ドーモ=ミナサン。
ワイルズのアプデで追加されたラギアクルスの水中戦の自由度の高さに驚いたseven774です。
待ちに待って遂に実装された水中戦でしたが、流石最新作ですね。3や3Gと比べて格段に画質がよくなった事で水の透明感もそうですが、それに伴うラギアクルスの電撃の美しさがより際立って楽しく狩りをする事が出来ましたッ! ですが今作のラギアクルス、歴代作品と比べて攻撃モーションが大幅に変わったと思ったので、個人的にはかなり苦戦しました……。
セルレギオスもかなり楽しめましたね。太刀使いの私としては、狭い場所で戦うとカウンターを叩き込みやすくて楽しかったですねぇ。一度ペースを持っていかれるとタコ殴りにされますがね……。
fgoではボックスイベが始まりましたねッ! 次の冠位戴冠戦はランサーなので、我がカルデアではイベントで集めた種火でスカサハを育成していこうかと思っています。水着キャストリア、バーサーカー戴冠戦が終わってもお前に休みはない。オベロンと一緒にスフィンクスとアーラシュを消し炭にするのだ。
戴冠戦が近付けばランサーPUもあると思いますので、そちらで宝具レベル上げを狙いつつ、余裕があれば強いと噂の乳上を召喚できればと思っています。
今回は二つの視点で展開されます。
それでは、どうぞッ!
川のせせらぎと、虫達の鳴き声が聞こえる。
どこからともなく聞こえてくる、キリギリスやコオロギ達が奏でる鳴き声のオーケストラに包まれながら足元を見下ろしてみる。
雑草が生え、凸凹に盛り上がった土。これまで一度も、人の手によって舗装されていない大地だ。
続けて視線を上に向けてみる。
月明かりが差し込んでいたのでわかっていたが、そこまで鬱蒼とした森ではないようだ。だが決して深くないというわけではなく、視線を動かしてみれば月明かりが差し込んでいない場所も見える事から、今私がいる場所が比較的明るい場所なのだろう。
それに、月明かりに加えて周囲には蛍達が飛んでいるのもあり、申し訳程度ではあるものの少しだけ明るい。
―――いや、今はそれよりも。
「ここ、どこ……?」
この一言に尽きてしまう。
本能的に周囲の状況の確認をしてしまったが、それも終わってしまった今、次に気になるのは『ここがどこなのか』という疑問だった。
とりあえずここで立ち止まっても仕方ないと思うので、歩きながら思考に続ける。
(私はさっきまで、オフェリアちゃん達と一緒にオベロンと戦っていたはず。まさか、オベロンのスキルか宝具が発動した……? でも、そんな余裕なんてバーヴァン・シー達の攻撃を受けた彼にはないだろうし……。でも、なんとなくだけどわかる事もある)
顎に指を添えながら立ち止まり、改めて周囲を見渡す。
一見すればただの夜の森林。けれど私の眼であれば、微かにだが木々や草花に魔力が宿っている事がよくわかった。それも個別のものではなく、全てが同一の魔力だ。
それに、木々や虫達からは生命の気配が感じられない。これ程の規模の森であれば、それ相応の生命力が満ちているはずなのにだ。
これらの要素から考えるに、今私がいるこの森は、現実に存在するものではないと断定できる。しかし、かといってこの世界が誰かのスキルや宝具によって齎されたものかと聞かれれば、そうではないと言わざるを得ない。
となるとここは、誰かの心象風景の可能性が高い。術者が体外に顕現させる固有結界とは似て非なる世界が、この森林の正体だろう。
ではこの風景の持ち主が誰かという疑問が浮かび上がるが……、その答えは目の前にいた。
「うわっ。なんで“祖龍”まで……」
「いきなりなご挨拶だねぇ、オベロン?」
木の陰から姿を現して早々、私を見て苦虫を嚙み潰したような顔をした彼に微笑みを返す。
