【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 最近SNSでトレンドになっているポケパークカントーに行きたいものの、仕事が多かったり趣味に時間を取られたりして行くタイミングを掴めないseven774です。

 小さい頃からポケモンに触れてきた私からすると、ポケパークカントーはもう本当に行きたい場所なんですよね……。写真を見るだけでも凄く楽しそうで行きたくて仕方ないです……。なんとかして行きたいところです。

 バレンタイン新規サーヴァントでデメテル実装が決まりましたねッ! ですが他の既存サーヴァント達も宝具レベルを重ねたりしたいので、ガチャを回すかどうかは性能云々ですかね……。
 
 それとアンケート回答、ありがとうございますッ! 皆さんの意見を反映し、この小説にクトゥルフ神話タグを追加しましたッ!

 今回は分割したため少し短く、ちょっと中途半端な終わりになってしまうかも……。
 ともかく、それでは本編、どうぞッ!


トラトラウキの巨人

 

(黄衣の王……まさか、彼がチチェン・イッツァーの王になってるなんて……)

 

 

 テペウの隠れ家からしばらく歩いた先にある、トウモロコシ畑。そこから拝借したトウモロコシを口にしながら考えに耽る。

 

 アルバからの報告にあった『黄衣の王』は、かつての竜大戦時代、私達……というより、アンナに助力してくれた者が名乗っていたものと同じ名前だ。といっても、実際にどこかの国を治めていたとかそういうのではなく、あくまで『そういった姿で現界した』という形だったのだが。

 一瞬、テペウから聞いた汎人類史の漏洩による結果の一つでその名を名乗る者が現れたのかと思ったが、ここにあの邪神がいる以上、その黄衣の王もまた、私の知る彼と同一の可能性が高い。彼らからすれば、汎人類史も異聞帯もさしたる違いはないだろうから。

 

 けれど、彼がディノスの王として立つ理由がわからない。

 

 彼が汎人類史でアンナ達に協力していたのは、邪神の暗躍に対抗する人類の姿を特等席で見たいというものだった。通常ならば敵うはずのない超常の存在に対して『それでも』と足掻く人類を鑑賞(・ ・)したかったからだ。

 

 けれど、この異聞帯にそんな人類はいない。

 全員がそうではないだろうが、この世界における人類であるディノスは温厚が過ぎる。達観し過ぎた故に、自らの滅びを容易く受け入れてしまえる精神となってしまっている。自らの死が種全体の滅亡に繋がるのなら抵抗はするものの、そうでないなら『はいそうですか』となってしまうのだ。

 こう言ってはなんだけれど、竜大戦時代の彼が鑑賞対象にした人類(アンナ)達とは全く異なっている。正反対と言ってもいいだろう。

 

 なぜ、彼はディノスを守護する立場についたのか―――困惑の感情が胸中に満ちるが、しかし私はそこに『敵対』の可能性があるとは思わなかった。

 

 アルバからの報告によれば、彼はククルカンの推薦を受けてディノスの王になったとある。この世界の私の力を受け継いだククルカンが彼を王座に就かせたのなら、それに足る理由が必ずあるはずだ。

 調べなければならない。ククルカンがなぜ彼を王にしたのか、なぜ彼がその推薦を受け入れたのか。

 

 その為にも、まずは―――

 

 

「ここを越えるしかないよね」

 

 

 食べ終えたトウモロコシを緋雷で消し去り、眼前の巨大な河を見据える。

 私がこの世界に足を踏み入れた時に目にした巨河―――トラトラウキは、以前とは比べ物にならない程広大かつ過酷なものに変化していた。

 一面の大瀑布。絶え間なく下方の河へと叩きつけられる大量の水が轟々と音を響かせており、風に乗ってきた飛沫が私の体を濡らしていく。

 冥界線とは試練である。四つ存在するそれらを踏破し、最奥へと向かう冥界紀行は、正しく試練そのものだが、まさかこれ程までの変化とは思わなかった。

 立香ちゃん達もいずれテペウからこの話は聞く、もしくは既に聞いているだろうから、彼女達の意識によりこのような様相に変化したのだろうか。

 いや、ひょっとすると、私もこの変化に関わっている可能性も高い。

 

