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アンナ・ディストローツ。本来であれば七人であったはずのAチームに加入した、八人目のマスター。
あの神父のサーヴァントに殺害される前の大人のダ・ヴィンチちゃんが、Aチームのメンバーについて説明していた時の事を思い出す。
『アンナちゃんはとても明るい子だったね。常にポジティブシンキングでいて、面倒見もいい。Aチームのメンバーとも良好な関係を築いていたよ。なにも知らない人から見れば、どこにでもいる元気な女性そのものな人物だ。けれど、Aチームのメンバーとして数えられる以上、その実力は折り紙つきさ。恐らく、純粋な戦闘力でいえばサーヴァントを相手にしても問題ないだろう。おまけに頭もいい。ま、この“万能の天才”には劣るがねッ!』
誇らしげに豊満な胸を張るダ・ヴィンチちゃんだが、彼女の話を聞いていた私は呆気に取られていた。
サーヴァント相手にも引けを取らない戦闘力。普通、人間が英霊に勝てる道理などない。それはこれまでの戦いを通して、否が応でも理解できている。だが、彼女はそれを可能とする程の実力者ときた。
ダ・ヴィンチちゃんの話によれば、彼女が召喚予定にしていたサーヴァントは、先に説明されたデイビット・ゼム・ヴォイドと同じバーサーカーだったそうだが、初めから意思疎通を期待していなかったデイビットと違い、意思疎通の有無は左程気にしていなかったらしい。
『でも、彼女は
その『ある事』とは?
『幻想種―――主にその最上位に君臨する竜種、そして、そのさらに上位の存在である古龍種についてさ。君は“モンスターハンター”という物語を知っているかい?』
知っているとも。その名を知らぬ者など、この世にいないと言っても過言ではない話だ。
英雄王ギルガメッシュが生きた時代よりも過去の話。実在したかどうかも不明な伝説の時代。そこを舞台に繰り広げられる、自然との調和を図る狩人―――ハンター達の物語だ。
災厄と呼べる脅威に立ち向かう狩人達はまさしく英雄と呼べる存在であり、女の私でさえいつか彼らのようになりたいと思わせられたものだ。当然、古龍種についても知っている。
『それぞれが自然そのもの、と言える幻想種の事ですよね?』
私が答えるより先に我が後輩が口を開いた。やはり、私よりもたくさんの情報を知っているだけある。ひょっとしたら、私の知らない古龍種についての事も知っているのかもしれない。
『その通り。古龍種とは、自然の力を司る者達。その場にいるだけで生態系を大きく変動させてしまう、いわば存在そのものが災厄のような者達の事さ。その中には一瞬にして砂漠を焼き尽くした者や、古代の遺跡をまるごと海の底に沈めてしまった者も存在すると言われてる。しかも困った事に、彼らは本気を出さなくともその災害を起こせる』
改めて彼らの話を聞くと、そんなのが本当に実在したのか怪しく思えてくる。その場にいるだけで生態系を変動させる上に、本気にならずとも災害を引き起こせる……。サーヴァントでもないのに、そこまでの事ができる存在などほとんどいないだろう。
“モンスターハンター”の時代を生きた人間、特にモンスターを狩って自然との調和を図る事を生業とするハンターはおよそ人間業とは思えぬ事を可能としていたらしく、ある意味彼らも
『ハンター達には感謝しなくてはならない。でなければ、間違いなく人類は滅びてたからね。普通のモンスターと違って、古龍種は数が少ない。それこそ、歴戦のハンターが彼らと出会わずにその生涯を終えるという事が普通なくらいだ。“モンスターハンター”に彼らの事が書かれている理由としては、その執筆者がとんでもない幸運の持ち主で、それ故にたくさんの古龍種と出会ったからだろう』
なるほど。世に広まってる“モンスターハンター”の話に絶対数が少ない古龍種の事が書かれているのは、それが理由だからか。というか、筆者どんだけ強運の持ち主なんだ……。
『話が逸れた。とにかく、アンナちゃんはその手の専門家以上の知識を保有していて、彼らの能力を事細かに把握していた。彼女の論文なんか、専門家達にとっては喉から手が出るほど欲しいと思えるようなものさ』
論文も発表してるんだ……。カルデアのAチームのメンバーでもあるのに論文も書くなんて、私だったら絶対に出来ないなぁ。
『でもね、そんな彼女だけど、時々私達を見る目が変わるんだ』
おや? ダ・ヴィンチちゃんが眉を顰めたぞ? その『私達』っていうのはサーヴァントの事? それとも、人間?
