は鎌の柄頭を大地へと振り下ろす。

 大地を穿った柄頭を中心に暗黒と赤色の衝撃波を飛ばして全方位から自身を狙ってきていたハヤブサ達を吹き飛ばすと、彼独自の魔力である黒と青の魔力を纏ってアンナへと接近。迎撃に動くハヤブサ達を無視して突っ込んでくる影にアンナが僅かに目を見開くが、即座に滑らせるように滞空していた体を動かし始める。

 

 

「逃がすものか……ッ!」

 

 

 追跡を逃れるべく両腕を広げたアンナの周囲に、幾重にも重ねられた魔法陣が無数に出現。そこから放たれた業火と激流が影を狙う。

 

 自身を狙って渦を巻いて襲ってくる二つの属性攻撃を前に、影は鎌を消し去る代わりに装備した、蜂の毒針を模したレイピアを一気に突き出す。

 細身のレイピアの倍以上の太さで放たれた金色の光が炎と水を消し飛ばし、その奥にいるアンナを貫かんと迫る。

 

 

「く……ッ!」

 

 

 迎撃の為に繰り出した攻撃を一瞬で消し飛ばされたアンナの顔色が初めて焦りに歪み、咄嗟に体を捻る。

 間一髪で黄金の刺突を回避したアンナは右目を覆う眼帯を外し魔眼を露にし、迫り来る影を睨みつける。

 

 

「―――事象・照準固定(シュフェンアウフ)

 

 

 邪魔な二つの属性による壁がなくなった事で開かれた道を通り、標的の心臓を貫かんと迫る影。再びレイピアを突き出そうと腕を引く彼に対し、アンナは呼吸を整えながら告げた。

 

 

「―――Ich will es niemals glǎnzen sehen(私は、それが輝くさまを視ない)ッ!」

「ッ!?」

 

 

 瞬間、突き出そうとした腕が自分の意思に逆らって停止した事に影が動揺する。その隙にアンナは業火で彼を吹き飛ばし、「ふぅ」と微かに安堵の息を吐き出した。

 

 ―――遷延の魔眼。

 それは、現在アンナが動かしている肉体の本来の持ち主であるオフェリア・ファムルソローネが有する力。その視界に捉えたものの可能性をピン留めし、先延ばしにする魔眼の効果により攻撃を中断させられた影が遅れて刺突を繰り出すが、もちろんその先に標的の姿はない。

 

 舌打ち交じりに影はレイピアを消し、次に装備するは二本の槍。さらに自身の周りにも五本の槍を出現させ、アンナ目掛けて撃ち出す。

 

 ハヤブサの群れを貫きながらそれぞれが全く別の軌道を描く槍にアンナが五指を開いた両手を左右に広げると、そこに生み出された業火が円を描くように動き始める。超高速で回転し続けるそれらをアンナが投げ飛ばせば、それらはチャクラムのように彼女を狙ってきていた槍を迎撃し、焼き切っていく。

 しかしアンナはそれだけで終わらせず、炎のチャクラムを新たに四つ生み出し、内二つを先程飛ばしたチャクラムに加勢させ、残る二つを手元に残して接近してくる影を迎え撃つ。

 

 チャクラムと槍が激突し、両者の間に火花が飛び散る。

 両手に握った槍を回転させながらアンナを切り裂こうとする影と、左右のチャクラムを巧みに操って焼き切ろうとするアンナ。空中で繰り広げられる両者の攻防は、二人の武器がぶつかり合い、鍔迫り合いのような形となって止まった。

 

 

「獣退治でも無かろうに、冠位(グランド)様がお出ましってのは違うと思うなぁ。とっとと座に帰るべきじゃないかな?」

「そうするわけにはいきません。彼女(ルーツ)に喚ばれた以上、私にはそれに応える義務……いえ、責任がありますから」

「責任、ねぇ……」

 

 

 ギリギリと、会話している間にも相手の防御を崩そうと力を、魔力を籠め続ける。

 

 

