【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 先日、ラムセス大王展に行き、改めてオジマンディアスの偉業の数々に目を見張ったseven774です。
 オジマンディアス……もといラムセス2世についてはfgoで知る前は学校の授業で学んだ程度だったのですが、こういったイベントに行くと当時学べなかった彼の偉業や当時のエジプトについての情報を知れるのでとても楽しかったです。流石、現代になっても博物館を移転する際には国家元首として扱われ、パレードも開かれたファラオは違いますね。
 ですがこういうfgoで登場している偉人について学ぶと、ついつい「うちの小説でも活躍させたいし、ルーツと絡ませてみたいな……」と考えてしまうのが二次創作者心というもの。いつかどこかで登場させたいと思いましたねぇ……。

 今回は遂にオベロン戦最終回ッ!
 それでは本編、どうぞッ!



新生する星

 

「あああああ邪魔だ邪魔だ邪魔だッ!! どこまで……いったいどこまで抗うんだ、お前達はッ!!」

 

 

 脳天に振り下ろされた大剣を弾き、復帰したパーシヴァルの刺突を阻止したオベロンが怒りのままに鎌を振るう。

 弧を描いた鎌から放たれた暗黒の斬撃から逃れるべく、彼の周囲にいた者達が離れた隙を突いて加速。バーヴァン・シーの元へ一気に向かっていく。

 

 

「キシャハハハッ!」

 

 

 主にして相棒であるバーヴァン・シーを護るべく、彼女の頭上を飛び越えたシャガルマガラがオベロンにブレスを放つ。

 幼体であるゴア・マガラのものとは違う白紫色のブレスはオベロンによって斬り裂かれるが、その瞬間に飛び込んできたシャガルマガラの右翼爪の一撃がその身を捉えた。

 

 何度も地面を跳ねていくオベロンが態勢を整えるも、その周囲に展開されるのは無数の魔法陣。

 

 

「ぐ、ぉおおおおッッ!!? こ、この力はァ……ッ!?」

 

 

 それぞれが複雑かつ精密に、一つ一つが異なる魔術式によって構築されている魔法陣から放たれた魔力の光線に貫かれたオベロンは、その光線に秘められた力に驚愕する。

 

 それは、己という暗闇を打ち払う光。楽園より帰還したアルトリアのみが有するはずの、人類の脅威に対する特攻能力だ。

 

 

(馬鹿な……どうして、楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)でもないアイツが……ッ!?)

(凄い……。これが女王の……、お母様の力……)

 

 

 オベロンが驚愕に目を見開く中、バーヴァン・シーは己に宿った新たな力に感嘆の息を漏らしていた。

 確かに、バーヴァン・シーはモルガン(トネリコ)やアルトリアのような、楽園からの使命を受けた妖精ではない。しかし、新たな妖精妃となった彼女には、先代女王であるモルガンが有する魔術の知識が備わっていた。

 

 天才を超える才能を有する魔術師であるモルガンの知識を参考に、バーヴァン・シーは無意識に敵対者であるオベロンに最も有効な手立て―――即ち、世界を害する存在への特攻能力を付与した魔術式を組み上げた。

 それは、決してモルガンより授かった知識のみで成し得るものではない。相棒たるカリアより与えられた数々の訓練、バーゲストとメリュジーヌとの模擬戦、それらを含め、ここまで戦い抜いてきた中で培われてきた戦闘経験が、バーヴァン・シーの無意識下での魔術式構築に深く関わっているのだ。

 

 まさしく、これまでの積み重ねの成果とでも言うべき技量。それによって予想外のダメージを受けて怯むオベロンから視線を外さぬまま、バーヴァン・シーは再び新たな魔術を発動する。

 

 今度は先程繰り出した攻撃系統のものではない。軽く片手を振り上げる事で行使されたそれは淡い光と共にルーツ達に降り注ぎ、彼女達にオベロンに対する特攻能力を与えた。

 

 

「力を手にした直後にこれとは、末恐ろしいですね……。ですが、少し荒削りですね」

 

 

 降り注いできた光を受けたアルトリアは、モルガンから力を継承して数分も経っていない中でこれ程の腕を見せたバーヴァン・シーに驚くものの、そこは元来負けず嫌いの彼女。本物の楽園の妖精(アヴァロン・ル・フェ)とはこういうものだと伝えるように魔術を行使すれば、先程バーヴァン・シーの使用した魔術がより強力なものとなった。

 さらに右手に振るう大剣……マルミアドワーズを地面に突き立てると、そこから放たれた光が仲間達に宿り、彼らにある効果を与えた。

 

 

「これは、聖剣の概念(・ ・ ・ ・ ・)……?」

(は……ッ!!?)