 オフェリアちゃんを攫ったあの邪神が新たな“王”を立てたのなら、彼女の下へ続く道程は過酷なものになるだろうという無意識の警戒も、トラトラウキをここまで変容させた一因の可能性がある。

 

 まさか自分が試される側に回るなんて思わなかったけれど、なにはともあれ、まずはこの巨河を越えねば話にならない。

 

 ―――が、しかし。

 

 崖下に視線を落とし、そこにある残骸(・ ・)に目を細める。

 

 絶え間なく満ちる水飛沫のカーテンに遮られているが、その奥には明らかな異色(・ ・)があった。

 

 それは既に活動する事も、それをする器官すらも文字通り散失していた。

 ミキサーでぐちゃぐちゃにかき混ぜられたような肉塊と、その周囲でぷかぷかと浮かぶ肉片。辛うじてギリギリ形を保っている肉塊から察するに、あれがこのトラトラウキに巣食っていた巨大イグアナ―――ソチナトルだろう。

 

 崖下から河全体に視線を戻し、目を細める。

 

 

(ここから感じられる気配は一つだけ、か。私の使い魔を撃ち落としたのもこれかな……。でも、この気配は……)

 

 

 気配を探るまでもなく、全身にビリビリと来る強烈なオーラ。気配の性質からしてかなり強力なサーヴァントのものだとわかるが、その気配が異質に過ぎた。

 

 ティターンにアイラーヴァタ、そしてティアマト。それぞれの神話において知名度が高く、またその逸話も有名な者達の気配が混ざり合っていた。

 この巨河に潜むサーヴァントは、間違いなく異常な経緯で誕生した存在だ。……バルカンを思い出すな。あの子も、生前と今じゃかなり気配の質が異なっているし。

 

 でも、それだけじゃない。強大な存在のエッセンスを混ぜ合わせた気配だが、その奥にはまた別の要素が感じられた。

 そしてその力は、深い水底から湧き上がるように三つの力を汚染し続けている。まだ完全には吞まれていないのが、不幸中の幸いだろう。

 

 しかもこの力は、私と交戦したU-オルガマリーを操っていた、あの邪神の聖母(こども)達の力の一つと似通っていた。恐らく、この巨河のサーヴァントを汚染したのも、その一人のはずだ。

 

 ―――自らの内側に意識を向ける。

 テペウの隠れ家からトラトラウキまではかなりの距離があったが、私はここまで一気に駆け抜けてきた。その間にも周囲の魔力を吸収して能力の回復を図っていた事もあり、充分とはいかないまでも、予想以上に回復できていた。

 シュレイド異聞帯でもこの短時間でここまで回復できた事はない。が、私はこの理由についても凡そ考えは付いていた。

 

 マィヤ。

 この異聞帯の成立に関わる要素の一つにして、ミクトランの基盤となった存在。遥かな昔、隕石に付着していた地球外生命体。それらがこのミクトランの生命環境を支え、維持し続けている者達。

 ミクトランの構築に当たって、彼らは地球上に張り巡らされていた地脈を操作し、ミクトランに集中させた。荒廃し、炎と雷に呑まれた地上に回す力を一点に集めたのだから、そりゃ私もいつも以上に回復するはずだ。

 

 本当ならばもう少し回復の時間が欲しいが―――まぁ。

 

 

「そうもいかないよねッ!」

 

 

 両足のバネを使って跳び上がった途端、先程まで私がいた場所を不可視の攻撃が通り抜けていった。背後にある木々が粉砕されていく音が瞬くに消えていき、私の体は重力に引かれ崖下へ。

 

 魔力で空間固定。即席の足場を作り出し、蹴る。

 それぞれ規模の異なる滝の間を跳びながら向かう先には、巨大なサーヴァントの姿が見える。

 

 不気味な仮面で顔を隠した、ボンテージらしき服装に身を包むサーヴァント。周囲で流れ落ちる滝と比べても遜色ない巨体を有する彼女が高く掲げた腕を振り下ろした直後、私と彼女の間の空間が大きく歪んだ。

 

 咄嗟に身を捩って回避。私という標的を落とし損ねた歪み―――腕の振り下ろしで発生した突風の一撃は、後方にある崖を完全に打ち砕いた。

 恐ろしい威力だ。ただの腕の一振りでも、そこから発生するのは、空間が歪んだようにも思える風圧を誇る不可視の一撃。使い魔達を撃ち落としたのも、ソチナトルを殺したのも、あの攻撃によるものだろう。

 それに、注意すべき点は他にもある。先の一撃の余波は周囲の滝が流れ落ちていた崖すら粉砕し、その残骸は風に操られるまま私目掛けて飛んできた。

 

 

「フ―――ッ!」

 

 

 これまでよりも強く魔力の足場を蹴って加速し、握り締めた左拳を一気に振り抜く―――ッ!

