ドーモ=ミナサン。
ロウヒのバレンタインで初っ端からlevan Polkkaが流れ始め、脳裏にネギを振り続けるロウヒの姿が浮かんだseven774です。
やはりXでも同じ意見が多かったのですが、あの曲が流れた瞬間同じ幻覚を見ていた以上、あの歌姫の存在は大きいですね……。
歌姫といえば、この作品を読んでくださっている方の中にプロセカの映画を観た方はいるんですかね? 私はもう毎週観に行っているので一週間に一回は夕食がポップコーンになっているのですが、この話を読んでいる方も同じなのですかねぇ?
今回は妖精騎士覚醒回です。
それではどうぞッ!
二千年続いてきた、モルガンによる恐怖政治。その象徴であった城の廊下を、一人の少女が走る。
城の外で起こっている二つの戦いによる衝撃が絶えず城を揺るがすが、彼女はその振動で足を止める事はなく、走り続ける。
「初めて来た時も思ってたけど、広すぎるしデカいッ! もっとコンパクトに出来なかったのかなぁッ!?」
絶対に落とさぬとばかりに選定の杖を握り締める彼女―――アルトリア・キャスターの口から、今自分がいるキャメロットと、これを建てたモルガンに対する悪態が吐き出される。
もちろん、アルトリアとて理解している。
國を治める立場上、その権威を表すものは必要不可欠。その為に城を建てるのはわかるし、それが巨大であればある程、城主が如何に強大で恐ろしい存在であるかを他者に知らしめられる事もわかっている。
けれど、そういった事実を飲み込んでも、やはりそこは田舎育ちのアルトリア。『広くてデカい』という感想が出てしまう。
「もうこのまま天井壊しまくって玉座の間まで行っちゃおうかな……。いいよねもう國滅茶苦茶になってるし、ここ戦場のど真ん中だしッ! だったら少し壊そうが―――」
『許すと思うか?』
「うわ、いきなり念話で話しかけるなァッ! ビックリするだろぉッ!」
空ではモルガン、地上ではアンナ達が戦っているのだから、どうせその中間地点にあるキャメロットも遠からず破壊されるだろうという考えの下行動を起こそうとしたアルトリアだったが、彼女の思考を盗聴していたモルガンに諫められ飛び上がった。
「いいじゃん別にッ! 少しでも早く到着する為なんだからッ!」
『貴様の杜撰な魔術では音が出るだろう。楽園で鍛えられた貴様の魔術は、今の私では少し抑えられそうにない。出来るだけ迅速に、隠密に行動しろ』
「……やっぱり、もう時間はない感じ?」
モルガンの言葉に眉を顰める。
階段を駆け上がりながらの問いかけに対し、しばしの沈黙の後モルガンの念話が届く。
『……正直に言ってしまえば、そうだ。だが、貴様が玉座に辿り着くまでの時間は稼げる。わかったらさっさと行け』
「……わかった」
自分とモルガンを繋ぐパスが途切れた後、アルトリアは彼女の言葉に押されるように速度を上げ、一気に階段を駆け上がっていく。
(……時間はない、か)
先程の自分の言葉を思い返す。
残された時間は少ない―――モルガンも答えていたが、これは自分にも該当する。
番人の■■■■■を打倒し、楽園に到達した自分は、そこで決戦兵装となる準備を終えた。今ここに自分はいるのは、己の命を賭して自分を鍛えてくれた、一人の男のお陰だった。
このまま玉座の間に足を踏み入れ、為すべき事を為せば、そこで今ある自分は終わる。アルトリア・キャスターという妖精はその時点で存在意義を失い、この世から消滅する。
(……あぁ、ホント。なんで私なんだろ)
