【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 今年のサンタはカルナでしたね。fgo初の男性サンタサーヴァント、絶対に仲間にしたいと思いますッ!

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叛骨の魔術師

 

 “時計塔”。()の魔術王ソロモンの弟子の一人が『神秘を学問として伝える』として設立した場所であり、合計十二の学問の頂点に立つ十二人のロード達が治める、魔術協会の総本山。

 

 優れた才能を持つ者や名門中の名門の家系に生まれた魔術師など、まさしく“天才中の天才”が集まるこの場所に、ある日一人の女性がやって来た。

 

 それこそが、アンナ・ディストローツ。ここに来るまでの経歴が一切不明なのに、ロードの一人であるマリスビリー・アニムスフィア直々のスカウトを受けた、謎多き人物だった。

 

 

「ねぇねぇ、君、名前は?」

 

 

 そんな彼女がマリスビリー以外に初めて交流を持ったのが、この僕―――カドック・ゼムルプスだった。

 

 当時の僕は天才中の天才達が蔓延るこの魔境で生き抜く為に、死に物狂いで周りに喰らいついていた。その日もその日とて、授業での反省点を洗い出している時に、アンナが声をかけてきたのだ。

 

 

「……カドック・ゼムルプスだ。こんな僕に何の用だ、ディストローツ」

「あら、私の名前を知ってくれてるなんて光栄だなぁ。嬉しいッ!」

「アンタの事を知らない奴なんて、時計塔(ここ)にいるわけないだろ」

 

 

 時計塔に来て早々にアルビオンに単独で無断侵入し、一夜爆睡して無傷で帰ってきた“狂気の生還者(マッドサバイバー)”の名を知らぬ魔術師はいない。歴戦の魔術師だろうと油断すれば簡単に命を落とすあの魔境から一晩寝て帰ってきたという話を聞いた時の衝撃は、つい昨日のように思い出せる。

 

 

「……ふむふむ、内容から察するに、今日の授業の反省ってとこかな? お姉ちゃんが手取り足取り教えてあげよっか?」

「結構だ。僕は僕の力で解決する」

「その度胸は見上げたものだけどねぇ。ほとんど間違えてるじゃない。たとえばここは解釈が甘すぎるし、こっちは論点そのものが間違ってる」

「はッ!?」

 

 

 指差された箇所を改めて読み上げてみると、確かに彼女の言う通りだ。何度か見直し、「これで大丈夫」と思って次の段階に移っていたので、こうして他人に指摘されると少し辛い。

 

 

「いい? これは―――って考えればいいの」

 

「そうねぇ。じゃあ、こう考えればいいんじゃない?」

 

「うんうん、いい筋いってるよ。だけどまだ甘いね。いくつか見落としがある」

 

 

 頼んでもないのに、あいつは気付いたら付きっ切りで僕の復習に付き合っていた。最初こそ「邪魔だからあっち行けッ!」と言っていたのだが、この女はまるで意に介さない。

 

 彼女と関わる前の僕のイメージは、『アルビオンに単独で挑む狂人』というものだったのだが、訂正しよう。こいつは『とんでもないお節介焼き』だ。

 

 正直言って鬱陶しいぐらいのレベルだったが―――

 

 

「凄い凄いッ! ちゃんと出来たじゃんッ! 偉いよカドックッ!」

 

 

 彼女が作ったテストを僕が反省点を踏まえて全問正解すると、まるで我が事のように喜ぶ彼女の姿に、それでもいいなと思えてくるようになった。

 

 そこからも、僕が授業の反省点をまとめているとどこからともなく彼女が現れ、その度に僕は彼女の監修の下、次はどう学習すべきかを考える日々を送った。

 

 

「……アンナ、一つ訊いてもいいか?」

 

 

 いつの間にか名前で呼ぶようになっていた僕に、ココアを飲んでいたアンナが「ん~?」と視線を向けてくる。

 

 

「どうしてアンタは、こんなにも僕の勉強を見てくれてるんだ? アンタにとっちゃ時間の無駄だろ」

「全然? 私、とても有意義な時間だと思ってるよ?」

 

 

 なにを言ってるんだ、と言いたげな表情で返され、僕は思わず呆気に取られた。

 

 