 

 虚空へと突き出された拳はそこにあった空気を衝撃波の弾丸へと作り替え、眼前の落石を瞬く間に粉砕し、敵サーヴァントへの道を押し開く。

 再び加速。さらに速度を上げて迫る私にサーヴァントが拳を振り被り、私もまた右拳を腰溜めに構える。

 

 鋭く、短く、そして一瞬で肺に溜め込んだ酸素を吐き出し、突き出す。

 残像すら残さぬ動きで突き出された拳は眼前に迫る巨大な拳と激突し、衝撃波と共に互いの体を弾き返した。

 

 大気を大きく揺るがしながら離れた私達だが、既に次の手は打たれている。

 巨人は再び拳を振り被り、私は五指を揃えた左手を構える。

 

 振り抜かれる拳。凄まじい動きで動く腕は周りの空気を大きく捻じり、うねりを上げさせながら迫るそれを、直撃するギリギリの距離に来た瞬間に左手を押し当てる。

 風圧に吹き飛ばされそうになる体を必死にその場に留めながら行った受け流しによって、拳の軌道を逸らされた巨人の態勢が崩れる。瞬間、私は今まで堪えていた風圧を敢えて受け入れ、巨人の頭上を取る。

 

 

「ハァッ!」

 

 

 心臓を起点に精製された緋雷を右腕に纏わせ、放出。

 幾十にも枝分かれしながらも分散せず、直線状に放射された緋雷は全て巨人の体に直撃し、その身から黒煙と共に黒く淀んだ魔力が溢れ出した。

 

 見ているだけでも虫唾が走るその魔力は、正しくあの時U-オルガマリーを操っていた肉体支配の術式を構成していたそれと同一のもの。今の一撃で全て消えたわけではないが、それでもあの様子を見るに、効果はあるようだった。

 

 完全に汚染されていたのならもう助ける術はなかったが……これならなんとかなるかもしれない。

 あの呪詛の根源は、彼女の顔を覆っている巨大な仮面。それさえ破壊できれば、彼女にかかっている術式を完全に除去できる。

 

 だが、それも簡単にはいかない。

 怯んでいる巨人が行動を起こす前にもう一度緋雷を叩き込もうとした瞬間。

 

 

「Aaaaaaaaaaaaaaa―――ッッッ!!!」

 

 

 仮面の下部。音の発生源から察するに口から発せられたであろう、歌声のような大咆哮。

 仮面で口元を覆われているにも関わらず、放たれた大咆哮は周囲の地形を捲り上げ、緋雷を撃ち出そうとしていた私の体を音波による振動で無理矢理拘束してきた。

 

 自身の足元を一瞬で更地へと変えた巨人が跳躍する。

 その巨体に比例して強力な脚力で跳び上がった巨人が、硬直している私に握り締めた両拳を振り下ろしてくる。

 

 ハンマーの要領で振り下ろされた一撃は私の体を瞬時に大地へ叩き落し、巨大なクレーターを作り上げた。

 

 咄嗟に硬直した体を動かして防御態勢を取ったものの、巨人の一撃はその体格に相応しい威力を有しており、その攻撃を受け止めた両腕にはズキズキとした痛みが走っていた。

 

 だが、まだ終わっていない。頭上を影が覆った直後、重力に引かれた巨人の体が凄まじい勢いで落下してきた。

 

 両足を人のものから龍のそれへと変化させ、離脱。残像を残して移動したい瞬間、私の残像が巨人の足に踏み潰され、同時に発生した地震がトラトラウキを揺るがした。

 クレーターを埋め尽くす勢いで迫ってきたトラトラウキの河水が、まるで満杯のコップをテーブルに叩きつけた時に零れ出すような勢いで跳ね上がり、即席の雨となって降り注いでくる。

