ドーモ=ミナサン。
いよいよ終章後編が残り二日に迫り、どんなストーリーや戦いが待っているのか楽しみなseven774です。
新しく公開された新cmも、遂に最終決戦って感じがして気が引き締まる思いですね。キャスニキや、ずっと人理の防人をやっていたセイバーオルタ、そしてなにかを握ろうとしているマシュ……早くやりたくて仕方ないですッ! 終章cmの曲が「逆光」なのも激アツですよねッ!
同時に、長年続いた二部も、これでいよいよ見納めだと思うと、やっぱり哀しくもありますね。ですがまだまだ謎な部分が残っているので、それがどう解決されていくのか考えるとワクワクして仕方ないですねぇ。
今回、いよいよルーツ達が南米異聞帯に入ります。
それでは、どうぞッ!
シュレイド城中庭。
恐らくシグルドとオフェリアちゃんを攫ったサーヴァントによるものであろう戦闘の痕跡が残るそこで、私は手持ちの最終チェックをしているカドックに声をかけた。
「カドック。改めて確認だけど、準備は大丈夫?」
「問題ない。必要だと感じたものは全て用意してある。一応見てくれるか?」
差し出されたポーチの中身を確認する。
……うん。アナスタシアの支援用礼装も、探索に必要な道具もある。向かう先が南米だからか、熱病や穢れに罹った時用の礼装も幾つかある。シュレイド異聞帯にも似たような場所はあるから、そこへ行く場合に備えて用意しておいたものかな。
一通りの確認を終えた私が「大丈夫だね」と言えば、カドックの顔が少し綻んだ。
「助かる。僕だけ確認しても不安だったんだ。アナスタシアにも確認はしてもらったんだが……」
「私にその手の知識を求められても困ります。私、皇女ですから」
「でも確認はしたんでしょう? 出来ないからってすぐ断らずに。それはとても良い事だよ、アナスタシア。それと、カドック。腕輪からあの子の気配は感じる?」
「あぁ、特に問題はない。今でも感じているよ」
カドックの視線が、自分の右手首に着けられた腕輪に落とされる。腕輪には彼とアナスタシアが試練を突破した証―――キリン亜種の分御霊である宝玉が嵌められており、契約者の視線に呼応するかのように仄かな青白い光を放っていた。
「さっきから気になっていたんだが、そのメガリングのようなものはなにかな?」
「メガリングって……。これは、僕とアナスタシアがキリン亜種に認められた時に、彼とアンナから貰ったものだ。断じて、僕はマスターであってトレーナーじゃないぞ」
「だが見るからにそれっぽいじゃないか。あれか? アナスタシアの霊基が強化されている事にも関係があるのか? メガ進化したのかい?」
「だから違うって言ってるだろッ! 第一、これにそんな機能なんて―――」
「え? 近い事なら出来るよ?」
瞳をキラキラさせているキリシュタリアからの質問に怒鳴り返しているカドックにそう言うと、彼は「……は?」と目を見開いて私を見てきた。
「え、は? 出来るのか?」
「呼べばあの子が力を貸してくれる点は絆石に近い性質だけど、君達とあの子がより深くまで繋がれば、あの子の力でアナスタシアを強化できるよ」
言うまでもなく、キリン亜種は強力な存在だ。保有する権能もアナスタシアと相性がいいので、上手くいけばあの子の力でアナスタシアの霊基をさらに強化する事が可能だ。もちろん、神霊級の格を誇るキリン亜種の力を、ヴィイと契約してようやく英霊として成立できているアナスタシアに乗せるというのは困難極まりない。彼女にのしかかる負荷は相当なものになるだろう。
けれど、いずれ彼らはその力を手にすると、私は確信していた。古龍の脅威を前にしても挫けないその屈強な精神力は、その未来を確信するに充分なものだと思っているからだ。
「カドック、アンナもこう言っているんだ。いい加減認めようじゃないか、『自分が身に付けているのは絆石兼メガリングです』って」
「く……ッ、聞く限り本当にそれっぽいから否定できない……ッ!」
「アホらしいわね……」
「あはは……」
頭を抱えて蹲るカドックの肩に手を添えて笑うキリシュタリア。そして、彼らの様子に呆れ顔で肩を竦めるぐっちゃんに苦笑いする蘭陵王。
私は彼らのそんな姿に、思わず「ふふっ」と笑い出してしまった。
「なにがおかしいんだよ……」
「いや、少し気持ちが張り詰めていたからさ、今の君達を見ると、それがなんだかおかしく思えちゃってね……」
実のところ、私の内心はかなり緊張していた。先の緊急会議でもカドックに諫められて少し落ち着けたけれど、それも時間が経てばまた元に戻ってしまった。
けれど、今のカドック達を見ると、そんな重い緊張感がどこかに飛んでいくような感じがしたのだ。
もちろん、どこまでも気楽にいく、なんて事は絶対にしないけど、ずっと張り詰めた気持ちでいるよりかは良いだろう。リラックスしていなければ、いざという時に十全な力は発揮できないのだから。
ふと何気なしにキリシュタリアに視線を向けてみると、彼は微笑みながらカドックを見て、次に私に視線を移してきた。
(……もしかして、私達の事を気遣って?)