 

 

 呆然と自分の拳を見つめたルーツの呟きに、オベロンの目が驚愕を越えた戦慄に見開かれた。

 彼女の言葉が真実だとするのならば、今この瞬間、ここにいる敵全てが自分の弱点を突ける状態となったという事。思わず叫びたくなる気持ちを必死に抑え付けようとするも、握り締められた拳からは赤黒い血が滲み出ていた。

 

 

「わ、私にも付与されてるけど……これ意味あるの? 私、皆みたいに戦えないのに……」

「戦闘用のものではく、守護に特化させたものですが。それに、貴女はこの戦闘における要の一つであり、我が命なのですから、当然でしょう?」

「わ、我が命……アルトリア、やっぱり少し変わった?」

「少しだけ成長した、とでも思って頂ければ」

 

 

 立香に軽口を叩く彼女の顔が憎らしい。今すぐにでも潰してやりたいと思った矢先、背後から殺気を感じ取った。

 

 

「ぐ―――ッ!?」

 

 

 振り向き様に鎌で防御するが、飛んできた双剣にもアルトリアの魔術による聖剣の特性が付与されている影響か、防御は容易く打ち破られ切り裂かれた。

 数歩後退ったところに追い打ちに飛び込んでくるのは、ノクナレアの右足。こちらの顔面へ向かってくる彼女の右足を握り潰すべく手を伸ばすが、大地を突き破って伸びてきた植物の蔓がその手を拘束し動きを阻害した。

 

 

「喰らいなさいッ!」

 

 

 迎撃を阻止された瞬間に顔面に突き刺さる右足。僅かに仰け反ったオベロンの顔を足場にして飛び上がったノクナレアは両手からチョコの濁流を浴びせると、チョコは瞬く間に硬質化。オベロンの全身を僅かな間ながらもその場に固定した。

 さらにそこへ迫るのは、盾を握り締めたマシュとアルトリア。真っ直ぐこちらへと向かってくる二騎に気付いたオベロンは即座に邪魔なチョコを粉砕し、広げた翼から魔力光線を発射した。

 

 

「っう……重い……ッ!」

 

 

 幾本もの光線を前に足を止められたマシュが盾を地面に突き立てて防御態勢を取るも、一瞬の隙も置かずに飛んでくる光線によって前に進めない。周りにいる味方もそれぞれの方向から攻撃を仕掛けようとしているが、全方位に発射されている光線によって牽制され手を出せないでいるようだ。

 

 

「大丈夫です。私に任せてください」

 

 

 だが、彼女の背後に身を隠していたアルトリアの笑みは崩れず。

 彼女が人差し指を指揮棒のように振るうと、彼女に追随していた三つの剣が周囲に突き立てられ、それぞれの柄からアルトリアの握るマルミアドワーズへ翡翠色の光が集まっていく。

 

 

「照らしなさい、マルミアドワーズッ!」

 

 

 叫びと共にアルトリアがマルミアドワーズを掲げれば、大剣から放たれた眩い光がオベロンの光線を迎撃し、消滅させていく。

 少しずつ衰えていく光線の勢いに気付いたマシュが一気に走り出し、盾を投擲する。

 鍛え上げられた膂力によって投げ飛ばされた盾はオベロンに容易く受け止められてしまうが、盾に追いつく程の速度で疾走したマシュが盾に飛び蹴りを喰らわせる事で無理矢理押し込む。

 

 受け止めた直後にさらなる衝撃を与えられたオベロンが僅かに後退すると、背後から激流と青白い光線が直撃する。オベロンが後退りする事を想定していたカイニスとキリシュタリアによる攻撃である。

 正面からの攻撃に体勢を崩されかけたところを背後からの衝撃で無理矢理直された直後、上空から三本の剣が飛来し、彼の胴体に突き刺さった。

 

 

「ぐぅ……ッ! アルトリアァッッ!!」

 

 

 自身に突き刺さったその剣の所有者の名を叫んだ瞬間、離脱したマシュの背後から、蒼光と共に凄まじい勢いで接近してくるアルトリア。眩い光を纏ったマルミアドワーズを両手で握り締めた彼女がオベロンを一閃した瞬間、僅かに遅れて蒼光の奔流が彼を穿ち、その身を吹き飛ばした。

