【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 アケマシテオメデトウゴザイマス=ミナサン。
 二部終了、そして坂本真綾さんの「時計」配信に乗じてU-オルガマリーPUガチャを回すものの、まさかの天井超えを果たしてしまったseven774です。
 U-オルガマリーガチャ、私だと恐ろしい程に石を吸われるんですよね……。前回もほぼ今回に近い形で宝具レベル2になって、今回は天井を超えて宝具レベル4でした……。福袋に期待をかけてもいたんですが、まさかの不在により、宝具レベル5はしばらく先となりました……。
 そして、今年の新年サーヴァントであるロード・ログレスにも課金をする事となり、結果使いやすい宝具レベル2となりました。年末年始で約57000円消えましたッ! アニプレックスオンラインありがとうッ! お陰で3000円お得になったよッ!
 ですがロード・ログレスのプロフィールを見てみると、なにやら不穏な事が書かれているんですよね……。人類の脅威を超えた脅威や、とある存在の機能停止など、想像するだけで怖い情報があったので、この先どんな風にストーリーが進んでいくのか気になりますね。

 そしてfgo第二部、遂に終わってしまいましたね……。多くの出会いと別れを経て、多くの困難を乗り越えた先に辿り着いた最後でしたが、もうなんというか……本当に素晴らしい物語でしたね。決戦の話はどれもこれも甲乙つけがたい……いや、甲のみしかなかったものでしたが、最後はもうずっと涙を流し、何度も「ありがとう……ありがとう……ッ!」と口にしながら戦っていました……。でも全部終わった後に振り返ってみると、色々気になる要素があるんですよね。それらについても今後明かされていくのですかね?

 坂本真綾さんの「時計」も、本当に素晴らしい曲でしたね……。これまで色んな出来事がありましたが、その果てに「こうして僕らの冒険は終わる 真白に広がる次のページへ」という歌詞が来ると、もう色々溢れるものがありましたね……。歴代fgo楽曲の中で一番好きな曲になりましたッ!

 また、私の場合、こういう作品を書いている都合上、どうしてもルーツの援護を妄想してしまうんですよね……。彼女ならばどんなサポートをするのか、どんな言葉を口にしてくれるのか、考えるだけでも楽しいです。そんな彼女にも、カットさんされないような結末を迎えさせてあげられるよう、この作品を完結まで続けていきたいと思います。

 そして、今年最初の本編更新は、ルーツVSU-オルガマリーの続きですッ!
 それでは、どうぞッ!


翡翠の雷

 

 今のU-オルガマリーは、本人の意思が関与しない形で戦わされている。これが彼女自身の意思による戦いならば気にするまでもなかったが、操られているとなれば、まずはそれを解除する方がいいだろう。精神をそのままに操られるという不快感は、私の想像を遥かに超えるものだろうから。

 

 口を薄く開き、息を吸い込む。肺に送り込まれた空気は私の体内で鼓動する炉心の原動力となり、原動力を得た炉心は強大な魔力を生産していく。

 瞬く間に全身へ伝播していく魔力を黒く染まった龍腕に多めに走らせれば、そこから発生していた緋雷がより激しく、獰猛に迸り始める。

 龍腕を左右に広げる。そうすれば、そこに宿った緋雷は私の意思に従ってブレード状に圧縮された。

 

「フ―――ッ!!」

 

 

 一気にU-オルガマリーに接近。右腕の刃を振るう―――ッ!