やっぱり、この世界の主はオベロンだったようだ。
「『
「反吐が出るくらい甘い奴がねぇ。そういう君はどうしてここに? まさかあいつと同じで寝落ちしちゃった?」
「どうだろ。そんな気はしなかったんだけど……もしかして、ヴォーティガーンの霊基情報が私に触れたからかな」
オベロン・ヴォーティガーンは、バーヴァン・シー達の最後の攻撃によって消滅した。その際に霧散したヴォーティガーンの霊基情報が大元の私に触れた事で、私をこの世界に引き込んだのだろうか。
けれど、私がこの世界にいられる時間はそう長くないだろう。この仮説が正しかった場合、既にオベロンが消滅している以上、その残滓であるヴォーティガーンの霊基情報もそう時間をかけずに消滅するはずだ。仮説が間違っていた場合どうなるかはわからないが、少なくとも、永遠にこの世界に閉じ込められるなんて事はないだろう。
「だったら早く出てってくれよ。こっちは疲れてるんだ。さっさと休ませてくれ」
「そうは言ってもねぇ。無理に抜け出すとどうなるかわからないし……。そうだ、だったら少しだけ話そうよ。君に聞きたい事があるし」
「俺の話聞いてた? 疲れてるって言っただろ」
「いいじゃない。たぶん、私がここにいられる時間ってそう長くないだろうし、聞きたい事を聞き終えたらお別れにするから、ね?」
「…………はぁ」
少しの沈黙の後、酷く面倒そうに溜息が吐き出される。
心底嫌そうにしながらも近くにあった倒木にオベロンが腰かけたので、私も例に倣いその隣に腰を下ろす。
「なんで隣なんだよ」
「別にいいでしょう? こんな機会、滅多にないんだもの」
「ホンットに気持ち悪いな、お前。で? 聞きたい事ってなに?」
「世界を滅ぼそうとした理由を聞かせてほしい」
私の問いかけに、視線だけこちらに向けていたオベロンは小さく舌打ちを返す。
「知ってどうする。俺の半身はヴォーティガーン―――お前に連なる竜だ。
なるほど、確かに彼の言葉にも一理ある。
彼と融合しているヴォーティガーンは、私の息子である“黒龍”ミラボレアスの力の一端から生まれた存在。謂わば孫だ。人間や獣のような存在ならそうはいかないが、私のような存在となれば、この身から分かたれた者達の目的も、大まかながら理解できる。
汎人類史に誕生したヴォーティガーンの目的は、神代から離れようとするブリテンを終わらせる事だった。こちらのヴォーティガーンの目的も、それに近しいものだろう。
しかし、それはあくまで“魔竜”ヴォーティガーンの目的だ。
「私が聞きたいのは、オベロン・ヴォーティガーンの目的だよ。ヴォーティガーンのそれも関わってはいるだろうけど、君個人の目的についても聞きたいの。もう全部終わってるんだし、最期くらい本音で話してほしいと思ってね」
「……まさか、俺の性質を……?」
「勘だけどね。君みたいな英霊の場合、なにかしら異常な性質を持っていてもおかしくないと思って」
これまで生きてきた中で、私はたくさんの英雄や反英雄達と出会ってきた。英霊召喚の技術をソロモンから聞いた時から、もし彼らが英霊となった場合の事を考える事もあった。
しかし、今目の前にいる彼のようなケースの英霊は、ごく少数に限られているだろう。なにせ、本来なら混じり合うはずのない存在が結び付き、一つの
まぁ、作品によってはオベロンはモルガンの子として扱われている事もあるから*1、完全に無関係ってわけでもないのがアレな話だけれど。
「……つまらない話だけどな」
私が聞きたい事を理解したのか、オベロンは静かに語り始める。
このブリテンは、架空の歴史の中でしか生きられなかったモルガンが描いた、一万四千年もの
その
