【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 昨晩から始まったクリスマスイベントにて、アビーちゃんがサンタになった事に驚いたseven774です。
 毎年そうですが、fgoはサーヴァントの数が多いので誰がサンタになるのか楽しみで仕方ありませんね。マルタさんやカルナがサンタになるとは思いもしませんでしたし……。
 そして今回のイベントで実装された新規サーヴァントのロウヒ、全く聞いた事がない名前だったため調べてみたのですが、とんでもないキャラクターでしたね……。義息子が天の覆いを打ち出し、魔法の腕も優れているイルマリネンという事もそうですが、彼女自身太陽と月を捕らえて世界を暗闇に閉ざしたりする事ができるとは……。イルマリネンは鍛冶屋でもあるので、鍛冶という意味では前回のイベントに登場したダイダロスに類似していますね(彼はどちらかというと大工で、鍛冶はヘファイストスですが)。いつかイルマリネンも実装されてくれると嬉しいですね。出会った場合因縁があるので大変な事になるでしょうが……。
 イベントは開始早々半日以上に及ぶメンテナンスに見舞われましたが、無事治ったようでなによりです。色々と修正されたのでしょうが、その一つは絶対にあの方のORT討伐報告ですよねぇ……。

 今回は主に立香達とモルガン視点となります。
 それではどうぞッ!



決意を抱いて

 

「―――ッ!」

「っ、貴方も気付きましたか」

 

 

 異様な現象を起こす暗雲に覆われた空を見上げた相棒にモルガンが険しい顔をすれば、ディスフィロアは視線だけを彼女に向けて肯定の唸り声を漏らした。

 

 

「マシュ、あれは……なに……?」

「た、確かこの現象は……」

「―――アルトゥーラが羽化しました」

 

 

 頭上で起こる不気味な現象を前に動揺している立香とマシュだったが、一切の迷いなくアルトリアが断言した事で、その視線を彼女に向けた。

 

 

「アルトゥーラの羽化……。っ、そうですッ! “破翼龍”は成体になると、幼体とは異なり青い光を操るようになると叙事詩に記されていましたッ! 羽化したアルトゥーラは幼体の時よりも遥かに強大になっていると思われますッ!」

「それなら早く援護に向かわないと……ッ!」

 

 

 そこでかつて読んだ叙事詩の記憶を思い出したマシュにその危険性を訴えかけられた立香が彼女達と共に走り出し、モルガンもまたそれに続こうとするも、途中で崩れ落ちるように倒れてしまった。

 

 

「陛下ッ!?」

 

 

 背後で倒れているモルガンに気付いたアルトリアが咄嗟に駆け寄り「大丈夫ですか……?」と手を差し伸べるが、彼女はそれに対し睨みで返した。

 

 

「……貴女の助けはいりません。自分で立てます」

「そ、そうですか……」

(……ままならないものですね。汎人類史の感覚が、今でも私を縛っている……)

 

 

 かつて、まだ救世主と名乗ってもいなかった頃の、大昔。

 この世界における楽園の妖精としてこの島に流れ着いた自分に遥かな未来から送り込まれた、汎人類史のモルガンの記憶と知識。

 

 自分勝手極まる妖精達のせいで國として成立する事も、文明が興る事もなかったこの異聞帯であれば、自分の望むブリテンを興せるかもしれない―――そんな彼女によって突然自分に押し付けられた記憶と知識は、いつしか感覚さえも蝕んでいた。

 

 モルガン(トネリコ)にとって、アルトリア・キャスターという人物は自身に次ぐ新たな楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)であると同時、ここまで存続させてきた妖精國ブリテンの客人だった。巡礼の鐘を鳴らした事で敵と判断こそしたが、それさえなければ一人の客人として歓迎した。彼女はアルトリアに対して、敵意も悪意も抱いていなかったのだ。

 

 だが、汎人類史のモルガンは違う。

 ブリテンの後継者として生を受けた彼女だったが、その地位を奪うように王座に就いた騎士王に憎悪の炎を燃やし、彼女を不滅たらしめるエクスカリバーの鞘(アヴァロン)を盗み出し、ブリテンの崩壊を齎した。

 騎士王自身に咎はないと心の底では理解していながらも、『彼女を許してしまえば、自分は無価値となってしまう』という劣等感が変異した憎悪は、今でもモルガン(トネリコ)の心の奥底に刻み付けられている。

 

 だからこそ、モルガン(トネリコ)はアルトリア・キャスターの純粋な助け起こそうとする意思を拒否してしまった事に、若干の申し訳なさを抱いていた。

 

 

(……いえ、今はそれよりも)