私の疑問を察したのか、キリシュタリアはなにも言わずに小さく頷いてきた。
流石、私達のリーダーだね。気遣いバッチリじゃん。たぶんメガリング云々の下りは本心からの言葉だったんだろうけど。
「上姉上、そろそろ……」
「ん……そうだね。カドック、アナスタシア。そろそろ行こうか。ずっとここにいてもしょうがないし」
「っ、そうだな」
背後に控えるアルバに急かされた私がそう言えば、カドックとアナスタシアは揃って意識を切り替えて私の傍までやって来た。今までずっと静観していたシグルドも、その表情を硬く引き締めて近付いてきた。
「さて、これからアルバに南米までの扉を開けてもらうけど、その前に伝えておくよ」
「なんだ?」
「たぶん……いや、間違いなく扉を通ったら、私達は逸れる。あいつの事だから、最初から私達が全員一緒でいられる状態にはしないだろうからね」
あいつは疑う余地なく性格が悪い。間違いなく私達を分断させた上で行動させようとしてくるはずだ。たぶん、直接南米異聞帯を覆う嵐の壁を破壊して侵入したとしても同じ結果になる。性質が大戦時代の頃から変わっていなければ、あいつはこの世界の物事全てをゲーム感覚で捉えているはず。最初から死に直結する罠を仕掛けてはこないとは思うが、それでも用心するに越した事はないだろう。
そう伝えると、カドック達は「わかった」と頷いてくれた。それに頷き返した私がアルバに扉を開くよう指示すれば、彼女は左手に握った槍―――“神滅槍アル・トリア”を振り下ろす。
彼女の力の一部を切り離して具現化されたその槍は、異界への扉を開く鍵の役割を持っている。その能力を以て行われた振り下ろしは文字通り目の前の空間を切り裂き、黒紫色の光を帯びた裂け目を出現させた。
「それじゃあ、行ってくるね。ボレアス達も他の古龍種達と一緒にこの異聞帯全域を監視して、なにかあればすぐに城に報告が届くから、万が一の時があったらお願いね」
「任せてくれ。最善を尽くすよ」
「カドック、気を付けなさい。貴方はメンバーの中で一番弱いんだから、下手して死ぬんじゃないわよ」
「わかってるよ、芥。帰ったらまた麻雀をやろう。今度こそ勝つからな」
「何度もボコボコにされたのによく言うわね。……待ってるわ」
「あぁ」
珍しく素直なぐっちゃんからの激励を受けたカドックと頷き合い、私は扉に飛び込んだ。
―――黒紫色の星々が、流星のように流れていく回廊。ボレアスの作る歪みを通る際に見る、暗黒の回廊とは異なるその道を通り抜けて私が降り立ったのは、巨大な滝が幾本も見える断崖だった。
(……ここが、南米異聞帯……。景色だけならシュレイドでも見れるものだけど……)
辺りを見渡す。
前方には、轟々と水が落ちる音を立て続けている幾本と並ぶ巨大な滝。後方に広がるのは鬱蒼と生い茂る木々に覆われた森林。
これだけの景色なら、今思ったようにシュレイド異聞帯にも似たような景色は数多くあるが……周囲に漂う空気が全く違う事が、ここがシュレイド異聞帯ではないと確信させてくる。
そして。
(……やっぱり、
視線を周囲に巡らせるが、一緒にあの回廊を通ったはずのカドック達の姿はどこにもない。
予想していた一旦視界での捜索をやめ、瞼を閉じる。
感覚を研ぎ澄まし、感知可能な範囲全域に意識を向けて―――え?