「義務じゃなく責任か……。ごめんよ、オレには理解できないな」

「謝る必要はありません。元より、貴方に理解して頂こうとは思っておりませんので」

「酷い事言うねぇッ! オレは、君を愛した果てに体を真似た(オンナ)の孫なのに」

「だとしても関係ありません。先のない終わりを齎そうというのなら、たとえ貴方が彼女に連なる者であろうと容赦しません。■■■■■■■■(あの大戦を激化させた邪神)同様、貴方は私にとって『絶対に倒すべき存在』です」

 

 

 それと―――と、アンナは足元の地面に魔力を注ぎ込み始める。

 

 

「串刺しは、やめてくださいね?」

「―――ッ!」

 

 

 気付かれた。確信と共に表情を強張らせた影がアンナから離れた直後、彼女の足元に満たされた魔力が爆発。凄まじい衝撃波が影を襲って吹き飛ばしていくが、爆心地の中心にいたアンナは無傷のまま一気に影との距離を縮め、チャクラムで彼を切り裂いた。

 

 

「アッツ―――ッ!!?」

 

 

 服など容易く切り裂き、その奥にある素肌まで焼かれた影の口から苦悶の声が飛び出す。

 咄嗟に腰を限界ギリギリまで後方に引いていたのが幸いした。お陰でチャクラムは彼の腹部に大きな傷を与えられずに通り過ぎ、上下に焼き切られずに済んだ。

 

 しかし、彼女の攻撃はまだ終わらない。上空から半分を砕かれながらも、五本の槍との攻防に勝利した二つのチャクラムが合体し、巨大なチャクラムと化して影を切り裂こうと落ちてきている。武器を切り替えている時間などないと判断し槍を頭上で交差させて防御の構えを取った瞬間、巨大なチャクラムが激突し、金属を引っ掻く音が何十にも重なったような耳障りな音を奏でて爆発。

 槍を砕かれた影が再び吹き飛ばされ地面を跳ねている間にも、アンナはさらなる追撃として激流の渦を二つ放つ。

 

 だが、回転し続ける視界の中でも自身に迫ってきている激流に気付いた影は右手の竜の爪を地面に突き立てて停止すると、左の掌から暗黒の魔力光線を放射した。

 

 魔力光線と二つの激流がぶつかり合い、爆発。強大なエネルギー同士が破裂した突風がアンナの髪の毛を、影のマントを乱雑に弄んで消えていく。

 

 

「どうしてわかったんだい? 君の足を串刺しにしようとしたのに」

「魔力の流れが同じでしたから。『あ、これは地面から突き出てくるな』と思いましたので、先に地面ごと消し飛ばさせていただきました」

「やり方が強引だなぁ……君、本当にお姫様?」

「お淑やかでいるだけでは、あの時代は生き残れませんから」

 

 

 苦笑に余裕の微笑みで返され、影は再び手元に鎌を出現させて構える。アンナもまた炎のチャクラムを創り出すと、左右に水で出来た球を幾つも出現させ始める。

 

 

「フ―――ッ!」

「ハァ―――ッ!」

 

 

 互いに鋭く息を吐き出し、相手を滅ぼすべく動き出した―――。

 

 

 

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 天空を駆ける紅き流星が、進行方向を地上―――そこにいるマシュ達に変えて落ちてくる。

 

 大地に接触するギリギリの高度を維持しての突進。咄嗟にマシュが盾を突き立てて受け止めようとするも、高高度から加速しながら落ちてきた流星の勢いを殺す事はできずに弾き飛ばされてしまった。

 

 

「マシュッ!」

「問題、ありません……ッ!」

 

 

 立香の叫びに盾を持ち直しながら答えるマシュに、流星から分離した二つの光が迫りくる。

 ジグザグと絶えず動きながら接近してくるそれらは、しかしマシュの前に飛び出した村正が野太刀を振るって迎撃される。

 

 弾かれたそれらの正体は、ジョフロワとフロモンと呼ばれる、■■■■■が振るう双剣。時計の長針と短針のように一方が長く、もう一方が短いという特徴があるそれらは、一度は弾かれるものの次の瞬間には攻撃に転じ始める。