 

 音の壁を容易く突破する速度で振るわれた一閃に対し、U-オルガマリーもまた左手に魔力を纏わせて迎撃。鋭く凝縮させた高密度の魔力を帯びた手刀と刃がぶつかり合い、耳障りな音を奏でていく。

 互いに押し返す形で距離を取り、再び接近。今度は両手の刃で剣戟を繰り返す。

 一手一手、全てが相手の急所を狙う一撃。故に相手の狙いを自ずと理解している私達の剣戟は止まる事を知らず、打ち合う度に絶え間なく火花が飛び散っていく。

 

 権能(チカラ)を行使し、自分と彼女を覆う形で緋雷の槍を生成、射出。全てが同じタイミングで撃ち出された槍の群れは、咄嗟に私から離れて防御態勢を取ったU-オルガマリーに直撃していく。当然、自分達を覆うように生成した槍は私にも当たるが、私が自分の力で傷付くなどあり得ない。むしろ、外部に放出した自身の力を取り込み、力を上げられる。

 

 翼を羽ばたかせ接近。瞬時に自分を包み込むように出現させた魔力の壁で槍の群れから身を護っていた彼女を、その壁ごと斬り裂く―――ッ!

 

 バギィンッ! と、甲高い音を立てて破壊された壁の向こうにあるU-オルガマリーの体に、斬撃が当たる。……が、それだけだ。力を引き出された影響か、彼女の肉体はより頑強なものとなっており、私の斬撃が体内に侵入する事を許さなかったのだ。

 

 

「……ッ、……ッッ!!」

 

 

 だが、威力そのものを殺す事は出来なかったようだ。その証拠に、今まで無表情だった彼女の口元が歪んでおり、額からは大量の脂汗が噴き出している。

 

 

(ここ―――ッ!)

 

 

 即座に権能を行使。ブレードから彼女の全身へ緋雷が走り、彼女を操る呪詛の解除を試みる。けれど―――

 

 

(駄目かッ! やっぱり対策はされているようね……ッ!)

 

 

 私の権能の力が抵抗(レジスト)されたのを悟った直後、魔力嵐によって無理矢理距離を取らされ、直後に放たれた火球に身を焼かれる。

 

 

「アッツ……ッ!?」

 

 

 トップサーヴァントであっても蒸発は免れないだろう火力によって焼かれる痛みに顔を顰めるが、すぐに全身を包み込む炎を、体に走らせた雷で消し飛ばす。

 

 U-オルガマリーが可視化できる程の魔力を放出し始める。赤黒い魔力が流星群が如き勢いで迫る中、私は翼を強く羽ばたかせて飛翔した。

 

 周囲の景色が色の線と化す程の速さで飛ぶ私は、私という標的を逃した魔力弾が地形を破壊していく音を聞きながらさらに加速。

 チラリと背後を見やれば、魔力弾が着弾した衝撃で発生した土煙を消し飛ばして追ってくるU-オルガマリーの姿が見える。

 

 体の向きを反転させ、両腕のブレードを振るう。U-オルガマリーと共に私を狙う流星群を一瞬の内に切り捨て、最後の一閃はブレードを形作る緋雷ごと振るった。

 入り切らない量の水を入れられた風船のように破裂したブレードは、瞬時にその場で緋色の電磁場を形成。即席の罠となってU-オルガマリーの動きを停止させた。

 だが、それも僅か数秒の間だけ。その間に私は己を縛る鎖を引き千切り、さらに魔力を引き出す。

 

 自身に課せられたリミッターの一つが外れたと確信した瞬間、拘束を破ったU-オルガマリーが自身の体を回転させながら迫ってきた。

 即座に防御態勢を取るが、拘束から抜け出た時に再びリミッターを外されたのか、予想以上の力を前に防御を崩されて弾き飛ばされてしまった。

 

 ぐるぐると回り続ける視界を、翼を広げて姿勢を制御する事で安定させる。

 

 息つく間もなく迫る火炎と激流。それを両手から放った雷撃で相殺させながら接近。大きく引き絞った右腕を突き出すが―――

 

 

「え、ガ―――ッ!?」

 

 

 シュンッ、と。今の一瞬まで目の前にいたはずのU-オルガマリーの姿が掻き消え、直後に背後から凄まじい衝撃を受けた。

 背骨を無理矢理押されるような形で弓なりになった体が為す術なく地面に叩きつけられ、そのまま地中深くまでめり込まされる。

 

 

(今の回避は超高速によるものじゃない……ッ! もしかすると……ッ!)