『後者だね。一部の例外を除けば、英霊とは元々人間だ。彼女は時々、人間に対しての目が変わる。立香ちゃん、君は動物を見た時……たとえば立派な鬣が生えたライオンを見た時、君はそのライオンの性別をどう言う?』
え? そんなの、『雄』以外にないでしょ? 鬣が無くて、スラリとしていたのなら『雌』って言うよ。それがどうかしたの?
『アンナちゃんが人間を見る時の目が、
うっ、なんかゾッとした。ひょっとしたら、彼女は私達を他の動物達と同じ目で見ているかもしれない、という事か。ちょっとだけその人の事が怖くなった。
『でも、常にそういう目をしているわけではないから、カルデア内での評判は悪くなかった。ロマニの健康診断は断固として拒否ってたけどね。もしあの爆発が無ければ、君とも仲良くなってたかもしれないね』
そう言って、ダ・ヴィンチちゃんはフッと笑った。
そこからしばらくしないうちだった。カルデアが突然襲撃を受け、私達が新しい戦いに身を投じたのは。
「人質を渡せだとッ!? そんな事、私達が許すとでも思ったかッ!」
新所長が若干震えながらも叫ぶと、アンナは至極当然とばかりにうんうんと頷いた。
「まぁ、そうだろうとは思ったけどね。せっかく捕虜にしたのに、『はい、わかりました』って渡されたら、流石の私も驚いてたところだよ。けど、今となっちゃ関係ないんだけどね~。君達がどんな答えを返そうと、カドックは取り戻すつもりだったし。手荒な真似をしてくるようだったら、あの子にここを潰してもらおうと思ってたけど、その必要もないようだね」
さらっと恐ろしい事を口走った彼女に嘘偽りが無い事は、私以外の全員も確信しているだろう。彼女はやると言ったら、躊躇いなくこのシャドウ・ボーダーをあの古龍を使って潰してくるだろう。あの巨体に押し潰されてしまえば、一瞬でシャドウ・ボーダーごと圧殺される。
そうでなくとも、彼女単独でこの場を制圧する事だって可能なはずだ。先のホームズを攻撃した時も手加減していたようだし、もしあれ以上の攻撃が飛んで来たら、この場にいる者は全員殺される。
私達全員の命は、今目の前の侵入者に握られていた。
「という事は、あの古龍種が君のサーヴァントだという事かな、ミス・ディストローツ」
「え? 違うよ? あの子は私をここまで運んできてくれたの。サーヴァントは別にいるよ。ちょっと待ってね~」
アンナがパチンッと指を鳴らした途端、『は、えッ!?』とダ・ヴィンチちゃんが素っ頓狂な声を上げた。
『嘘ッ!? ボーダー内にサーヴァントがいるッ!? しかもこの霊基、神霊級じゃないかッ! 場所は……独房ッ!』
「なんだとッ!? あそこにはカドック・ゼムルプスが……」
「ちょっとジャミングを掛けさせてもらってたんだ。でも、これでわかったでしょ? 君達がどれだけ足掻こうと、結果は変わらないって」
彼女の言葉は事実そのものを言い表していた。今現在において、私達に出来る事はなにもない。
「カドックは私達が戴く。だから、ね? ちょっとだけお話しましょ? 藤丸立香ちゃん?」
にこやかに、まるで親が子どもに話しかけるような目で見られる。どうやら、彼女は私に興味があるようだった。
「私達無しに七つの特異点を突破し、魔神王ゲーティアを打倒した、人類最後のマスター……。うん、いい目をしてる。幾つもの死線を潜り抜けてきた英雄の目だね。
彼女の言葉に嘘偽りは見られない。それどころか、私を尊敬すらしているように思える。本心から私が一度は人理を救った事を称賛しているのだろうか、この人は。
「でも、君の目は少し翳ってる。さっき、一つの世界を消したからかな?」
「……ッ!」
息が詰まる。
人理漂白から始まった戦い。カルデアを襲ったオプリチニキとの縁を辿って足を踏み入れたロシア異聞帯。そこでの出来事が思い起こされる。
『お前の世界をお前が救うという事は、この
『このロシアに住むヤガ達全てを、お前は殺す事になるぞ』
『故に問うッ! 故に糺すッ! 貴様にその権利があるのかッ!?』
『この大地に住むヤガ達に、“死ね”とお前は命じるのかッ!』
イヴァン雷帝。正史と異なり、その身を最初に獣と融合させた、ロシア異聞帯を代表する王。
彼の言葉は、叫びは、慟哭は、この胸に深く刻み込まれている。
