【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 モンハンワイルズアップデート情報が公開され、新要素が今から楽しみなseven774です。

 いよいよタマミツネ実装が近づいてきましたね。大集会場もそうですが、私としてはゾ・シア武具登場が一番よかったですッ! 早く上位ゾ・シアと戦いたいですねぇ……ッ! それに加え、アップデート第二弾では遂にラギアクルス復活の可能性が大となりましたので、今のグラフィックのラギアクルスも早く見たくて堪らないですッ!

 それでは本編、どうぞッ!



聖剣の妖精

 

 遂に姿を現した三対目の翼を大きく広げたアルトゥーラの胸部には紫色の妖しく輝く神の心臓。絶えず脈打つそこから流れ出す膨大な呪詛は、アルトゥーラの全身を際限なく強化していき、その度に周囲の空間さえ暗く淀ませていく。

 

 

「ギシャァアアアッ!!」

 

 

 空間そのものにすら影響を及ぼし始めたアルトゥーラが、全身に漲る呪詛を込めた極大ブレスを放つ。

 大気を歪ませ、汚染し、塗り潰していく呪詛が圧縮されたルーツ達を呑み込みかけた、その瞬間。

 

 

「聳え立て―――いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)ッ!!」

 

 

 突如として大地より聳え立った白亜の城壁が、黒と紫のブレスを受け止めた。

 爆発物が爆発するような轟音が何十にも重なったかと思える程の音を立てながらも、幻想の城は自身を顕現させた少女の意志に応えるかの如くブレスの猛威を耐え抜き、消えていった。

 

 

「今のは……ッ!?」

 

 

 アルトゥーラの攻撃から自分達を護り抜いた城壁に目を見開いた虞美人の耳に、聞き覚えのある二人の少女の声が聞こえてきた。

 

 

「―――みんな、お待たせッ!」

「ここからは私達も参戦しますッ!」

「あ、立香ちゃん、マシュちゃんッ!」

「私達もいるわよ、アンナ」

 

 

 ルーツ達の前で立ち止まり構えを取った立香達より少し遅れてやって来たのは、パーシヴァルとノクナレアを連れたペペロンチーノだ。

 

 

「ペペロンチーノさん、無事だったんだね」

「当然よ、K。まだまだ死ぬわけにはいかないわよォッ!」

「パーシヴァル……」

「その姿は……。……いや、今はいい。私も一緒に戦わせてほしい」

「……もちろんだよ。頼りにしてる」

「ウッドワスも一緒に来てるけど、彼は先にモルガンのところに加勢しに行ったわ。私達はアルトゥーラの相手を任されたの」

「そうですか、ウッドワス公が……」

「ったく、老兵のくせに張り切り過ぎだっての」

 

 

 ノクナレアからの言葉にバーゲストは勇んで女王の下へ向かっていった先達の姿を思い浮かべて尊敬の念を抱き、バーヴァン・シーも眉を顰めるものの彼の忠誠心の高さに改めて感心していた。

 

 

「……少し作戦会議したいな。誰か、少しでいいからアルトゥーラを抑えられる者はいるかな?」

「それなら任せて」

 

 

 新たに立香達が加わった事から戦い方を変えるべきだと判断したKの言葉に最初に応えたのは、メリュジーヌ。

 翼を羽ばたかせて飛翔した彼女がK達に攻撃を仕掛けようとしていたアルトゥーラに両手を向けると、そこから透き通った青色の渦が生み出される。放たれたそれはアルトゥーラに直撃する寸前に球体状に変化してその巨体を封じ込める。当然、アルトゥーラは自身を覆った青色の壁を破壊しようとするが、幾つもの鈴が鳴るような音を響かせるだけで、障壁の破壊には至らなかった。

 

 

「少しの間だけ、アルトゥーラの周囲の空間を歪ませた。でもすぐに破られるだろうから、手短にお願い」

「ありがとう、メリュジーヌッ!」

 

 