 

 

「ッ!」

 

 

 ハサミのように合体した双剣に主からの魔力が注がれると巨大なドラゴンのアギトが具現化し、村正とマシュを噛み千切ろうとしてくる。

 防ぐのは不可能だと判断した二騎が飛び退いて回避する。彼らの目の前でアギトが勢い良く閉じられ、間一髪挟み切られる事態を逃れる事が出来たが、直後、霧散していくドラゴンのアギトの真上から流星が迫ってきている事に気付く。

 

 

「ぐ……ッ!?」

「うぅ……ッ!」

 

 

 サマーソルトキックの要領で繰り出される、両足の爪による斬撃。黒い外殻に覆われた両足による襲撃は、ほぼ無意識に構えた太刀と盾に防がれるも、回避中故に完全な防御態勢を取れなかった村正とマシュを吹き飛ばした。

 さらに■■■■■は分離した双剣を手に取り、組み合わせる。

 

 レールガンのように構えた双剣の間に赤黒く輝くエネルギーが充填され始め、数秒の時間を置いて発射。

 

 大地を抉りながら迫るエネルギー弾に二騎の表情に焦燥が浮かぶが、そんな彼らを護るように、エネルギー弾とは真逆の青白い光が障壁となってそれを阻んだ。

 

 ■■■■■の追撃から村正達を救ったのは、アルトリア・キャスターの防御魔術。これまで多くの攻撃から仲間達を護ってきたその魔術は敢え無く一撃の下砕かれてしまったが、それでも村正達を追撃から護り抜いたのだ。

 

 追撃が失敗した■■■■■が一旦距離を取ろうとするが、その前に「させるかッ!」と村正が投影した白と黒の刀を投擲する。

 ブーメランのように回転しながら飛翔する二本の刀を■■■■■は双剣で打ち払うものの、それを予測していた村正が直後に振るった太刀による斬撃が命中した。

 

 

「助かったぜ、アルトリア」

「助かりました。ありがとうございます」

「当然の事だよ。っ、来るッ!」

 

 

 マシュ達がそれぞれの武器を構えた直後、態勢を立て直した■■■■■の双剣が紅い軌跡を残しながら飛来してくる。

 それをマシュ達が迎え撃ち、隙あらば攻撃を仕掛けていく様子を観察しながら、戦闘の余波がなるべく届かない場所で立香は瞳を細めた。

 

 

(これまでかなり攻撃は与えてきた……でも)

 

 

 まだ、倒れない。戦闘が始まってそれなりの時間が経ち、マシュ達も高速で繰り出される攻撃を掻い潜って確実にダメージを与えてくれているが、それでもまだ倒れない。

 相手が竜種、それもただのワイバーンやファヴニールとは文字通り格の違う、“境界竜”の名を冠した者ならば当然だと思うが、それでも自由に空を駆け、目にも止まらぬ速さで振るわれる攻撃は厄介の一言に尽きる。

 

 それに先程の村正の太刀の一撃も、彼女は僅かに体を後方に逸らして攻撃の威力を弱めていた。明確な一撃が入れば僅かなりともこちら側に戦況が傾いていただろうが、そうは上手くいかないのが彼女なのだ。

 

 そして、戦況をこちら側に傾けられない理由はもう一つある。

 

 

(彼女を倒すには、こっちの数が足りない……)

 

 

 地上で行われている戦いがどうなっているかわかっていないこの状況で、戦いを長引かせたくない。ここで時間を使い続けてしまえば、最悪の場合、地上に戻っても全てが終わっていたなんて事もあり得る。

 かと言って、地上で戦っている者達を信じていないわけではない。寧ろ心の底から信じているし、自分達が聖剣を手に入れるまでの時間稼ぎ―――あわよくばそのまま討伐―――を買って出てくれているのだから、彼らの期待には絶対に応えたい。

 

 しかし、功を焦るつもりは毛頭ない。

 だからこそ立香はより素早く、より効率よく、より仲間達に負担をかけない戦略を即座に構築し、叫ぶ。

 