 

 

 体外に放出した魔力で、背後から絶えず注がれる魔力砲を防御。そのまま姿勢を反転させて一気に来た道を逆行。怒涛の勢いで流れ落ちる滝を昇る鯉のように魔力砲を遡った私は、魔力の障壁を維持したまま突進。U-オルガマリーの体が大きく弾かれるが、次の瞬間その姿は掻き消え、私の真横から手刀による刺突を繰り出してきた。

 自分の意識とは無関係に動いた左手でそれを打ち払い、そのまま手首を掴もうとするが……やはり直前で逃げられてしまった。

 

 背後からの回し蹴り。即座に跳ね上がった尻尾が迎え撃つも、それもまた回避され、また別方向から攻撃を仕掛けられる。

 次々に別方向に出現し、攻撃を仕掛けては離脱。離脱すればまたどこかに現れ、私に攻撃を仕掛けてくる。

 

 視線や魔力感知では追いつけない故に、無意識による迎撃に身を任せていたが……もうカラクリは理解できた。次はこっちから仕掛ける―――ッ!

 

 

「そこッ!」

 

 

 振り抜かれた拳が顔面を捉える直前に消えるU-オルガマリー。だがその瞬間、私は拳を振り抜いた勢いを殺さずに回転。遠心力を乗せた左腕から電撃を放つ。

 鏃のような形となった雷は、私からかなり離れた位置にU-オルガマリーが再出現すると同時に直撃。一瞬彼女が怯んだ隙にさらに電撃を放ち、追い打ちをかけていく。

 

 姿を消そうが無駄だ。お前達(・ ・ ・)の考えは読めている。

 

 再び全く違う場所に出現するU-オルガマリーに、追撃を繰り出している間に構築した魔術式による攻撃が行われる。

 

 彼女が行なっていたものは、文字通りの瞬間移動―――ようはテレポートだ。超高速による移動ではないから、0.01秒の間隔もなく別の場所に移動できるのだ。最初こそ驚いて不覚を取ったが、彼女が瞬間移動を使うのならば、それに合う動きをすればいい。

 

 

(でも……あまり時間をかけてはいられないわね)

「……ッ、ァ……ァア……ッッ!!」

 

 

 再び、自身のリミッターを無理矢理外されたのだろう。これまでのダメージに加え、さらなる力を無理矢理引き出された影響からか、その身はガクガクと痙攣し、食い縛られた歯がバキリと砕け散った。

 

 彼女の身から迸った魔力が周囲の景色を大きく歪め、大規模の魔力嵐を発生させる。

 地表が捲れ、そこに根付いていた木々が根本から引き抜かれ、粉微塵に粉砕しながら構えを取る彼女に、私は右手の甲に刻まれた令呪に意識を集中させる。

 

 これまでの攻撃にも権能を付与させていたが、それでも届かないのなら、今まで以上の力を以て届かせるしかない。

 

 二画ある令呪の内の一画が眩い光を放ちながら消えた瞬間、内側から膨大な魔力が迸る。体内に満ち、溢れ出てくる程の魔力を用いて、私は本来の姿への回帰を行う。

 

 

「―――ァアアアアアアアアアッッッ!!!」

 

 

 仮初の人間態から、真体へ。

 アンナ・ディストローツとして活動している時とは比べ物にならない充足感。試しに本来の大きさを取り戻した翼を広げれば、凄まじいまでの解放感を感じた。

 本来の機能を取り戻した眼から得られる情報もこれまでとは比較にならず、絶えず様々な情報を私に伝えてくれている。

 

 久しぶりの真体―――それこそオリュンポス以来の“祖龍”ミラルーツへの回帰を終えた私に、U-オルガマリーが攻撃を仕掛けてきた。

 