今になって、弱気な自分が顔を出す。
元々、自分なんかにこの『使命』は重すぎると感じていた。巡礼の旅は長く辛いものだったし、その中で傷付いた事だって何度もあった。
何度も何度も、やめたいと思った。けれどその度に、周りの環境は膝を折る事を許さず、立ち上がらせてきた。
本当に嫌になる。全てを投げ出して逃げていれば、どれだけ楽になっただろうか。
……それでも。
(うん、でもやっぱり、楽しかったな)
最初は辛い事ばかりだった旅も、彼女と出会う事で変わった。
藤丸立香。こことは違う世界からやって来た、人間の魔術師。自分と同じように重い使命を背負っているはずなのに、それでも前に進み続ける少女。
いつしか彼女の存在はアルトリアにとって眩いものとなり、心も埋め尽されてしまった。瞼を閉じるだけで、彼女の笑顔が思い出せてしまう程に。
ただ辛いだけだった旅を変えてくれた彼女に対する感謝が、心の奥から湧き上がってくる。それだけで自分は、前を進む理由を得た気がした。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
そして、遂に最後の階段を上り終えたアルトリアは、激しく鼓動する心臓と乱れた呼吸を落ち着かせるべく何度も息を吸い込んでは吐き出す。
額に浮かぶ汗を拭い、見上げるは自分の何倍もの高さを誇る扉。やっぱりここもデカいな、と改めて再認識しながら扉を押し開けると―――。
「……なに、これ……」
そこに広がるのは、虚無。扉の奥に広がるはずの玉座の間はどこにもなく、ただただ真っ暗な空間だけが、扉の奥に続いていた。
あまりにも予想外な光景に面食らうものの、すぐに気を取り直してアルトリアは注意深く目の前の空間を観察し始める。
(……これ、結界だ。やっぱり向こうも対策してきてる)
目の前に広がる虚無が結界であると確信し、次に「ではこれをどうするか」と思考を切り替える。
僅かにだが結界の奥に強い魔力を感じる事から、モルガンが予め玉座の間に細工を施していたのだろう。そこから推察するに、恐らく結界は玉座の間を覆う形で展開されており、内部の部屋は無事だと考えられる。
そうとわかれば後はこれを解除ないし破壊すればいいのだが……。
(バレるよね、絶対……)
これを干渉してしまえば、自分がここにいる事が相手に気付かれる。結界の干渉に時間をかける以上、そこを狙い撃ちされる可能性も高い。
―――けれど。
「やるしかないよね……ッ!」
自分が攻撃される事に恐怖している暇など、今はない。恐怖に頭を悩ませる時間があるのなら、その時間すらこの結界の解析に費やすべきだ。
とある妖精から言われた、ある言葉が蘇る。
“魔猪”の氏族。後先考えず突っ込んでいっていた自分を指したその言葉には当時こそ怒りの感情を抱いたものの、今の自分にはその言葉が相応しいだろう。
「狙われたって構うもんか。狙うなら狙えコノヤローッ!!」
ウガァアアアアッ! と両腕を振り上げ、右手に握る杖を床に突き立てる。
―――
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「…………ぅ、ぐ……」
深い暗闇の底に沈んでいた意識が浮上し、重い目蓋を持ち上げる。
開いた視界に映り込んだのは、相も変わらずの暗雲。何百年と見続けてきた星空を閉ざしてしまった雲に微かな不快感を抱きながら、メリュジーヌはゆっくりと仰向けになっていた体を起き上がらせた。
(ここは……ソールズベリー……?)