 立香の心からの感謝の言葉に小さく微笑むメリュジーヌ。だが、「それならすぐに始めよう」というKの声を聞いた瞬間、その表情は瞬時に引き締められた。

 

 

「さっきの様子から考えると、奴の体からは呪詛が絶え間なく溢れ出していて、それが傷を回復させているんだろう。我々がいくら攻撃したところで、威力が足りなければその端から溢れ出した呪いによって塞がれてしまう……このままじゃジリ貧だ」

「となると、呪いの根源を絶たない限り、アルトゥーラを討伐する事は出来ませんね……。ですが、アルトゥーラの胸部にあるあれは、まさか……」

「うん、神核だね」

「神核……? まさか、あの状態で稼働しているのですか……ッ!? あれは、ケルヌンノスではないのに……?」

「そりゃ取り込んだんだからな。今となっちゃアイツの核……言うなれば龍核になってる。アイツが本体になってる以上、その心臓に当たる龍核も当然稼働するだろうよ」

 

 

 マシュの疑問に答えたのは、アルトゥーラが動きを封じられた影響で多少の余裕が生まれたグリムだ。

 少し呼吸を荒くしながらも歩いてきた彼からの言葉に、立香は顎に手を当てながら訊ねる。

 

 

「それで、アルトゥーラを倒す方法は……?」

「チマチマやっても無駄なら、どでかい火力で核ごと消し飛ばしちまうしかねぇ」

「火力……。あの、アンナさん。貴女のサーヴァント達なら……」

 

 

 火力という言葉を聞いた立香が真っ先に思いついたのは、アンナ(ルーツ)が従える二騎のサーヴァントであった。

 両者が太古の伝説に刻まれた“禁忌”であるなら、あの悍ましい進化を遂げたアルトゥーラも討伐できるのではないか―――そんな期待を込めた眼差しを向けたものの、返ってきたのは「それは無理」という回答だった。

 

 

「出来るには出来るけど、余波がね……。あの規模の相手となると、消し飛ばした余波で君達が離脱する前にこの地域一帯が消えてなくなるよ」

「うっ、それは……無理だね……」

「それなら私の力で余波を制限するのは……」

「やめとけ。ボレアス達が仕留めに来たと分かれば、アイツも全力で迎撃するはずだ。“禁忌”二体にそれと同格の古龍の力、そこにお前の権能まで加わったらなにが起こるかわからねぇ。最悪もっと酷い事態になる可能性すらある。―――それに、火力ならもうあるさ。それこそ、ずっと昔からな」

 

 

 ルーツ達の視線が一斉に自分に向けられるのを感じながら、グリムは遙か上空に浮かぶそれら(・ ・ ・)を見上げた。

 

 

「キャメロット上空に配置されたロンゴミニアドだ。あれを一気に起動できればアルトゥーラも倒せる。オレ達の役割は、ここで奴を押し留め、『聖剣の守護者』を玉座に辿り着かせる事だ。つまり―――」

「防衛戦、か」

 

 

 自身の言葉を引き取ったKに、「あぁ」とグリムが頷いた。

 

 

「オレ達が負ければ、奴は絶対に城内にいるアルトリアを狙う。そうなればなにもかもが終わる。ただ堪え続ける耐久戦じゃない、アルトリアを護る為の防衛戦だ」

「それなら私に任せてくださいッ! 私の力で皆さんを……アルトリアさんをお護りしますッ!」

(わたくし)も、ファウル・ウェーザーの力で守護が出来ます。隙を見て攻撃にも参加しましょう」

 

 

 今回の戦いで重要な事は、ただ耐えるだけではなく、アルトゥーラの注意をキャメロットから引ける程の火力だ。後者は既にメリュジーヌを始めたメンバーが揃っており、耐久においてもバーゲストの他に新たにマシュも加わった。耐久面が少々心許ないが、そこについては他のメンバーが様子を見てカバーに入る事で決定する。

 

 