 放ってくるのは黒き流星が如き魔力弾。滞空している私に殺到してくるそれらは、しかし私の体から絶えず発生している緋雷によって迎撃、破壊されていく。

 お返しとばかりにアギトを開き、即座に充填させた魔力を放出。解き放たれたブレスはU-オルガマリーに命中し、彼女を遥か後方の地面へと押し飛ばしていく。だが彼女の体が地面に押し付けられる直前、彼女もまた攻撃を受けながらも反撃を開始したのか、彼女の放った魔力砲がブレスを押し返し始めた。

 白と緋のドラゴンブレスと赤黒い魔力砲が数秒の拮抗の末に相殺し合って消える形で崩れると同時、私は自分を魔力で包んで飛翔する。

 

 向かいから迫るのは、私と同じく自身の体を魔力の膜で覆っているU-オルガマリー。奇しくも同じ攻撃手段を取った私達は空中で衝突し、互いに弾かれた瞬間に自分を包んでいた魔力を球体状に変えて撃ち出す。

 撃ち出された魔力球が衝突と同時に爆発するも、その頃には既に私達は三手先の行動に移っていた。

 

 拳を握って突っ込んでくるU-オルガマリーを、人間態や龍人態とは威力がまるで違う雷撃を全身から放って牽制しながらブレスを連射して攻撃。U-オルガマリーは当然迎撃するも、最後の一発までは防ぎ切れずに吹き飛ばされた。

 すぐに追撃として赤雷を落とすが、直後に彼女の姿が掻き消え、脳天に凄まじい激痛が走った。

 

 脳を揺さぶられる不快感を覚えながらも、頭部に走った鈍い痛みから、それが拳による強力な一撃だとわかった時には、さらなる連撃が襲い掛かってきた。

 あらゆる元素(エレメント)を宿した徒手空拳を受けた私が地面に叩き付けられると、そのままU-オルガマリーは手元に巨大な重力の歪みを発生させ、それを私に投げつけてきた。

 

 起き上がる時間も勿体ないと、私は自身の体を分解(・ ・)。龍の肉体を稲妻に変化させ、無数に分裂した上でU-オルガマリーに攻撃。重力波による追撃を躱しながら四方八方から彼女を攻撃して肉体を復元させるも、大したダメージは与えられず反撃の魔力砲を受けてしまった。

 

 魔力砲の直撃による黒煙が発生する中、U-オルガマリーは真上へ移動を開始。私もすぐに怯んだ体を再起させて追跡する。

 

 後方から私の攻撃を、テレポートを交えながら超高速で回避し続ける彼女の行く先には、暗雲。彼女を追う形でそれが空を覆い尽くす外界―――正しくは真の意味での地上―――に飛び出た私は、眼下に広がる景色に[これは……]と眼を顰めた。

 

 それは―――見渡す限りの荒野だった。

 幾十にも聳える大小様々な火山は絶えず噴火を続けており、生命の気配は欠片も感じられない大地。

 遥か昔……それこそ生命が誕生する前に飽きる程見た景色と酷似した世界。それが、この南米異聞帯の地上世界だった。

 

 

[これが……この世界(れきし)の地球……。この世界の生命は、あの地下空洞でしか生きられないのね……]

 

 

 先程まで自分達がいた場所こそ、この歴史の生命が生存を許される唯一の場所。最後の楽園とも呼ぶべき場所なのだろう。その事実に堪らず胸が痛むが、今はその考えを抱く時間ではないと、すぐにその感情を切り捨てる。

 

 振り向き様に薙ぎ払うように放たれた高密度魔力による斬撃を躱し、右腕を振るう。

 人間の姿でいる時と比べれば可動範囲は狭まっているが、それを補うように纏わせた赤雷が右腕が振るった先に放射され、U-オルガマリーの肉体を切り裂いた。

 龍人態の一撃と比べて遥かに強化された一撃は、彼女から多量の血を噴出させる。

 

 

「ギ、ァアアアアアアァァァッッ!!?」

 

 

 遂に肉体支配では抑え切れなかった絶叫が、U-オルガマリーの口から吐き出される。出血を抑えようとしているのか、自分の体を抱き締めるように両腕を動かそうとしているが、そこで再び彼女を操る者達の意志が働いたのか、彼女は出血をそのままにこちらへ向かってきた。

 翼を羽ばたかせて高度を上げる事で突進を回避。尻尾を鞭のように振るって叩き付けようとして―――

 

 

[っ―――本当、悪趣味……ッ!]

