【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 ランサー戴冠戦に向けて乳上を引いたら、気付けば約500個あったはずの石が約200個になっていたseven774です。
 ガチャ回し中、パールヴァティーも召喚できたのですが、これはインドラも引けという事だったんですかね……? 確かにストーリーでの彼は実にかっこよく、これまで出てきた神々の中でも特に人間臭くて好きな部類だったのですが……流石にもう無理です。彼には戴冠戦でスカサハとメリュジーヌの槍(剣)の錆になってもらいます。

 今回はバーヴァン・シーVSマシュ&立香です。

 それでは、どうぞッ!



絆の証明

 

 重い金属同士がぶつかり合う音が、絶え間なく妖精國に響き渡る。

 徐々に明けていく夜空だが、それでもまだ薄暗い大地に飛び散る火花が、ぶつかり合う両者の顔を照らし出す。

 

 

「ヤァ―――ッ!」

 

 

 バーヴァン・シーが投擲した操虫棍を回避したマシュが、両手で握った盾を押し出してきた。

 前方から迫るシールドチャージ。自分の身の丈を超える大きさの盾を横に飛び退いて回避し、フェイルノートでがら空きの背中を狙う。

 

 

「緊急回避ッ!」

 

 

 しかし、妖弦の一撃がマシュを捉える直後、カルデアの初期礼装に身を包んだ立香の魔術が発動した。

 瞬間、マシュの体がスライドするように真横へ動き、フェイルノートの一撃を回避される。

 

 自身の意図なく体が動いた感覚からか、それが長らく戦場を共にしてきた立香の行動によるものだと気付いていたマシュが、真横へ動いていた体を右足を軸に回転。緊急回避による移動と、右足を中心に回転する事で得られる遠心力で盾を投擲した。

 

 だが、直線にしか進めない盾の対処など、バーヴァン・シーからすれば容易い事。フェイルノートを背に戻し、自分から見て左側に浮かんでいるハルバードを掴み取って振り上げる。

 ガギンッ、と甲高い音を奏でながら盾を上空へと打ち上げる。振り上げたハルバードの向こうに、盾の対処をしている間に接近してきたマシュが拳を構えている姿が見えるが、それも予想通り。

 柄を握る両手に力を籠め、振り上げたハルバードを勢いよく振り下ろす。

 至近距離故に最も威力の高い刃は届かないが、柄による一撃はマシュを怯ませるには充分だろう。

 

 

「させないッ!」

 

 

 もちろん、それを許す立香ではなかった。即座に自身が着用している礼装を初期戦闘服から黒スーツに変化させ、組み込まれた魔術を発動してきた。

 

 

「必至、反応強化ッ!」

「―――ッ!」

 

 

 立香の魔術が発動した直後、マシュの全感覚が強化される。自分以外の時がスローモーションのように遅くなった世界の中で、彼女は左肩に迫るハルバードの柄を左手で打ち払い、バーヴァン・シーの胴体をがら空きにした。

 

 

(マジかよ……ッ!?)

 

 

 バーヴァン・シーからすれば、この一瞬でマシュがあり得ない速度で動いたように見えただろう。予想外の速度による迎撃と、自身の胴体をがら空きにされた事実に直撃すると思っていた一撃を打ち払われた衝撃に気が抜けてしまった次の瞬間、突き出された拳が鳩尾へと突き刺さった。

 

 バーヴァン・シーは知らないが、現在立香が装備している礼装の名は、ロイヤルブランド。こことは違う別世界で起こった聖杯戦争に召喚された騎士が身に纏っていたものを基に構築されたもの。それによる強化を受けたマシュの拳撃は重く、そして鋭い。

 

 

「カハ……ッ!?」

 

 

 鳩尾に突き刺さり、内臓を無理矢理捻じ曲げんとする一撃。吐き出すものがない胃袋から込み上がってきたなけなしの胃液と唾液が混じった液体が口から吐き出され、体勢がくの字に折れ曲がる。

 そこへ繰り出される、下方からのアッパーカット。天を衝くが如き鋭さで動く拳が下を向いていたバーヴァン・シーの顔面に迫るが―――

 

 

「なッ!?」

 

 

 次に驚愕したのは、マシュの方だった。

 鳩尾に叩き込んだ拳で大きく体勢を崩した矢先に繰り出したアッパーは、間違いなくバーヴァン・シーの顔面を捉えるはずだった。

 

 しかし、そうはならなかった。

 

 寸でのところで拳を受け取めた左手に己の全体重を乗せたバーヴァン・シーが、アッパーの威力と勢いによって浮かび上がったのだから。

 