「嘘……」
あり得ないと思いつつ、視線を上に向ける。
私の頭上に広がっているのは、風に運ばれ流れていく雲が見える青空。なにも知らない者が見ればただの空だとしてそれ以上の感想は抱かないだろうが、もし私の感知能力が狂っていなければ―――。
人間としての瞳から本来の龍の眼へと切り替え、見据える。アンナ・ディストローツとしての瞳と比べ、視覚を通じて獲得する情報が遥かに多くなる眼は、私の感じた通りの答えを提供してくれた。
(空に……地面がある……。いや、
私の頭上に広がる、空のように見えるもの。如何なる要因によるものかは不明だが、雲が浮かぶ青空は偽物であり、その奥には今私が立つものと同じ地面が見えた。
気配察知によって把握した地形を思い返すに、ここは恐らく地中だ。それも、なにか巨大なものが地球に衝突し、そのまま地中深くまで食い込んだ事で形成された、円柱型の地底世界だ。
なにが、ここまでの規模の世界を作り上げる要因になったのかは考えるまでもない。改めて、今自分に必要な情報を整理し直す。
不幸中の幸いと言うべきか、カドックとアナスタシアは同じ場所に飛ばされたようだ。しかし距離はかなり離れている。早めの合流を目指すなら、こちらから向かった方が早いだろう。
シグルドは一番離れている。しかもその周囲にはかなりの気配も感じられるが、それが彼を中心に少しずつ消えていっていく事から、戦闘中かな……? でもこの調子なら不利になっても自力で離脱できるだろうし、そこまで気にする必要はないかも。
アルバは彼らと比べれば近い距離にいるが、付近に幾つかの気配を感じる。あの子との魔力パスに変化が起こっていない以上、シグルドが戦っているような敵性存在ではない事は明らかだ。
『アルバ、聞こえる?』
『ッ、上姉上。ご無事でしたか』
試しに念話を繋げてみれば、すぐに返事が返ってきた。うん、念話にも異常はないか。これなら一先ずは安心かな。
『まあね。そっちの場所は掴めた。近くに誰かいるよね?』
『えぇ。到着直後に現地住民と接触しました。ですが、その内の
一体……もしかして、人間じゃない? 少し考える要素が増えたかも。もう少し彼らについて聞きたいところだけど、まだ少し調べたい事があるから、後回しにしておこう。
『治療法はその負傷した子の仲間達が知ってるの?』
『はい。幸い近くにあるそうなので、すぐに見つけられそうです。彼の治療が終わりましたら、そちらと合流すれば?』
『いや、私より先にカドック達と合流して。私は後回しにしていいから。あと、無闇に力は振るわないように』
『なぜ?』
『下手に注意を引けば厄介な事になりかねないからね。力を使うとしても、出来るだけ抑えるようにして。それから、避けられそうな戦いはなるべく避けるように。わかった?』
『わかりました。では、そのように』
アルバとの念話が切れ、私は彼女から受けた報告を基に思考を始める。
(現地住民……『人』と数えないのなら、人間以外の存在……。言葉はまだわからないけど、たぶん意思疎通は可能だと考えていいか。似たような気配は……主に自然を中心にした場所に多く感じるから、集団で生活していると捉えていいかも)
気配察知で得た情報を振り返って、アルバが接触した現地住民達の居場所を把握する。かなりの数が確認できたが、この多くが自然界に集団で生活しているという事がわかれば、今はそれ以上詮索しなくてもいいだろうと判断し、逆に重要度の高そうな気配に思考を切り替える。
私からすると一番遠いシグルドのいる地点から少し離れた場所からは、アルバが接触した者達とは異なる気配を持つ存在達の気配が色濃く感じ取れる。その中でも一際大きい気配の持ち主は、他とは異なり神の気配を感じる事から、彼らの長の可能性が高い。その近くにはサーヴァントの気配も感じるも、深く集中すると長らしき存在からそのサーヴァントに魔力が供給されていないとわかったので、主従関係ではなさそうだ。