 

 

 こちらに向けられた瞳に宿っていた明らかな恐怖に、思わず動きが止まってしまった。先程の一撃でより感情が表に出やすくなったのだろうか、今までよりずっと彼女の本心が瞳に表れるようになっており、それを見た私は思わず攻撃を中断して距離を取ってしまった。

 本当ならば、彼女の本心からの恐怖など無視して攻撃を加えるべきだった。しかし、出来ない。彼女自身の意思によるものではない戦闘で、今のような行動を取られてしまえば、私は攻撃の手を緩めてしまう。それが正しくない事だとわかっていても。

 

 けれど、だからといって彼女を操る存在が手を止める事などあり得ない。恐怖心を宿したU-オルガマリーの考えなど関係なしに彼女の肉体を動かし、私に攻撃を繰り出してきた。

 

 背後に出現させた空間の穴から次々と射出される魔力弾を躱し、雷撃を放つ。

 魔力弾の弾幕の間を縫ってU-オルガマリーに直撃した雷撃だが、無意識に威力を抑えてしまっていたのか、大したダメージは与えられなかった。

 

 

(やりづらい……ッ! 一秒でも早く、あの肉体支配を解除する―――ッ!)

 

 

 このまま力をセーブしていれば、いずれこちらが押し負けるのは確実。ならば、その前に彼女を縛る肉体支配の術式を解除しなければならないと思いながら飛翔した、その瞬間。

 

 ―――目の前に、巨大な艦が現れた。

 

 

[え、うわわッ!?]

 

 

 咄嗟に体を稲妻に変えて衝突を回避し、体を戻してU-オルガマリーに対し雷撃を放つ。前方に魔力障壁を展開される事で防がれてしまうが、障壁が消えた直後に突進して弾き飛ばし、無理矢理距離を開けさせた。

 

 首を動かし、背後の艦を見やる。

 

 

(あの艦って、カルデアのやつだよね? あの子達も来たんだ。……でもぉッ!)

 

 

 今このタイミングはマズいよッ!? なんで私達が戦っている事に気付かな―――あッ!

 

 

(ま、まさか、速すぎた……ッ!? 速すぎて気付けなかった……ッ!?)

 

 

 私達の戦いは、それこそ超高速の世界だ。私もU-オルガマリーも互いの力を引き出しながら戦っていたから、加速度的に戦いの速度が上がっていったのだ。

 私からすれば数十分は戦っていると思われる戦いも、周囲からすれば数分の出来事でしかない。嵐の壁を突破してくる都合上、時間はそれなりにかかるはず。仮にその間に私達が戦っている事に気付けたとしても、離脱は出来ないだろう。

 気付く気付かないに関わらず、あの子達はここに出てくるしかなかった。一切の部外者の介在を許さない、私とU-オルガマリーの戦場に。

 

 

(なんとか離れてもらわないと―――……ッ!)

 

 

 とにかく彼女達にここから離れてもらおうとするが、U-オルガマリーが行動を起こす方が早かった。

 天に掲げた右手の先に作られるのは、超高温の炎を限界まで圧縮させたであろう火球。今まで繰り出してきたものとは熱量の規模がまるで違うそれを前にして、私はまずあれをどうにかしなければならないと思考を切り替える。

 

 空を覆う暗雲に干渉し、そこから発生する全ての雷を支配下に置く。

 私の干渉を受けた影響により暗雲に無数に発生した渦が、雷鳴と共に眩く輝く。瞬間、そこから一斉に雷がU-オルガマリー目掛けて降り注いでいった。

 