 掴んで止めるのではなく。掴み、受け入れる。左手以外を極限まで脱力させたバーヴァン・シーの肉体は強化されたマシュの筋力によって浮遊し、勢いが衰えたところで左手を放し、体勢を整えて着地。彼女達にとっては予想外であろう行動の末に、マシュの背後を取った。

 

 

「―――ッ!」

 

 

 当然、背後を取られたマシュはバーヴァン・シーから距離を取るか、彼女に距離を取らせるような行動に出る。この時の彼女が選び取った選択は、後者。

 振り向かずに、無意識のうちに後方へ跳ね上がる右足。背後に立つバーヴァン・シーを蹴り飛ばそうとしたそれを、容易く掴み取る。

 

 こうは言いたくないが、先の一撃によってハルバードが手元から離れていたのが幸いした。それによって自由になっていた左手も使い、両手で彼女の足首を掴んで回転する。

 

 ハンマー投げの要領で投げ飛ばしたマシュを、再び手に取ったフェイルノートで狙撃。盾を手放してしまったが故に防御手段を失った彼女は、咄嗟を身を捩る事で直撃を回避するが、それでも数カ所は傷を与える事が出来た。

 

 フェイルノートの狙撃を受けながらも着地したマシュが、遠くに落ちた盾を取るべく走り出す。が、バーヴァン・シーもそうはさせじと先に動き、彼女と盾の間に割って入り、上空へ向けて妖弦を奏でた。

 

 射ち出された矢は魔力によって編まれたものだが、バーヴァン・シーの意思により質量を宿している。質量を持つものは重力に引かれ、マシュの頭上から雨あられと降り注ぎ始めた。

 

 全てを完璧に避ける事は出来なくとも、最低限のダメージに抑えながらその間を駆けてくるマシュに、バーヴァン・シーはフェイルノートを手放し操虫棍を掴み取る。

 

 一閃。

 

 一筋の線を引くように振り抜いた操虫棍から赤黒い雷―――龍属性を帯びた斬撃が飛び出す。

 上空から降り注ぐ矢の雨を躱していたマシュは、当然と言うべきか、前方から飛んでくる斬撃を前に飛び込んで回避してきた。

 が、飛び込んだ後はどうしても無防備になる。起き上がるにせよ、次の回避行動に移るにせよ、必ず。

 

 

「うぅ……ッ!?」

「マシュッ!」

 

 

 故に、上空からの矢からは逃れられない。次の行動に移ろうとした彼女の背中に着弾したそれは、鎧を貫く事はせず、代わりに爆ぜる事で体内に衝撃という名のダメージを与えていく。

 

 

「喰らえ……ッ!」

 

 

 そこへ再び一閃。さらに続けて操虫棍を振るい続ける。

 生前、その武器一つで最強の龍の一角を崩したという相棒程の技量こそないものの、絆石を通して魂で繋がった影響か、まるで昔から愛用してきたように馴染むそれから飛び出す無数の斬撃。

 大地を削りながら迫るそれらに対し、マシュは痛む体に鞭打って立ち上がり、腰の鞘から剣を引き抜いた。

 

 

「フッ、ハァ―――ッ!」

 

 

 輝きを纏った剣身が煌めき、龍属性の斬撃を打ち払う。そのまま頭上へ向けて剣を振るえば、そこから飛び出した光球の弾幕がフェイルノートの雨を相殺し尽くした。

 剣を片手にこちらへ向かってくるマシュに、バーヴァン・シーもまた操虫棍を手に飛びかかる。

 

 衝突した刃同士が耳障りな甲高い音を奏で、鍔迫り合いへと移行する。

 

 

「中々やるじゃねぇか……ッ! 五つの異聞帯を越えてきたのは伊達じゃないってかッ!」

「そちらこそ……素晴らしい強さです、ねッ!」

 

 

 一気に踏み込み、力を込めた剣が操虫棍を押し退ける。体勢を崩されたバーヴァン・シーの胴にマシュの剣が振るわれるが、主を護るべく動き出したハルバードが彼女の剣を弾き、逆に斬り裂いた。

 

 

「ぐ……ッ!?」

(今だ……ッ!)

 

 

 ハルバードの迎撃で逆にダメージを受けたマシュに、バーヴァン・シーはさらに操虫棍で追撃を加えようとするも―――

 

 

「オシリスの塵、発動ッ!」

 

 

 間髪入れずに行使された魔術がマシュの身を覆い、追撃を阻まれてしまった。

 無理な追撃は逆に不利になると悟り、舌打ち交じりに距離を取るバーヴァン・シーだが、マシュの背後にあるものを見て目を見開いた。

 

 

(盾……ッ!? チッ、あの時かッ!)

