ハッピーハロウィン=ミナサン。
本日仕事終わりに渋谷へ赴き、渋ハロに参加してきたseven74です。
渋ハロに参加したのは初めてだったのですが、どこを見ても人で溢れかえっており、とても楽しめましたッ! 帰る前に寄った居酒屋もとても美味しかったので、そちらでも楽しめたのは大変良かったですッ!
明日からはモンハンワイルズ体験版をプレイするので、同じくプレイするかもしれない読者様の中では、どこかで私と会うかもしれませんねッ!
それと、一昨日から二日間、二連休な事もあって実家に戻っておりました。久しぶりに見る家族の顔や、家族の作る飯の温かさに心身共にリフレッシュする事が出来たので、これからの仕事も頑張れそうですッ!
また、来月から一度落ちてしまった、昔から行きたいと思っている会社の募集が始まるので、そちらにも気合を入れて挑みたいと思っていますッ! 今回こそは夢を叶えたいッ!
それでは本編、どうぞッ!
周囲に吹き荒れる大熱波。自身の姉と兄がいる事も、共に戦っている仲間達がいる事も忘れて発生したそれは、瞬く間に地面を溶かし、空間を致死のものへと作り替えていく。
「アッッッツッ!!? アンナ、早くあいつなんとかしてッ! というかあいつアルターエゴよねッ!? なんで
バルカンとの距離が充分離れているにも関わらず大熱波に晒された虞美人がルーツに叫ぶも、彼女もまた大熱波を前に迂闊に近付けないでいた。
「なんとかしたいのは山々なんだけど、私でもあの大熱波はキツイッ! あの子の炎は特別だからッ!」
ただの炎や熱波ならば、ルーツには火傷一つつかない。古龍種の炎やボレアス、アルバの扱う炎であれば彼女の体にも幾らか傷はつけられるだろうが、バルカンのそれは次元が違う。
ルーツの次男にして弟である“紅龍”ミラバルカンは、“運命を解き放つ者”という異名を持つ。彼が保有する
運命とは定められたもの。本人がどう思おうが、なにをしようが、それは決して『運命』という名のレールから逸れる事はない。どれだけ線路を変更しても、列車がその上から外れて走行できないのと同じように。
運命は変えられる、と人は言うが、それは彼らが真の意味で運命というものを理解していないだけだ。生まれながらに決まっていた人生のどん底から抜け出し、億万長者の夢を叶えて『運命を変えた』と言っても、それは『そこへ辿り着く道が見えるようになっただけ』に終わる。一握りの例外を除き、ヒトの目は自身の未来を視通せない。それに足る視野を、今の彼らは持っていないからだ。
ヒトを、運命を、その全てを記録する世界は、それを『常識』と認識する。
なにもしなければ見えなくて当たり前。目を凝らせば新たな道が見えるようになるのは当然。世界を構成する万物は、常識という名の鎖によって縛られている。
では、その鎖を解き放った場合、どうなるか。
答えは簡単だ。
如何なる力も、言葉も、世界から解放された彼には意味を成さない。目の前に立っていても、彼は世界にとって透明となった。透明となった彼に、常識という名の色は付けられない。
究極の防御にして、攻撃。攻撃を当てても常識から外れたバルカンには傷一つつかず、バルカンの攻撃は常識に縛られた相手に効く。残酷なまでのワンサイドゲームの始まりである。
ルーツの権能も、『“祖龍”ミラルーツ本来の雷撃は全てを消去する』という常識が世界によって固定されているため、己の権能を行使したバルカンには通用しなくなってしまう。それが、ルーツが今の戦いを止めに入るのが
―――だが、何事にも例外は存在する。
相手の攻撃は当たらず、自身の攻撃は当たる。なるほど、まさに無敵の権能だ。単独で世界を滅ぼす事も可能な“禁忌”に数えられるのも納得である。
しかし、そんな彼にもダメージを受けてしまう場合がある。
一つは、彼の有する強力無比な権能に近しい、『常識に囚われていない存在』による攻撃。