だが、それ以上に気になるのは彼らの遥か真下から微かに感じ取れる気配だ。
かなり強大な気配だ。距離的にもそう簡単に辿り着けないであろう場所に閉じ込められているのか、何度か瞬くように膨れ上がっているが、それもすぐに抑え付けられるように萎んでしまっている。だが、それで諦めるなんて事はなかったようで、それからも何度も何度も暴れ続けている。
そして、私がここに来た最大の目的―――オフェリアちゃんの気配も見つけた。
場所は今尚暴れ続けている気配と、地上にいる集団の間だ。真下の気配が大きすぎて一瞬感じ取れなかったが、彼女の中に宿る私とアンナの力が、彼女の居場所を教えてくれていた。
(でも、安心はできない。場所が悪すぎる……)
オフェリアちゃんの真下から感じる気配の持ち主が脱出を目指しているのなら、拘束を解いた場合まず向かうのは真上だろう。となれば、当然そこにいるオフェリアちゃんはその存在の脱出に巻き込まれてしまう……。あまり時間はないかもしれない。なるべく早く助けに行かないと……。
―――それに。
(やっぱり……この世界にもいるんだね)
この異聞帯の最深部から感じられる、今まで感じてきたものとは別次元に濃密な気配。
一度感じたなら二度と忘れられない、本来この惑星にあるはずのない気配。私の記憶にあるものと比べてかなり弱く、飛来してきた時に感じた生命力も感じられない事を考えると、今は活動を停止しているようだ。今すぐに動き出すような様子も感じられないが、用心するに越した事はない。
そして、それと同じ気配を持つものがもう一つある。それは、この異聞帯を照ら―――
『っ、上姉上ッ!』
『手出しはいらないよ。私がやる』
再度念話を繋げてきた妹に告げ、足裏の土を消し飛ばす勢いで駆け出して眼前の奈落へ飛び出す。
背後からの
次の瞬間、私を囲むのは水の檻。それもただの水ではなく、高速で流れ続ける激流の檻だ。超高速で流れる水はある種の刃となっており、トップサーヴァントであろうとも触れた箇所がミンチの如き有様となってしまうのは明白。私は全身から放出した雷の熱で檻を蒸発させると、魔力を右手に凝縮して解き放つ。
右手から放たれた魔力砲は
肩を狙った一撃は寸でのところで左腕を差し込まれた事で防御されるが、勢いまでは殺し切れなかったようで容易く蹴り飛ばせた。
森林に落下した影響で轟音と土煙が巻き起こるが、それらを突き破るように一つの影が飛び出してきた。
「……あぁ。やっぱり、君もいるんだ。この
「…………」
私と向かい合う形で滞空する者―――U-オルガマリーは、しかし私の言葉に反応を示さない。体についた土埃を払う事もせず、ただ静かに、無機質に私を見つめるのみだ。
そんな彼女の様子に、私は眉を顰める。
(なにか、様子がおかしい……。オリュンポスで見たこいつは、こんなに静かじゃなかった)
キリシュタリアとの決戦を終えた後にオリュンポスに出現した時、U-オルガマリーは自身の降臨を高らかに宣言し、己を“地球大統領”などというふざけた肩書きで名を叫んでいた。その時の彼女と比べると、今の彼女は恐ろしく静かだ。それこそ、不気味な程に。
まさか……。
「君、もしかしてあいつに―――ッ!?」
問いかけようとした瞬間、U-オルガマリーが急接近してきた。その行動の早さから意思疎通は不可能だと判断した私は、すぐに構えを取り彼女の迎撃を開始する。
突き出される拳を右手で受け止め、振り上げられかけた右足を左足で押さえつける。今度は超高熱の炎を纏った右手が迫るが、雷を纏わせた左手で打ち払った瞬間に引き絞り、固く握り締めて一気に振り抜いた。