 ドドドドと落ちてくる大量の水を受けながら、巨人の拳が向かってくる。それを回避すると同時に腕を滑り落ち、顔面に飛び蹴りを喰わらせる。

 僅かに巨人の顔が後ろへ逸れるも、彼女はすぐに私を捕まえようと左手を動かしてきた。

 

 五指を広げた左手に捕まる前に離脱した私は、距離を取りながら掌からの緋雷で攻撃。仮面に直撃したそれによって巨人が微かに怯んでいる隙に、今度は両手に纏った緋雷を周囲へ飛ばす。

 両手から八本飛ばされた緋雷の内、巨人の頭上で停止した四本と、残りの四本が楔のように河水に覆われた地面に突き刺さった直後、それらを繋ぎ合わせるように発生した雷の結界が巨人を拘束。台形に構成されたそれは巨人の動きを阻害し、絶えず私の権能(チカラ)で彼女にかけられた呪詛の解除を行い続ける。

 

 頭上から結界に抑え付けられた事で四つん這いの態勢となった巨人が藻掻く度、結界が大きく振動し、亀裂が走る。

 

 

(なんて力……ッ! 私の結界がこんなにも早く壊れかけるなんてッ!)

 

 

 巨人の体からは次々と黒い呪詛が緋雷によって炙り出され除去されているが、それでも大元の仮面の破壊には至らない。しかも、結界の拘束を通してわかった事がある。

 

 ―――再生している。

 私の緋雷は消去の力は当然として、純粋な攻撃としても強力なものだ。これまでも呪詛の解除に取り掛かりながら、巨人の体を焼き続けてきた。

 だが、その傷が塞がり始めている。超高熱の電撃によって作られた傷が少しずつ消えていき、炙り出されている呪詛も比例して減少し始めている。

 

 私自身もミクトランの環境があって長期戦は出来るが、それでは巨人の精神が呪詛に呑まれかねない。

 結局、この戦いも同じだったのだ。U-オルガマリーとの戦いと。

 

 迅速に終わらせなければ、相手は呑まれる。苦しみ続ける。

 助けなくてはならない。相手がどんな存在であろうと、邪神に弄ばれているのであれば、助けないという選択肢はない。

 

 結界が砕け、巨人が再起する。

 弾けるように立ち上がった彼女に対して、私は結界の維持に回していた魔力を両腕に回し、攻撃を仕掛けようとして―――

 

 

 ―――足首を、何者かに掴まれた。

 

 

「なに―――ッ!?」

 

 

 思わず自分の足首を掴んだ者の正体を確認すべく顔を向けた私は、そこにいた存在に目を見開いた。

 

 のっぺらぼうの顔に、ゴムのような黒い肌。蝙蝠の翼と長い尻尾を持つ異形。

 私の影から這い出るように現れたそいつが、鋭い爪が生えそろった右手で私の足首を掴んでいたのだ。

 一瞬、ミクトランの原生生物かと思ったが……これは違うッ!

 

 

「お前……あの神の手下かッ!」

 

 

 巨人への攻撃を取り止め、跳躍。跳び上がった私に引っ張られる形で、今まで地面に溶け込んでいた異形の右肩から下が露になる。

 蝙蝠の翼と長い尻尾を持つ異形が、私の足首を掴んでいない右手を向かわせてくる。その指先に伸びる爪が私を切り裂くより先に、私の左足が異形の顔面にめり込んだ。

 思わず顔を押さえた異形の拘束から逃れ、身体強化を乗せた拳打を叩き込む。

 

 叩き落された異形が、高所から落としたインクのように弾けて霧散していく。だがその刹那、霧散した同胞と入れ替わるように無数の異形達が地面から出現し、さらにどこからともなく翼を羽ばたかせてきた異形達が、私を取り囲んだ。

 

 軽く見ただけでも百は優に超える異形の群れに構えた直後、異形の群れが一斉に襲い掛かってきた。

 

 全方位から迫ってくる魔力弾を回避し、時には弾きながら、それに紛れて接近戦を仕掛けてきた異形達を殴り、蹴り飛ばしていく。

 次々と攻撃を仕掛けてくる異形達を叩きのめしながら巨人の様子を窺うと、彼女は結界から受けた傷を癒しながら両足を折り曲げ、跳躍の構えを取っていた。

 