この場合は、バルカンの権能とは別口で世界から透明になる事の出来る存在か、権能程ではないが、世界によって施されるはずだった常識の鎖を生まれながらに施されなかった存在を差す。このどちらか、または両方の条件を達成できれば、バルカンにもダメージを与えられるようになる。
現状でこの条件に合致する存在は、カリアである。
“紅龍”にまともに攻撃を仕掛けられる英霊など極少数しか存在しないが、この世界で唯一彼の討伐に成功したカリアはその代表格だ。だからこそ、彼女の特性を僅かながらでも有したゴア・マガラは、暴走して権能を解き放ったバルカンにもダメージを与えられている。
二つ目に、彼の権能に真っ向からぶち当たり、対等に並び立つか、上回る程の力の持ち主である事。
こちらは生まれながらの特性は一切関係なく、単純なゴリ押しに尽きる。
これに該当するのはルーツ。常識の枷に縛られながらも、彼女の雷撃は全てを消去する裁きの光。全盛期であれば話は別だったが、今の状態でも威力や効果の弱体化は避けられないもののダメージを与える事が出来る。
だが弱体化した攻撃では、バルカンの注意を引けない。些細な威力による攻撃など、今の彼には通用しない。歯牙にもかけずに
未だ全盛期には程遠い身の上、介入するのなら、最小の手数で止める他ないが……そこでゴア・マガラの存在が邪魔になってくる。
ボレアス達は今も影の“黒蝕竜”を喰らいながら代わる代わる攻撃してくる二本の触手の相手をしなければならない。成体になろうとしてる為か抵抗も激しく、バルカンが脇目も振らずに大熱波を撒き散らしている事もあり、一人でも欠ければどこかから崩されかねない。特に他と違って純粋な人間であるプロフェッサー・Kはかなり辛そうな様子だった。少しずつ解呪は進めているものの、まだ使用可能な状態までには行けていない杖を装備できていないのが堪えているらしい。
ゴア・マガラさえなんとか出来れば……そう思った瞬間だった。
「あれは……ッ!」
なにかあの戦闘を中断させられるものはないか。そう思ってなんとなく空を見上げたルーツの目に、青い流星が映り込んだ。
周囲を飛び交っていた影の竜達を瞬く間に細切れにしたそれは、一瞬だけ強く煌めくとルーツの前に着地してきた。
「アンナッ!」
「アルビ―――メリュジーヌ? そうか、あのゴア・マガラを追ってきたんだね?」
「私だけじゃないよ。すぐに―――」
「待てカリアァアアアッッ!!」
メリュジーヌの言葉を掻き消す怒号。襲い来る影の竜達を跳ね飛ばし、舞い上がる土煙を黒炎と稲妻で消し飛ばしながらこちらへ向かって走ってくるのは、巨大な黒犬。
その背に乗る妖精がゴア・マガラに妖弦を爪弾くも、攻撃は吹き荒れる大熱波に阻まれ焼失してしまった。
チッ! と舌打ちしたバーヴァン・シーがフェイルノートから離した左手で背中を叩けば、黒犬は少しずつ速度を落としていき停止した。
「バーヴァン・シー……。それとあの犬は……バーゲストだね?」
姿は大きく変わり魔力もどこか禍々しいものへと変貌しているが、それでもバーヴァン・シーを振り落とさぬよう気を付けているその様子はバーゲストそのものだと思ったルーツに、「そうだよ」とメリュジーヌが頷いた。
「アンナ。私達は彼女を、カリアを助けたい。陛下が私達の武器にも絆石の力を与えてくれたんだ。きっと助けられる……いや、絶対に助けたい」
自分も、バーヴァン・シーも、バーゲストも、全員がカリアと関わって救われた。もしかすると、モルガンやウッドワス達でさえ、彼女と過ごす中で救われているかもしれない。
そんな恩義ある彼女を、ただ討伐するだけで終わらせたくない。絆石の力で救えるのなら、絶対に救いたい。それが、自分達に出来る彼女への恩返しだから。
「……わかったわ。それなら、バルカンは私に任せなさい。貴女達はカリアを」
こちらを真っ直ぐに見つめるメリュジーヌの瞳に宿る、揺るぎない決意の光。それを見たルーツは優しい微笑みと共に頷き、「貴女はバーヴァン・シー達に声をかけておきなさい」と伝えながら両足に緋色の輝きを纏わせた。
Now Loading...