私達は、漂白された世界を取り戻す為に戦う。その為に、“あり得たかもしれないif”である異聞帯を破壊する。
それすなわち―――八つの世界を破壊する事に他ならない。
それでも、ひたすらに前へ、前へ、進まなければならない。
『俺は、テメェを、絶対に許さない』
『俺に幸福な世界がある事を教えてしまった失敗を、絶対に許さない』
『だから立て、立って戦え』
『お前が笑って生きられる世界が上等だと、生き残るべきだと傲岸に主張しろ』
『胸を張れ。胸を張って、弱っちろい世界の為に戦え』
『……負けるな。こんな、
その身を以て、私を銃弾から護ってくれた人がいた。
その人の言葉が、私達に前へ進む勇気を与えてくれた。
だから、
「……あぁ、その目よ。その目はまさしく、あの狩人達の目……。あぁ……なんて素晴らしいの……ッ!」
両手を握り、恍惚とした表情で、アンナは私を愛おしそうに見つめている。
「それでこそ……、それでこそ、
故に、貴方達には
「戦いなさい。戦って、戦って、戦い抜いて、自分達の
どこか狂気とも思えるほどの表情でシャドウ・ボーダー内に笑い声を響かせるも、「まぁ……」と、アンナはスッと細めた眼で私達を順に見てくる。
「私達も、負けるつもりはないからね」
その瞬間、彼女から発せられた威圧感が私の全身を呑み込んだ。
圧倒的なまでの
逃げろ、と本能が叫ぶ。
種としての本能が、眼前の脅威に対して恐怖心を抱いている。
―――逃げろ。早く逃げろ。
―――目の前にいるこいつは、化け物だ。
―――勝てるものか。
―――勝てるはずが無い。
―――だって、こいつは―――
「それじゃあ、私はここで失礼するね~」
どこまでも明るい声が耳朶を震わせた直後、先程までの威圧感が嘘のように霧散した。
だが、それが事実であった事は、この場にいる誰もが痛感している。
今も尚震える体に、額に浮かび上がる脂汗が、それを物語っているからだ。
「カドックは私のサーヴァントが回収したし、あの神父も目的を果たせたから、これ以上の追跡はしないよ。それじゃ、生きていたらまた会いましょう?」
そう言ってポケットから取り出した球状の物体を床に叩きつけると、彼女の姿を隠すように緑色の煙が噴き出してくる。即座にホームズがその奥にいるであろうアンナに攻撃を仕掛けるが、彼の足が貫いた緑煙の先に、アンナの姿は無かった。
『空間転移……ッ!? 魔法の域の技をどうやって……』
「……恐らく、先程彼女が床に叩きつけたものが原因だろう。使い捨てのようだが、この場所から瞬時に消え失せる魔術礼装など、聞いた事もないが……」
破裂した球を「興味深い」と言いたそうにじっと見ているホームズだが、新所長の叫び声に意識を切り替える。
後に、私達はそれの正体を聞いて驚く事になる。
先程破裂したそれが、石ころに草を巻きつけただけで出来た玉に、とあるキノコを調合するだけで作れたものだったと―――
「ええい、今はそんな事を考えている場合ではないッ! あの幻想種と神父はどうするッ!?」
「……待ってくださいッ! 両者、共に停止。シャドウ・ボーダーを追ってきませんッ!」
「アンナ・ディストローツの言葉から考えるに、カドックを奪還されたのだろう。どうやら両者の目的は共通していたようだ。これ以上、彼らが追ってくる事はないだろう」
念の為にモニターを見るが、ダレン・モーランは純白の大地へとその巨体を沈めていき、神父の姿はいつの間にか消え去っていた。ホームズの言う通り、彼らにこれ以上シャドウ・ボーダーを追う理由は無いのだろう。
カドックの奪還を阻止できなかった事は痛手だが、悔やんでも仕方ないだろう。あの状況では誰も動けなかったのだから。
「“試練”、か……」
「先輩?」
共に数々の死線を潜り抜けてきた後輩を見る。
先程のロシア異聞帯を除けば、これから私達は七つの世界を破壊する事となる。如何に人理から剪定されたものとはいえ、そこには必ず生命があり、私達が空想樹を切除する事で、彼らの命は消える。
「……マシュ。絶対に勝とう。私達の世界を取り戻す為に」
「……はいッ!」
世界を破壊する―――その罪は決して赦されないだろう。それでも私達は、前に進まなくちゃいけないんだ。
強いだけの世界に、負けて堪るか―――ッ!