「私はね、君みたいに努力する人間が大好きなの。特に周りに追いつこうと必死に食らいついている人がね。君は私が見てきた中でも、一、二位を争うぐらいの努力家だね。だから後押しをしたくなっちゃったの。……もしかして、嫌だった?」

「正直、鬱陶しいとは思っていた。だけど、鬱陶しいぐらいのお節介焼きなのがアンタらしい」

「それ、褒められてる?」

「どうだろうな」

「もぉ~。隠してないでお姉ちゃんに教えなさ~いッ!」

「腕を振り回すな。子どもじゃあるまいし」

 

 

 腕をブンブンと振り回して抗議してくるアンナを見てると、こいつが本当に狂人なのかわからなくなってくる。

 

 それからしばらくしないうちに、僕達はマリスビリー・アニムスフィアによってカルデアに招かれ、後にAチームのメンバーに選ばれた。僕を除いた他の七人のメンバーは、アンナも含めてどれもAチームに選ばれるのに相応しい実力と知識を兼ね備えた化け物揃いだ。どうしても肩身が狭い思いをしてしまう。

 

 だが、負けるつもりはない。僕もAチームの一員だ。彼らに並び立てるように努力し続けるつもりだ。

 

 しかし―――

 

 

「「カドックッ! おはようッ!」」

(こいつら、僕を試しているのか……ッ!?)

 

 

 ヴォーダイムと組んでパーティーグッズを身につけて絡んでくるのはやめてほしい。

 

 ってかヴォーダイム。アンタ曲がりなりにもAチームのリーダーだろうがッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――彼らなら、どうしただろうか)

 

 

 場所も時も変わる。現実に引き戻される。

 

 氷に閉ざされた獣達の国。咆哮轟く凍土の地。

 

 歴史の敗者であるこの異聞帯(せかい)を手に入れ、手の届かぬ怪物達を相手取り、我こそが最強であると証明する。

 

 剪定されたロシアは過酷だが、それ故に強靭(つよ)い。他の七つの異聞帯にも勝利できる可能性は充分に含まれている。

 

 天才ではない凡人なりに努力し、足掻き、突き進み、そして勝利する。

 

 これまでの人生全てを懸けて、カドック・ゼムルプスは証明する。

 

 そう、決心したのに―――

 

 

「……ハッ、結局、こうなるのかよ……」

 

 

 自分を囲む無機質な部屋を見て、自嘲する。

 

 そう、僕がなにも証明できないまま、なにも果たせぬままに、ロシアでの戦いは幕を下ろしたのだ。

 

 

 ―――アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。

 

 

 ロシア帝国最後の皇帝ニコライ二世とアレクサンドラ皇后の第四皇女にして、帝国が保有していた精霊“ヴィイ”と契約を交わした“精霊使い”。

 

 そして、こんな僕の召喚に応じてくれた、たった一人のサーヴァント。

 

 そんな彼女を、銃弾の前に晒してしまった。

 

 敵方のアーチャー―――ビリー・ザ・キッドに拘束されておきながら、大令呪(シリウスライト)を使おうとした罰なのだろうか。

 

 追い詰められ、躍起になってしまった。

 

 焦りが隙を生んだ。

 

 隙が―――致命的な瞬間を生み出した。

 

 

『殉死も許しません。自爆も許しません』

 

『落ち着いて、カドック。……私は、信じています。選択肢をどれほど間違えようとも―――貴方はきっと、正しく為すべき事を為すと』

 

『その後悔を抱いて生きなさい、マスター』

 

『私……きっと、もう二度とできません。銃弾の前に、身を投げ出すなんて』

 

『よろしい? 私は貴方が優れていたから助けたわけではありません』

 

『私を信じてくれたから、サーヴァントとして、当然の事をしたのです』

 

『……光栄に……思って……ちょうだいな。本当に……かわいい……人……………』

 

 

 最期に雪のように儚い笑みを浮かべて、アナスタシアは僕の腕の中から消えた。

 

 終わった。

 

 あぁ、そうだ。―――終わったのだ。

 

 王は既に亡く、新たな皇帝(ツァーリ)は消えた。

 

 捕虜として捕らえられた僕に、出来る事はなにもないだろう。

 

 そんな、絶望の中でも―――諦めるわけにはいかない。

 