 頭上から降り注ぐ落雷にU-オルガマリーがテレポートで回避するが、即座に落雷の数を倍に増やし、カルデアの艦―――ストーム・ボーダーに当たらないように気を付けながら全方位に落とし続ける。テレポートで逃げたとしても、全方位に降り注ぐ落雷から完全に逃げ切る事は出来なかったようで、落雷に貫かれた火球はU-オルガマリーを巻き込んで大爆発を起こした。

 

 U-オルガマリーの姿が爆炎の中に消えている間に、私はこれまでよりも権能(チカラ)を注ぎ込んだブレスを発射しようとして―――

 

 

[な―――]

 

 

 彼女の背後に聳え立つ、巨大な乱入者(・ ・ ・)に絶句した。

 

 それは、翡翠色の巨人だった。辛うじてわかる輪郭から女性と思しき姿を持つそれを見た私は、それから放たれる熱量を受けて太陽を連想してしまう。

 だが、それは本物の太陽ではない。確かにそれからは太陽が如き気配を感じるものの、同時に植物の気配や、生命を持たない鉱石の存在も知覚できた。

 

 自身の背後に出現した存在に気付いたU-オルガマリーが振り向くのと、巨人が右腕を振り上げるのは同時。

 

 

[え、あれは……ッ!?]

 

 

 その瞬間、私は予想外の光景に目を見開く。

 五指を揃えて天を衝くように掲げられた右腕に走る、翡翠色の雷。そこから感じる力は微々たるものだが……その雷は、()()()()()()()()()宿()()()()()

 

 巨人が、右腕を振り下ろす。

 周囲の大気を文字通り焼き尽くしながら、一番手前にいたU-オルガマリーを叩き落した巨大な右腕を前に、私は翼を大きく広げて防御する構えを取る。

 

 仮に私がここで回避してしまえば、私の背後にあるカルデアの艦が、あの右腕に叩き落されてしまう。どうやらカルデアも現在持てる防御手段の全てを使っているようだが、あそこから感じる力はそれを容易く打ち破りうるもの。あの子達が生存する確率は、それこそ蜘蛛の糸を伝って地獄から脱出する程低いものだ。

 

 あの子達には必ずシュレイド異聞帯に来てほしい。なにより、こんなわけのわからない形で、あの子達の旅を終わらせていいはずが―――あれ?

 

 

[と、止めた……?]

 

 

 間違いなく私達も狙っていると思っていた巨人が、ゆっくりと右腕を停止させた。

 迎撃の為に充填されていた魔力が霧散していく中、右腕を下ろした巨人がじっとこちらを見下ろしてくる。

 

 

[……君は、何者なの?]

『……私は、この異聞帯の“王”だった(・ ・ ・)者です』

 

 

 “王”だった者……そういえば、デイビットからの通信には「新しい“王”が誕生した」といった言葉があった。今私の前に立つこの巨人は、言わば先王なのだろう。声から察するに、女性の可能性が高そうだ。

 

 

[あの雷はなに? 私の同じ力を持つ雷なんて……]

『それは―――ぅ、ぐ……ッ!?』

 

 

 私の質問に巨人が答えようとした瞬間、巨人が突然頭を押さえて苦しみ出した。

 

 

[どうしたのッ!?]

『ぐ、うぅううう……ッ! に、逃げてください……ッ! 浸食が進んで(・ ・ ・ ・ ・ ・)―――アァアアアアアッッ!!』

 

 

 天を仰ぐように巨人が叫んだ直後、彼女の左半身に不気味な紋様が出現した。

 紫色を中心とした、黄色ともオレンジ色にも見える奇妙な紋様。それに心当たりがあった私はすぐにそれを取り除こうとするが、それより先に巨人から放出された魔力の奔流に吹き飛ばされてしまう。

 

 即座に態勢を整えるが、直後に本能的な脅威を感じた肉体が無意識に力を行使。全身から放たれた緋雷が、私やストーム・ボーダーを狙った光の粒子を迎撃していく。

 

 

(ああもう、なんなのこの異聞帯ッ!? 厄ネタばっかじゃんッ!!)