 

 

「ク、ソ……ッ!」

「一気に追い込まれたな、虫竜。だったら安心しろよ―――すぐに終わらせてやる」

 

 

 胸の痛みに呻きながらも起き上がったオベロンに投げかけられる、死刑宣告にも等しき言葉。

 それを発した者―――バーヴァン・シーが、シャガルマガラと共に上空へ舞い上がる。

 そして右腕を真上に掲げれば、彼女が手にしているフェイルノートを始め、ドレスの装飾やプレートが分解し、新たな形へと再構成されていく。

 そうして創り出されたのは、四つの宝石が嵌め込まれた一本の弓。それを手に取ったバーヴァン・シーが弦に指を這わせれば、そこから眩い光の矢が生成され始めた。

 

 指先だけでなく腕―――否、全身に力を込めなければ動かせない程の矢を、万力と共に引き絞る。たった数センチ程度の距離を動かしただけだが、そのたった数センチ動くだけでも膨大な魔力が精製され、四個ある宝石の一つが強い輝きを放ち始める。

 

 

(あれは……ッ!)

 

 

 その輝きを目にした直後、オベロンのバーヴァン・シーに対する警戒心は最大にまで跳ね上がった。

 四個の内の一個。それが強く輝き始めただけで、弓矢から対城宝具に匹敵する魔力が溢れ出したのだ。

 もしあれが、あの宝石全てが輝いてしまったら。

 

 ―――己に勝ち目は、ない。

 

 

「させるかッ!!」

 

 

 故に、オベロンはバーヴァン・シーの排除を最優先事項と決定するが―――それは、この場にいる誰もが理解し得るものだ。

 

 バーヴァン・シーに対抗するように虚無の力を蓄え始めたオベロンに、幾つもの攻撃が殺到する。

 咄嗟に全身から噴き上がるオーラをベールのように纏って身を護るが、全方位から迫る攻撃の中から飛んできた緋色の拳が、それを打ち砕いた。

 

 

「フ……ッ!」

 

 

 鋭く息を吐き出してからの、腰の入った正拳突き。突き出された拳は瞬く間に空気の壁を貫き、ソニックブームを巻き起こしながらオベロンの鳩尾へと突き刺さった。

 

 

「ガ―――」

 

 

 外部からの強力な圧力を加えられた事で内臓が破裂。押し上げられた血液が喉を通って吐き出され、苦痛に顔が歪む。

 殴られた衝撃に両足が地面から離れた直後、オベロンの背後に回り込んだルーツが繰り出した回し蹴りががら空きとなった脇腹に直撃し、真横へ蹴り飛ばされた。

 

 だが、オベロンもただ蹴り飛ばされただけでは終わらない。即座に態勢を整えると追撃に来ていたボレアスとバルカンの二騎と切り結ぶ中で虚無の波動を放つ事で彼らに距離を取らせると、それを纏わせた鎌を振るって背後から飛び掛かってきたバーゲストを迎え撃った。

 

 鎌とバーゲストの大剣が衝突すると、鎌に宿っていた虚無の力が渦巻き、彼女に宿っていた聖剣の加護を無理矢理引き剥がしながら右肩を抉り取った。

 

 

「ギ……ァアアアアアアアアッッ!!」

 

 

 抉り取られた右肩から走る激痛に脂汗がドッと溢れるが、腹の底から獣の如き叫びを上げて無理矢理痛みを捻じ伏せ、力を失いかけた右手に力を籠め直す。幸い、肩を抉られたと言っても完全にではなく、まだ右腕と胴体は繋がっている。その繋がっている箇所から右手に力を注げば、結果として抉られた箇所から鮮血が溢れ出す事になるが、そんなものは知らないとばかりに叫ぶ。

 

 

「馬鹿め……ッ!」

 

 

 無理矢理力を込めて押し切ろうとするバーゲストだが、オベロンが鎌の向きを動かす事で軌道を逸らされる。受け流される形となった彼女が真横を通り過ぎていく瞬間、オベロンの左手がその身に触れる。

 瞬時に彼の左手から発生した虚無の領域がバーゲストの左腕を完全に消滅させ、遂に彼女の手から大剣が離れた―――が、しかし。

 

 

「ウウウウウアァァッ!!」

 

 