 来る―――そう確信すると同時、私は背後から迫ってきていた異形を裏拳で殴り飛ばしながら、左手で緋雷を放出。放たれた稲妻は異形達の群れの密度が比較的低い場所を貫き、一瞬だけがら空きとなる。

 そこを一気に突き抜けた私を異形達が追ってくるが、彼らの背後に巨大な影が出現する。

 

 跳躍した巨人が異形達の巻き添えなど気にせずに手刀を振り下ろしてくる。

 異形達が手刀と、そこから発生する風圧によってミンチの如く霧散していく異形達だが、先に離脱していた私は風圧を耐えるだけで済んだ。

 

 私を取り逃した巨人は着地した直後、着地の為に折り曲げた足でそのまま駆け出し始める。

 もう一度跳んで攻撃を仕掛けてくるのかと思ったが、次の瞬間、私のその考えは間違いだったと悟った。

 

 

「え……ッ!?」

 

 

 巨人が、さらに巨大化したのだ。

 一歩進むごとに大きなった巨人の体はすぐに私を攻撃範囲に捉え、その瞬間に右肩を前に加速した。

 

 

「ガ―――ッ!!?」

 

 

 自身の前に滞空する異形の群れなど歯牙にもかけずに突っ込んできた巨人のショルダータックルが直撃し、私の体は遥か後方にある壁面へと深くめり込む。

 全身に走る激痛に「うぅ……ッ!」と呻き声を漏らしながらめり込んだ体を動かそうとするが、それより先にさらなる激痛が全身に走った。

 

 

「UuuuuuuAaaaaaaaaッッ!!」

 

 

 雄叫びを上げながら行われる、拳による連撃。

 一秒の間すら置かずに繰り返される連撃の威力は咄嗟の防御すらも力尽くで突破し、私の体に激痛を走らせていく。

 絶え間なく繰り出される拳撃は、巨人が巨大化している影響で威力も上がっており、防御態勢が崩された瞬間に展開した魔力障壁越しでも私の体を軋ませていく。障壁は破壊される寸前に修復しているが、それでも修復が間に合わなくなるのも時間の問題だ。

 

 どうやってこの状態から脱するか―――額に冷や汗を流しながら私がそう思った、その時だった。

 

 

「―――ッ!?」

 

 

 突然、轟音と共に巨人の背中が爆ぜ、振り抜かれようとしていた左拳の動きが鈍った。

 すぐにその隙を突いて脱出した私に巨人が右手を向かわせて来るが、その手首を遠方から飛んできた赤黒いエネルギーが弾いた。

 

 

「上姉上ッ!!」

「ア、アルバッ!?」

 

 

 赤黒いエネルギー―――龍属性の奔流が飛んできた方角に目を向けると、そこからマントを靡かせてきたアルバが、左手に握った“神滅槍アル・トリア”を振るう。

 槍の穂先から放出された龍属性の奔流は、突然の乱入者に攻撃を仕掛けようとした異形の群れを全て消し飛ばしていき、次いでアルバへ振り返った巨人の体を突き飛ばした。

 その身に神々の要素(エッセンス)を宿している巨人は、神への特攻を持つアルバの一撃を受けて堪らず背中から壁面へと倒れ込んだ。

 

 地響きを起こしながら倒れ込んだが巨人だが、それでもすぐに再起し大咆哮の構えを取るが、そうはさせじと私の放った雷撃が彼女の動きを阻害した。

 

 

「任せる、()()

「任せたまえ、“煉獄龍”」

 

 

 アルバが空高く放り投げた盾を踏み台に、一つの影が躍り出る。

 サーヴァントの脚力で瞬く間に巨人の顔の前まで跳躍した彼が、静かに口を開く。

 

 

「苦痛。苦悩。死を表す悪竜の名において。尽きる事なき膿を、私は見る」

 

 

 男の全身に眩い光が宿り、その手が巨人の仮面に触れる。

 

 

「死の穢れ、悪の(おこり)は万人に訪れる。零れ、(あまね)く泥を、私が掬い上げよう。『この魂に、憐れみを(Помилуй нас, Господи)』」

 

 

 彼の手が触れた箇所に生まれた亀裂は、眩い光と共に巨人の顔を隠す仮面に伝播していき―――バキッ、という音と共に破壊した。

 