誰にも覚えられないまま消えた物語。誰かの記憶に残った物語。それら全てを『更新/成長』の名の下に放り棄てる汎人類史に、深い怒りを覚えた事。
「ここまで言えばもうわかるだろ? 俺は、ムカついてたんだよ。色んな事が積み重なりまくった結果、全てを巻き込んで終わらせようとしたってわけ」
話は終わったとばかりに黙り込むオベロン。なにか言いたい事があればさっさと言えとばかりにこちらに向けられる瞳に、私は「ふふっ」と笑ってから答えた。
「君って、優しいんだね。それもとびっきりに」
「はぁ?」
心底あり得ないといった表情で顔を向けてきた彼に、「だってさ」と続ける。
「誰にも覚えられる事のない
多くの逸話を残し、人々の信仰を集める事で英霊となった者達でも、彼のように『物語の為に戦う』という選択肢を取れる者は少ない。英霊となり、世界を守護する役目を背負った彼らにとって、その世界の存続を妨害する
もちろん、彼らの中にはその物語に触れ、護ろうと決意する者もいるだろう。しかし、それは物語と関わり続けてそうなるもの。オベロンのような、始めから物語を消費する世界に対する怒りを持っている者などまずいないだろう。
誰にも覚えられない、覚えられてもいつかは忘れ去られる物語に、彼は寄り添っていた。話す事の出来ない、戦う事の出来ない彼らの為に、オベロンは戦い続けた。
結果は失敗に終わったけれど、それでも彼は戦い抜いたのだ。
「君と戦った私から言うのもなんだけど……よく頑張ったね、オベロン」
「ハッ、世界の敵にもその眼差しなんて、頭お花畑かよ。お優しい事で」
「素直じゃないなぁ」
でも、それが彼なのだろう。自分の本音を曝け出さず、正面から相手に憎まれ口を叩き付ける。しかし、その嘘や侮蔑に塗れた言葉の裏には、彼の真意がこれでもかと宿っている。
それにまた小さく笑い声を漏らし、視線を上に向ける。
(静かな夜の時間も、もう終わりね……)
いつの間にか、周りに飛んでいた蛍達は姿を消しており、代わりに木々の隙間から眩しい光が差し込み始めている。
もうじき、この夜も終わりを迎える。その先にあるのは、いったいどんな空なのだろうか。
でも、これだけは断言できる。
この先に広がるのは、素晴らしい空だ。絆を育み、大きな勇気を抱いた者達が掴んだ空が、悪いものであるはずがないのだから。
……おや。
「もう行っちゃうの?」
「やるべき事はやり切ったさ。演技を終えた役者は、大人しく舞台から
倒木から立ち上がり、未だ光が差し込まない木々の影に消えていこうとするオベロン。
確かに、オベロンは私の質問に誠実に答えてくれた。これ以上ここに残る理由など、彼にはないだろう。
―――でも、逃がさないよ?
「なら、お手伝い係にでもなってみれば?」
「は?」
うわ、振り向いた瞬間なんだこいつみたいな目で振り向いてきた。
「こいつは驚いた。お前、舞台を降りた役者をまだ働かせるつもりかよ」
「その通りだよ。君みたいな子には、是非ともあの子達の力になってほしいから」
第一、私がシュレイド異聞帯の管理者になって、カルデアなんていう存在がいる時点で、今目の前にいる彼を逃す手はなくなった。どんな事をしていようとも、彼の存在はカルデアの旅路を照らす灯の一つとなるだろうから。
まぁ、ベリルを扇動して
「……ホンット、恐ろしい奴だよ」
私の返答を聞いて少し話す気が戻って来たのか。先程まで座っていた倒木に座り直した彼は、しかし世の中全てを馬鹿にするように嗤って続けた。
「でも、そうはいかないと思うよ? 向こうだって、ずっと旅してきた相手に裏切られたんだ。召喚する気さえ起きないんじゃないか?」
「さぁ、それはどうかしら。案外、すぐに召喚されるかもね」