 彼女は、『生きろ』と言った。銃弾の前なんか立ちたくないのに、こんな(マスター)を護る為に、自ら進んでその前に立ち塞がった。

 

 ―――彼女の勇気。

 

 ―――彼女の決意。

 

 ―――彼女の行動。

 

 ―――彼女の言葉。

 

 僕の背に重くのしかかるその全てが、僕に『生きろ』と叫び続ける。

 

 

「アナスタシア……」

 

 

 足元に転がる、砕かれた手枷を見る。僕に残留していた彼女の名残が、この手枷を砕いたのだろうか。……我ながら、吐き気を催す都合のいい考えだ。

 

 けれど、このチャンスをふいにする気もない。今なら逃げ出せるだろう。

 

 だが、どうやって? ここは現時点においてのカルデアの本拠地であるシャドウ・ボーダーの中だ。奴らの目を掻い潜って脱出するには、どうすればいい。

 

 

(考えろ……考えるんだ、カドック・ゼムルプス……)

 

 

 ビリー・ザ・キッドに後頭部を殴りつけられた鈍痛に顔を顰めながらも、ここからの脱出法を模索していると、微かな振動がシャドウ・ボーダーに走った。

 

 なにが起こった、と戸惑うも、続いてより大きな衝撃を受けたのか、シャドウ・ボーダーがさらに揺れた。

 

 これを外部からの攻撃だと仮定すると、今カルデアを襲っているのはクリプターか?

 

 敗北者の僕を助けに来た、というわけではないだろう。そんな相手に手間をかける理由などどこにもない。

 

 なんにせよ、これはチャンスだ。まずは外に出て自由になる。それからの行動は、転がる石になった気分で考える事としよう。

 

 そう思い、簡単な術式を用いて扉を開けようとした瞬間―――

 

 

「貴様がカドック・ゼムルプスか?」

 

 

 僕の前に、漆黒の鎧を装備した男が現れた。

 

 全身から感じられる魔力の質から、この男がサーヴァントだという事はすぐに理解できた。

 

 正体不明のサーヴァントは、爬虫類のような黄金色の鋭い眼で値踏みするように僕を見つめ、「なるほど」とニヤリと笑った。

 

 

「姉う……マスターからの命だ。貴様を助けに来た」

 

 

 そのサーヴァントの言葉に、僕は思わず呆気に取られた。

 

 

 

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 時間は遡って数分前、シャドウ・ボーダーの作戦司令室。そこでは崩壊したカルデアの新所長になるはずであったゴルドルフ・ムジークが、ルーラークラスとして現界したシャーロック・ホームズを伴って独房に収容したカドックの尋問に行こうとしていた。

 

 そんな彼らに重苦しい表情をしているのは、藤丸立香。七つの特異点を突破し、人理焼却の原因である“憐憫”のビースト―――魔神王ゲーティアを討ち果たしたマスターである。

 

 

「安心したまえ、ミス・藤丸。私がついている限り、手荒な尋問にはならないよ。……それに、私も問い質したい事がある。“空想樹”と“大令呪(シリウスライト)”だ。前者はともかく、後者に関してはカドックが口にしただけの単語だから、そう大きな意味は持たな―――」

 

 

 立香を安心させるように説得していたホームズの声を突然鳴り響いたアラームが遮る。

 

 

「ああ、アラームだとぅッ!? 何事かねッ!? オプリチニキはもう出てこないだろうッ!?」

『そのまさかだよッ! ロシア領から急速に接近してくるものがあるッ! 現在、時速90キロでボーダーの左舷に食いつきつつあるッ! ムニエル君、アクセル、アクセルッ! このままじゃ追いつかれるッ!』

 

 

 現在、シャドウ・ボーダーと一体化しているレオナルド・ダ・ヴィンチの緊迫した声に、カルデアの数少ない生存者の一人であるジングル・アベル・ムニエルが叫ぶ。

 

 

「無理ですッ! ここからは上り坂ですッ! これ以上は速度が出ませんッ!」

『あわわ、熱源反応確認ッ! これは―――RPGだッ!』

 

 

 ダ・ヴィンチが熱源の正体を突き止めた次の瞬間、シャドウ・ボーダー全体に大きな揺れが走った。

 

 