 

「みんな、少しだけ時間を稼いでッ! 簡易召喚するッ!」

「数はッ!」

「三騎ッ!」

「了解しましたッ!」

 

 

 彼女の答えに頷き、マシュ達は■■■■■の注意を引き付けるべく動き出す。

 彼女達が交戦している間に、立香は右手首を握り締め、前方へと突き出す。

 

 

「簡易召喚―――」

 

 

 迸る魔力の奔流。彼女の足元を中心に描かれた召喚陣から溢れ出した魔力の余波が稲妻となって地を這いまわり、三つの魔力の塊を創り出す。

 

 遠くから甲高い音が聞こえてくる。あの音はこれまでの戦いで何度も聞いてきた、マシュの盾が弾かれる音だ。続いて数度の爆発音が轟くが、立香はマシュ達を信じて念じる。

 

 今必要なのは、自由自在に空を駆ける彼女に肉薄し得る速度と火力を有するサーヴァント。そして、マシュ達にもこれまで以上の攻撃の機会を与えられるような、相手を的確に誘導できる事が出来るサーヴァント。

 

 絆を結んだ彼らの到来を望み、立香は最後の一押しとばかりに魔力を籠める。

 瞬間、人型となった三つの魔力の塊の内、中心に浮かんでいた一つが凄まじい速さで動き、吹き飛ばしたアルトリアに追撃を繰り出そうとしていた■■■■■を突き飛ばした。

 

 アルトリア・キャスターを救ったのは、軽装な白銀の鎧に身を包んだ、己の身の丈と同じ長さを誇る槍を携えた青年。

 数多に存在する英霊達の中でも人類最速の名を頂く、ギリシャ神話において()のヘラクレスとも比肩し得る大英雄。

 

 その突然の乱入者に■■■■■が攻撃を仕掛けようとするが、上空から降り注ぐ矢がそれを阻む。双剣で矢の雨を打ち払う彼女だったが、今度は青年の背後から飛んできた幾本もの光線が直撃し、吹き飛ばされる。

 

 立香の隣で矢を撃ち出したのは、数多の英雄をその知恵で教え導いたケンタウロス族の大賢者。

 青年の背後から光線を放ち■■■■■を吹き飛ばしたのは、愛する家族の為、数多くの困難の全てを乗り越えた知将の英雄。

 

 

「力を貸して、アキレウス、ケイローン、オデュッセウスッ!!」

 

 

 ギリシャが誇る大英雄達の影は、マスターである少女に応えるように構えを取った。

 

 

 

 Now Loading...

 

 

 

 突き出された拳と拳が激突し、暗黒の衝撃波を周囲へ撒き散らす。

 互いに相手の拳を押し退け殴り飛ばそうとしているのは、二体(ふたり)の獣。

 

 狼と獅子を無理矢理繋ぎ合わせたような異形―――ベリル・ガットと、極限状態の力を引き出したウッドワス。拮抗する両者の拳が離れ、始まるは徒手空拳による攻防。

 揃えた五指の先に伸びる鋭利な爪による斬撃を打ち払って右足を振り上げる。下から迫るハイキックを首を捻って回避したベリルが左手から光線を放ってウッドワスを吹き飛ばすと、続いて右腕を振るって後方から近づいてきていたノクナレアを薙ぎ払う。

 

 己の体に走る激痛に受け身を取れないノクナレアだったが、仲間を助けるべく動いていたパーシヴァルが彼女の体を受け止める。

 

 

「大丈夫ですかッ!?」

「えぇ、大丈夫よ……。それより行って、早くッ!」

「もちろんッ!」

 

 

 パーシヴァルが指笛を鳴らせば、白銀の鎧を身に着けた白馬がどこからともなく駆けつけてくる。

 幾度となく共に死地を潜り抜けてきた愛馬が自分の真横を過ぎ去る瞬間に手綱を握り跨ったパーシヴァルが槍に魔力を込めながら接近しようとするも、彼に気付いたベリルが光弾で牽制をかけてくる。