「可能ならアルトリアのサポートに回れる人員が欲しいんだが、流石に厳しいか……?」

「それなら私が―――」

 

 

 顎に指を這わせ唸るKに立香が手を挙げようとするが、直後にマシュが「駄目ですッ!」と彼女の手を止めた。

 

 

「マスター。ご自分がここに来るまでの間に行った簡易召喚と、使用させた宝具の数を思い出してください。これ以上続けてしまえば、いくらアンプルを使用しても……」

「うっ……、そ、そうだね……」

 

 

 マシュの言葉に頷く事しかできない立香。ルーツ達のようなAチームのマスター達と比べ、自分の魔力量など高が知れてしまっている。これまでの戦いでもそれなりのサーヴァントを召喚し、宝具を使用させてきた今の状態でも活性アンプルを使用すれば再度の召喚は可能だろうが、体にかかる負担はかなりのものとなるだろう。場合によっては、これから始まる防衛戦中に気を失う可能性もあるので、それは絶対に避けたい。

 

 流石にアルトリアの方までサポートは出来ないか、と諦めかけた瞬間。

 

 

『―――それなら、こっちがアルトリアのサポートに回ろう』

 

 

 突然聞こえてきた声に誰もが顔を上を向ける。そこにあったのは、この異常な空模様となった世界において尚輝きを失わぬ、純白の巨大潜水艇。

 それを目にした立香とマシュの表情が、陰っていたものから眩い笑顔へと変わった。

 

 

「「ストーム・ボーダーッ!」」

 

 

 嬉しい味方の登場に二人が盛り上がっていると、彼女達の通信機器から一人の男性のホログラムが出現する。

 

 

『やぁ、ミス・立香、ミス・キリエライト。少しだけだが、私もアルトリアのサポートをするよ』

「ホームズさんッ! え、ですが貴方が抜けてしまっては……」

『ははは、なに。諸々の事は既に伝えてあるし、やる事が終わればすぐ戻るよ。その間の事はみんなに任せるさ』

『うむ。少し不安だが、いつまでも頼りにしてばかりではいけないからな。―――では、用意は良いかね?』

『はい、ムジーク所長。いつでも行けます』

(え……今の声って……)

 

 

 ほぼ丸投げに近い事を言い出したホームズに姿こそ見えないがゴルドルフの文句が飛ぶが、その後に聞こえてきた声に、思わずルーツは耳を疑った。

 次の瞬間、滞空したストーム・ボーダーの甲板から、三つの光が飛び出す。

 

 一つはホームズ。特殊な魔道具の一切を使用せずに一番後ろを飛行している彼だったが、彼が飛行できている理由は一番前を飛ぶもう光にあった。

 

 氷のように冷徹な眼差しを眼鏡の奥に秘めた、重厚な鎧に身を包んだ英霊―――シグルド。

 妻であるブリュンヒルデから学んだであろうルーン魔術を用いて自身とホームズに飛行能力を与えた彼の腕に抱えられている女性に、ルーツは大きく目を見開いた。

 

 

「オ、オフェリアちゃんッ!?」

 

 

 驚愕した声をルーツが上げれば、その後に続く光の中にいる者達を見たKもまた声を上げた。

 

 

「あそこにいるのは……カドックとアナスタシアか……?」

 

 

 自分達が離れている間に、いったいなにがあったのか。なぜ彼女達がストーム・ボーダーに乗艦していたのか。それ以外にも様々な感情や困惑が混ざり合って動揺しているルーツ達を他所に、オフェリアを抱えたシグルドと彼に追随するカドック達は城内へと飛び込んでいくのだった。

 

 

 

 Now Loading...