振り抜かれた拳は的確に彼女の顔面を捉えて殴り飛ばすが、彼女は即座に態勢を立て直しながら超高温の火球と高密度の岩石の槍を放ってきた。
翼を羽ばたかせてそれらを掻い潜りながら、周囲に緋色の球体を作成していく。私の
けれど、それを理解していた私は魔力嵐が消えた瞬間を狙って突貫。火球と岩石槍をギリギリ当たらない距離で躱しながらU-オルガマリーに接近し、腰から伸ばした尻尾による一撃を食わらせた。
尻尾で弾き飛ばされたU-オルガマリーに再び接近し、追撃として右足による蹴撃を繰り出す。が、その直前には彼女も右足を振り上げており、私と彼女の右足が衝突した影響で発生した衝撃波が周囲の空気を大きく振動させ、頭上の雲を霧散させていった。
発生した衝撃波を敢えて耐えずに大きく距離を取った私達が次に取った行動は、同じ雷撃による攻撃。鏡合わせのように向けられた右手と左手から放出された黄色と緋色の雷が激突し、互いを喰らい合うように拮抗し始める。
けれど―――馬鹿だね。
彼女の放つ雷撃に意識を集中させる。そうすれば、私の雷と衝突を続けていた彼女の雷の色が緋色に塗り替わり、彼女に跳ね返ってダメージを与えた。
微かに怯んだU-オルガマリーの右腕がだらりと垂れ下がるも、それも一時的なものだ。すぐに回復するだろう。それまでの間に、彼女により大きなダメージを与える―――ッ!
「ハァアアッ!!」
徒手空拳による連撃。鳩尾に拳を捻じ込んでくの字に曲げさせた体に回し蹴りを叩き込み、開いた距離を一瞬で縮めてもう一度拳を―――ッ!?
「受け止め、が……ッ!?」
拳を受け止められたと思った瞬間、U-オルガマリーの背後に展開された空間の穴から跳んできた赤黒い光線が全身に直撃。間一髪で障壁を挟み込んだ事で貫通は逃れたものの、私が怯んだ隙を突いた彼女が放った烈風と灼熱の拳が胸部にめり込み、殴り飛ばされる。
外部からの圧迫によって一瞬心臓が止められた影響でむせ込みそうになるのを無理矢理堪えて急接近してきたU-オルガマリーの拳を捌いていくが、まともな呼吸が出来ない状態で全てを捌き切る事は出来ず、遂に受け流し切れなかった一撃が鳩尾に捻じ込まれた。
「が、は……っ」
堪らず開かれた口から、胃液と唾液の混じった血液が吐き出される。
そこへすかさず両手を組んだU-オルガマリーによる殴打が頭部に振り下ろされ、叩き落される途中で真下に移動してきた彼女の膝蹴りが顔面にめり込む。跳ね上がるように真上を向いた私はなんとか追撃に備えようとするが、それより先に彼女の光線によって大地に撃ち落とされてしまった。
「ぐ、うぅ……ッ!」
『あっはははッ! 凄いやられようだねぇ、“祖龍”さん?』
なにも知らない者が見れば、小さな隕石が落ちたとでも思ってしまいそうな程巨大なクレーターの中心で痛む体を起き上がらせていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
それはまるで聞き覚えのない声だったが、その声色に宿る隠す気のない愉悦の色に、起き上がった私はU-オルガマリーへの警戒を怠らずに顔を顰めた。
「まさか……ッ!」
『そのまさかさ。随分と面白い箱庭が出来ていると思って来てみれば、まさか君がいるとは思わなかったよぉ。あ、そうだ。
姿なき声が言う『それ』の正体は、考えるまでもないだろう。奴からすれば、私と彼女の戦いすらただの“お遊び”の一環に過ぎないのだから。
『面白いよねぇ?
「本っっ当に悪趣味ね。お前達みたいな連中を愉しませる趣味はないわよ」
『知らないよそんなの。いい?
内心歯噛みする。オフェリアちゃんを攫えば私がこの世界に来ると分かっていたから、あの子をゲームの景品として攫ったという事か。益々許せない……ッ!