「ウグォアアアアアアアアッッッ!!!」
「キシャハハハハハハッッッ!!!」
紅蓮と黒青が衝突し、凄まじい衝撃波を周囲へ撒き散らす。
互いに衝突した反動で体が離れるものの、即座に次の行動に映って相手を殺そうと動き回る。
理性という枷を弾き飛ばした膂力で振り下ろされる大剣。思考の一切を放棄した本能による一撃だが、安直が故に強力。理性がないからこそ威力を増したその一撃は、たとえ直撃せずとも充分な脅威となる。
だが、ゴア・マガラもまた己の基となっている狩人の魂に刻まれた戦闘の記憶に突き動かされるままに回避行動を取る。生前、そして死後英霊に昇華されてからも延々と戦い続けてきた事で蓄積された戦闘経験によって起こされる行動は、理性を失った“禁忌”を相手にしても通用する。
自身のすぐ傍で敢えて狂竜ウィルスを爆発。圧縮されたウィルスが爆発した影響で発生した風圧と衝撃を利用してバルカンの背後に回り込んだゴア・マガラが、彼の無意識の反撃として顔面に迫っていた右足に喰らいつき、放り投げる。
両前足、両翼爪で全身を固定。自身を即席の固定補台と化して開かれたアギトから放射されるのは、極限まで圧縮した狂竜ブレス。強い紫色の光を中心に、凶気と凶光のオーラを螺旋状に纏ったブレスが、瞬きの時を以てバルカンの全身を包み込む。
全身に走る激痛。たとえそれ一つが微生物にも等しきサイズのものであろうと、圧縮されたウィルスは彼の皮膚を削り、抉り、奥にある肉さえも奪い去ろうとしていく。
「ォオオオオオオオオオッッッ!!!」
だが、バルカンは、“禁忌”は、その程度のダメージで屈しない。屈するはずがない。
正面から絶え間なく全身を捉えるブレスに弓なりになっていた体を無理矢理動かしながら、他の生物とは一線を画す絶大な自然治癒力で全身を即座に再生。両手でミラバルカンシアの柄を握り締め、振り下ろす。
それだけで直線状に放射されていたブレスがバルカンを起点に二手に分かれ、大剣のブレードから飛ばされた業炎の斬撃がゴア・マガラへと迫る。
前方より迫り来る斬撃に気付いたゴア・マガラがブレスを中断して後退。翼を広げた直後に目の前に落ちた斬撃が爆発するが、翼でその余波を受ける事で浮上。ブレスが着地したバルカンに直撃するも、彼は怯みもせずに突っ込んでくる。
怒号を上げながら、倒れ込むのではないかと思ってしまう程まで前のめりに猛進するバルカンに、ゴア・マガラもまた翼を勢いよく羽ばたかせて突っ込む。
紅と青黒の奔流が激突する―――その瞬間。
「「ッ!!」」
両者の間に、緋色の稲妻が落ちた。
地面へと落ち、流れる緋色の電流が両者の動きを彼らの意思に関係なく停止させると同時、落雷が起こった場所から一人の女性が立ち上がった。
「君達、私闘はそこまでッ! 今は世界の存亡を賭けた戦いの―――」
言葉を掻き消す、轟音。
自分達の戦いに介入してくる存在の全てを許さぬ者達による攻撃が、乱入者を呑み込んだのだ。
片や、真体ではなくとも“禁忌”の一角を担うサーヴァント。片や、凶気と凶光により暴走した混沌の竜。
並みのサーヴァントであれば、片方の攻撃でも消滅は免れられない程の威力を左右から同時に叩き込まれた女性を無視し、両者は中断された戦闘を再開しようとする。
―――だが。
「そう。それでも君達は、自分達の戦いを優先するんだね。それだったらッ!」
爆炎の奥から飛んできた緋雷が、両者を吹き飛ばした。
共に武器や爪で吹き飛ばされた体を止めたバルカンとゴア・マガラが、今度こそ乱入者を排除すべく同時に動き出す。