 

 

 自分のアルトリア・キャスターに対する感情など、今はどうでもいい。

 今気にすべき事は、先程転んでしまった自分の体についてだ。

 

 意識を胸元の疑似心臓に向ければ、精製した時と比べて六割ほど、それを維持する魔力が消費されているのがわかった。思いの外、マキリ・ノワとの戦闘で消耗してしまったようだ。多少の魔力は空中に漂っているものを取り込めば補えるが、モルガンの扱う魔術はどれも彼女の保有する膨大な魔力を活用した高火力かつ高燃費のものであり、とてもそれだけで補えるものではない。

 もちろん魔術の行使で消費する魔力量を抑える方法は知っているが、それだと羽化したアルトゥーラへ満足な打撃を与えられるとは思えない。

 

 そうなると、今自身が取れる奴への対抗手段は―――

 

 

(キャメロットにある、ロンゴミニアド……)

 

 

 今も尚キャメロット上空に浮遊している、ロンゴミニアドの砲台。あれならば、アルトゥーラへ大打撃を与えられるはずだ。

 いつしか訪れる崩落の為に今まで建造を続けてきたあの砲台が、アルトゥーラや奴の同胞達に破壊されているといった情報は入っていない。ロンゴミニアドを建造した自分だからこそ、それがわかる。

 奴らも迂闊に手を出せないのだろう。一基一基が保有する魔力量を前にすれば、下手に手を出せば逆に自分達が危険だと判断したはずだ。

 

 それに、ロンゴミニアドは攻撃手段以外にも使える。

 

 思い起こされるのは、まだ幼体だったアルトゥーラにキャメロットを襲撃された時。奴の一撃を前に瀕死の重傷を負ってしまったバーヴァン・シーを、ロンゴミニアドを一基破壊する事で治療した記憶。

 あれを自身の疑似心臓に行えば、また自分は十全な状態で戦闘できる。数基破壊すれば本物の心臓を復活させる事も夢じゃない。

 

 

「藤丸立香」

「は、はいッ!」

「キャメロットへ向かいます。貴女方もついてきなさい。頼みがあります」

「頼み……はい、わかりました」

「……私がなにをしようとするのか、聞かないのですか?」

 

 

 モルガンが自分達を伴いなにを目的にしてキャメロットに向かうのかは、立香とて気になるはず。それはこちらを見つめる瞳を見ればわかる事だ。

 けれど、敢えてそれを口にせずに了承した彼女に、何気なしに尋ねてみる。

 

 そして、返ってきた答えは。

 

 

「だって、信じてますから」

 

 

 モルガンからすれば信じ難い、信頼の言葉だった。

 

 

「……なぜです? こちらから尋ねこそしましたが、本来我らは敵同士。奴らの乱入さえなければ、この國を巡って争う関係。貴女方カルデアにとって、私は汎人類史を破壊する大敵なのですよ?」

「確かに、その通りです。でも、たとえそうであっても、今は味方です。だから……信じます」

「私がそちらに参戦する前に、死ぬかもしれませんよ?」

「死ぬとか死なないとか、関係ありません。今は、そう……戦う時です。死ぬ事についてなんて、考えていられません」

 

 

 決意と闘志を漲らせた瞳。只人が見れば気圧され、英傑であればその意志を讃えるような炎を宿した瞳。

 

 だが―――モルガンに宿る妖精の眼は、翳っていながらも彼女の本心を映し出していた。

 

 戦いは怖い。傷付くのは怖い。死ぬのは怖い。

 怖くて、怖くて、仕方がない。

 

 これまで六つの異聞帯を破壊してきたというのに、その心にあったのは、戦いへの忌避感と、死への恐怖心。それはこれまで潜り抜けてきたであろう戦いの中で、常に彼女が抱いてきたものなのだろう。

 

 モルガンは、その感情を嗤わない。なにせ、かつての彼女もまた、同じ気持ちだったのだから。

 この世界を正す為に楽園より派遣され、汎人類史の自分から知恵を与えられ、救世主への道を歩み出した。その時の判断を間違いだったとは思っていない。後悔してもいない。

 

 けれど、心のどこかで思っていた。『勝手に押し付けないでほしい』と。

 “雨の氏族”に愛される日々の中で突然降ってきた膨大な知識と欲望を前に、当時の自分はそう考えていた。

 

 モルガンの野望なんて知らない。自分は彼女(あなた)ではないのだから。

 ……けれど、やるしかなかった。そうしなければ、自分を育て、匿ってくれた“雨の氏族”の愛した、この世界を護れなかったから。

 