 負傷した箇所を含めた全身から溢れ出した白炎(・ ・)が、バーゲストの身を包み込んだ。

 これまでバーゲストが巨大な獣に変化する際に纏う黒炎とは真逆の色を持つ炎から現れるのは、一切の穢れを感じさせない、純白に燃える体毛を持つ獣。

 どこか神々しささえ感じさせる姿へと変身したバーゲストが激痛による絶叫と、魂からの雄叫びが混ざった唸り声を上げながら、口に咥えた大剣を振り上げた。

 

 

「な―――ガァッ!?」

 

 

 予想外の出来事に虚を突かれてしまったオベロンはなにも出来ずに攻撃を受けてしまうも、距離を取ろうとはせず鎌を振るうが―――。

 

 

「護りなさい、ヴィイッ!」

 

 

 刃がバーゲストの首を断ち切ろうとしたその瞬間、彼女を包み込むように出現した黒い巨影(ヴィイ)がその身で鎌を受けた。

 結果として、バーゲストの首を落とすはずだった刃はヴィイの腕を切断するだけに終わり、ヴィイはそのまま滑るように動いてバーゲストを離脱させていく。

 

 ならばまとめて抉り殺すとばかりに鎌を握る力を強めるが―――

 

 

「チッ! オフェリアの魔眼かッ!」

 

 

 己の意志に反して霧散していく力に、すぐにそれが眼帯を外しこちらを睨むオフェリアによるものだと判断する。

 

 必ずバーヴァン・シーを殺害しなければならないという強迫観念にも近い意志の強さ故に、今も尚溜め込まれ続けている魔力を霧散させる事は出来なかったが、それとは別に鎌に充填されていた魔力は霧散させる事が出来たのだ。

 そこへ襲い掛かるのは、馬に跨ったパーシヴァル。右手に握り締めた選定の槍に眩い輝きを宿して迫る彼に気付いたオベロンが右足で勢いよく大地を踏みしめると、そこから発生した無数の茨が彼の下へ向かっていく。……が、茨は彼とその馬に届く前にメリュジーヌが飛ばした双剣によって切断され、妨害の役目は果たせなかった。

 

 

「オベロンッ! 覚悟ッ!!」

 

 

 かつては共に女王と戦った同志。しかしそれがこの世界を、星を滅ぼすというのならば、容赦はしない。

 凄まじい気迫と共に速度を上げた馬が、振るわれた尻尾による一撃を跳躍で回避するが、その直後に飛んできた虚無の魔力弾が直撃。一瞬の後に四本の足と共に胴体が抉り取られ、その命を奪い取る。

 

 だが、パーシヴァルは愛馬が殺される瞬間にその背から跳び上がっていた。続け様に放たれた魔力弾は双剣の迎撃によって破壊されていくが、その隙間を縫うように飛んできた光線が彼の身を貫いた。

 

 

「かふ……っ」

「パーシヴァル―――ッ!」

 

 

 心臓に開いた風穴。さらにそこから周囲へ伝播した虚無の力によって右胸が抉り取られてしまった彼にメリュジーヌが悲鳴にも近い声を上げるが―――

 

 

「まだだッッ!!」

 

 

 心臓を撃ち抜かれたからなんだ。右胸が抉られようがどうした。

 まだこの手は動く。この身は、この魂は、意志はまだ―――消えていないッ!

 

 ならば注げ。この一瞬に、己の全てを懸けろッ!

 

 

「―――眩き選定の槍(ロスト・ロンギヌス)ッッッ!!!」

「う……ぉおおおおおおッッ!!?」

 

 

 それは、所有者の寿命を代価に真価を発揮する聖なる槍。消えゆく自我の手綱を必死に手繰り寄せたパーシヴァルの、文字通り命を懸けた一撃はオベロンの胸部へと直撃し、その巨体を大きく吹き飛ばした。

 

 

姉さん(・ ・ ・)ッ!!」

「任された……パーシヴァルッ!!」

 

 

 限界を超えた一撃を与えた影響で、全身を灰に変えて消えていくパーシヴァルの傍を、一筋の流星が駆け抜ける。

 前方に配置したジョフロワとフロモンを融合させたテュケイダイトが白と黒の魔力を発生させ、純白の翼を大きく広げたメリュジーヌを包み込む。

 

 

「貫き、突き通せ……ッ! 我こそ、境界を司る妖精ッ!! ―――不滅の境界、純真なる魂(リインカーネーション・アルビオン)ッッッ!!!」

 