体の節々が激痛に悲鳴を上げる中周囲の確認をし始めると、そこがキャメロットではなく、キャメロットから遠く離れた地にあるソールズベリーだという事に気付く。
……酷い有様だ。大量の“黒蝕竜”がグロスターに攻めてきたように、この街にも彼らが攻めてきたのだろう。注視してみれば、辺りには胸部に大きな穴を開けて事切れている妖精や人間の死体が無数に見受けられた。カリアが変異した混沌のゴア・マガラの能力によって幼体の“黒蝕竜”が誕生する時に出来るものだ。
そして、その惨たらしい遺体の中には、かつて親交があった妖精の姿もあった。
「っ……、コーラル……」
桃色の髪と、千切れた翅。“黒蝕竜”の幼体に自分の胸を突き破られた激痛で歪んでいる死に顔が見ていられず、メリュジーヌは彼女の亡骸に歩み寄る。
暗雲を見上げ続ける光のない瞳を閉じさせ、少しだけ硬くなっている両手を、最期まで彼女に苦しみを与え続けた胸の穴の上に重ねる。絶叫を上げていたであろう口も閉じさせれば、先程と比べれば遥かに良い姿となる。
(……君は、最後まで残ったんだね。このソールズベリーに……)
自分はかつて、彼女に忠告した。
このシェフィールドに―――領主であるオーロラの傍に居続けてはならないと。彼女の純粋すぎる『使命』は、いつかコーラルの命を奪うだろうからと。
それでも、彼女は残った。最期までこの街に残り、そして……死んだ。
しかし、メリュジーヌは彼女を責めようとは思わなかった。
きっと、彼女も悩んだのだろう。悩んだ末で、この街に、領主の傍に残る道を選び取った。それを否定してしまえば、彼女の決意を愚弄する事になってしまうから。
(そうだ……オーロラは……)
そしてメリュジーヌの脳裏に過るのは、この街の主であるオーロラの姿。
大量発生した“黒蝕竜”によって破壊されたこのソールズベリーで、彼女は無事なのだろうか。
ロンディニウムでの一件を経てもう彼女とは決別したつもりだったのだが、偶然とはいえシェフィールドのこの惨状を見てしまった以上、気になってしまう。メリュジーヌは瞼を閉じ、周辺の気配を探り始める。
(……これは……)
意識を取り戻してから少しだけ時間が経った影響か、先程まで気付かなかった気配にメリュジーヌの瞼が持ち上がる。
自分がいる場所からそれなりに離れているが、まだソールズベリーの街中であるそこに蠢く一つの気配の正体―――まだこの街に残っていた“黒蝕竜”の下へ向かう。
わかっている。ここで“黒蝕竜”を殺す時間があるのなら、一刻も早くキャメロットへ戻り、戦線に復帰すべきだと。
それでも、彼女はスラスターを噴射させてその気配の根源へと向かっていた。言葉では表現できない、言い知れぬ不吉な予感を感じたから。
相手に気付かれないように気配を殺し、少し離れた場所に着地する。
そのまま足音を立てぬまま近くにあった瓦礫に身を隠し、様子を窺う。
もぞもぞと黒い外套にも似た翼が生える背を動かしているところや、その奥から聞こえる布を引き裂くような音から察するに、なにかを食べているのだろうか。
(それなら丁度いい。このまま一気に距離を縮めて―――)
その瞬間、目の前の“黒蝕竜”が頭部を勢いよく上に上げる。
気付かれたわけではない。なにかを噛み千切る為に力を入れたものの、勢い余って頭部が上に向いたのだ。
―――しかし。
「…………ぁ…………」
微かに開かれた口から、小さく息が漏れる。
グチャグチャと肉を咀嚼している“黒蝕竜”の牙の隙間から見えた、黄金の長髪。血や脳漿でかつての美しさは見る影もないが、メリュジーヌはその髪の毛に見覚えがあった。
―――いや、見覚えがあるどころではない。
ふわりと舞い上がった翼の奥に見えた、引き裂かれた白いドレスも。
乱雑に噛み千切られた腕も。
収まるべき場所に収まっていない瞳も。
全て……全て、知っている。
「あ、あぁ……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!!」
全身に走る痛みが彼方へと消え去り、両手から伸びた