 

 

 自分の背後にあったはずの盾が、マシュの背後にある。

 恐らく、あの鍔迫り合いの時。マシュは飛びかかってきた自分を受け止めて鍔迫り合いに移行する直後、バーヴァン・シーに悟らせない足捌きで互いの位置を入れ替えたのだ。

 そして、それを予測していた立香は、バーヴァン・シーに距離を取らせるべく攻撃を防ぐ魔術を発動した。マシュが安全に盾を取り戻せるように。

 

 

「マスターも、か。その観察眼も伊達じゃないな」

「私に出来るのは、これぐらいしかないから。出来る限りのサポートをするだけだよ」

「これぐらいしかないから、か……。わかるぜ、その気持ち」

 

 

 いつかの自分だって、そうだった。

 自分勝手な妖精達が大半を占める妖精國を、それでも運営し続けた母。日々過労によるストレスが溜まっているだろう彼女の為に、手を尽くしてきた。

 

 カリアを召喚してからは彼女より戦闘技術を学び、妖精騎士の名に恥じない強さを手に入れた。ベリルからは呪いを基礎に置いた黒魔術を教わり、さらに己の力を高めた。

 母を裏切った罪は重いが、その点のみでは、バーヴァン・シーはベリルに感謝の念を抱いていた。

 

 靴作りの世界を知ってからは、ひたすらにその腕を磨き続けた。

 最高傑作中の最高傑作をプレゼントした時の母の笑顔は、今でも忘れられない。

 『捨てるには惜しい失敗作の廃棄場所』として立ち上げた店も、いつからか一大ブランドにまで成長しており、多くの民に親しまれるようになった。それも母は心から喜んでくれた。

 

 戦いでも、それ以外でも、自分はとにかく我武者羅に生きてきたと自負している。

 立香も、そんな風にしてここまで来たのだろうか。良い記憶も、悪い記憶も、受け止めるにはあまりにも膨大過ぎる二つを必死に抱えて、どれ一つ零さないように、傷付きながら生きてきたのだろうか。

 

 ―――だとしたら、この決闘を申し出た甲斐があったものだ。

 

 

「…………」

 

 

 改めて、自分の状態を確認する。

 母より譲り受けた魔術の数々も、今となってはもう使えない。それに使える魔力は、オベロン・ヴォーティガーンとの戦いで使い切ってしまったからだ。

 それに、そろそろ体力もなくなってきた。満足な休息も取らずに決闘に臨んだのだから当然だ。さっきから頭の片隅が変にぼんやりしているのが、その証拠だ。

 

 それならば、これで終わりにしよう。

 

 

「こいつで最後だ。お前らの全力、この私に見せてくれよ」

「「……ッ!!」」

 

 

 ドレスの装飾とプレートが砕け、同じく砕け散ったフェイルノートと融合して一本の弓として再構築される。

 己の身の丈を超える大きさのそれに眩い光の矢を番えれば、立香とマシュは表情を引き締めて構えた。

 

 こちらに向かってこない様子から察するに、妨害などせずに受け止めるつもりなのだろう。この矢の威力を知っているはずなのに妨害に来ないとは、普通ならば愚行という他ないが、バーヴァン・シーからすれば「それでいい」とさえ思えた。

 元より、彼女達が受け止める選択を取るだろうとは考えていた。逆に受け止めないという選択を取っていたのならば、自分は間違いなく彼女達に失望していただろう。

 

 四つの宝石に、輝きは宿らない。今のバーヴァン・シーでは、その内の一つに光を灯す事すら出来ない。

 我ながら自分が如何に疲弊しているのかを自覚し、思わず笑みを零しかけた―――その時。

 

 

(は……なん、で……)

 

 

 ゆっくりと、宝石に輝きが宿り始めたのだ。

 今の自分に宝石を輝かせる程の魔力はないというのに、なぜ―――そう疑問に思った瞬間、バーヴァン・シーは気付く。

 

 

(……そうか、お前らか……)

 

 

 視線を向けずとも、わかる。

 バーゲストが、メリュジーヌが、シャガルマガラ(カリア)が、残された力を注ぎ込んでくれている。

 唯一、ディスフィロアだけが彼女達のように力を注いでこないが、背中に注がれている視線が語ってくれる。

 

 

 ―――見せてみろ、お前が彼女の後継(むすめ)ならば。

 

 

 それは、長らくモルガンの友で在り続けた龍の意志。彼女が愛した娘の力を、意志を、最後まで見届けるという意思表示だった。

 同時に、この一撃を前にした立香とマシュが、どのようにしてこれを打ち破るのかを知ろうとしているのもわかった。

 

 ―――そうだ。誰もが知ろうとしている。誰もが見届けようとしている。

 

 彼女達の可能性を。彼女達の行く末を。

 汎人類史に生きる、彼女達の姿を。

 

 

「バーヴァン・シーッ!!」

(バーゲスト……)

 

 

 黒炎の軌跡が、宝石に赤い輝きを灯す。

 

 

「バーヴァン・シーッ!!」

(メリュジーヌ……ッ!)