「いやあり得ないだろ、流石に。てか、なんでそう思うわけ? 根拠とかある?」
「あるよ。ここまで旅を続けてこれたのが、その理由」
これまでの旅路の中で、彼女達は多くの事を経験してきたはずだ。心を通わせた相手と最後まで戦い抜いた事も、信頼していた相手に裏切られた事もあるだろう。
そんな彼女達が、ただ「裏切られたから」という理由で彼を召喚しないなんて事はないだろう。
私の答えにどこか引っ掛かるものがあったのか、神妙な表情となった彼にくすりと笑う。キッと殺気を宿した瞳で睨まれるが、そんな殺気など警戒に値しない。寧ろ可愛い。ヤンチャしてた頃の弟妹達を思い出すし。
「……ま、いいさ。されたらされたで、あいつの行く末を見届けてやる。俺みたいな
「あら、素直に言うんだね? もっと回りくどく言いそうな気がしたけど」
「単純な理由と、それに納得させられる記録のせいだろ。正直、自分でも驚いてる。……あぁ、そうだ。こっちからも一つ聞きたい事があったんだ」
「?」
今までのものとはどこか違う睨み方で、こちらを見てきた彼に首を傾げる。
「“祖龍”、あんたは世界が滅ぶのは許せない。そうだろ?」
「厳密には君がやろうとした、続きのない滅びだね。私はそれが許せない」
滅びにも、二つの種類がある。
一つは続きのある滅び。一度はその形を失ったものが、また新たな形で蘇る滅びだ。私からすると、歴史だろうか。一つの霊長の時代が終わり、また新たな霊長の時代が幕を開ける。
これは意味のある滅びだ。先代が築き上げたものを受け継いだ次代が、さらに発展させていくのだから。
こういう形の滅びならば、私も受け入れられる。
しかし、二つ目の滅び―――続きのない滅びは、絶対に容認できない。
続くものがなく、本当の意味でそこで終わってしまうもの。誰に看取られる事もなく、ただ孤独に消えていく事しか出来ないもの。オベロンが齎そうとした崩落現象の行き着く先がこれだと思ったから、私は彼と戦った。……私情がかなり入っている事もあるが。
「でも、どうしていきなりそんな事を? 君ならそれぐらい知ってるだろうに」
「気になったんだよ。どうして―――」
そうしてオベロンの口から語られた言葉に、私は「…………え?」と答えるしかなかった。
「ま、待って。どういう事……? どうして……」
「なにその反応。まさか、気付けなかったのか? お前程の奴が?」
「いや……あり得ない。あり得ない、はず……」
何度も口や心で「あり得ない」と呟いても、彼の嘘偽りのない確信によって吐き出された言葉は、私の思考を乱し続ける。
どうやら私が本気で
「マジかよ、おい? まさか“祖龍”ともあろう奴が気付けなかったのか? そんなんじゃ、護れるものも護れないだろうなッ!」
「……えぇ、そうね。これからは、いつも以上に気を引き締めるよう心掛けるわ」
否定する言葉も度胸も、こちらにはなかった。先の件において、悪いのは完全に私の方なのだから。
……でも、こうして教えてもらった以上、改めて
「はは、最後にいい顔が見れた。悔しさもあるが……まぁ、満足だ」
私の返答にまた笑ったオベロンは、今度こそ踵を返して影へと歩を進め始める。
「じゃあね、オベロン・ヴォーティガーン。また会える日を楽しみにしてるよ」
「あばよ、クソババア。次に会えたら、今度は俺がお前の邪魔をしてやるよ」
ひらひらと手を振りながら、オベロンは影にその身を溶け込ませて消えていった。
きっと、こんな風に彼と会話できるのは、これが最初で最後だろう。でも、後悔はない。話したい事は全部話せたしね。本当はもっと褒めながら撫でてあげたかったけど、こればかりは本気で嫌がられそうだからやめた。
……別れの言葉にちょっとだけ拳骨してやりたいって思ったのは、秘密だよ?