しかし次の瞬間、真横から飛び込んできた巨影がゴア・マガラを突き飛ばした。
[カリアッ! 貴女の相手は
「余所見してンじゃねェぞッ!」
「君は、私達が助けるッ!」
「キシャハハハハハハッ!」
魔犬バーゲスト、バーヴァン・シー、メリュジーヌ―――新たに加わった邪魔者達に、ゴア・マガラが飛び掛かる。
再び始まった彼女達の戦いを横目に、ルーツは目の前で犬歯を剝き出しにして唸るバルカンに構えを取る。
「ここがシュレイド異聞帯で、今みたいな状況じゃなかったら許したけど、今回はそうもいかない。だから……少し手荒に行くよ?」
「ウラァッ!!」
一歩先に踏み込んだバルカンの大剣による攻撃を軽く跳躍するだけで回避し、続いて爪先でブレードを叩くようにして跳ねる。
軽やかにバルカンの頭上を飛び越えたルーツは、振り向き様に彼の背中へ回し蹴りを叩き込む。権能に護られているため多少軽減されているものの、それでも緋雷を纏った一撃は彼を僅かに怯ませ、ルーツに次の行動に移る隙を生み出す。
背後にいるルーツを吹き飛ばそうとしたのか、全身から大熱波を予兆である灼熱のオーラを滾らせ始めたバルカンの脳天にチョップ。的確に脳を揺さぶられながらもバルカンは大熱波を放出しようとするが、背中に押し当てられた拳から放たれた発勁が内臓に重く響き、遂に大熱波の放出を阻止された。
大熱波を阻止されたのなら、と一旦ルーツから飛び退き体を反転させ、向き合う形になると同時に地面を蹴って急接近。首を絞め上げようと伸ばされたバルカンの左手を、しかしルーツは手首を掴み上げる事で止め、握り拳を鳩尾目掛け突き出す。
捻じり込むように鳩尾を抉った拳に開かれた口から血反吐が吐き出され、前へ突き出る形となった顎を今度はアッパーが捉え、顔が無理矢理上を向く。
鳩尾に続いて顎を殴られたバルカンの体から本人の意思とは関係なく力が抜け、その隙を突いて手首を握る腕を引く。
大剣を含めればかなりの重量になるであろうバルカンを片手で軽々と振り回したルーツが、五回に渡って彼を地面に叩きつけた後に投げ飛ばす。
投げ飛ばされたバルカンは脳を揺さぶられる不快感に呻き声を漏らしながらも態勢を立て直すが、直後に大剣を両手で支えるように構える。
目の前に、緋雷の拳を突き出そうとしているルーツが立っていたからだ。
ガァアアンッッッ!!! と、およそ殴打で起こったものとは思えない音と共にバルカンが大剣ごと殴り飛ばされ、地面を跳ねていく。右手に握った大剣を地面に突き立て停止しようとするも、柄を握っていた右手の手首を緋雷で攻撃され落としてしまう。
無手となってしまった次の瞬間には、再びルーツは肉薄していて。
「フンッ!」
振り下ろされた拳骨が脳天に叩き込まれ、首から下が地面に陥没した。
緋色の電流を纏った拳による一撃によって脳を揺さぶられたバルカンが頭を振って思考を整えると、それに伴って彼方に吹っ飛んでいた理性が戻ってくる。
「ね、姉ちゃん……」
「今は彼女と戦っている場合じゃないでしょう? 今の貴方にこう言うのはあれだろうけれど、少しは我を抑えなさい。いいわね?」
「……すまねェ」
そこにあるのは少女然としたものではなく、数多のドラゴンとワイバーンの母としての側面を微かに出した表情。少しだけ厳しい顔つきでこちらを見下ろす彼女に、バルカンは理性の光を取り戻した瞳を伏せた。
「貴方達の決着は
ルーツとバルカンが戦っている間に離れていったのか、遠くで
「いい加減目ェ覚ませこの馬鹿ッ!