 

 眼前より迫り来る光弾の弾幕。だがパーシヴァルは決して怯まずに槍を構えれば、彼の意思が伝わったのか愛馬もまた速度を上げ始める。

 

 次々と自分達に直撃するであろう光弾を弾き続けるパーシヴァルの姿に舌打ちしたベリルが彼らに接近を試みようとするが、当然それを許さない者がいた。

 

 

「ベリル・ガットォオオオッ!」

「チッ、テメェ本当に老兵かよッ!?」

 

 

 怒号を張り上げながら組み付こうとしてきたウッドワスを躱し、左足を振るう。ウッドワスも右足を振り上げて両者の足が激突し、互いに距離を取って今度は腕を大きく引く。

 

 

「シィェア―――ッ!」

「ヌン―――ッ!」

 

 

 気迫の籠った声と共に振り抜かれる拳。互いの顔面に命中するかに思われた拳は、しかし片方のウッドワスが寸でのところでスリッピングする事で受け流した事で、ベリルの顔面にのみ拳が突き刺さった。

 

 

「ブ……ッ! こンの野郎―――ッ!?」

「ウォオオオオッ!!」

 

 

 狼のように突き出た鼻先に拳を叩き込まれたベリルが悪態を吐こうとした瞬間、背後より迫るパーシヴァルの裂光。咄嗟にジャンプして回避するも、直後に真横からの飛び蹴りが彼の脇腹を穿った。

 防御が間に合わず蹴り飛ばされたベリルだったが、受け身を取って着地すると、黒と赤の魔力を帯びた両腕を大地に振り下ろす。

 彼の腕から大地へと注ぎ込まれた魔力は即座に形を変え、茨となって敵対者を狙う。

 

 

「パーシヴァルッ!」

「光よッ!」

 

 

 凄まじい勢いで接近してくる茨を前に、パーシヴァルが飛び出す。

 勢い良く跳躍した彼が選定の槍を振るえば、その穂先から放たれた光の斬撃が茨を切り裂き、大地に斬撃痕を残す。さらにそれだけではなく、斬撃痕から真上へかけて巨大な光の壁が出現し、後続の茨の行く手を阻み始める。

 

 

「ナイスよパーシヴァルッ!」

「援護行くわよ、ノクナレア」

「ありがと伯爵ッ!」

 

 

 後方支援に徹していたペペロンチーノが発動した、六神通の内の一つ、神速通を基にした強化魔術を受けたノクナレアが手元に出現させたチョコレートで出来た傘を手に駆け出す。

 茨による攻撃をやめたベリルが撃ち出す光弾を傘で弾いたノクナレアが傘を開けば、そこから放たれるはチョコの濁流。渦を巻いて襲い掛かるチョコの嵐は、しかしベリルが真横に走り出した事で回避されるも、それを予測していない彼女ではない。

 チョコを放出を止めずに傘を閉じたノクナレアがそのまま傘を横薙ぎに振り抜けば、チョコの濁流は一本の剣のようになりベリルを追う。

 

 

(そんなのありかよッ!?)

 

 

 一瞬にして数百メートルにも及ぶ攻撃範囲を有する事となった傘に驚愕しながらも、ベリルは邪悪な魔力を纏わせた右手でチョコの斬撃に触れる。そのまま受け止めるのではなく、魔力によるバリアを張った右手を軸に体を回転。絶えず回転し続ける事で渦を形成するチョコの流れを逆に利用する事で回避に成功した彼が獰猛な笑みを浮かべ、一気に加速。

 

 

「な……ッ!」

「まずは、テメェだッ!」

 

 

 瞬きの間に大地を蹴り砕いてノクナレアに肉薄したベリルが拳を突き出す。ほんの一瞬で肉薄されたが故に咄嗟の防御も出来ない彼女の顔面目掛けて真っ直ぐに進む拳。ベリルは彼女の顔面が粉砕される未来に口端を吊り上げようとして―――

 

 

「なんてね」

「は―――ぐぉッ!?」

 

 