 

 

 流星の軌跡が、宝石に蒼い輝きを灯す。

 

 

[マスターッ!!]

(カリア……ッ!!)

 

 

 白紫の軌跡が、宝石に紫の輝きを灯す。

 

 

「っ、あぁクソッ! テメェら、ホンットに最高だッ!」

 

 

 滲む視界のまま、限界を超えて魔力を注ぎ込む。

 残された最後の宝石に―――眩い白の光が宿った。

 

 

「さぁ、見せてみろ―――お前達の(チカラ)をッッ!!

 

 

 そして、彼女の生涯最後の一射は放たれた。

 

 

 

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 それは、まさしく全身全霊の一射だった。

 大気を焼き焦がし、空気の壁さえも容易く打ち破って迫る、魂からの言葉だった。

 

 

「マシュッッ!!」

「はいッッ!!」

 

 

 この一撃を前に、逃れる術はない。否、その道を思考する時点で、彼女達のこれまでの道程を侮辱するに等しい。

 

 故に、彼女達は選び取った。

 

 

「白亜の城よ。新たな妖精妃に、我らの絆を示せ―――ッ!」

 

 

 ―――この一射を受け止める。自分達の、全身全霊でッッ!!

 

 

「―――『絆紡ぎし希望の城(リンクス・キャメロット)』ッッッ!!!」

 

 

 大地に勢いよく突き立てられた盾を中心に出現した、荘厳にして巨大な城壁が光の矢を阻む。

 

 

「ぐ、うううぅううう……ッ!!」

 

 

 あらゆる穢れを浄化するかの如き純白の城壁は、主であるマシュ・キリエライトと、彼女のマスターである藤丸立香の間に結ばれた強固な絆によりその護りの力を強めている。

 しかしそれでも、バーヴァン・シー達(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)の矢は折れない。

 

 

(これが、彼女達の力……絆の証……ッ! これ程までだなんて……ッ!!)

 

 

 彼女達の絆を侮っていたわけではない。短い共闘だったが、それでも彼女達の間にある繋がりが強く、何者にも断ち切れないものだと理解していた。

 だが、これは予想外だった。彼女達の絆の強さは、自分が予想していたものの遥か上を超えていたのだ。

 

 

(……ッ! 今のは―――)

 

 

 そしてその時、マシュの耳は轟音の中に混ざり込んだ異音を拾った。

 

 ―――パキリ。

 ―――パキリ。

 

 一度ではなく、二度聞こえたそれは、なにかに亀裂が走る音。

 同時にマシュは、その『なにか』の正体を否が応でも理解できてしまった。

 

 

「っ、城が……ッ!?」

 

 

 思わず見上げたマシュの視界に飛び込んできたのは、徐々に亀裂を走らせていく白亜の城壁の姿だった。

 速度こそ早くはないものの、確実に城壁を蝕んでいくそれを放置していれば、この城は跡形もなく砕け散ってしまうだろう。

 

 しかし、亀裂を走らせているのは城壁だけではなかった。

 

 

「砕けんじゃねェぞ……ブチ破れッッ!!」

 

 

 絶え間なく周囲へ飛散していく衝撃波の奥で、城壁を射抜かんとしながらも砕けかけている矢にさらなる力を注ぎ込んでいるバーヴァン・シーの姿が見える。

 既に魔力は底を突いているのだろう。魔力の代わりに己の生命力を注ぎ込んでいるのか、彼女の目や鼻、耳や口からは赤黒い血が留まる事なく流れ続けている。

 彼女の叫びに応えるかのように、城壁と同様に亀裂を走らせていた矢はその勢いを強め、さらに城壁にダメージを与えていく。

 

 

「くぅ……ッ! この、ままじゃ……ッ!」

 

 

 ―――城が、砕ける。

 

 脳裏に浮かんだ敗北のビジョンに、背筋が凍りつく。

 これは世界を懸けた戦いではないと、バーヴァン・シーは言っていた。だが、あくまでそれは世界を懸けたものではないというだけで、命さえ懸けていない戦いではなかったのだ。死力を尽くした戦いの果てに見えてくるものを、彼女は見ようとしているのだ。

 