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「―――ツ。ルーツッ!」
「ん……ぅ……?」
誰かに名を呼ばれながらゆすられ、閉じていた瞼が持ち上げられる。
開かれた視界に飛び込んでくる光に思わず何度か瞬きを繰り返して視界を慣れさせていくと、自分の顔を覗き込む女性と目が合った。
「……オフェリアちゃん?」
「よかった……。貴女、いきなり立香と一緒に倒れたのよ? オベロンが最後に貴女達に呪いでも残したのかって、心配したわ」
「……ふふっ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
オフェリアの手を借りずに起き上がったルーツが視線を動かすと、自分と同じように倒れていたのか、起き上がった立香の姿が目に入った。相棒のマシュに軽めの確認を行ってもらっているが、彼女もルーツと同様、なにも異常はないようだった。
彼女になにもなくて安心していると、ある違和感に気付いた。
「空が……」
その違和感は、空にあった。
自分達がこの國に足を踏み入れてからというもの、ブリテンの空は常に星々が煌めく夜空だった。どれだけ時間が経とうとも、太陽が昇る事のない永遠の夜が、このブリテンの常識だった。
その夜空が今、明けようとしている。
「バーヴァン・シー達の攻撃が、この國を覆う嵐の壁を破壊したのよ。とんでもない威力ね」
「ぐっちゃん。……そうだね。とんでもないよ、本当に」
バーヴァン・シーと、シャガルマガラとなった狩人。彼女達の攻撃がオベロンのトドメとなったのは事実だが、同時に間違いでもある。
彼女達がオベロンを仕留める事が出来たのは、それまで彼女の仲間達がオベロンを抑え込み続けたからだ。自分達も戦ったが、それでもあの戦いでバーヴァン・シー達に貢献していたのは、モルガンや妖精騎士達だった。
いや、それだけじゃない。自分達がこの地に来るずっと前から彼女達の間にあった絆が、この戦いの勝利に繋がったのだ。
バーヴァン・シーと彼女の仲間達の絆が、崩落の闇を打ち砕いたのだ。
「で、これからどうするのよ。この星を終わらせようとした奴は消えたし、シュレイドに戻るの?」
虞美人からの問いかけは、至極真っ当だ。
自分達がこの地に足を踏み入れたのは、ここに星を滅ぼさんとする意志を持つ者がいたからだ。しかし、その存在も既に倒れた以上、自分達がここに残り続ける理由はない。
しかし。
「いや、まだシュレイドには戻らない。私達の役目は終わったけど―――」
―――まだ、見届けるものがある。
視線の先。立香に歩み寄る
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(体が、重い……)
今にも崩れ落ちそうになる体を必死に留めながら、歩を進める。
仕方のない話だ。オベロン・ヴォーティガーンとの戦いで、自分達は全力を出し尽くした。そうしなければ勝てなかった。この場にいる誰もが、その時に出来る全てをやり尽くした。
背後を見やる。
メリュジーヌもバーゲストも、そして
自分がこれからしようとしている事に気付いたのか、この地で共に生きてきた仲間達は口元に小さく笑みを浮かべて頷いてきた。
「ありがとよ」
そんな仲間達に、こちらも小さく笑みと共に感謝の言葉を呟く。
視線を前に戻す。
戦いを終えて使命を果たしたのか、母がアルトリアと呼んだ女性を始め、グリムと呼ばれていた男が退去していく。残された少女は彼らのいた場所を名残惜しそうに、しかしそれよりも明るい眼差しで見つめていたが、自分の存在に気が付いたのか、こちらに視線を向けてきた。
「……バーヴァン・シー」
「まずは、お疲れ様って言っておく。お互い、全力で戦ったもんな」
「そう、だね。うん、お疲れ様」
「おう」
……まずい。疲労で脳が上手く働かない。本題から切り出したかったのに、なぜか労いの言葉を投げかけてしまった。
これは、なるべく早く行動に出た方がよさそうだ。
「―――……お母様は」
短い沈黙の後、バーヴァン・シーはゆっくりと視線を動かし、戦いの余波で荒れ果てた大地を見やる。
「私に、王位を譲り渡した。けれど、この先に繁栄はない」