 

 

 

「あぁもうっ、なにこの結界ッ!? 厄介すぎるにも程があるッ!」

 

 

 時を遡る事数分前。

 モルガン達と影、ルーツ達とアルトゥーラという二つの戦いの苛烈さを伝えるかのように張り詰めた空気の中、結界の解析を続けていたアルトリアが叫んでいた。

 

 そんな彼女に迫るのは、結界から伸びてきた無数の黒い掌。影が結界に干渉が起こった際に起動するよう仕掛けていた迎撃魔術である。

 自身を拘束しようとするそれらはアルトリアが展開した青白い防御結界によって阻まれているものの、彼女が結界の干渉を進めれば進める程にその数を増していき、結界を破壊しようとしていた。

 

 結界に干渉し始める時、「狙うなら狙え」とは確かに言った。迎撃が始まったのも、「まぁそうだよね」とは思っていたが―――

 

 

(いくらなんでも邪魔すぎるッ! 少しは集中させてよッ!)

 

 

 玉座の間に辿り着く為には結界を解除しなければならない。しかし解除しようとすれば黒い手が無数に迫ってくる。

 さらにご丁寧な事に、こちらが黒い手の対処に意識を割けば、その瞬間に結界が自己修復を始めるのだ。しかも修復したからと言って黒い手の数が減るわけではなく、数はそのままに、修復されて箇所を分解すればその分数が増えるのだ。一刻も早く玉座の間に辿り着かなくてはならないアルトリアからすれば厭らしいにも程がある。

 

 

(このままじゃこっちの結界が持たない……っ、誰か手助けに来てほしいッ!)

 

 

 こうも妨害が多くなってはまともに結界解除に集中できない。誰でもいいから手助けが欲しいと思った、その時だった。

 

 

「―――斬り捨てなさい、シグルドッ!」

「承知ッ!」

「凍て壊せ、アナスタシアッ!」

「えぇ」

 

 

 ヒビの入っていたガラスを破って飛び込んできた二つの光。それぞれの中から男女の声が聞こえたと思えば、燐光を纏う大剣と大気まで凍らせる冷気がアルトリアの視界に入ってきた。

 翡翠色の軌跡と純白の凍風を前に瞬く間に自身を襲っていた黒い手が霧散していく様子に目を見開いたアルトリアの耳に、先程大剣を振るった男に指示を飛ばした女性の声が届く。

 

 

「大丈夫かしら? アルトリア」

「あ、貴女は……確か、オフェリアさんと……カドックさんでしたか?」

「えぇ。手助けに来たわ」

「これが例の結界か……。僕でもわかるな。絶対厄介な奴だろ」

 

 

 それらしい会話はした事がないものの、アイドルイベントなどで目にした記憶がある彼女が頷きカドックが目を細めていると、「ほう、これは……」とシグルドとアナスタシアとは別のサーヴァントが降り立ち、結界を見上げた。

 

 

「かなり手の込んだ結界だね。これは時間がかかるのも納得だ」

「ホームズさん……ッ!」

 

 

 オフェリア達より少し遅れて到着したホームズに、アルトリアの表情がより明るいものとなる。

 こうして顔を合わせるのは初めてとなるが、旅の中で立香とマシュから彼の話は聞いていた。汎人類史に語られる『探偵』という概念の結晶である彼の前では、あらゆる謎が白日の下に晒されるのだと。

 オフェリア達も同様だったが、そこに彼が加わる事でより頼もしさが増したアルトリアだったが、オフェリアが口を開いたのでそちらに意識を向ける。

 

 

「アルトリア。私達がサポートするわ。貴女は結界の解除を」

「! 助かりますッ!」

 

 

 オフェリアからの言葉に即座に精神を集中させ、結界の解析に取り掛かる。

 再び干渉を受けた結界からは新たな黒い手が伸びてくるも、それはシグルドが大剣と短剣を巧みに駆使する事でアルトリア達に届く事無く斬り捨てられていった。 

 

 

「全てが虚無で象られた結界か。流石にあちら側も、彼女をこの先には行かせたくないようだね」

「そうですね。ですが、彼女がこの先に行ければ……こちら側がより優位に立てます」

「その通りだ。なら早速、私が道筋を照らし出そう」

 