 

 渦巻く白黒の魔力によって一本の槍となったメリュジーヌの超高速移動による一撃は、オベロンが苦し紛れに作り出した障壁を容易く粉砕し、その右半身を消滅させた。

 

 凄まじい激痛。咄嗟に体を横へずらしても右半身が丸ごと消え失せたという事実に戦慄するが、次の瞬間、オベロンにとって最悪の脅威が現れた。

 

 

聖剣(・ ・)……作成(・ ・)

 

 

 マルミアドワーズを消して自由になった右手を前に突き出せば、黄金の輝きを纏う一本の剣が彼女の手元へ舞い降りた。

 その柄をしかと握り締め、遥か上空の敵を見据える。

 

 

「ッ、その剣は……ッ!」

 

 

 その輝きに目を奪われそうになるも、オベロンは全身から放った光線でアルトリアを攻撃する。しかしそれは、彼女が剣を軽く掲げただけで軽く霧散していく。

 

 

「―――輝くは星の息吹。束ねるは命の奔流」

 

 

 両手で柄を握り締め、腰を低く落とす。

 攻撃態勢に入った彼女に応えるように大地から浮かび上がるのは、その手にある剣が放つものと同様の、黄金の粒子。

 それは、この地に生き、そして死んでいった者達の残滓。

 しかしその光の正体は、身勝手なままに死んだ妖精達ではない。かつて救世主と共にこの地を駆け抜けた、彼女を信じた者達の残滓だ。彼らの肉体は滅びても、彼女の後継者となったバーヴァン・シーを助けるという意志は滅びなかったのだ。

 

 

「星の聖剣よ、虚ろの路を切り拓け……ッ!」

 

 

 彼らの声なき祈りに背を押され、腰だめに構えた剣の名を叫ぶ。

 

 

「―――約束された勝利の剣(エクスカリバー)―――ッッッ!!!」

 

 

 それは歴史上類を見ない、星の光を集めた最強の聖剣。

 星そのものによって鋳造された、触れる者全てを例外なく切断する光の巨剣。星を害する脅威を排除する、神造兵装。

 

 一瞬の時間すら与えられずに光に呑まれるオベロン。抵抗すら許されずに星の聖剣の一撃を受けた以上、その身は完全に消滅したかに思われたが―――

 

 

「な……ッ!?」

「そんな……ッ!」

 

 

 その声はいったい、誰のものであったか。

 だが、無理もないだろう。

 

 

「ぐ……うぅ……はぁ……はぁ……まだ、終われるものかァッ!」

 

 

 最大の弱点である聖剣の一撃を受けても尚、その男は立っていた。

 全身は焼け爛れ、今にも倒れてしまいそうだが、それでもその男は、大地に両の足で立っていたのだ。

 

 間違いなく致命傷。しかし聖剣の一撃からも生き永らえたオベロンは、未だこちらに矢を構え続けているバーヴァン・シーに視線を向ける。

 既に光は三個目の宝石に宿っており、魔力量は既に対星宝具にすら匹敵するものになっている。だが、まだ最後の宝石は輝いていない。

 

 

「終わりだ……バーヴァン・シーッッ!!」

 

 

 遂に溜め込み続けた魔力が臨界点に達し、オベロンの肉体が変化する。

 メリュジーヌに粉砕された右半身を実体のある靄で代用して大地に立つその姿は、昆虫の特徴を多く持つ巨竜。

 

 遂に人型すら捨て、完全な竜種への変身を果たした彼はアギトから魔力の炎を溢れ出させ―――

 

 

[この世から……消え去れ―――ッッ!!!]

 

 

 臨界点を超えた魔力が、大きく開かれたアギトからドラゴンブレスとなって吐き出された。

 虚無と“凶気”と“凶光”。三つの力を宿した極大のブレスがバーヴァン・シーとシャガルマガラに迫る。

 

 モルガンの後継者を護ろうと彼女の前へ移動したディスフィロアの迎撃を容易く打ち破り、余波のみその巨体で吹き飛ばしたブレスが、遂にバーヴァン・シー達に命中した。

 

 間違いなく、バーヴァン・シーを塵一つなく消滅させるに足る一撃。これならば確実に仕留められる。そう確信したオベロンだったが―――。

 

 

[…………は?]