 

 

 とりあえず、今はあの巨人の言う通りに逃げるしかないだろう。情報の整理をするのはそれからにした方がいい。

 だが、私一体(ひとり)で逃げるわけにはいかない。すぐに後方のストーム・ボーダーを魔力で包み込み、私に紐づけさせる。

 

 

[爆速で飛ばすから気を付けてねッ!]

 

 

 艦内にいる者達に叫びながら横目で巨人を見れば、彼女は水平に構えた両腕に膨大な魔力を蓄え始めている。

 凄まじい勢いで充填されていく魔力に嫌な予感を覚えた私は、翼を広げて一気に加速。向かう先は、この異聞帯で唯一生存を許されている、あの地下世界への入り口。あそこまで逃げられれば、一先ずはこちらの勝ちだ。

 

 周囲の景色が色の線となって過ぎ去り始める。このままいけば一秒もしない内に―――

 

 

『アアアアアアアアアアアッッッ!!!』

[―――ッ! させないッ!]

 

 

 背後からの絶叫と膨大な魔力の高まりに、即座に進行方向を反転。ストーム・ボーダーを背後に回した私に迫るのは、十字に組んだ腕から発射される巨大光線だ。

 

 完全に遅れた以上、全力の迎撃は叶わない。それでも、出来るだけの抵抗はさせてもらう―――ッ!

 

 汎異権能結合。裁きの権能を純粋な魔力に切り替え、最大出力ッ! 即座にブレスとして放射ッ!

 

 開かれたアギトから放たれた極大ブレスと、巨人の光線が激突する。せめぎ合う二つの力は周囲の空間を大きく歪め、目も潰れんばかりの光を放ち続けるが……。

 

 

[駄目だ……押し負ける……ッ!]

 

 

 充分に溜め込まれた魔力を持つ巨人と、即席で用意した私。後手に回った事も災いしてせめぎ合いの敗北を悟った私は、すぐにブレスの放射を中断し、残った魔力を自身とストーム・ボーダーを護るように展開して光線を受けた。

 

 凄まじいまでの振動と熱量。ゴリゴリと障壁が削られていく嫌な感覚に内心冷や汗が止まらないが、それでも必死に障壁を維持し続けていくが、このままではジリ貧だ。ブレスで迎え撃った時と同じように、いずれ障壁を砕かれ、私達はこの光に消えるだろう。

 

 私だけなら問題はない。けれど、こんなところでカルデアを失うわけにはいかない。

 

 

(それなら……ッ!)

 

 

 障壁に術式を追加。新たな法則を加えられた障壁は、次の瞬間には眩いばかりに輝き始め―――爆発した。

 

 私が障壁に組み込んだ式は、与えられた衝撃に対して発生するカウンターだ。一定以上の衝撃を受ければ即座にそれを倍にして跳ね返すものだが、受け止めている光線の威力が強すぎて一瞬で発動した。けれど、それでいい。

 

 微かにだが、障壁の爆発によって光線が途切れる。その一瞬の合間を縫った私はすぐにストーム・ボーダーごと光線の射線から外れ、苦し紛れのブレスを巨人の顔面へ叩き込んだ。

 

 巨人が顔を抑えて怯んだ隙に、私は地下世界へ逃げ込もうとするが―――。

 

 

『アァアアアッ!!』

[ぐ、アァアッ!?]

 

 

 ズバッ、と。

 怯みながらも振るわれた腕から飛び出した、ギザギザとした光輪が、私の左翼膜を切り裂いた。

 空中機動を行う為の片翼が使い物にならなくなって錐揉み状に回転していくが、すぐに治癒魔術で傷口を埋め、態勢を立て直しながらストーム・ボーダーを伴って逃げていく。

 

 背後から絶え間なく放たれ続ける光輪を躱しながら、遂に私達は地下空洞の入り口へと辿り着く。

 

 もうあと少し、そう思った時だった。

 

 

[う……ッ!!?]