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「ぺっ、ぺっ! うぅ、先走っちゃった……」
自らの異聞帯に帰還したアンナが、自分達をここまで運んでくれたダレン・モーランから飛び降りるや否や、口内にあった砂粒を吐き出す。
地中を突き進み、自分が管理する地に帰ってきた彼女は、まるで実家に帰ってきたように意気揚々と自分のサーヴァントが張っていた炎の障壁を易々と突破し、そしてものの見事にダレン・モーランが浮上する際に巻き上げた砂塵を浴びた。お陰で今の彼女のドレスの中には大量の砂が入り込み、絹のような滑らかさと月光のような美しさを持っているであろう銀髪も見るに堪えないありさまになっている。
「マスター……」
「そんな目で見ないでよッ! あの名探偵、明らかに私を殺そうとしてきたんだよッ!?」
シャドウ・ボーダーに侵入した直後に飛んできたホームズの一撃。カルデアのメンバーから見れば、アンナはそれを容易く受け止め、あまつさえホームズに反撃してみせた、という恐ろしい光景のように思えただろうが、事実は少し違う。
この女、内心ビビっていた。当然と言われればその通りだと黙るしかないが、声をかけた瞬間、とんでもないスピードで靴底が迫ってきたのだ。そりゃ誰だってビビる。
「ここがアンナの異聞帯か……」
簡単な身体強化の術式を用いて砂漠に降り立ったカドックが、遥か彼方に見える空想樹に視線を向ける。ちなみにカドックはアンナのように先走って飛び出していなかったので、ダレン・モーランの浮上時に全身に砂を浴びる事は無かった。
「そうだよ~。ロシアからここまで運んでもらったの。あ、君はもう自由にしていいからね」
ダレン・モーランが砂漠に沈んでいく。その際に巻き上げられる砂塵は、ここに到着するまでの間もそうしていたように、バーサーカーが炎の障壁を張って防ぐ。
(それにしても、なんて暑さだ……)
ロシア異聞帯の気候は、常人であれば即座に凍死する程のものだった。それに比べ、ここは砂漠だ。元より気温は高いし、なによりバーサーカーが障壁に用いている炎が熱すぎる。ここに来るまでの間もずっと耐熱術式を用いていたのに、それでも肌を焦がすような熱気だ。そして、それをなんの術式を用いずに通り抜けたアンナにも愕然とするしかない。あの見てるだけでも魂ごと焼き尽くされると思える炎を、だ。
「ふっふっふ~、そんなカドック君にはこれ、どうぞッ!」
「……なんだ、これ」
アンナに手渡された瓶の中に満たされた、白い液体を訝し気に見つめるカドック。
「クーラードリンク。一回飲めばあら不思議、時間制限はあるけど、あらゆる暑さを防ぐ事が出来るのだッ! そんな顔しないの。騙されたと思って飲んでみなって」
こんな液体を飲んだところで、そんな効果を得られるのか、と疑問の眼差しを向けながらも、カドックはグビッとクーラードリンクを飲み干す。
正直どんな味がするのか、と不安だったが、飲んでみればスポーツドリンクのようなものだった。壊滅的に不味いというわけではなかったので吐き出す事もなく、一息に飲み込むと、砂漠の熱気が嘘のように消えていくのを感じた。
「……凄いな、これ。どんな素材を使ったんだ?」
「氷結晶とにが虫」
「……は?」
「氷結晶とにが虫」
「…………」
にが虫はわかるが、氷結晶とはなんぞや。そして、その二つを調合させてなぜあの液体が出来上がるのか、と頭を抱える。
アンナの管理する異聞帯は、あの“モンスターハンター”の舞台となった時代にいた竜種が現存している世界と聞いたが、その氷結晶とやらは、この世界じゃ一般的なものなのか。未知の物質がごろごろ転がっているとなると、魔術師達は血眼になってそれらを採取しまくり、発狂しながら研究する事だろう。尤も、そんな
考えても仕方ないので、それについての謎は頭の片隅にでも置いておく。
「……まぁいい。それで、僕をここに連れてきた理由はなんだ? 管理すべき異聞帯を失った僕に、もう価値はないと思うが……」
「確かに、クリプターとしての君の価値は失われたね。だけど、それ以外の価値は、まだあると思うな」
「……?」
「君は途轍もない努力家だ。そして狡賢く、行動を起こす時は大胆に動く。決して自分を甘やかしたりせず、徹底的に虐め抜いて鍛え上げる。それこそ、休息も取らない程に。……焦りすぎは良くないけどね」
そうと言われると、カドックも頭が痛い。その焦りのせいで、彼は自らの敗北を決定的なものにしてしまったのだから。
「ふんふん……、まだ微かに、ほんの一欠片中の一欠片だけど
「残ってる? おい、いったいなんの話を―――」
「ねぇ、カドック。また皇女様に会いたい?」
唐突な質問に動揺するカドックに、アンナはニコッと笑った。
ネンチャク草と石ころを調合させて出来た素材玉とドキドキノコを調合した結果生まれたアイテム、モドリ玉。いったいどうやってベースキャンプまで戻るんでしょうね?
これから出てくる抑止力側の古龍について
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本当に強い奴だけ強化してほしい
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今のままでいい