 

 余計な時間をかけてはいられない―――まるでそう言うかのようにホームズが指を鳴らすと、彼の足元を中心に異変が起こり始めた。

 なにもないはずの床から現れたのは、正体不明の球体。横並びに出現したそれらの内一つにホームズが腰かければ、球体が格納されていた照明を展開し、眼前の結界を照らし出す。

 

 

「解決の糸口はここに―――初歩的なことだ、友よ(エレメンタリー・マイ・ディア)

 

 

 それは、英霊シャーロック・ホームズが自身の起源である『解明』を宝具として昇華させたもの。彼の前に立ち塞がる障害が如何に解明不可能な存在であったとしても、真実に辿り着く為の手がかりや道筋を発生させる能力。

 世に存在する『探偵』という概念の結晶にして代表である名探偵の眼は、無明の闇に包まれた謎を噛み砕く牙となって眼前の結界を映し出し、そして糸口を見出した。

 

 

「視えた。皇女殿下、ミス・ファムルソローネ、魔眼を」

 

 

 ビシリ、と。一切の光を寄せ付けず蠢いていた結界が動きを止めた瞬間、ホームズの言葉にアナスタシアがヴィイを掲げ、オフェリアが右目を覆っていた眼帯を取り払う。

 

 

「視通し、凍てつかせなさい、ヴィイ」

事象・照準固定(シュフェンアウフ)―――Ich will es niemals glǎnzen sehen(私は、それが輝くさまを視ない)ッ!!」

 

 

 ヴィイの透視の魔眼と、オフェリアの遷延の魔眼。露わになった二つの魔眼が眩い輝きを放ち、ホームズの宝具によって綻びが生まれていた結界に追い打ちをかける。

 ヴィイの魔眼が結界に生じた綻びを広げ、そこへ注がれたオフェリアの魔眼が、結界が迎撃に出るという未来をピン留めする事で先延ばしにする。

 

 瞬間、アルトリアは結界の干渉がこれまでよりも遥かに容易くなった事に気付き、即座に解析を実行する。

 

 

「これで……どうだッ!」

 

 

 ホームズ達の援護があった事や、これまでの解析で大凡の構造を理解していた事も相俟って、一分もかけずに結界は解除され、霧散していった。

 

 

(……っ、あれが……)

 

 

 そして、その先に見えた目標にアルトリアは無意識に深く息を吸い、そして吐き出す。

 

 これまでの戦いの余波で破壊されたのだろう。天井は最早形を成しておらず、かつてそれであった瓦礫が積み重なる中に仄かな輝きを放つそれ(・ ・)。そこから視線を外さず、アルトリアは手助けをしてくれたホームズ達に感謝の言葉を告げた。

 

 

「皆さん、ありがとうございました。ここから先は、私の役目です」

「……えぇ。頑張って」

「では、私はボーダーに戻る。君達はどうする?」

「ルーツ……アンナ達の援護に行きます。シグルド、付いてきてくれる?」

「無論。既に準備は済ませている」

「僕らも行くぞ」

「わかりました。行きましょう、マスター」

 

 

 アルトリアの耳に、オフェリア達が走り去っていく音が聞こえる。

 手助けに来てくれた者達に改めての感謝を胸に抱きながら、アルトリアはゆっくりと足を進め、その先にあるものを注視する。

 

 ―――モルガンの玉座。

 妖精國ブリテンに住まう妖精達から集めた魔力を貯蔵し、聖槍を制御する、救世主トネリコの最高傑作。

 主であるモルガンと共に二千年もの間妖精國を支配してきたそれに手を触れれば、床から浮かび上がった玉座が変形し、アルトリアの背後に回った。

 

 玉座に意識を繋げる。

 『大穴』を囲むように配置されている無数の聖なる槍と一つになる。

 

 

「ギャァアアアアアアアアンッッッ!!」

 

 