「だったらすぐにあの子を助けて、ついでにお前達も殺してあげる。二度と、この世界に来れないようにね」
『わぁ怖ぁいッ! でもぉ、ポップコーン片手に待っててあげるよぉ。また君達の足搔きを見れるなんて楽しみだなぁ。アッハハハハハハッ!』
心底不愉快な笑い声を最後に、姿なき声はぴたりと聞こえなくなった。いつか必ずこの声の主をぶっ飛ばすという決意を固めながら、私は注意深くU-オルガマリーを観察する。
私があの声と会話している間攻撃を仕掛けてこなかった彼女だが、その身に纏う魔力が先程よりも色濃いものになっているところを見るに、彼女を弄った者達が無理矢理彼女のリミッターを外しているのだろう。精神に一切手を付けておらず、痛覚が何倍にもなっているという情報が真実なら、今まで彼女は動かなかったのではなく、痛みのあまり動けなかったのだろう。それこそ、彼女を弄った者達の意志に反する程に。
―――なんて、憐れなのだろう。かつて目にした、あいつらの餌食になった者達の末路と比べればまだ原形をとどめているだけマシだと思えてしまうが、それでも彼女が憐れに思えて仕方なかった。
(せめて、その苦しみは取り除いてあげる)
幸い、ここなら本気になっても問題ない。
己の内に秘められた力の一部。それを縛る鎖を破壊し、その力を解放する。
瞬間、私の体内から溢れ出した魔力が、私の体を変質させていく。
バチバチと絶え間なく弾ける緋雷を纏う、黒く染まった龍腕と龍足。翼は翼爪が青白く染まり、頭部からは刀のように鋭利な角が後方に二本、前方に一本に伸びる。
「貴女の力を使わせてもらうよ。もう一人の私」
かつて、シュレイド異聞帯に存在した私の同位体。その力を使って自身の身を変化させた私は、U-オルガマリーに向かって飛翔した―――。
・『U-オルガマリー』
……■■■■■■■■の配下により肉体のみを操られ、南米異聞帯に侵入したルーツに攻撃を仕掛けてきた。精神までは操られていないが、痛覚が何倍にも強化されているため、ルーツの一撃一撃がとにかく痛い。
敵だけど……ッ! 本当は嫌だけど……ッ! 早く私を、助けろォッ!
・『ルーツ』
……色々思うところはあるものの、邪神達に都合のいい玩具にされているU-オルガマリーには『ちょっとこれは……』と流石に憐憫の情を覚えた。ブリテンの激戦を終え、それからもシュレイド異聞帯で力を蓄えていた事により、単騎でもU-オルガマリーと戦闘可能になった。
・『■■■■■■■■』
……ポップコーン片手に子ども達と一緒に観戦中。ヤッベェ、トカゲと人形の殴り合い面白すぎるwwwなんか外から新しい玩具達も来そうだし、愉しみがまだまだ増えそうで嬉しいなぁwww
・『???』
……こいつまたこの世界にちょっかい出しとるな……。でもまた人間達頑張ってくれそうだし、今はまだポップコーン用意しておくだけに留めておくか……。
ワイルズ、遂にゴグマジオスが来ましたねッ! 4Gに出てきた個体とは違って、収束破龍砲なるレールガンらしき古代兵器を背負っていましたが、あれもやっぱり竜大戦時代の遺産なんですかね。竜都限定になるかもですが、護竜以外にも近未来的な兵器が普及していた可能性があって想像が膨らみますね。
丁度4(4G)世代の私は、ムービーや演出の要所要所に4Gのオマージュが見えてとても楽しめましたね。特に後半で英雄の証が流れたり、クリアbgmが4(4G)のものであったり。もうなんというか、色々思い出しましたね。あまりにも懐かしすぎて、ワイルズなのに上から『クエストクリア!』と出てきたり、その時にハンターがガッツポーズを決めたりする幻覚が見えました……。
そして、この話を以て、2025年の『緋雷ノ玉座』の投稿は終了となります。皆さん、この一年本当にありがとうございました。また来年も、よろしくお願いしますッ!
それでは、また次回。良いお年をッ!