「キシャハハハハハハッ!」
魔犬バーゲストから飛び降り、フェイルノートを奏でるバーヴァン・シー。彼女の攻撃を受けながらも突進するゴア・マガラの足元に青い流星が奔ったかと思えばバランスを崩されて転倒し、魔犬バーゲストに抑え付けられる。即座に自身を中心にウィルスを爆発させて拘束から逃れたゴア・マガラは、己を取り囲む三騎の妖精騎士達に唸り声を上げた。
彼女達の姿に、流石に理性を失い暴れていたのはまずかったと反省したバルカンだったが、そんな彼にルーツは優しく手を差し伸べた。
「反省する気持ちがあるのなら、挽回しなきゃね。抜けた分はしっかり取り戻してもらうよ?」
「あァ……当然だオラァッ!!」
轟ッ! と。周囲に放出はせず、自身の体内の温度を急上昇。それによって自身の首から下を包む大地を融解させたバルカンはドロドロになった地面に少し苦労しながらも這い上がり、ミラバルカンシアを拾い上げる。
振り向くと同時、肩に大剣を担いだバルカンは、魔力を今の状態で高められる段階まで高め始める。
「みんな離れてッ! バルカンの攻撃が来るよッ!」
ルーツの叫びに、触手の相手をしていた者達が即座に離脱していく。
これでバルカンも、遠慮なく攻撃に移行できる。
「私からも魔力をあげる。バルカン、決めちゃってッ!」
「応ッ! 触手一本―――獲ったァッッ!!」
臨界まで高まった魔力が、ルーツによる供給を受けて上限を超える。それによって魔力が許容量を超えるが、その全てを一滴も残さずに注ぎ込んだ大剣を、力のままに振るう。
魔力の高まりを感じ取っていた影の竜達がまるで盾になるかのように立ち塞がるものの、臨界を超える魔力を注がれた斬撃は彼らを一欠片も残さず蒸発させても勢いを落とす事を知らない。
そして、勢いを落とさず突き進んだ炎撃は、その身を保護していた障壁ごと触手を両断し、凄まじい量の鮮血を噴き上げさせた。
「ガギャァアアアアアアッッッ!!!」
一本目のみならず二本目さえも斬り落とされ、最後の触手が苦痛と憤怒の入り混じった絶叫を轟かせた。
同時、最後の触手は斬り落とされた別の触手から噴き出る獣神の呪詛を己に回して自身を強化させ、ルーツ達に今まで以上の殺気を向けた。
「反撃開始ッ! みんな、あれを斬ればこっちの勝ちだよッ!」
一本目はグロスターでモルガンに。
二本目はたった今バルカンに。
強化されたと言えど、これで残る触手は一本のみ。
その最後の一本を断ち切るべく、ルーツ達は一気に攻勢に出るのだった。
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「う……っ! このッ!」
展開した魔力障壁に重く圧し掛かる重圧に歯を食い縛りながら、魔力で象った槍を射出。
今まさに自分を圧し潰そうとした影の竜が槍によって頭部を貫かれ、物言わぬ骸と化して消えていく。だが次の瞬間にはまた新たな竜が攻撃を仕掛けてきており、咄嗟に転移してカウンターを叩き込む。
だが苦し紛れに繰り出したカウンターは充分な威力を発揮できずに竜を怯ませるだけに留まり、絶命までには至らない。
背後から小さな地響き。そこから注がれる殺意に迎撃魔術を行使しようとするが、それより先に振るわれた尻尾が彼女―――モルガンの体を捉えた。
「~~~ッ!!」
バキバキと、尻尾の一撃を受けた箇所を中心に嫌な音が響き、思わず苦悶の声を上げかけた口を、唇を噛み締めて無理矢理閉じる。
妖精國の女王である自身が、痛みに叫ぶなどあってはならない―――その強固なプライドによってなんとか無様を晒す事はなかったものの、体内から全身に伝播していく痛みには顔を顰めざるを得ない。
「グォオオオォォッッッ!!」
地面を転がっていくモルガンに追撃しようとした竜達が、炎と氷のブレスに巻き込まれ塵と化す。
彼女を護るように降り立ったディスフィロアが、盟友を傷付けられた憤怒に染まった咆哮を轟かせれば、彼を中心に五つもの炎氷の竜巻が発生。殺到する影の竜達はその竜巻に呑まれるか、呑まれる前に滞空して牽制される。
「ディスフィロア……。ありがとうございます……」
友に追い打ちはかけさせないとばかりに鼻を鳴らす盟友に感謝し、モルガンは自分の状態を確認する。
先程の尻尾の攻撃。それによって肋骨が数本折れ、内臓もズタズタになっているが、治癒魔術を行使すればなんとか修復できた。ついでに痛み止めの魔術も使用するが、殺し切れずに残った鈍い痛みに顔を顰める。
思いの他、強化された影の竜達は強力だった。元々あった脆さを凶気化でカバーされてしまった上、本物と同等の攻撃力を上げられてしまった。結果として凶気を施される前では倒せた威力も、今では怯ませる程度に収まってしまっている。
それに、疑似心臓の事もある。楽園の妖精であると同時、神域の魔術師でもあるモルガンの魔力によって作られたそれは今も尚彼女の命を長らえさせているものの、長時間に及ぶ戦闘によって延命する為の魔力が削られているのが嫌でもわかる。
(万全な状態であれば、あの程度の者達など……ッ!)