なにが起こったかわからないという困惑を浮かべる眼を潰し、頑丈な鱗も紙切れのように切り刻み、その奥にある骨も肉ごと削ぎ落す。
最早竜の体が細切れになっても、地面に散らばる肉片すら憎いとばかりに刃を振るい続けたメリュジーヌが動きを止めたのは、先程まで目の前にいた“黒蝕竜”の存在の一切を斬り捨てた後だった。
「はっ、はっ、はっ……ぁ……」
両手より伸びる刃が砕け、膝から崩れ落ちたメリュジーヌの視界に映り込むのは、“黒蝕竜”に飲み込まれずにいた
「―――オーロラ」
最早言葉を発する事も、指先を動かす事すら出来ない
オーロラ―――間違いなく、彼女は害悪の化身だった。
自分にとって都合のいい出来事しか見ず、それ以外のものは一切視界に入れず、思考しない。自分が一番であり続ける為に周囲を操り破滅させ、自身がそう命令した事を忘れ去る。
純粋すぎるがあまりに醜悪な『使命』の下生きていた彼女だったが……それでも、メリュジーヌは彼女に恩義を感じていた。
どんな醜悪な在り方だろうと、どんなに害悪な生き方だろうと、彼女は四百年前の自分にこの
そのおかげで自分は他者と言葉を交わせるようになり、異なる歴史の
その全てが、オーロラの気まぐれに起因するものだとしても、その気まぐれに、自分は救われたのだ。
しかし、そんな自分を救ってくれた彼女は……“黒蝕竜”に貪られて最期を迎えた。
「ッ、う、ぐ……ァ……アァ……ッ!!」
魂に重く響く、絶望と哀しみ。それは彼女を
『させない』
―――氷のように冷たい声が、呻くメリュジーヌの耳朶を震わせる。
全身に感じていた変異の気配が消え失せていく中、思わず顔を上げた彼女の先には……。
「……君、は……」
突然メリュジーヌの目の前に現れたそれ―――彼女と全く同じ姿を持った光り輝くシルエットは、感情の一切を感じさせない声で問いかけてくる。
『貴女は、このまま終わるつもり? まだ護れるものがあるのに、厄災に身を落とすの?』
「僕が、『厄災』に……? このブリテンを、終わらせる『厄災』に……」
『貴女は、それを望む? 異なる歴史の存在であっても、もう一度家族と出会えたのに?』
オーロラを失った絶望と哀しみに打ちひしがれているメリュジーヌに、そのシルエットは容赦なく問いかけ続ける。
目の前のシルエットがいったいなんなのか、メリュジーヌは本能的に理解していた。そのシルエットからの問いかけには答えるべきだと、理解していた。
「……なりたくない。『厄災』になんて、なりたくないに決まってる……ッ!」
今も心の奥底で聞こえる、誰かも知らぬ声。
―――ブリテンを滅ぼせ。
―――ブリテンの崩壊を拒む者を、滅ぼせ。
きっとそれは、かつての己が抱いていた激情。このブリテンが世界にたった一つの島になってしまった原因となった妖精達と、彼らを祖に持つ妖精達への憤怒と失望。
この激情は、正しいものだ。果たすべき責務を放棄し、正しい事を成そうとした者達を一方的に犠牲にして繫栄し続けた罪深い妖精達が支払うべき代償だ。
……それでも。
「僕は、私は……この世界で生きているッ! 今もこうして、生きているッ! 生きて、護りたいって思ってるッ!!」
たとえ罪から始まった世界だとしても。
悪逆に塗れた醜い世界だとしても。
自分は確かにこの地で生まれ、生きている。自分を救ってくれたオーロラを始め、女王モルガン達といったかけがえのない者達と出会う事が出来た。
こんな半端な自分でも、ここが居場所なんだと思う事が出来た。
その世界を破壊するなんて、したくない。絶対に。
『そう……それなら―――』
差し伸ばされる掌。差し伸ばす掌。
二つの掌が触れ合った瞬間、凄まじい力がメリュジーヌの全身に流れ込み始める。
「ぐ、ゥ、お……ッ!」
体内を巡る力が、血管を、神経を膨れ上がらせ、心臓が強く鼓動する。
何度も鈍器で殴られたように痛む頭を抑える事も出来ずにいるメリュジーヌの鼓膜を、
『私は貴女。貴女は私。我が名は■■■■■。白き祖に創造されし、世界の境界を司る竜』
左。右。上。下。