 

 

 パキリ、と。

 バーヴァン・シー達と、その周囲の空間がガラス細工のように砕け散っていく光景に、間の抜けた声が漏れる。

 

 今のは、決して彼女達の死を意味するものではなかった。では、今までそこにいた彼女はいったい―――。

 

 

「残念―――境界を弄るのは、私の専売特許なんだよね」

[……ッ!!]

 

 

 全身全霊の一撃の末に倒れていた、メリュジーヌの言葉にハッとする。

 今自分が破壊したのは、彼女が境界を操る事で出現させた、偽物のバーヴァン・シーだったのだ。これまでメリュジーヌやアルトリア達が自分の妨害をし続けてきたのは、そこにいるのが本物のバーヴァン・シーだと誤解させる為。そして、自分はまんまとその策にハマり、ここまで溜めてきた魔力の全てをドブに捨てさせられた。

 

 では本物のバーヴァン・シー達はと思った瞬間、オベロンの視界は捉える。

 

 雄々しく広げた翼に六つの魔法陣を展開し、僅かに開かれたアギトから白紫色の魔力を漲らせるシャガルマガラ。

 最後の宝石に光を宿した弓を手にした、バーヴァン・シーの姿を。

 

 

[この―――ッ!]

 

 

 飛翔し、彼女達の上を取ったオベロンが、せめて攻撃が来る前にと攻撃を仕掛けようとするが―――もう遅い。

 

 

「受け取れ、奈落の虫竜ッ! これが私達の―――力だぁあああああああッッッ!!!!」

 

 

 弓矢の前に展開される、三つの魔法陣。弓に近いものから段階的に小さくなっているそれらを、限界を超えて引き絞られた矢が通り抜けた直後、シャガルマガラの翼からも六つの白紫色の魔力光線と、開かれたアギトから極大のドラゴンブレスが放たれた。

 

 三つの魔法陣を通り抜け、赤い槍のような形へと変化した矢が、シャガルマガラの放った攻撃と共にオベロンに迫る。

 

 当然、オベロンは当たれば消滅は免れられない脅威から逃れようとするが、体が思うように動かない。

 

 奈落の虫竜―――ヴォーティガーンにとって聖剣は糧であり、同時に毒にもなる諸刃の剣だ。その一撃を受けたオベロンは消滅こそ逃れられたものの、邪悪を祓う聖なる力は確かにその身を蝕んでいたのだ。

 そんな状態のオベロンに、飛来してくる連撃から逃れる術はなく。

 

 

「が―――ァアアアアアアアアッッッ!!!」

 

 

 煌めく赤色の魔矢、白紫色のブレスと魔力光線が、オベロンの全身を呑み込む。

 オベロン・ヴォーティガーンという存在をこの世に繋ぎ止める霊核を文字通り蒸発させたそれは、その背後に聳える虚無の空洞を穿ち、瞬く間に周囲の暗闇に亀裂を走らせていく。

 

 

(あぁ……クソ)

 

 

 砕かれた霊核から、全身へ伝播していく冷たい感覚。

 それは、己に与えられた仮初の命の終焉。冷たい命の消滅。

 

 ―――だが。

 

 

(痛快だな。目的は、果たしたんだからな)

 

 

 実際、その通りだった。誰も道連れに出来ず一人消えていくのは気に喰わないが、当初の目的である『ブリテンの崩壊』は達成できたのだから。

 これで、オベロン・ヴォーティガーンという偽りに塗れた英霊は消滅する。金輪際二度と、この世に現界する事はないだろう。

 

 ただ、それでも。

 

 

(ティターニア。ひねくれ者のオベロンを愛した、架空の君。君の為に、汎人類史(あいつら)を無くすという僕の願いは、叶わなかったな)

 

 

 オベロンは、物語を愛していた。故に、それを徒に消費する世界を許す事が出来なかった。

 その消費される物語の中にこそ、彼女がいた。ろくでなしの妖精王をそれでも愛した、物語の生贄が。

 

 もしかしたら、この短くも長い旅路の中で、それに似たものに出会っていたかもしれない。しかし、大噓つきのオベロンがそれを認める事は、出来なかった。

 

 

(しかし、なんだかな……。メッタクソにやられたのにさぁ……)

 

 

 空洞が砕け、青空(・ ・)が見える。

 馬鹿げた事に、彼女達の全力は自分の作った空洞を壊すだけに留まらず、この世界を長い間見守っていた暗黒の帳すら穿ったらしい。あれは、この世界ではとうの昔に喪われた青空だった。

 