 傷付くのは怖かった。戦うのは恐ろしかった。絆を結んだ友を喪うのは、恐ろしかった。

 

 だが、歩みを止める事は許されない。止まったら最後、背後から追いかけてくる死の牙に噛み砕かれていたから。

 

 立ち止まる事は許されず、恐れを抱きながら、前へと進む。それがどれだけ過酷な旅路かを知っているモルガンは、目の前に立つ少女に密かな親近感を抱いた。

 

 

「……貴女の事、少し理解できた気がします」

「え?」

 

 

 突然そんな事を言われて首を傾げる立香に「こちらの話です」とだけ告げ、モルガンは自分達が乗りやすいように屈んだディスフィロアの背に乗る。

 

 

「気を付けなさい。羽化した“破翼龍”がいる方角からは、獣神ケルヌンノスの気配を強く感じます。アルトリア、貴様も理解しているはずだ」

「ケルヌンノスの呪詛(チカラ)を……取り込んだのですね」

 

 

 認めたくない。けれど認めるしかない―――目を伏せた彼女に頷き、モルガンは続ける。

 

 

「一万二千年もの間蓄積された神の呪い。それを取り込んだアルトゥーラは、そちらの歴史に語られる個体を遥かに上回るでしょう。恐らく、先程討伐したマキリ・ノワよりも強力な個体ですが……戦えますか?」

「出来ます」

 

 

 モルガンの言葉に真っ先に返したのは、立香だった。

 

 

「私は……私達は、ずっとそんな相手と戦ってきました。今回もそれと同じように、乗り越えるだけです」

 

 

 自身よりも遥かに強大な敵との戦いなど、立香―――カルデアにとっては当たり前の事だった。

 平均的な魔術師のレベルにも満たない未熟な魔術。カルデアの支援なしにはまともに現界を維持できないサーヴァント達。持ちうる手札全てを使い切って、それでも足りない分は己の命さえベットして、乗り越えてきた。

 

 七つの特異点を攻略し、人理を焼き尽くした魔神の王を打倒し、彼の下から離れた四体の魔神柱が起こした事件を解決した。

 白紙化された地表を飛び交い、六つの異聞帯を切除してきた。

 

 ここまでの旅路の中で敵対した者達は皆、強敵だった。一手読み違えれば、一歩間違えれば、それだけで全てが終わる戦いだった。

 

 だが、その全てを乗り越えた。乗り越えてきたからこそ―――彼女の決意はより確固たるものとなる。

 

 

「柄にもない心配をしましたが……無用のようでしたね」

 

 

 かつての自分、それこそ、バーヴァン・シーの頼みを聞いてカリアを召喚する前の自分であれば、決して抱かなかったであろう『心配』という名の感情。

 いつしか氷のように凍てついた心を長い年月の末に溶かされてきた彼女にとって、今の目の前で決意の籠った瞳でこちらを見上げる立香の存在は、酷く眩しく見えた。

 

 汎人類史のモルガンより知識と共に齎された、人間への不信感と嫌悪さえも、立香を前にすると霞んでしまう。

 

 

「さぁ、乗りなさい。行きますよ」

 

 

 モルガンの言葉に頷き、 ディスフィロアの背中に乗る立香達。初めて乗る古龍種の背中に思わず「おぉ……凄い……」と立香が言葉を漏らしまうが、ディスフィロアが動き出し始めたのを感じ取ったマシュが「舌を噛みますよ先輩」と口を閉じさせる。

 

 モルガン、立香、マシュ、アルトリア・キャスターの順番に背に乗せたディスフィロアが曲げていた四肢を伸ばし、翼を広げる。

 周囲の木々を大きく揺るがして飛び立ったディスフィロアがキャメロットへ向かう中、立香はマシュに訊ねる。

 

 

「マシュ。私、アルトゥーラについては本当に軽く知ってる程度なんだ。よければ詳しく教えてくれるかな」

「あ、私もお願いします。幼体についてはこれまでの戦いや歴史で学びましたが、成体については……」

「もちろんです」

 

 

 頷いたマシュが、立香とアルトリアに説明し始める。

 

 ―――“破翼龍”アルトゥーラ。

 汎人類史では叙事詩“モンスターハンター”の外伝、“モンスターハンターストーリーズ”の二章に登場した古龍種。天まで届くのではないかという巨大な触手を有する幼体の姿で主人公達の前に現れたその龍は、大陸中で“火竜”リオレウスを捕食し続けていた。