 仮面の破壊に伴って、巨人が崩れ落ちていく。その瞬間、彼女の顔から剥がれ落ちていく仮面の破片から黒い靄が立ち昇り始めた。

 それは無数に散らばり落下していく破片を結合させていき、再び元の形へと戻った直後、自身の破壊を成し遂げた男目掛けて突っ込んでいくが―――

 

 

「させないよッ!」

 

 

 彼を背後に隠す形で移動した私が両手を前に突き出し、緋雷を圧縮させた雷砲を発射。

 放たれた一撃は一寸の狂いもなく呪詛の仮面を呑み込み、一片の欠片も残すことなく消し去った。

 

 雷砲を撃ち終えた私は周囲を確認し、もう異形の出現も仮面の欠片の取り逃しもない事を確信すると、いつの間にか肺に溜まっていた空気を一気に吐き出した。

 

 

「……はぁ……終わった……」

「助けられてしまったな、アンナ・ディストローツ。礼を言う」

「いや、それはこっちのセリフだよ。助けてくれてありがとう。もちろん、アルバもね」

 

 

 一足先に崖の上に移動していた彼―――言峰綺礼とアルバにお礼を言うと、言峰君はふっと小さく口元に笑みを浮かべ、アルバは静かに頭を下げた。

 

 

「それにしても意外な組み合わせだね。助かったけど、君達が組んで助けに来るとは思わなかったよ」

「ここから忌々しい気配を感じましたので。彼とは道中で会いました」

「なに。目的こそ違うが、君と会うという点については一致していてね。結果としてこういう形となったわけだ」

「私と会う為? アルバならまだわかるけど、言峰君はどうして私に?」

 

 

 アルバなら、あの邪神関連の気配を感じたのなら助けに来たのも納得できる。けれど言峰君が私に会いに来る理由は……あ、もしかして。

 

 

「彼女と戦っていた君ならわかるかと思ってね。お嬢様……U・オルガマリーはどこにいるかね?」

「あぁ、やっぱり。それなら―――」

 

 

 使い魔を通して視た彼女の現状を言峰君に伝えると、彼は静かに「Oh……」と顔を覆ったのだった―――。

 




 
・『ルーツの戦闘スタイル』
 ……本気で戦うと周囲の被害が尋常なものではなくなってしまう事から初手から全力では行かず、様子見として力を制限し、相手の戦闘力に応じて制限を解除していく。しかし、その途中で相手が一気に力を出し始めると対応が遅れてしまい、その隙を突かれて劣勢に追い込まれやすい。
 長らく多くの英雄や怪物達を試す為にやってきた戦い方故に無意識の癖になってしまっているため、必然的に常に後手に回ってしまう戦い方となっている。故に、基本相手の力を一気に上回る事が出来ない。
 ただし、周りに味方がおらず、相手が絶対に倒さなければならない存在の場合に関しては、最初からフルパワーで戦う。

・『巨人のサーヴァント』
 ……異霊化したキングプロテア。トラトラウキにいた理由は原作ミクトラン編と同じだが、異霊化した経緯が異なっている。原作ではソチナトルの霊基情報が組み込まれていたが、こちらでは違う力によって強化どころか支配されており、それによってルーツに攻撃を仕掛けてきた。

・『黒い異形』
  ……邪神が聖母達とは別に使役する奉仕種族。夜鬼とも呼ばれている。単体の力はサーヴァントより少し弱い程度だが、群れで出現すると途端に厄介になる。今回キングプロテアを操っていた存在が、彼女が押されている事に焦って召喚した。といってもその焦りは負ければ死ぬからというようなものではなく、「操作キャラがやられかけてるからヘイト集めとして召喚した」程度。


 そういえばストーリーズ3体験版が配信されましたね。ネットを見る限りネロミェール装備も作れるそうで私もプレイしたいのですが、今は少しリアルの方が立て込んでて、まだ出来そうにないんですよね……。

 次回辺りにはチチェン・イッツァーに辿り着けそうです。今話から分割したところから着け足していく形なので黄衣の王か、そろそろデイビットも登場させたいところですが……そこまで行けるかはまだわかりません……。見切り発車投稿の悪いところですね……。

 それでは、また次回ッ!
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