四方から次々と聞こえてくる声。それに対して、メリュジーヌの口が自然と開かれる。
「私は、メリュジーヌ……ッ! 醜くも美しき妖精に救われた、竜の妖精……ッ!」
『「―――今こそ我ら、再成の契りを果たさんッッ!!」』
手にしていたオーロラの髪が弾け、メリュジーヌと■■■■■の姿が重なる。
魂も、肉体も、精神も―――なにもかもが一つに混ざり合う事で自分が新たな存在へと変わりゆく感覚を感じながら、
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「ギシャァアアアッッ!!」
「ぐ……ッ!?」
背後から咆哮が轟いた瞬間回避行動を取ったものの、アルトゥーラの放ったブレスが背後に着弾し、バーヴァン・シーの体が吹き飛ばされる。
即座に近くにいたルーツがフォローに回り再び放たれたブレスを緋雷で迎撃。一瞬の拮抗すら成立させずにブレスを打ち破ったそれがアルトゥーラを護る粒子の壁に穴を開けると、間髪入れずに次の緋雷を放射。塞がる前の穴を通して飛んできた一撃にアルトゥーラが大きく怯み、高度を大きく下げた。
「
二対目の翼を生やしたアルトゥーラの一撃がメリュジーヌを呑み込んだ時、ルーツは全身の血の気が引く感覚を覚えていた。
もう一度、自分は彼女を喪う事になるのかと、戦闘中だというのに強い恐怖を抱いてしまっていた。
彼女が生きている事は辛うじて気配でわかるものの、それでも消えなかった彼女の恐怖は、ある種の怒りとなって彼女の肉体を突き動かしていた。
「喰らえッ!」
態勢を立て直したバーヴァン・シーがフェイルノートで攻撃を仕掛けるが、アルトゥーラは即座に自身を光の粒子で覆って防御してしまう。
それにバーヴァン・シーが舌打ちした直後、光の粒子は凄まじい勢いで拡散。スコールのように大地に降り注ぐ呪いを宿した粒子をルーツ達が迎撃するが、空が光り輝いているかのように見える程の密度で落ちてくる粒子を防ぎ切る事は出来ずに、打ち漏らした粒子が地面へ落ちる。
瞬間、濃密な呪詛を孕んだ衝撃波が発生し、四方からルーツ達を吞み込もうとしてきた。
「ボレアス、バルカンッ!」
「カイニスッ!」
「バーゲストッ!」
ルーツ、K、バーヴァン・シーの叫びに合わせ、ボレアス達が動き出す。
三つの炎と一つの激流は互いに打ち消し合う事無く一つの防壁としての機能を果たし、ルーツ達を吞み込もうとした呪詛の波を防ぎ切る。
それでも呪詛は彼らの攻撃を通して魂に干渉し、ボレアス達の動きを鈍らせるが―――
「黒炎よ、呪詛を喰らえッ!」
バーゲストの大剣から溢れ出した漆黒の炎がボレアス達を包み込むと、彼らを苦しめていた呪詛の大半を拭い去り消えていった。
「
いずれこの國に災厄を齎す存在として生を受けたが、その在り方を受け入れ、力へと変えたバーゲストにとって、種類は違えど呪いは力の源となり得る。さらに彼女は、そこへ自分が生まれつき有する魔力喰いの能力を組み合わせ、ボレアス達から拭い去った呪詛を大剣へと流し込み、薙ぎ払う。
神の呪詛を取り込んだ斬撃は今までのものよりも巨大なものとなり、防壁の役目を果たしている粒子を焼き切り、その奥にあるアルトゥーラの体に直撃した。
「ギシャァアア……ッ!」
粒子の壁を突破してきた一撃にアルトゥーラが僅かに怯むものの、反撃とばかりに二対の翼を大きく広げ、羽ばたかせる。
勢いよく羽ばたかせた翼から放たれたのは、橙色の鱗。たった一度の羽ばたきによって打ち出された幾百にも及ぶそれらは光の粒子と組み合わさる事でさらに密度を増し、ルーツ達に襲い掛かる。
それに真っ先に立ち向かったのは、大剣を地面に突き立てたバーゲスト。
彼女は得物をその場に残して跳び上がると、その身を黒炎の獣へと変化させ、大地を揺るがす程の咆哮を轟かせる。
魔犬形態へと移行した彼女の大咆哮は迫り来る鱗に宿っていた火属性のエネルギーを刺激し、周囲にある粒子諸共爆発させた。
凄まじい轟音を轟かせて発生した黒煙がバーゲストの視界を埋め尽くした、その瞬間。
「ギシャァアアアアアッッッ!!!」
[な……ガァッ!!?]