 それが世界を脅かす赤い光の根源だと突き止めた主人公達の追跡の末、ある禁足地の祭壇にて成体へと変貌。自らの空けた穴から出した触手で暴れていた幼体と異なり、六枚の翼で空を舞い五つの属性を操り主人公達を苦しめるも、最期は仲間達との絆で限界を超えた力を発揮した主人公達によって討伐されたと語られている。

 

 ここで注目すべき要素は、成体となったアルトゥーラは火・水・雷・氷・龍の五属性を操るという要素である。一つの属性も使えない状態である幼体段階であっても尋常でない被害を周囲に齎すアルトゥーラが、成体になる事で五つもの属性を行使できるようになるのだ。基本モンスターは単一の属性を用いる事が多く、古龍種の大半もそれに該当するのだが、複数属性……それも五つの属性を使う存在は“禁忌”の一角である“煌黒龍”アルバトリオンを除いて他にいない。

 そこに追加で入ってくるのが、幼体時点では己を護る防壁にもなる凶光のエネルギーが、成体になると攻撃にも転用される事である。それは凶光の壁で叩き潰そうとしてくる触手と違い、青い粒子のように周囲を浮遊する凶光のエネルギーを爆発させるなどといった事が可能となるのだ。

 

 本体であるアルトゥーラが元々強力である事に加え、その身を護る盾にして敵対者を打ち滅ぼす矛である凶光。世界規模で影響を及ぼせる権能にも等しき能力を持つ、“禁忌”にも匹敵するであろうその龍を外伝の主人公達が討伐できたのは奇跡にも等しく、魔術世界では『抑止力が味方したのでは?』とまで語られる程だ。

 

 

「……待って? 仮に抑止力が助力したのを事実として、それがなければ主人公達は負けてたかもしれないって事……?」

「その可能性は十分にあり得るかと。成体時には世界規模で凶光の影響が確認されていたという記述もある事から、先程伝えたように古龍種としての格は“禁忌”にも匹敵すると思われますので、それに主人公達が勝利できたのは、本当に奇跡と称されるものでしょう」

 

 

 仮に主人公に協力したハンターが、カルデアが召喚しているストレオやラメール、バーヴァン・シーが召喚したカリアの三騎と同じく最高峰の狩人の証である『モンスターハンター』を有していたならば話は変わっていただろう。だが、その男―――カイルは『モンスターハンター』の称号を持ってはいなかった。そんな彼が主人公達と共にアルトゥーラを討伐できたのはまさしく奇跡に等しき話である。

 この戦いが始まる前にアンナから聞かされた、『この國に顕れたアルトゥーラは汎人類史とは異なるifの歴史から召喚されたかもしれない』という言葉が一気に真実味を帯びてきたが―――

 

 

「こちらに出現したアルトゥーラは、汎人類史(そちら)の個体と異なりケルヌンノスの力を取り込んでいる事、忘れてはいませんね?」

「当然です。それも加味して戦略を考えないと……」

 

 

 今回相手にするアルトゥーラは汎人類史の個体以上に強力だ。戦闘の規模もこれまでとは比べ物にならないものとなるだろう。

 どのように戦うか、どんなサーヴァントを召喚するか―――思考を回転させ始めた、その時だった。

 

 

 ―――狼にご用心だぜ、赤ずきん。いつだって狼は、テメェを狙ってんだぜ?

 

 

「―――ッッ!?」

 

 

 背筋に走る怖気。同時、なにかに気付いたディスフィロアが勢いよく翼を羽ばたかせて左に逸れると、地上から飛んできた一筋の光線が通り過ぎていった。

 

 

「なにッ!?」

「地上からの攻撃ですッ! いったい誰が……」

「っ、奴は……ッ!!」

 

 

 突然の奇襲に瞬時に警戒心を強めた立香達を他所に、先程の攻撃が飛んできた場所を見下ろしたモルガンが怒りの形相を浮かべる。彼女の視線の先を見たマシュは、微かに見えるその姿にハッと目を見開き、立香に叫ぶ。

 

 

「先輩ッ! ベリル・ガットですッ!」

「ベリル……ッ!? そんな、じゃあペペロンチーノさん達は―――うわっ!?」

 

 

 

 立香の言葉を遮って動き出したディスフィロアが、真っ直ぐ地上にいる敵―――ベリルの下へ向かっていく。ディスフィロアにそう指示したのは、モルガンだ。

 

 

「ベリル・ガット……ッ! よくも我が娘をッ!!」

 

 

 その瞳に殺意を宿しているモルガンだが、そんな彼女に「待ってくださいッ!」とマシュが制止をかける。

 かつて旅路を共にした少女の言葉に視線のみ寄こしたモルガンに、マシュは極めて冷静に言葉を放った。

 

 