 ―――あぁ、まったく。

 

 

「……吐き気がする程に、綺麗じゃないか―――」

 

 

 痛みはない。むしろ、心の底からの充足感に包まれながら、奈落の虫竜はこの世から消え去るのだった―――。

 





・『厄災斬り裂く日輪の獣(リジェネレイト・バーゲスト)
 ……これまでバーゲストが変化してきた黒獣とは似て異なる白炎の獣に変化する能力。大きさは黒獣と比べると小さいが力は上であり、バーゲストが呪いを受け入れた事もあり、邪悪な呪いやそれを齎す存在に対する特攻能力を有する。

・『不滅の境界、純真なる魂(リインカーネーション・アルビオン)
 ……“境界竜”としての自分、竜の妖精としての自分。この二つの側面を同時に受け止め、己の在り方を昇華させたメリュジーヌだからこそ使用できる奥義。オベロンは気付かなかったが、この力にはあらゆる護りや能力を貫き、破壊する力を持っており、アルトリアのエクスカリバーやバーヴァン・シー達の奥義を受けた時も、本来よりダメージが大きくなっている。

・『アルトリア・アヴァロンのエクスカリバー』
 ……彼女は汎人類史の騎士王ではないが、聖剣の概念となったため、限りなく本物に近いエクスカリバーを作成する事が出来るようになった。無銘が使う『永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)』に近いもの。しかし威力も完成度も彼の扱う聖剣とは比べ物にならない。バーヴァン・シーのトドメに大きく貢献したが、もう少しオベロンにダメージが入っていればこれで決まっていた。

・『メリュジーヌの境界操作』
 ……バーヴァン・シーとシャガルマガラが奥義のチャージを始めた瞬間、メリュジーヌは境界を操作して彼女達の存在を世界から隠蔽し、代わりに彼女達の鏡像を作る事でオベロンを騙した。結果としてオベロンは見事に騙され、バーヴァン・シー達にトドメを刺される事となった。

・『バーヴァン・シー&シャガルマガラ(カリア)のトドメ』
 ……正式名称、『擬槍魔射/天廻ノ祝呪(インヘリテド・ロンゴミニアド)』。フェイルノートを基に構築した身の丈を超える弓に番えた矢に超弩級の魔力を装填し、相棒たる古龍のブレスと魔力光線と共に放つ奥義。最大火力にする為には長時間のチャージが必要となるが、最大火力に限定しなければチャージ中の段階でも発動可能。最大まで魔力を込めれば、その威力は対城、対星を超えた対界宝具にまで匹敵するものとなる。


 アルトリア・アヴァロンにエクスカリバーを使用させた理由ですが、聖剣のエッセンスをカルデアに提供できるなら、それを基にエクスカリバーを作成する事も出来そうだなという考えからです。
 遂にオベロン戦が終了しました……。作者的にもストーリー的にも強敵かつ難敵な彼でしたが、遂に倒す事が出来ました。
 ですがブリテン編はまだ終わりません。もう少しだけ続きます……が、来月上旬には必ず完結しますので、その次は以前の後書きで記載した話を投稿して、ミクトラン編に突入したいと思います。

 そして、テュフォンの番外回が完成しましたッ! 明日の夜10時に投稿しますが、参考資料が本当に少ないためテュフォンの解像度がかなり低いかもしれません……。それでも楽しみにして頂ければ幸いですッ!

 私事ですが、最近手作りパンにハマりました。
 私、少し前にゲームに課金してからというもの、「如何に米を使わずに腹を満たすか」という考えに取り憑かれるようになっておりまして。ではどうすべきかとネットサーフィンしていたところ、手作りパンなるものを見つけたんですよ。手間は掛かりますが、慣れれば美味しいパンを量産できるのが大変嬉しいので後悔はしておりません。
 もちろん、最初こそは失敗続きでした。簡単にできるフランスパンを作ろうとしたら真っ黒い板が出来ましたし、米粉パンを作ろうとした米粉を大量投下してしまい真っ白なクソマズ粉団子が出来上がったりしました。ですが、何度も繰り返すうちに段々『決してパンと呼べないなにか』から『パンに近い食物』に進化していくのが楽しかったですねぇ。
 皆さんも、暇な時があれば手作りパンに手を出してみてはどうでしょうか。慣れれば(少し安くなってもやっぱり高い)米を使わずに空腹を満たせるようになりますよ。

 それではまた次回ッ!
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