 ここで敗北してしまえば、世界を救うどころではない。ここで死んでしまえば、それでこの旅路は終わってしまう。

 

 ―――ここで負けるわけにはいかない。

 それは焦燥からか、それとも恐怖から来るものか。強迫観念にも近い感情に押されるままに、マシュはさらに魔力を注ぎ込もうとして―――

 

 

「マシュ」

 

 

 そっと肩に、誰かの手が乗せられた。

 

 

「ぁ……先、輩……?」

 

 

 振り向いた視界に映り込む、ここまで共に歩んできた少女の顔。

 負ければ死は免れられない状況だというのに、彼女は穏やかに、静かに微笑んでいた。

 

 

「大丈夫だよ、マシュ。私が付いてるから」

 

 

 その穏やかな微笑みは、いつもマシュを励まし、前へ進む活力を与えてくれていた。これまで立ち塞がってきた数多の困難も、その笑顔と共に潜り抜けてきたのだ。

 

 揺るぎない強さと優しさを併せ持つ彼女の微笑みに、マシュは次第に自身の心が救われていく感覚を覚えていく。

 

 

(そうだ……。私は、一人で戦っていたわけじゃなかった……)

 

 

 これまでの戦いも、今の戦いでも、自分は彼女に助けられてきた。戦い以外でも、日常生活の中で彼女に助けられた事だって数え切れない程ある。

 

 なんで、この瞬間は忘れてしまったのだろう。酷い焦燥感と恐怖が、視野を狭めてしまっていたのだろうか。

 

 だが、もう大丈夫だ。彼女が支えてくれている事を改めて知れたから。

 いや、彼女だけではない。

 

 ここより上空でこの戦いを見ているであろうカルデアの仲間達も、自分達を支えてくれている。彼らがいてくれたお陰で、自分達はここまで来る事が出来たのだ。

 

 

「巻き返すよ、マシュッ!!」

「はいッ!!」

 

 

 顔を前に戻し、盾を握る力を強める。

 乱れていた心に平静を取り戻したマシュの心情を表すように亀裂を走らせる速度を緩めた城壁がその輝きを強めた直後、立香が強く叫ぶ。

 

 

「全ての令呪を以て命ずる―――我らの意志を示せ、シールダーッ!!

 

 

 立香の右手に刻まれた令呪。その三画全てが消えると同時、身に纏った白い魔術礼装―――決戦用カルデア制服に組み込まれていた魔術を発動し、マシュにさらなるブーストをかける。

 正規の聖杯戦争に用いられる令呪とは強制力は劣るものの、それでも奥底から湧き上がってくる膨大な魔力は一滴残らずマシュの力となり、城壁の輝きをもう一段階引き上げた。

 

 

 

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 ―――押し返されている。

 矢へ伸ばした右手を通じて感じた感覚に、バーヴァン・シーは獰猛な笑みを浮かべた。

 

 

(そうだ……これだッ! これが、テメェらの全力か……ッ!!)

 

 

 バーヴァン・シーは知っている。絶体絶命の状況に追い込まれた時こそ、その者の最大の力が発揮されるのだと。

 それはかつて、カリアから地獄の特訓を課されていたバーヴァン・シーに、彼女の口から語られた言葉だった。

 

 だからこそ、バーヴァン・シーは彼女達を今自分達が持ちうる全力を用いて追い込み、同時に彼女達に自分を追い込ませた。

 

 リミッターなど既にぶっ壊れている。ならば次は、溢れ出す力の奔流をさらに強めるのみ。

 

 

「ハ、ハハ、ハハハハハハハッ!!!」

 

 

 我知らず、開かれた口から笑い声が飛び出す。

 己のサーヴァントが戦闘中に放つものと似ているそれに内心苦笑しつつ、バーヴァン・シーは叫ぶ。

 

 

「負けるもんかよ……ぶっ潰してやるッ!!!

「「私達こそ……負けるもんかぁああああッ!!!」」

 

 

 両者の意志を反映したかの如く光輝く矢と城壁。やがて二つの力は臨界に達して―――

 

 

 ―――光が、全てを包み込んだ。

 





 遂に崩壊スターレイルとfateのコラボが始まりましたね。
 既に原神という容量馬鹿喰い虫が端末にいるためプレイできない私ですが、XやYouTubeで調べてみるとfate側へのリスペクトが凄まじくて嬉しいですねぇ……。基本こういったコラボは軽くコラボ先の情報や掛け合いがある程度ですが、凸演出でアルトリアとエミヤの名場面が出てくるとは思っていませんでした。

 次回、いよいよ妖精國編最終回です。
 それでは、また次回ッ!
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