 ゴポッと音を立てて、拳がノクナレアの顔をすり抜ける。直後、彼が貫いたノクナレアの顔が体ごと焦げ茶色となり、どろどろに溶けていく。

 

 チョコによる擬態―――それにベリルが気付いた頃には時すでに遅し。いつの間にか背後に回り込んでいたノクナレアが連続で突き出した傘による刺突を受けた事で体勢を崩される。

 

 

「ウッドワスッ!」

「任せろッ!」

 

 

 膝裏に叩き込んだ刺突でベリルが崩れ落ちた間にノクナレアが離脱し、入れ替わりに彼の前に現れたのはウッドワス。

 跪いた状態でも尚目の前に立つウッドワスに反撃の一撃を繰り出そうとするが、バランスが崩れた状態で極限状態の力に耐えられるはずもなく殴り飛ばされた。

 

 さらにウッドワスは自身が殴り飛ばしたベリルに追いついた瞬間に上空へ蹴り上げ光線を発射。狂竜ウィルスと魔力を混ぜて圧縮した光線に貫かれたベリルが墜落し土埃が立つも、それを吹き飛ばしたベリルは呼吸を荒げながらゆらりと立ち上がった。

 

 

「まだだ……まだ、負けるか。オレはまだあいつに、マシュに会ってねェんだよ……ッ」

 

 

 ウッドワスも、パーシヴァルも、ノクナレアも、ペペロンチーノも、彼にとっては『敵』である以上に、ただの『邪魔者』でしかない。

 アシュヴァッターマンとの戦いに敗れても尚生き永らえ、影によって生かされ、埒外の力さえも手に入れて。

 

 もうすぐ、もうすぐ巡り合えるはずだと、何度も何度も自分に言い聞かせてきた。飛び出したい気持ちを何度も抑え込んできた。

 

 だというのに、今自分の前に立っている連中はなんだ? こっちはただ彼女(マシュ)に会って、二人きりで過ごしたいというのに。

 

 

「いい加減邪魔なんだよテメェら……。オレの恋路の邪魔をしないでくれよ、なぁ……なぁッ!?」

 

 

 オレはただ愛を証明したいだけ。愛しい相手に愛情を注ぎたいだけ。

 ただ愛したいだけだというのに、なぜそこまで邪魔をするのか。 

 

 

「貴方が彼女にした事、知ってるわよ。だから、会わせてあげない。彼女にとって、貴方は触れさせてはいけない人間よ」

 

 

 だからこそ、彼の純粋であり悍ましく邪悪な願いを、ペペロンチーノは拒絶する。

 

 

「ここで倒れなさい。同じ人でなしとして、貴方の最期を看取ってあげる」

 

 

 ペペロンチーノの言葉に合わせて、ウッドワス達はベリル目掛けて走り出した―――。

 

 





・『アンナ・ディストロート・シュレイド』
 ……魔術属性は火と水。アルバや遠坂凛のようなアベレージ・ワンではないものの、他の属性魔術を棄てる代わりにその二つを極限まで鍛え上げた。オフェリアの得意とする召喚術をそのまま流用して召喚した鳥型の使い魔に自身の有する極限強化した二つの属性を纏わせて戦う他、自身が生前有していた千里眼の劣化版であるオフェリアの魔眼も使用可能な彼女は、条件さえ整えばオフェリアの体を借りた状態であろうともトップサーヴァントを容易く打倒しうる。


 今作の独自設定として、オフェリアの『対象の未来をピン留めする』遷延の魔眼は、『不確定の未来の一つを正しい歴史として結び付け固定する』アンナの千里眼が転生した折に劣化したものという事になっております。

 そろそろ妖精國決戦も終わりに近づき始めます。それでもこの更新ペースでは二か月は余裕でかかると思いますので、気長に楽しんでいただければと思います……。描写する場面が多いとその分ストーリーの進行も大幅に遅れてしまうのが未熟な証ですね……もっと上手い方ならより早く簡潔に終わらせられるはずですので、これからも精進していきたいと思います。

 それではまた次回ッ!
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