 瞬間、城全体を揺るがす程の大咆哮が響き渡る。

 自分が玉座の間に辿り着き、玉座と接続した事を察知したのだろう。凄まじい殺意と敵意を宿した眼差しが、上空より注がれてくる。

 

 こちらへと向かってくる龍への妨害はない。下手に妨害してしまえば、こちらにとっても邪魔になってしまうと判断しての事だろう。そして、その考えは正しかった。今のアルトリアにとって、仲間達による妨害は却って邪魔に思えてしまっていたのだから。

 

 迫る。

 迫る。

 稲妻染みた速度で、青色の空から落ちてくる。

 呪いの終わりと解約を予感して、「そうはさせるか」と、多くの怨嗟(こえ)が落ちてくる。

 

 一万四千年という途方もない時間をかけて積み上げられた妖精達の死が、光の奔流となってやってくる。

 

 けれど、彼女の思考にあったのは、焦りでも恐怖でもなく、モルガンへの賛美だった。

 妖精としての能力だけではない。このキャメロット全体を礼装にしているというのに一切の淀みもない魔術回路の繋がりと魔力循環。それが、たった一瞬で自分(アルトリア)に最適なものに作り替えられている。

 同じ楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)だからこそわかるものがあるのだろうか。お陰で、この魔術式を自分用に作り替える時間をスキップする事が出来た。

 

 

「っ、つあ、ァ―――ッ!」

 

 

 でも、だからといってこの身になにも負荷がかからないというわけではなく。

 砲門を制御する回路が足りずに全身の穴という穴から血が溢れ出し、パンッと神経、血管、内臓が弾け飛んでいく。

 

 

 眼球が破裂する。

 

―――視界が暗転した。

 脳が溶ける。

 

―――思考が霧散していく。

 

 

 それでも、彼女は意識を保つ。魂の糸を必死に掴み、自己を確立し続ける。

 出し惜しみはなしだ。そんな事をしていては、あの光は破れない。あの龍を、撃ち落とせない。

 

 

「持っていけ、私の全部、持っていけ……ッ!!」

 

 

 モルガンの魔術式に介入。彼女が自分用に改造してくれたそれを、崩す(・ ・)

 そうして構築されるのは、保身など考えない、滅茶苦茶な術式。

 細胞どころじゃない。自身の魂も、なにもかもを注ぎ込むように構築された魔術式が稼働し、彼女から全てを奪い去っていく。

 

 文字通り―――己の全てを賭けた大儀式。

 

 

龍脈焼却型兵装(エクスカリバー)、全基抜刀ッ! “凶光”の龍に呑まれし祭神よ、我らが罪を、許し給え―――ッ!!」

 

 

 アルトリアの前に展開されるは、合計二十を超える聖なる剣。

 一斉射出されたそれらは一直線にキャメロットへ落とされた光の奔流を打ち破り、その奥にいる厄災の龍を貫いた。

 

 絶叫を上げて墜落する龍。

 楽園の妖精の放った聖剣の連撃は彼が取り込んだ祭神の残滓を刺激し、霧散させていく。

 

 ―――ここに、二千年前に果たされるはずだった役目が、遂に果たされた。

 ―――後に残ったのは一つだけ。

 

 冬の玉座には役目を終えたヤドリギの杖が、剣のように置かれていた―――。

 





 そういえば先週、『ユミアのアトリエ』と『ゼノブレイドクロス』を買ったんですよ。どちらのシリーズも昔からプレイしていた身ですので最新作が同月発売したのは嬉しかったのですが、前者がまぁいい意味で時間が溶けるゲームでして……一つ目の地方をクリアする前に既に十時間プレイしていた事を知って驚愕しましたよ……それもこれも採取と探索と調合が楽しすぎんですよねぇ……。後者をプレイするのはいつになるのやら……。ですが積みゲーがあるのはいいですね。多いと困りますが、一、二作あれば生活に楽しみが出来ますからね。

 次回、いよいよ“魔竜”出現です。
 それではまた次回ッ!
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