「今の貴女はまだ十全な状態とは言えませんッ! お気持ちはわかりますが、ここは私達にッ!」

「ですが、奴はバーヴァン・シーを……ッ!」

「優先順位を間違えないでくださいッ!」

「―――っ」

 

 

 語気を強めての言葉にモルガンの体が一瞬強張り、数秒の沈黙の末、「……わかりました」と返す。

 

 

「……ですが、絶対に打倒してください。奴は我が娘を騙し、魂を腐らせた下手人……。正直、今すぐにでもこの手で殺したいところですが……貴女方に任せます」

「……ありがとうございます、陛下」

「アルトリアはどうする?」

「私は陛下と共に行きます。楽園より得た力は、キャメロットでこそ振るわれるべきものですから。……絶対に、また会おうね」

「もちろん。―――行こう、マシュッ!」

「はいッ!」

 

 

 モルガンとアルトリアを乗せたディスフィロアが去り際にベリルへブレスを放ったタイミングで、立香はマシュと共に飛び降りる。

 地面に着地すると同時に受け身を取って衝撃を逃した立香と、彼女の前に縦を携え降り立ったマシュの前で、ブレスを青光の防壁で防いだベリルが口角を持ち上げた。

 

 

「よぉ、マシュ。ペペロンチーノ達を撒いたすぐ後でお前に会うなんて、運命的じゃないか」

(撒いた……よかった、殺されてはいないんだ……)

 

 

 目の前に立つベリルの言葉に一先ず安堵するも警戒を怠らないでいると、彼の視線と立香の視線が交わった。

 

 

「あぁ……なんだ? テメェもいんのかよ。いい加減、オレとマシュの逢瀬の邪魔をしないでくれよ」

「邪魔してるのはそっち。貴方なんかにマシュは渡さない。マシュは、私の後輩だ」

 

 

 敵意を漲らせた視線を受けていながらも、ベリルはどこ吹く風とクツクツと嗤う。

 

 

「『渡さない』? 違う、渡す渡さないの話じゃねェ。テメェがその気なら、力尽くで奪ってやるだけだ。マシュとの愛の語らいは、その後だ」

 

 

 足元から噴き上がった悍ましい魔力の渦が全身を呑み込み、現れたるは漆黒の異形。

 狼と獅子を無理矢理掛け合わせて人型にしたような姿となったベリルは、マシュと共に身構える立香を見据える。

 

 

「だが、これでもオレはお前を警戒してるんだぜ? 藤丸立香。曲がりなりにも一度は世界を救って、六つの異聞帯を攻略してきたからな」

 

 

 ベリル・ガットは狡猾な人間だ。殺しに生きてきた人生の中で培われてきた観察眼が、『藤丸立香は侮れない』と警鐘を鳴らしている事を無視しない。

 

 

「だから、オレも全力を出させてもらう(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

 故に、油断はしない。

 全力を以て、藤丸立香を殺し、マシュ・キリエライトを己のものとする。

 

 

「聳え、拡がれ―――」

 

 

 その為に、ベリルは己の奥義(・ ・ ・ ・)を発動する。

 

 

「―――猟奇固有結界・レッドフード

 

 

 今、殺戮の劇場が始まる―――。

 

 




 
・『モルガンから立香に対する評価』
 ……自分のように生まれながらの使命を帯びている存在ではないのに、ここまで戦い生き延びてきた事は素直に称賛している。同時に、どのような状況でも諦めない不屈の闘志を持ち、たとえ敵であった者であっても味方となれば信じる彼女の心の在り様を眩しく感じている。後にカルデアに召喚されると妻認定する。

・『カイル』
 ……モンスターハンターストーリーズ2に登場する弓使いのハンター。こちらの世界では主人公のライダーと共にアルトゥーラを討伐後、その活躍を正式にギルドに認められ『モンスターハンター』の称号を得た。

・『ベリル・ガット』
 ……マキリ・ノワ消滅により凶気の力を失うが、アルトゥーラが羽化した事でその要素を補って有り余る凶光の力によりペペロンチーノ達から逃れる。その後上空でディスフィロアに乗っているマシュを見つけ攻撃。己が修める技術の中でも最高のものである固有結界を発動し、立香を殺害し、マシュを手に入れようとする。


 レッドフードについては没設定であるため、完全に独自設定でいかせてもらいます。皆さんにも楽しんでいただけるようなものであってくれればいいのですが……期待してくれると嬉しいですッ!
 次回更新は26日ですが、その前日にクリスマスifストーリーを投稿しますッ! そちらも楽しんでいただければ幸いですッ!

 それではまた次回ッ!
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