「当たったッ! 今のは直撃ではないか、ダ・ヴィンチ君ッ!」

『直撃したッ! しかも装甲板が一枚はがされたッ! 連発されたらまずいッ! とにかく全速力で―――え、ちょっと待ってッ! 真横に新たな熱源反応確認( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )ッ!』

「なんだとぅッ!? この期に及んでかッ!?」

『……ッ! 熱源反応急速接近ッ! みんな、なにかに掴まってッ!』

 

 

 ダ・ヴィンチが叫んだ直後、RPGの一撃を受けた時よりも凄まじい衝撃がシャドウ・ボーダーを襲った。

 

 

「いてて……。映像、モニターに表示するぞッ!」

 

 

 軽くぶつけた後頭部を擦りながらもムニエルが外部の映像をモニターに映し出す。

 

 もう間もなく左舷に辿り着こうとしているのは、RPGを片手に白紙化された地表を疾走する、深い藍色の法衣を着た神父―――グレゴリー・ラスプーチン。

 

 否、そこにいるのはラスプーチンに非ず。とうに彼の魂はその体から抜け出し、本来そこに収まっていた魂こそ、今の彼を象徴する名。

 

 外道麻婆―――言峰綺礼である。

 

 これだけでもその場にいたメンバーを驚かせたというのに、右舷を表示したモニターに姿を現した者を視界に収めたメンバー達は、こんな状況にも関わらず唖然としてしまった。

 

 攻撃的な刺々しい赤茶けた鎧に、頭部と一体化したような螺旋状の角。そして何よりも目を引くのは、その大きさだ。

 

 巨大、という言葉では足りない。まさしく、超弩級と言っても過言ではない体格を誇る“それ”に、一同は無意識に気圧される。

 

 純白の大地を砕きながら、まるで大海を泳ぐ鯨のようにシャドウ・ボーダーの真横を進むその者の名は―――“豪山龍(ごうざんりゅう)ダレン・モーラン”。太古の昔、地球上に存在した古龍種の一頭である。

 

 

「―――やぁ、カルデアの諸君」

 

 

 室内に響いた鈴を鳴らすような声に、一同の視線が一斉に動く。

 

 

「まずはロシア異聞帯の攻略、おめでとうと言わせてもらおうかしら?」

 

 

 いつの間にいたのか。立香の背後に立っていた侵入者―――アンナ・ディストローツに、残像さえ残さぬとばかりに動き出したホームズの鋭い蹴撃が襲う。

 

 

「危なっかしいなぁ。それでも()の名高き名探偵(シャーロック・ホームズ)なの?」

 

 

 だがそれを―――アンナは片手で受け止めていた。

 

 サーヴァントの攻撃を生身で、それも片手で受け止められるなど、あり得るはずがない。常人なら気付く間もなく頭部を蹴り砕かれていた。ホームズもそれを可能にする威力、速度、精度を以て攻撃したのだ。

 

 

「いきなりレディの頭を蹴ろうとしてくるような男には、お仕置きしなくちゃね」

「……ッ!? ぐあ……ッ!」

 

 

 掴まれた足から凄まじい電流が走り、全身から微かに黒煙を立ち昇らせたホームズが片膝をつく。

 

 

「ミスター・ホームズッ!」

「だ、大丈夫だとも……、ミス・キリエライト」

「手荒な真似をしてごめんなさいね。でも、先に手を出してきた貴方が悪いのよ?」

 

 

 駆け寄るマシュの手を借りて立ち上がったホームズは警戒を緩めずに立香を護るように立つ。

 

 

「ふむふむ……、そこにいるのが人理救済を成し遂げたマスター、藤丸立香ね。マシュちゃんは久しぶり。ダ・ヴィンチちゃんは……あれ? いないの?」

『ここにいるさ』

「あら、生きていたのね。よかった。なんか声が幼いような気がするけど、それは置いときましょう。それじゃあ、みんな、私の事は知ってると思うけど、改めて自己紹介させてもらうね」

 

 

 ドレスのスカートの裾を摘み、良家の令嬢がするような優雅なカーテシーをして自己紹介する。

 

 

「クリプターが一人、アンナ・ディストローツ。ここへ来た目的はただ一つ。カドックを渡してもらおうかしら?」

 

 

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