そう、もう二度と、この世界に続きは来ない。
この國は、滅んでしまった。運よく生き残った者達を集めたところで、崩落を受けたこの世界は、もう復興する事は叶わない。
本来ならば王権と共に継ぐはずだった玉座はなく、この力を國の為に使う事も出来なくなってしまった。
けれど、バーヴァン・シーは一つだけ、この力の使い道がわかっていた。
「―――おい、異邦の魔術師。私と勝負しろ」
「……ッ!」
その言葉に、立香やマシュが目を見開く。
「お母様が言ってた、異聞帯って言うの? それを五つ乗り越えてきたお前らが、この國を救ってくれた事には感謝する。けど、それとこれとは話は別」
昔、母が聞かせてくれた『異聞帯』という世界。間違った歴史を辿ってしまったが故に世界から切り捨てられた、いずれ誰からも認識されなくなる世界。
その時には既に母がブリテンをその異聞帯から特異点と呼ばれるものに作り替えていたそうだが、それでも、今自分がいる世界がその“切り捨てられた世界”にいるのだと知って、酷く狼狽したものだ。
そして次に聞かされたのは、その異聞帯を破壊し続けるカルデアという組織の話だった。
最初こそ、世界を破壊するという話から悪辣な連中だと思っていた。しかし、それは間違いだった。
藤丸立香を始め、カルデアに在籍する者達は、誰もが善良な存在だった。始めに思っていたような、心身共に悪に染まったような者達ではなかったのだ。
だからこそ―――。
「私は最後に、お前達を知りたい。幾つもの世界を踏み越えてきたお前達の力を、意志を、信念を、知りたくなった」
破壊するのではなく、乗り越えてきた彼女達の力を、バーヴァン・シーは改めて知りたくなった。
今度は敵を同じくする味方ではなく、互いの意志をぶつけ合う相手として。
「世界を救う戦いでも、世界を懸けた戦いでもない。ただ、確かめさせてくれ。お前達に、私達を乗り越える力があるかどうかを」
己の魂を強く意識すると、自分の左右に二つの得物が姿を現す。
一つは青色の双刃を持つ純白の棍。長らく契約を結んでいた相棒が、生前好んで使用していた“THEミラクル”と呼ばれる操虫棍。
もう一つは、仄暗い青色の紋様が刻まれた漆黒のハルバード。母が生前愛用し、力を継承する際に受け取ったもの。
これらに加え、己の手には、いつだって戦場を共にしてきた
「マシュ」
「……はい」
合計三つの得物を有した彼女に、立香達は緩んでいた意識をもう一度引き締め、臨戦態勢を取る。
自分と同じくらい疲れているはずなのに、その疲れを一切感じさせない彼女達の立ち姿にフッと笑い―――告げる。
「さぁ、始めましょう。最後の戦いを」
明けていく夜空の下、亡国の妖精妃は立つ。
己の前に立つ者達が、本当に自分達を乗り越えて行くべき者達なのかを、見定める為に。
亡国の妖精妃を前に、星詠みの旅人達は決意を固める。
目の前に立つ者に、自分達の価値を証明する為に。
そして、祖なる者はただ静かに、彼女達が動き出す時を待ち続ける。
彼女達の意志の強さを再確認する為に。
かくして、妖精國ブリテン最後の戦いは始まった―――。
・『オベロン・ヴォーティガーンのルーツに対する印象』
……立場的には孫と祖母に近いが、ヴォーティガーンはともかく、オベロンは別に家族愛のようなものは微塵も感じていない。むしろ「こいつのせいでヴォーティガーンが生まれて、自分が融合したのか」とすら思っている。しかしいくら言っても基本笑って返してくるルーツには頭が上がらない。が、彼女が気付けなかった事を以前から気付いていた事を知ると少しだけ上機嫌になった。
かなり素直に話に乗ってくれる理由としては、ルーツと出会う前に原作と同じように立香と会話し、少しだけ毒気が抜かれていたから。
・『
……オベロンが気付き、ルーツが気付けなかった存在。その目的は不明だが、ルーツはブリテンより帰還した後に問い詰めるつもりでいる。
オベロンが気付けた理由としては、同じ穴の狢であるからという事。
・『バーヴァン・シー』
……世界を滅ぼさんとしたオベロンとの戦いは終わったが、立香達の決意の強さを改めて知りたいと思い、勝負を申し込んだ。
次回、バーヴァン・シーVSカルデアです。ルーツ達はその戦いを見届ける傍観者となります。
それではまた次回ッ!