黒煙を突き破ってきて突進してきたアルトゥーラに反応が遅れたバーゲストに、光の粒子を纏ったアルトゥーラの巨体が激突する。
アルトゥーラの突進に合わせてドリルのように動いていた光の粒子と巨体による一撃を受けたバーゲストは魔犬形態を維持し切れずに元の騎士の姿に戻り、大地へ叩き付けられてしまう。
さらにアルトゥーラはバーゲストを叩き落とすだけに留まらず、そのまま地上に降り立つギリギリの高度を維持した状態で飛翔し、ルーツ達さえも巻き込もうとして―――
―――突如として飛んできた一条の流星に、逆に弾き飛ばされた。
どこからともなく飛来してきた攻撃に為す術なくアルトゥーラが叩き落されると、流星は高度を上げて空中に留まり、自身を覆う光を掻き消した。
「お、お前は……ッ!」
「ぁ……」
その姿を見たバーヴァン・シーが大きく目を見開き、ルーツはただ茫然と、潤んだ瞳で立ち尽くす。
「―――あぁ……この、姿は……」
流星の奥から現れた
その身を覆うのは、黒き外装。楽園の番人となったもう一人の自分が有した、悲哀と絶望、憎悪の鎧。
しかし、露になった背より伸びるものは、漆黒の外装とは全く異なるものだった。
黒き外装とは真逆の、純白に輝く翼。機械のような無機質なものではなく、柔らかく広がる生物的なそれ。
それは、かつての己の名残。自分がまだアルビオンの竜として生きていた頃に有していた、空を翔ける白き翼。
―――“
細胞一片にまで刻み込まれた記憶が蘇る。
この翼で、大空を飛んだ。大地を見下ろした。命溢れる星を、それを支える境界を、この翼で護り続けた。
二度と戻らぬ大切な世界。二度と蘇らぬ愛しき世界。
振り返っても、脳裏に過るのは悲哀と苦悶でしかなくて。
今に戻っても、この身を
それでも、楽園に残った
護れ―――と。
戦え―――と。
救え―――と。
「……そうだね。護ろう、この翼で」
どちらか一方の側に立てず、もう一方の在り方も捨てられず。
この世界で自分の同類など誰一人いない、歪な在り方。しかし、彼女は既に、この姿を受け入れていた。
自分が歪な存在など、元から理解している。本体から分かたれた時点でこの身は真正の竜種ではなく、竜種の細胞から生まれたが故に、純正の妖精ではない。
であるのなら―――受け入れてしまえばいい。
「
右手に出現した眩い光を放つ球が弾けると、それは彼女を掬った妖精の髪と同じ金色の装飾が施された純白の双剣となって彼女の左右に侍る。
「もう、奪わせはしない。この翼で、全てを護ってみせる」
―――飛べ。飛べ。どこまでも高く、どこまでも速く。
お前は、たとえ残骸であろうとも―――。
・『オーロラ』
……“黒蝕竜”の群れがブリテン全土を襲い始めた頃はまだ生きていたが、彼女を護る者達や、彼女を囮にしようとした妖精達が悉く“黒蝕竜”の幼体を産み落とし殺される光景に逃走の一手に出る。しかし、教会を離れてしばらくした後に“黒蝕竜”の一体に見つかり惨殺される。原作のメリュジーヌが想像した「汎人類史に移った場合の末路」と比べれば遥かにマシな最期だが、彼女からすれば一切の知性の欠片もない畜生同然の存在に喰われる最期は屈辱的なものだっただろう。
余談だがオーロラを殺し捕食していた“黒蝕竜”は、彼女に置き去りにされた側近から産まれた個体である。
・『メリュジーヌ・アルビオン』
……オーロラによって誕生した竜の妖精であるメリュジーヌ。“祖龍”によって創造された“境界竜”アルビオン。どちらでもあり、どちらでもない存在へとメリュジーヌが覚醒した存在。その身に纏う鎧は楽園の番人となったもう一人の自分が変化したものだが、メリュジーヌが彼女の有する憎悪や哀しみを受け入れた事により、鎧であると同時にある種の礼装と化している。
竜の妖精は厄災に堕ちず、かつての己の激情を受け入れ、愛する者を護る翼へと変えた。
―――境界の騎士よ。燃え盛る愛を胸に抱き、茜の射す天空へと羽ばたけ。
いよいよモンハンワイルズ発売日が明日になりましたねッ! 自分は既にダウンロード版を購入しているので、プレイ可能になった瞬間すぐにプレイしようと思いますッ! 基本はオフラインでやる派の人間ですが、オンラインでプレイする事もあるので、どこかで私と会えるかもしれませんね。
それではまた次回ッ!