 

 

 背中に丸鋸が直撃し、鋭い激痛が走った。痛みに怯んだ影響で動きが鈍った体は次々と追ってきた光輪によって少しずつ切り裂かれていき、その度に鋭い痛みが走る。

 切り傷から溢れ出す血と魔力。真体に回帰し続ける為の魔力が外部に流出していく影響で、少しずつこの姿を維持できなくなっていく。この体だからこそ出来ていた、ストーム・ボーダーを伴っての高速移動ももう出来なくなっている。

 

 

「あ……ッ!?」

 

 

 シュン、と。今まで解き放たれていた力に枷が嵌め直される感覚。すぐに周囲から魔力を取り込んでそれを防ごうとするも、既に後の祭り。

 次の瞬間には、私は“祖龍”ではなく、アンナ・ディストローツとしての姿に戻ってしまった。

 

 そして、悪い出来事はさらに続く。

 

 背後から轟音。振り向いた私が見たのは、黒煙を上げているストーム・ボーダー。私が展開していた障壁が消えた事で、ストーム・ボーダーに光輪が当たってしまったのだ。どうやら艦体そのものもかなりの防御を施していたようだが、巨人の光輪はその防御を奥にある艦体ごと切り裂いてしまったようだ。

 所々から小規模の爆発を起こしながら墜落していくストーム・ボーダー。そして、()()()()()()()()()()()

 

 

「―――ッ! 駄目……ッ!」

 

 

 その二つの影を視界に収めた私は翼を広げて助けに行こうとするも、二人―――立香ちゃんとクルーらしき少年との距離は今の私には遠すぎて。

 

 立香ちゃん達が森の奥に消えていくのを、ただ眺めるだけしか出来なかった―――。

 




 
・『U-オルガマリー』
 ……元々戦っているだけでも滅茶苦茶痛いのに、ルーツが“祖龍”になってからはさらに地獄の痛みを味わい続けていた。気分は手術台の上。

・『ルーツ』
 ……U-オルガマリーの肉体支配を解除しようとするが、その過程で彼女が滅茶苦茶痛がるし怯えるしでさあ大変。なんとかしようとしたら巨人の暴走によってカルデア諸共撃墜された。スペシウム光線と八つ裂き光輪は酷いってッ!

・『ルーツの真体回帰』
 ……汎人類史と比べて神秘の濃度が段違いなシュレイド異聞帯やブリテンにいた事でかつての力を取り戻しつつあるが、それでも“祖龍”の姿に戻るにはまだ令呪を使わないといけない。が、令呪によるブーストを受けても真体でいられるのは長くて10分だが、そこに戦闘による魔力消費が加算されると、制限時間が一気に減少してしまう。
 オリュンポスでU-オルガマリーに対して一画、今回で二画目を使用したので、現段階でかつての姿に戻る事が出来るのはあと一回。

・『光の巨人』
 ……突如ルーツとU-オルガマリーの対決に割り込んできた存在。なぜかルーツの扱う緋雷と酷似した力を持つ、翡翠色の雷を操る事が出来る。が、U-オルガマリーを叩き落した直後、右半身に謎の紋様が出現。一時的な暴走状態に陥り、ルーツとストーム・ボーダーを光線と光輪で攻撃、撃墜した。


 前書きにて終章について触れましたが、前書きでは書き切れなかったところは活動報告の方に載せてあります。読者様の中には、既にスレやXなどで発言している方もいらっしゃるかもしれませんが、それでもまだ足りないな、と思う方は、是非そこに吐き出してください。私もそう思ったから活動報告に載せましたのでッ!

 改めまして皆様、明けましておめでとうございます。新年一話目、そして偶然にも元旦に投稿できたのもありましたので、こちらのイラストを描かせていただきました。もしよろしければ、感想を戴けると幸いです。


【挿絵表示】


 初めてオフェリアを描きましたが、一から描く必要のあるルーツと違って本当に描きやすいですね……。ペンの進み具合がルーツと比べて早く感じました。

 それでは皆様、今年も『緋雷ノ玉座』をよろしくお願いしますッ!
 では、また次回ッ!
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