満足に戦えない不自由さに歯噛みするが、ないものねだりは出来ない。それにこの程度の窮地は、自分がまだ救世主と呼ばれていた時代にも何度かあった。
負けるわけにはいかない。絶対に負けてはいけない。
だが。
「グギャァアアアアアアアアッッッ!!!」
その決意を嘲笑うかのように、凶気の龍は咆哮を轟かせる。
マキリ・ノワの足元から突き出てきた禍々しいオーラを纏った結晶が妖しく輝けば、影の竜達にさらなる強化が施される。
再びの咆哮。
放て―――間違いなくそう命令したであろうマキリ・ノワと共に、影の竜達が一斉にブレスを発射。
四方八方から迫る、暗黒と凶気のブレス。それにモルガン達が身構えた、その時。
「―――『
彼女達を護るように出現した白亜の城が、周囲から迫るブレスを防ぎ切った。
今のはまさか、とモルガンが考えていると、続けて飛んできた蒼い光弾がマキリ・ノワ達に直撃し後退させる。
「ナイスだよ、みんなッ!」
「モルガンさんッ!」
橙色の髪の毛の少女を後方に据えた者達の内の一人が、モルガンとディスフィロアを護るべく盾を構える。その少女の背中を、モルガンはずっと昔から知っていた。
「マシュ……」
「遅れてしまい申し訳ありません。マシュ・キリエライト、マスター共々、楽園より帰還しましたッ!」
「マシュッ! みんなッ! モルガン達を護るよッ!」
「はいッ! これより、マキリ・ノワ及び“黒蝕竜”群討伐戦を開始しますッ!」
藤丸立香。マシュ・キリエライト。アルトリア・キャスター。
楽園から帰還し、モルガン達が展開した炎の障壁の内側へと転移した彼女達は、マキリ・ノワ達に戦いを挑むのだった。
・『バルカンの権能』
……絶対に逃れられない運命という名の常識から脱却により、世界における透明人間となる。常識に縛られた者は彼を傷付ける事は出来ないが、生まれながらに常識に縛られない存在か、彼の権能に真っ向から殴り合える膂力やスキルの持ち主であればダメージを与えられる。カリアは前者で、ルーツやボレアスの場合は後者。
今回の話でバルカンの能力の一つが判明したため、現段階における“禁忌”達の権能/能力をまとめておきます。
・“祖龍”ミラルーツ
……あらゆるモノを裁き、消去する剪定の緋雷(現在は弱体化のため、本来の性能を発揮する事は難しい)
生命創造(全ての龍/竜種の母)
全能の瞳(全ての千里眼/魔眼のオリジナル。現在は失われている)
???(汎人類史由来の権能。異聞帯ルーツ吸収により強化)
・“黒龍”ミラボレアス
……???(汎人類史由来の権能だが、本編未使用)
???(汎人類史由来の能力だが、本編未使用)
空間接続による転移(異聞帯ボレアスから吸収)
???(異聞帯ボレアスから吸収)
・“紅龍”ミラバルカン
……
???(汎人類史由来の権能だが、本編未使用)
???(異聞帯バルカンから吸収)
・“煉黒龍”グラン・ミラオス
……厄海(汎人類史由来の権能。異聞帯ミラオス吸収により強化)
???(汎人類史由来の能力だが本編未使用。伝承防御)
・“煌黒龍”アルバトリオン
……神域(汎人類史由来の権能。異聞帯アルバ吸収により強化/制御可能に)
???(異聞帯アルバから吸収)
他と比べてアルバの権能/能力が少ないですが、彼女の場合この二つで他の“禁忌”と並び立てます。『???』はミクトランやシュレイド異聞帯で判明しますので、楽しみしていただけると幸いですッ!
ちなみにこの“禁忌”の中で死後にも現世に介入し、自分を狩ったハンターに懸想した者達を殺し続けるキャラがいますが、そこに関して権能や能力は一切関わっていません。偏に愛の為せる技です。素晴らしいですね。詳細はあるハンターの絆礼装説明欄にて。
それではまた次回ッ!